世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)に対する解散命令が話題になって久しいが、休眠状態にある宗教法人への税制優遇措置に関しても問題があるらしい。
宗教法人は、固定資産税や所得税について減免されるが、宗教活動を休止した休眠状態法人に対する税の優遇措置については各自治体で温度差があると報じられた。
報道では、調査(質問)した東京都と20政令都市での対応は、非課税維持・個別判断・課税と対応が分かれており、原因は休眠法人の徴税に対する法の未整備と宗教法人を所管する国と知事の情報が徴税を主管する市町村長に通報されていないことであるらしい。税負担の公平性という観点から早急に改善して欲しいところであるが、自分では宗教法人について調べて幾ばくかのことを知ることができた(といって、何ら役に立つとは思えないが)。
1は、文化庁が「宗教年鑑」を編纂・公表していることである。令和4年版によると、全国の宗教法人は179,558法人で、文科省の所管は469団体(172,337法人)、都道府県知事の所管は7,221法人となっている。報道では、休眠法人は約3,000法人となっていたが、宗教年鑑では具体的な数字は無く、所管する469団体中75団体の宗教活動実態が掴めないとされていた。
2は、文科省に「宗教法人審議会」が設置されていることである。統一教会の解散命令のニュースで見たようにも思うが、今回改めて調べても審議する事項なども不明で、開催記録・議事録も2020年5月を最後に更新されていないところを見ると、毒にも薬にもならないものであるように思えるので、次回の事業仕分けの格好の材料・対象であるかもしれない。
3は、日本の宗教人口が総人口を上回ることである。このことは都市伝説として聞いてはいたが、Wikipediaでは《令和3年度の文化庁「宗教年鑑」で、神道系8,792万人(48.5%)、仏教系8,397万人(46.4%)、キリスト教系192万人(1.1%)、諸教(その他)734万5572人(4.0%)、合計1億8115万人で、日本の総人口(約1億2,600万人)の1.5倍にあたる。一方で国民へのアンケート調査では、「何らかの信仰・信心を持っている」人は2割から3割という結果が出ることが多い。》とされている。地域神社の氏子であるとともに檀寺も持っているのが一般的であることを思えば、当然の結果であると思うが、仏教渡来後に宗教対立を避ける神仏融合の便法を講じ、慶事は神社・仏事は寺院と棲み分けて両立を図った後遺症であって、外国人特に一神教徒からは永遠に理解されない日本の神秘であろう。
「宗教法人」の所轄は原則として都道府県知事にあるが、宗教施設が複数の都道府県に至る場合は文科相となっている。
昭和26年制定の宗教法人法が抜本的に改正されることなく現在も生き続けているのは、戦後に規定された信教の自由保証順守の良き面を持つ一方、宗教に対する行政の関与制限規定に及び腰とならざるを得ない必然の結果でもあるように思える。
宗教法人法では、実態はともかく書面で設立要件(能動的な活動、団体固有の教師保有、公衆的礼拝施設、永続性、団体運営能力)を満たしていれば、申請後30日以内に認可しなければならないと解釈されるので、そもそも宗教家に悪人はいない前提で認可した宗教法人の悪事、尻拭いをさせられる文科相・県知事と矢面に立つ徴税官には同情を禁じ得ない。