ジャニーズ事務所の出直し会見が行なわれた。
4時間以上に及ぶ会見をテレビ各局は挙って生中継したので、自分も”ながら視聴”して「性加害の再発防止と被害者保障に関しては今後、新組織で取り組む」ことは分かったが、会見における一部記者の言動に少なからぬ疑問を持った。
質問者の所属などは聞き取れなかったが、詰問口調での質問は「週刊文春が報じた内容に関して、新社長の所信を問う」ものであった。自社或いは自分の取材した内容に関して問い詰めることは当然であるが、同業他紙の報道内容を追加取材することなく質問する記者の発言は、ジャーナリストとしての適格性や見識に疑問符が付くものではないだろうか。
他紙の記事をファクト検証することなく付和雷同的に報じた結果、世論がミスリードされた苦い歴史を我々は経験している。
その最大の事例は、朝日新聞の「半島出身慰安婦の強制連行」事案である。朝日新聞のフェイクにメディアが大々的に提灯を点けた結果、教科書には記載され、国連の正式レポートに掲載され、韓国の最大論拠となり、河野・村山談話に至って国際的には既に歴史の真実と化してしまった。また、やや小ぶりながら、検証すれば容易に偽物・不正確な資料と断定できる立民小西議員の高市総務相攻撃文書の事例もある。
メディアやジャーナリストと雖も誤報は根絶できないだろうものの、自社或いは他社の報道内容に関して常に「ファクト・チェック」を行うことで誤報局限と訂正報道の自浄作用が働くと思っているが、今回の会見における質問記者の言葉を見る限り、「朝日のような大新聞が報じたから」・「芸能情報に詳しい文春が報じたから」、報道内容は正しく「バスに乗り遅れるな」という付和雷同倫理が垣間見えたように思える。
総理辞任・ロッキード汚職にまで発展した田中角栄氏の金権政治批判に先鞭を付けたのは立花隆氏であるが、各社が立花氏に追随して角栄氏批判に転じるには相当の長時日が必要であった。そこには、宰相批判には社運を賭ける必要があるために各社が入念な上にも入念な裏付け取材を行って、立花理論は正しいと判断したためであろうと思っている。
このように、メディアが協調して報道することによって山が動くことも事実であるが、今回の記者のお手軽発言は残念であり、せめて冒頭に「文春の報道は我社でも正確と確認したが・・・」くらいは付ける見識を示して欲しかった。