文化庁が「STOP盗難文化財」のサイトを2月1日に開設するとの記事を読んだ。
背景には国指定の文化財のうち147件が所在不明になっていることがあるらしい。所在不明の原因は盗難や所有者の死去・転居の際の紛失に依ることが多いとされているが、好事家や収集家の第3者の手に渡った場合、再び世に出ることもなく杳として行方が掴めない状況であるらしい。テレビのお宝鑑定番組では、所有者の子孫が文化的・骨董的価値・知識・所有欲が希薄になって手放す例を良く見かけるが、流石に国指定文化財ともなれば容易なことでは再び世に出ることはないのだろう。現在、国が指定する文化財は?と思い文化庁のHPを覗いたら、国宝1,116件、重要文化財2,497件であることを知った。建物を除く美術工芸品については、その多くが博物館に寄託されるか神社仏閣の宝物殿で厳重に守られているのだろうが、国指定の重要文化財や地方自治体が指定する文化財については、普段訪れる神社仏閣でさしたる警護の気配もなく鎮座・展示されていることも多い。文化財は愛好家の収集欲を駆り立てるだけではなく、しばしば攻撃の対象にもなっている。モナリザ・受難で検索すると1911年の盗難を始めとして幾たびも攻撃されている。攻撃者が自分の主張を最大限世に知らしめるために、美術品や歴史資料の損壊を行うことが多いためであり、近年でもイスラム国によるバーミヤン摩崖仏の爆破、韓国元軍人の靖国神社爆破、中国籍の朝鮮族による寺社への連続油散布、等々、枚挙にいとまがない。日本の場合、文化財に対する犯罪に対しては通常の窃盗罪や器物損壊罪の他に文化財保護法違反によって量刑が過重されるのだろうが、先人の偉業と継承すべき文化を守るために、もっと厳罰にすることが必要なのではないだろうか。また、一度文化財に指定されると、保存管理のための経費が増大するとともに現状変更ができないことから、所有者が文化財への指定を敬遠するとも聞いている。モナリザに話を戻すと、展示されているルーヴル美術館の所有と思っていたが、現在はフランスの国有財産とされているようである。所有者と展示場の権利は分からないが、日本においても国宝は国有財産として管理することが良いのではないかとも思う。
文化庁が、サイトを開設して行方不明文化財の詳細を公表して再発見に努めることは意義あることで実績を上げるかもしれないが、外国人労働者の増大等の将来に備えて、更に一歩進んで文化財の保護についても再考する時期にあると思うところである。