もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

キャリア官僚の早期離職(転職)に思う

2025年01月16日 | 社会・政治問題
 国家公務員の幹部候補者である総合職の早期転職が急増していると報じられた。
 報道では2014年度に採用された600人のうち23%が10年以内に退職したそうである。転職の理由として挙げられているのは、長時間労働や給与などの待遇に対する不満である。
 このことに対して、人材・頭脳の流出が危惧されるとしているが、公務員の性格・存在が「公奉」であることを思えば、功利一辺倒の離職者を例え引き留め得て栄進させたとしても、かっての前川喜平次官のような存在になることは目に見えるように思える。ここは「腐ったリンゴを早期に淘汰できた」と喜ぶべきであるように思う。
 組織構成員の士気(今様には、モチベーションであろうか)を上げるためには、待遇改善や福利厚生の充実が大きいとされている。短期の功績を昇給や昇任で報いることのできない海軍では「食事と上陸が士気の根源」とされ、海自でもそう主張する人が多かった。しかしながら、自分は「食事と上陸が生み出した士気などは、それが無くなれば簡単に消える。士気の根源は個人の陶冶」と思っている。
 40代の半ば、1年間の図上演習の実務を略1人で任され、自分の能力欠如が主因とは言え年間数日の休日しか取れなかったことがあるが、見返りは講評で僅か1・2行の高評価が書かれたのみであった。
 そんな経験もあって、以後の勤務にあっては部下に「今日の自分に満足か」を指導の標語とした。今日の訓練、機器の整備、・・・などで全力を尽くしたか、もう少し頑張れたのではないかと云う悔いはないか、を風呂に入ってでも良し、一杯飲む前でもいいから思い出せという意味である。
 海軍士官は一日の終わりに「五省」を求められたが、「今日の自分に満足か」の方が難解・高尚な「五省」に勝ると思っている。
 短時日の功績で報いられることの無いキャリア公務員にあっても、今日の業務が自分自身で満足できるものであったかを常々考えるならば、報酬・待遇に釣られて入省時の「公奉」の精神を忘れる自分を恥じるに違いないと思う。
 柄にもない人生訓・部下指導を開陳して、終演。

選択的夫婦別姓年内実現

2025年01月05日 | 社会・政治問題
 選択的夫婦別姓を可能とする民法改正が、年内にも成立する可能性が高いと報じられた。
 この問題に関しては、自民党以外の政党が賛成し、日本の家族制度の根幹を損なうと反対していた自民党も、反対議員の落選によって岩盤保守の高市氏のみが孤塁を守るという状況と報じられている。
 立民の野田代表「国民の7割が賛成している」、公明の斎藤代表「男性・女性共に困っている人が多くいる」、石破総理「殆どの野党と公明党、財界もが導入を支持している」との声が続々と報じられるので、高市氏の主張する「家族制度護持」に賛同する自分も、現実社会の声に押されての改革ならば仕方ないのか不得要領ながらも改革已む無しに挙手しようとしているが、本当に別姓導入は「待ったなし」の状態にあるのだろうかとの疑問は解消できずにいる。毎月発表される報道各社の世論調査では、政治に望む筆頭は概ね景気回復のための経済政策で、以下、福祉政策、教育費助成、安全保障等が続き、最後に別姓推進が顔を出すが、その率は多くても10%を超えることは無いように見ている。また、かねてから問題視されていた国家資格の書き換えも順次改善され、結婚により氏名変更しなければならないのは残すところ2、3件であるらしい。マイナンバー制や健康保険制度も若干の手続きは必要ではあるものの、旧姓の使用が可能、さらに多くの企業でも数十年前から本人が望めば旧姓を継続使用できるようになっており、公明の斎藤代表が云う「困っている男女が大勢いる」状況ではないように思える。
 既に旧姓を使い続けることが多くの場で実質的に定着し、優先的に法制化を期待する人が10%程度しかないことを思えば、下三白・上目遣いで測る石破総理を先頭に、全野党が突撃・臨戦態勢で臨むほどの緊急性は見出せないように思える。自衛隊認知が7割を超え、憲法に緊急条項創設を望む声が30%に達していることにも「民意ではないので時間を掛けて合意を形成」と論憲する一方で、10%程度の法制化意見を焦眉の急と観る。国会議員(代議士)・政治家は、民意測定に用いる度量衡を一定に維持して欲しいものである。

日本学術会議の改革に思う

2024年12月29日 | 社会・政治問題

 漸くに日本学術会議の改組・改編が動き出した。

 学術会議の改組・改編は、2020年に新会員として内閣府に推薦した法律・歴史学者ら6人を菅義偉首相が拒否したことによって、会議運営の不透明さが明るみに出て広く知られることになった。
 本日の産経新聞で唐木英明・東大名誉教授が《会議は設立当初から共産党の影響力が強い。全体的には中道派会員の方が多いが、彼等(共産党シンパ)の声が大きく軍事研究忌避声明もその声の大きさの影響だろう》とコメントされている。そんな会員にとっては、推薦する後任者を政府が無条件に任命するこれまでの方式は願ってもないことで、浮上した改組案にも有識者の審査は入るものの後任者推薦方式は温存されていることを観ると、彼等の声の大きさと抵抗派の侮りがたい勢力が窺える。とすれば、今回の改組案もイデオロギーを廃したナショナルアカデミーへの脱皮には程遠い物であるように思う。
 現在、最先端技術の開発で日本は大きく取り残されている。その原因の一つが日本学術会議の軍事研究忌避であることは多くの人が認めている。かっては、軍事技術が民需品の進化を牽引することが一般的であったが、軍需・民需の線引きが極めて難しくなった今、民需品開発と信じた研究者ですら、その成果が形を変えて思いも寄らない兵器に取り込まれ結果的に軍事研究に結び付く危険性を感じているだろう。
 同じ紙面で、中国が次世代ステルス戦闘機の初飛行に成功したと報じられている。それには、日本の学者が参加した中国製造25の技術成果が反映されていないだろうか。

 自分はこれまでに、優秀な識見・知見を有しているはずの会議がコロナ蔓延時に何らの提言も成し得ないこと、軍事研究忌避を声明する一方で中国製造25に肩入れする姿勢などから、日本学術会議不要を唱えていたが、科学者の純粋な知見を以て国策に提言する仕組みは近代国家としては必要であるらしいので、不要論は捨てることにした。
 突けば必ずに蛇が出てくる中国発のコロナウィルス、中国共産党肝いりの中国製造25施策。日本学術会議会員の好悪を如実に物語る素材であったように思えるが、新会議はどのような材料をどう料理して我々の前に出してくれるのだろうか。


衆院選の自民大敗-2

2024年12月12日 | 社会・政治問題

 昨日は、自民大敗に至る戦略過誤についての私見であったが、本日は選挙戦術についてである。

 古来「戦略の過誤は戦術では補えない」と云われているが、今回の選挙戦では戦術もまた稚拙であったように思う。
 以下は主として、時折に見た政見放送とTVの政治討論からの印象であるが、自民党は、その全ての場において「ひたすらの贖罪」であったように思える。現在の世相を観ると、メディアを含んで全てが「減点主義」であるために、自民党は逆風・減点を少しでも減らそうとの戦術を採ったのかもしれないが、攻撃は最大の防御とされるように、パーティ券という相手の土俵に上がって戦えば、脛に傷持つ自民が負けるのは当然で、戦術的には野党の苦手とする憲法(緊急条項新設)、防衛、財源問題という自分の土俵に相手を引きずり込むという手法もあったように思える。
 良い例が、斎藤元彦氏の兵庫県知事再選である。選挙運動においては、通り一遍の謝罪は有ったであろうが、それ以上にSNSを駆使して実績をアピールする傍らで、パワハラ・おねだり疑惑はメディアの過熱という情報を発信し、拡散し得たことが再選に繋がったとされている。
 自分も誰かさんが云う「劣等民族」であるが、確かにパーティー券のキックバックを政治資金報告書に記載しなかったのは政治家としての愚行であるとは思うものの、いま石破総理以上に防衛オンチの立憲共産党に政権を渡すことは、漸くに緒に就いたばかりのインド・太平洋地域の安定構想が胡散霧消しかねないと思うので、これまで通りに投票した。
 総裁選挙において党員党友票の多くが高市氏に投票したのも同じ思いからであろうと考えるので、保守志向層のみならず無党派層に対しても、丁寧かつ熱意をもって中国・北朝鮮の脅威と自民党政権がこれまでに行った自立・独立の実績と計画を説けば、選挙結果において幾ばくかの変化を勝ち得たのではないだろうか。これも偏に、総裁選の決選投票で党員党友票の多寡が示す「民意」を読み解き戦術として採用できなかったことに起因していると思う。

 文中「現在の世相は減点主義」と書いた。昨今は、如何に成果を挙げた人でも僅かな躓きで全てを棒に振る例を良く目にするようになった。コンプライアンス・ハラスメントに絡めとられた生き方は、文明の深化であるとされれば反論の余地はないが、古き良き時代の挿話を二つ。
 《1981年から95年までフランスの大統領だったミッテラン氏には隠し子(公然)がおり、大統領就任直後に一人の記者が隠し子について質問した。彼は平然と「それがどうかしたか?」と聞き返し、それきりとなった-産経抄から》
《昭和41年に佐藤内閣の運輸相に抜擢された荒舩清十郎氏は、ダイヤ改正時に国鉄に要請して自分の選挙区の深谷駅を急行停車駅に指定させたために世論の批判を受けたが、「急行を止めて何故悪い」
と嘯いたとされる》


蓮舫氏の都知事選敗北

2024年12月10日 | 社会・政治問題

 ブログ休載中に起きた慶事の一つが、蓮舫氏の凋落である。

 蓮舫氏は、小池都政の長期化に加え、折から吹き荒れていた自民党のパーティー券問題から勝算ありとしての、都知事選立候補であったと観ている。
 選挙運動期間中における観測報道は小池氏と蓮舫氏の一騎打ち・伯仲であったが、結果的に蓮舫氏(130万票)は小池氏(290万票)にダブルスコア以上の大敗、更には石丸伸二氏(160万票)の後塵をも拝した。
 自分は、蓮舫氏の敗因は多岐に亘るであろうものの、突出しているのが彼女の「独善的言行が有権者の忌避を誘引した」ことであると思っている。これまで蓮舫氏が国会内でそれなりの地歩を維持してきたのは他党・政敵への容赦ない攻(口)撃・批判の巧みさのみで、国家観や国策に関しての識見・卓見やまして人望の故では無かったと思う。
 立候補表明以降、ネットを中心とした「批判ばかり」の大合唱に、「批判ではなく提案と受け取って欲しい」と火消しを図ったものの、キャッチフレーズに掲げた「小池都政のリセット」の一人歩きは止めようもなかった。「リセット」とはWeb辞書にも《すべてを元に戻すこと。最初からやり直すこと。また、状況を切り替えるために一旦すべてを断ち切ること》とあるように、小池都政の全否定であり批判の極致であるように思う。現在の電子機器の「リセット」には、完全初期状態にではなく指定する時期まで戻すような機能もあるので、善意に解釈しても「リセットさせる特定の時期」を表明する必要があったのではないだろうか。それとても、歴代の猪瀬・石原時代にか、青島時代にかで大きく内容は変わってくる。まさか美濃部時代・後藤新平時代ではないだろうとは思うものの、若者を中心としたIT・スマホ層にとってリセットの語感は強烈に作用したのではないだろうか。
 次いで大きいのは、「100億円規模の都営事業」の見直しであると思う。民主党政権誕生時に行った事業仕分けが一定の評価を挙げたとの認識の下に「二匹めの泥鰌」を狙ったものであろうが、これすらも事業仕分けが全く成果を挙げなかったという客観的分析を受け入れない独善気質と受け取られたのではないだろうか。

 蓮舫氏は、来る参院選に捲土重来・国会に再登場することもあり得るとは思うものの、約1年間、彼女の「独善」・「的外れのプロパガンダ」に接することがないのは、自分にとって精神安定剤以上の効果を持つ慶事であると同時に、氏の再登場がないことを心から願っている。
 「小池氏・蓮舫氏の支持拮抗」と報じたメディアの功罪については日を改めて推論を開陳したいと思っている。