もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

トランプ大統領の安保タダ乗り論の波紋

2019年07月04日 | アメリカ

 トランプ大統領の日米安保の破棄・解消を示唆するとも取れる発言が波紋を呼んでいる。

 現在のところ、政府は静観の構えであり、世論も有り得ないとする空気が支配的であるが果たしてそうであろうか。第二次世界大戦が終わって世界が東西に二分された際、アメリカが最も恐れたのは共産主義によるアメリカの赤化であり、対外的にはヨーロッパでNATOを、アジアでは韓国・日本を防波堤とすることで共産主義の膨張を食い止め、アメリカ自身もマッカーシーの赤狩りに代表される共産主義思想弾圧を行って反共に世論を統一した。その後、朝鮮戦争・キューバ危機・ベトナム戦争とアメリカは息つく暇もなく共産主義との戦いを余儀なくされたが、ソ連の崩壊によって共産主義との戦いはアメリカの第一戦略目標ではなくなった。このように、アメリカが日本や韓国と安全保障条約を結んで両国を守るのは、偏にアメリカの防波堤としての地政学的な重要度の故であり、韓国や日本の国民を守ることには二義的な意味しか持っていないことは明らかである。ここにきて、トランプ大統領というビジネスマンが登場したことで様相は一変した。トランプ大統領は、海外駐留米軍を「軍需産業を下支えするための傭兵集団」としてしか考えてないことは疑の無いところで、今後は米軍の駐留はおろか軍事行動すらも金銭が要求される事態も予想しておかなければならない。ゼウスは、あらゆる災いの詰まった箱をパンドラに持たせて地上に送り出したが、パンドラが好奇心から箱を開けてしまい全ての災いが地上に飛び出した。急いで蓋を閉じたので希望だけが残ったというパンドラ伝説。日米安保の片務性を理性・知性で覆い隠していたアメリカの心底というパンドラの箱を、トランプ大統領はいとも簡単に開けてしまい、箱の底には経済原則しか残っていないようである。一旦開けられれたパンドラの箱は、誰が大統領になろうと、国家戦略として歩き続けるものと考えおかなければならないと思う。

 トランプ大統領の発言を真剣に考える櫻井よしこ氏等は、従前から日米安保破棄に備えた自前の国防論を唱えておられる。しかしながら、日本の現状は軍事研究忌避の壁、憲法改正の壁、核武装の論議すら反対、等々克服しなければならない多くの障害がある。そして最も大きな障害は、軍事に携わる崇高な使命を「苦役」とする「人任せ」風潮であると思う。少子化と経済構造を考えれば、いま以上の人的資源を国防の最前線に維持するのは不可能であることは明らかである。自前の国防政策としては、自律型致死兵器や大量破壊兵器への路を模索することしかないのではないだろうか。


韓国の落星台経済研究所員の演説にエール

2019年07月02日 | 韓国

 韓国「落星台経済研究所」の李宇衍氏が、ジュネーブで開かれる国連欧州本部で演説することが報じられた。

 落星台経済研究所は、1987年に設立されたシンクタンクで、韓国学会の主流である国史系の民族主義的歴史観とは一線を画し、経済史の側面から日本統治時代の実証的な研究を行っている団体とされている。一般に報道される韓国情報では、李朝末期~日本統治時代を敷衍した学術研究は迫害の対象にしか成り得ないため、研究者は冷遇されるか口を閉ざしているとされていた。李宇衍氏の演説内容は、劣悪な労働環境に置かれた徴用工とされる炭鉱労働者が、実は韓国国内の教員の数倍の報酬を得・日本人鉱夫との格差も無く、「やせ細った徴用工は虚像」とする内容とされている。日本統治時代の半島において、人口が急激に増加した事実、GDPが急伸した事実、就学者と識字率が飛躍的に向上した事実、等々について客観的な統計を見れば日本統治の正の部分は明らかであろうのに、劣等民族である日本の手を借りて近代化を実現したという現実は、尊大な韓国人にとっては恥辱であるのだろう。また、韓国の反日批判を客観視・疑問視する韓国人の多くが韓国を離れた場所で活動しているのに対して、経済史の面からとは言え日本統治時代を研究する星台経済研究所が30年以上も韓国国内に存続していることは敬服に値するとともに、韓国人にも知的世界が残されているものと安堵した。今回の演説で、徴用工伝説が一挙に覆ることは望めないにしても、韓国国内の研究者が述べる一言に世界が耳を傾けることを期待するものである。

 一方、昨日発表された先端材料の輸出規制に対して、製造各社とも政府方針に従うとしているものの、ステラケミファ社は「法令に従い所定の手続き実施する」としている。所定の手続きとは具体的に述べられていないので、どのような物か分からないが、よもや韓国のWTA提訴に同調・支援するものであって欲しくないところである。ここは一番、「和魂商才」の精神で、踏ん張って欲しいと願うところである。


立民福山幹事長の違法献金疑惑に思う

2019年07月01日 | 野党

 立憲民主党幹事長の福山哲郎議員の違法献金疑惑が報じられた。

 政治資金規正法では、企業・団体からの後援会や政治団体への寄付は禁止されているが、福山議員の場合、後援会費の名目で企業等から支払われているものが寄付に該当するとの指摘である。会計に暗いので当該指摘が違法であるか否かは即断でないが、指摘された事案が平成22~28年の出来事であるということが、なんとも納得できないところである。政治資金収支報告書は毎年提出されていると思うので、10年前の疑惑が今頃になって取り沙汰されるのは何故かと勉強しようとしたが、素人には到底理解できるものではないことを知っただけである。総務省の公表データでは福山幹事長の後援会や資金管理団体すら探し当てられなかった。これでは相当な事情通にしか政治家の資金を追跡することは不可能であり、後援会や個人の資金管理団体の名称には議員・候補者名を冠することを義務付けるだけで、相当な改善が図られるのではないだろうか。総務省も公表資料の作成に当たっては、議員名等から関連する資金管理団体を検索可能なインデックスを付ける等の便宜を図る必要があるのではないだろうか。また、政治資金収支報告書の内容に関する審査は、何処の・誰が行っているのだろうかとの疑問も湧く。報道されたような企業・団体名で後援会費が支払われているようなミスは、目の肥えた官僚ならば一目で見抜けると思うのだが、実際はマスコミの調査で始めて明らかにされる場合が多い。勘ぐれば総務省の審査もおざなりで、なおかつ審査がおざなりであることを知った上で政治家が故意に虚偽報告していることも考えられる。

 首相や閣僚の「靖国神社の玉串料」支出には耳目が集まるが、全般に政治資金法報告書に対する監視は甘いと感じる。うちわ事件や看板事件は記憶に新しいが、おそらく何倍もの団扇事案があるに違いない。政治資金法報告書審査のために会計検査院的な審査機関を置く、若しくは政治資金規正法に詳しいOB官僚による「シルバー機関」の設置・外注などを考えても良いのではないだろうか。ザル法とも呼ばれる政治資金規正法であるが、実効性あるものにするためにも考えてほしいものである。ともかく、総務省はもう少しましな公表書式を考えるべきであると思う。