中国が東シナ海で行っているガス田開発が、更に活発化することが報じられた。
今回の事象は、中国が移動式の掘削船を配備して新たなガス田開発に着手したことであるが、例によって政府は「重大な懸念」と抗議したが、中国は意にも介さないだろう。2008年に「境界確定まで中間線をまたぐ海域に共同開発する特定海域を設ける」と日中で合意したが、中国は中間線から数キロの地点に中国独自の白樺ガス田を掘削し、以後16基のガス採掘施設を完成させ12基が稼働中とされている。当時の日本の識者と政府は、採算見通しと推定埋蔵量から白樺ガス田の開発と存続には総じて懐疑的であり、共同開発合意が履行されなかったことには抗議したものの、冷ややかに静観するものであったと思う。しかしながら、今にして掘削リグ設置を見れば、天然ガス採掘は隠れ蓑、リグを国際的に認知させることが目的で、敵は本能寺にあったと思う。以後の尖閣諸島を含む防衛識別圏(ADIZ)の設定、南シナ海の人工島建設、国産空母の建造、一帯一路構等を見ればガス田開発は漢民族の中華実現の前哨戦であったことが良く分かる。より鮮明になったのは、ガス田のリグから軍用のレーダー波が検知されたことであるが、リグの建設位置から考えると16基のリグは防空識別圏のレーダーサイトとして使用されるのみならず、ミサイルの発射母体や潜水艦捕捉のためのハイドロホン中継基地の機能をも付与されているのではないかとも危惧される。
日本で中国問題の権威或いは中国評論家とされる人はいるが、中国共産党内の勢力分析と解放軍との関係に詳しいだけで中国の国家戦略を分析して国防政策に提言できる個人・研究機関は目にすることが無い。残念ながら外務省も希望的観測に則った近視眼しか持ち合わせていないようで、長期的な対中国政策は持っていないようにさえ感じられる。蓮舫氏の「2番じゃ駄目なんですか」発言に代表されるように、コスト万能の唯物重視に陥った結果、採算を度外視した独裁国家の戦略ないしは動向を理解する力を国民が持っていないことが最大の要因であるかもしれない。