ロシアの部分的動員の実際が明らかになりつつある。
先日のブログでは動員の実態・規模の詳細は不明としていたが、動員数は政府発表の30万人を大きく超える100万人との情報もあり、対象も予備役(軍務経験者・在郷軍人)以外にも広範に亘っていることが確認されている。
動員数は当然に軍機で詳細が語られることは無いと考えるが、本日のテーマは「それほどの緊急動員に対して、よくぞ装備品を準備できたものだ」ということである。
応召兵であっても国際的に正規軍と認められるためには軍装を統一する必要があり、制服は何とかなるにしても必需品である小火器までも全員に貸与できるものか驚嘆・疑問を同時に感じている。
朝鮮戦争では、鴨緑江渡河まで視野に入れた国連軍を38度線まで押し返したのは、中共が大量の人民解放軍を投入したためとされているが、実際は兵士の多寡ではなく国連軍に突撃する中国軍が先頭の第1列しか武器を持たず、第2列以降の後続兵は倒れた兵士の武器を順次使用したことに対して、「丸腰の者は撃たない」と云う文明規範を持つ国連軍(米兵)がまともに反撃できなかったことが大きいとされている。
ロシアがウクライナ戦線で朝鮮戦争における人民解放軍の戦術を採ることはなく、恐らくは中ロ国境地帯や極東地域等の正規軍をウクライナ戦線に抽出して、当該地域の戦力補充として応召兵を配備することになるのだろうと思っているが、この手法も、大東亜戦争でソ満国境に備えていた関東軍の精兵を南方戦線に抽出して補充に応召兵を充てた結果、関東軍が弱体化してソ連の条約破りの侵攻に対して成す術がなかった例が思い起こされる。幸いというか、中国・日本がその状況をロシア侵攻の好機とは捉えていないが。
主題である応召兵に対する軍装について、もし、日本有事に際して「動員」や「自発的入営志願者」等の大量の兵士に対して、短期間に正規軍兵士としての軍装を整えることが可能だろうか。
制服は何とかなると思いたいが、縫製業の大半を海外に依存している現状を見ると、そうそう楽観視もできないように思える。小銃についてはどうであろうか。日本の軍用銃メーカは豊和工業のみと理解しているが、20式5.56mm新小銃の納入実績(年間3千丁程度)から考えると生産能力もそう高くは無いように思える。海自の教育機関が64小銃に換装されたのは、制式化後30年以上後の2000年前後であったが、自衛隊の換装優先順位もあってのことと思うものの豊和工業の能力も関係していると思っている。
では、軍装に関して平時からの備蓄が可能かと云えば、会計検査制度が立ちはだかる。会計検査では1年程度「使用・活動実績」が無い物品に対しては「非活動物品」で「経費の無駄」と評価されることが一般的であり、近年は幾分改善されたと聞いているがまだ、検査を受ける側にはその空気が強く備蓄に及び腰であるように思っている。
ロシア動員令を他山の石として、日本でも「少なくとも予備・即応予備自衛官3万~4万人分の軍装は、常備するよう努めてもらいたいものである。
ちなみに、小銃1丁の値段は30万円内外で、30万円×3万丁、これを「高いと感じる」か・はたまた「妥当で必要なと観るか」、難しいが避けて通れぬ問題であると思っている。