もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

国葬を振り返って

2022年09月28日 | 社会・政治問題

 安倍元総理の国葬が終わった。

 地方在住・コロナ禍の現状からテレビ参列・ネット献花を余儀なくされたが、武道館における儀式は総体的に成功裏に終わったのではないだろうかと思っているものの残念な点もある。
 1は、やはり国葬反対派の活動である。会場周辺での反対では主催者発表で1万5千人が活動したとされるが、主催者の過大宣伝を割り引けば実数は1万人弱であろうか。日本人の美徳・常識として葬式の邪魔など考えられないが、既に従来常識では測れない日本人が増えたのだろうか。国葬に対する世論調査では、賛成30%、反対30%、どちらかと云えば反対40%とされているので、数字的には献花に訪れた人2万人と同数程度の反対者が集結してもおかしくないが、1万人しか集まらなかったのは「国葬には反対だが、何も式典の邪魔をしてまで」と考える常識人が少なからずいたせいであろうと安堵しているものの、暴力的に反対を強要する様はBLMの愚行に通じるように思った。
 2は、NHKの報道姿勢である。式典の映像に「反対意見の割合」や「経費」のコメントを被せて、恰も国葬が国民の総意でないことを暗示する画面作りで、生まれて初めて抗議の電話を掛けたくなった。また、テロップの準備もない「おざなり」な映像作りは、公共放送としての存在・使命を自ら捨て去るに等しい行為と思った。このことは、民放各社でも同様であったようで、ネットにも苦情が散見される。NHKの映像については国際映像として世界に発信されるであろうことを思えば、制作担当者の政治的意図をちりばめたかの映像は、日本を貶めるものに他ならないのではないだろうか。

 今回の国葬のゴタゴタからか、一部に「総理経験者の葬送については一律に「国葬でない葬送とすれば」という意見があるらしいが、国葬の意義を忘れた意見であると思う。思い出すだけでも歴代総理には、女性問題で短命に終わった人、今に禍根を残す談話を残した人、フクシマについて誤った意見を国際機関に送った人、日米関係を危殆に曝すとともにクリミヤ正当化・韓国での土下座行脚を続ける人、等々、脛に傷持つ元総理が綺羅星の状況で、これらの人を十把一絡げ・同等に葬送するとしたら、安倍氏の国葬以上の非難囂々の修羅場となること請け合いに思う。

 最後に、今回の国葬儀に際しては、各フェーズの結節に円滑を欠いていたように思った。例を挙げれば、車列の捌き、ドアマンの配置、SPの乗降、献花者の誘導などであるが、45年振りの国葬で計画者・従事者がほぼ初体験であれば致し方の無いところかと思える。「次回はもっとスマートに」と云いたいところであるが、「羹に懲りて膾を吹く」の例えの通り、今後「大喪の礼」を除いて民間人に国葬を贈ることは多分無いのではと思える。
 しかしながら、今後とも起こり得るかもしれない「国難に殉じた戦士」等を顕彰するためにも、国葬と云う理念は保ち続けて欲しいと願っている。


前進党の旗揚げに思う

2022年09月27日 | アメリカ

 アメリカで新政党「前進党」の旗揚げ集会が報じられた。

 アメリカには共和党・民主党以外にも50近い小政党が存在しているが、上下院の議席を見ても上院に2名の無所属議員がいる以外は、全て民主・共和党とされているので、小政党は議席を持っていないようである。
 アメリカの政党は他国の政党と比較して非常に緩やかで、民主・共和党にも党首はおろか綱領も存在しないと理解している。そのため、日本のような議員に対する党議拘束なども存在せず、議員は個人の信条に従って活動するために多数党の提出した法案が否決されるというようなケースも茶飯事である。
 今回の前進党の旗揚げに注目したのは、同党のスローガンが「左でも右でもない。前へ」であると報じられたからである。事実、旗揚げ集会には民主・共和党の重鎮も名を連らねており、2大政党の確執にうんざりした無党派層にとっては「干天の慈雨」的出現かとも考えられる。
 Wikipediaによるアメリカ有権者の政党別登録者数は、7200万人が民主党、5500万人が共和党、4200万人が無所属もしくは小政党とされているが、今回旗揚げした前進党は他の小政党より抜きんでた存在となるのか興味が持たれる。
 自分もこれまでは2大政党が時宜に応じて政権を握ることが民主主義国家にとって望ましいと考えてきたが、その前提は2大政党が国益に沿って行動する・国民に奉仕することでは一致しており、若干の振り幅はあるにせよ外交と国防については、いずれの政党が政権についてもそれが損なわれないことが重要と考えてきた。近年のアメリカを眺めると、カマラ・ハリス副大統領や、ナンシー・ペロシ下院議長に代表される急進左派とトランプ右派の確執は抜き差しならぬ局面に及んだように思える。さらに、ほぼ対極に位置する両陣営の泥仕合は必然的に国民の分断・衝突をますます尖鋭化させているように思える。しかしながら、アメリカの救いは大東亜戦争や9.11テロの例が示すように、アメリカが攻撃された場合には、確執を捨ててアメリカの旗の下に強固に団結するという歴史を持っていることである。

 前進党が掲げた「左でも右でもない。前へ」は、アメリカ社会の回復・改善に説得力を持つものであろうが、このスローガンをアメリカ以上に必要としているのは日本ではないだろうか。
 インド・太平洋戦略で世界的潮流を創出した指導力に対する国葬を、経費・統一教会・モリカケ桜の小市民的次元で矮小化して政局に利用する、小姑的な嫉みと後ろ向きは、世論を「左に」「後に」誘導する試み以外の何もでもないように思える。
 以上のことから、アメリカでの前進党の旗揚げと日本における維新の台頭・急進は同根であるようにも思える。


ロシアの動員令に思う-2

2022年09月26日 | ロシア

 ロシアの部分的動員の実際が明らかになりつつある。

 先日のブログでは動員の実態・規模の詳細は不明としていたが、動員数は政府発表の30万人を大きく超える100万人との情報もあり、対象も予備役(軍務経験者・在郷軍人)以外にも広範に亘っていることが確認されている。
 動員数は当然に軍機で詳細が語られることは無いと考えるが、本日のテーマは「それほどの緊急動員に対して、よくぞ装備品を準備できたものだ」ということである。
 応召兵であっても国際的に正規軍と認められるためには軍装を統一する必要があり、制服は何とかなるにしても必需品である小火器までも全員に貸与できるものか驚嘆・疑問を同時に感じている。
 朝鮮戦争では、鴨緑江渡河まで視野に入れた国連軍を38度線まで押し返したのは、中共が大量の人民解放軍を投入したためとされているが、実際は兵士の多寡ではなく国連軍に突撃する中国軍が先頭の第1列しか武器を持たず、第2列以降の後続兵は倒れた兵士の武器を順次使用したことに対して、「丸腰の者は撃たない」と云う文明規範を持つ国連軍(米兵)がまともに反撃できなかったことが大きいとされている。
 ロシアがウクライナ戦線で朝鮮戦争における人民解放軍の戦術を採ることはなく、恐らくは中ロ国境地帯や極東地域等の正規軍をウクライナ戦線に抽出して、当該地域の戦力補充として応召兵を配備することになるのだろうと思っているが、この手法も、大東亜戦争でソ満国境に備えていた関東軍の精兵を南方戦線に抽出して補充に応召兵を充てた結果、関東軍が弱体化してソ連の条約破りの侵攻に対して成す術がなかった例が思い起こされる。幸いというか、中国・日本がその状況をロシア侵攻の好機とは捉えていないが。

 主題である応召兵に対する軍装について、もし、日本有事に際して「動員」や「自発的入営志願者」等の大量の兵士に対して、短期間に正規軍兵士としての軍装を整えることが可能だろうか。
 制服は何とかなると思いたいが、縫製業の大半を海外に依存している現状を見ると、そうそう楽観視もできないように思える。小銃についてはどうであろうか。日本の軍用銃メーカは豊和工業のみと理解しているが、20式5.56mm新小銃の納入実績(年間3千丁程度)から考えると生産能力もそう高くは無いように思える。海自の教育機関が64小銃に換装されたのは、制式化後30年以上後の2000年前後であったが、自衛隊の換装優先順位もあってのことと思うものの豊和工業の能力も関係していると思っている。
 では、軍装に関して平時からの備蓄が可能かと云えば、会計検査制度が立ちはだかる。会計検査では1年程度「使用・活動実績」が無い物品に対しては「非活動物品」で「経費の無駄」と評価されることが一般的であり、近年は幾分改善されたと聞いているがまだ、検査を受ける側にはその空気が強く備蓄に及び腰であるように思っている。
 ロシア動員令を他山の石として、日本でも「少なくとも予備・即応予備自衛官3万~4万人分の軍装は、常備するよう努めてもらいたいものである。
 ちなみに、小銃1丁の値段は30万円内外で、30万円×3万丁、これを「高いと感じる」か・はたまた「妥当で必要なと観るか」、難しいが避けて通れぬ問題であると思っている。


ヒグマ「OSO18」を知る

2022年09月24日 | 社会・政治問題

 北海道の標茶(しべちゃ)町で、「OSO18」とコードネームされたヒグマが跳梁を重ねていることを知った。

 被害は、令和元年7月以降、同町を含む周辺自治体併せて子牛65頭(被害額4000万円)に及んでいると伝えられている。
「OSO18」の特質は、川の中を歩いて匂いによる追跡を不可能にし、人目を避けるために道路を歩かず、罠を的確に回避し、驚かせるための音響装置などに惑わされず、と極めて狡知で、目撃されたのも令和5年の1回だけとされている。
 かって、熊は知能が低く芸も覚えないために、世界中で芸のできる熊を飼育するのはボリショイサーカスだけといわれ、同サーカスでもオートバイに乗る熊はライオン等の猛獣とは違って、演技中も口輪を嵌められていたように記憶しているが、「OSO18」の行動を見ると学習能力に秀でており、将に"熊中の熊"であるように思える。
 我々世代は、虫・鳥・獣について人間に益をもたらすものを「益(虫・鳥・獣)」、反対に害を為すものを「害(虫・鳥・獣)」との区分を教えられた。年を重ねて記憶も曖昧になった今では、雑穀を食べる雀は害鳥、稲に付く虫を食べる燕は益鳥、くらいしか覚えていないが、熊はどちらに分類されていたのだろうか。
 「OSO18」もいずれは駆除される運命と思うが、恒例の通り動物愛護・自然保護団体は「保護・共生」を役場に電話攻勢し、一方で地元猟友会の代表は「ここに住んでから云ってくれ。命がかかった問題なんだ」と、鳥獣被害顕在の度に繰り返される展開とも報じられている。

 自分は、極端な自然愛護家でもなく直接の被害者でもないが、牛喰い等により「獣倫に外れた」獣に対しては、駆除すべきと考える。
 ネアンデルタールは4万年前に、ホモサピエンスも3万年前に洞窟壁画を描いているが、モチーフがいずれも野生動物であることを思えば、狩猟・採集時代にあっては野生動物は全て食料(益獣)であったが、時代が進んで農耕で食料を手にする時代になると家畜化された動物は益獣、農耕に寄与しない動物は害獣として駆除の対象になったと思っている。
 更に時代が進んだ現代では、全ての生物は保護すべきで、人は動物の命を奪う権利は無いという基本的鳥獣権に近い主張が定着しつつあるが、ヒトの生存と文化を守るためには、鳥獣を一定数(山林等の自然環境下で採餌し人に害を与えない程度)に駆除しつつ共生することが必要があるように思う。
 現在「OSO18」は子牛喰いで食料を得ているが、頭の良い個体であるので「牛よりも人の方が狩るに容易い」ことを知って、人喰いに変身するのは時間の問題ではないだろうか。


ロシアの動員令に思う

2022年09月23日 | ロシア

 ロシアが「部分的動員」を発動したことが報じられた。

 部分的動員の意味と規模は分からないが、既に予備役の招集は行われていることを考えれば、国家総動員の前段階を意味するものと解釈している。報道も錯綜しており、予備役招集と報じられる一方で、30代中頃に見える男性が軍歴が無いと述べる映像もある。更には、動員反対デモ参加者が拘束施設内で召集令状を受け取ったという報道もあって、動員対象は戦闘力(兵士)確保のほかにも反対勢力の一掃・弾圧などの恣意的な側面もあるように思える。
 動員された兵士が何時ウクライナ戦線に投入されるのかと考えれば、予備役は極めて短期間で、軍務未経験者も平時の教育期間を大幅に短縮されての前線投入になるものと推測している。
 かって読んだ中支従軍者の回想談で、「古参兵は遮蔽物の陰や近傍で倒れていたのに対し、応召間もない新兵は見通しの良い場所で倒れていた」とされており、戦場で生き延びる個人防護に関しても教育や経験によって大きな差が生まれるだろうことを見れば、今回動員されたロシア人の明日は悲観的に思える。
 今回の動員と同時に、民間人の応召拒否、軍人の脱走・命令不服従・投降に対する罰則も大幅に強化されており、ロシア軍の戦意に関してはウクライナが主張する集団投降なども実際に起きているのかもしれない。
 ロシア国内では動員反対デモが散発的に行われ、エストニア・ラトビア国境では出国の車で大渋滞が起き、外国への航空券は売り切れ、ロシア脱出が検索上位にランキングされているとも報じられているので、国民、特に兵役該当層の出国禁止措置も目前であるように思える。

 戦争には大量の兵員が必要であるが、ウクライナが主として正規軍・予備役に自発的義勇兵を加えて戦線を維持しているのに対して、ロシアは強権的な招集に頼らなければならないことが、ウクライナ事変や領土争奪戦の本質を示しているように思う。
 徴兵の制度とノウハウを持たない日本にあっては、有事における兵員の急速所要を如何に措置するのだろうか。
 日本の有事動員数は即応予備自衛官と予備自衛官の8割が応召したとしても約3万人に過ぎないが、幸いにしてG7加盟国では最低ながら「有事には戦う」とした人が国民の10%は存在する。
 国内世論を考えると徴兵や動員のための法整備は不可能に思えるが、義勇兵としての下地を作る教育訓練や装備については平時から準備しておく必要があるように思える。