もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

李登輝氏を悼む

2020年07月31日 | 中国

 李登輝氏(97歳)の訃報が報じられた。

 李登輝氏は、台湾初の民選総統(1988~2000年)として台湾の民主化を実現するとともに、現在の中台関係の基礎を築いた人物とされている。氏は1923(大正12)年に日本統治下の台湾に生まれたが、一族は古くから台湾に住みついた客家であったために、漢族でありながら戦後に本土を追われて台湾に移住した外省人とは一線を画した人生であったとされている。さらに氏は「岩里政男」という日本名の下に京都帝国大学農学部に入学し、1944年には学徒兵として名古屋の高射砲部隊に陸軍少尉として従軍している。また、反日・抗日の蒋介石一族治世化にあっても、「21歳(1945年)まで日本人だった」「難しいことは日本語で考える」と公言するとともに、生涯流暢な日本語を話し訪日時は日本語を使用していたことでも知られている。本省人でありながら蒋介石の息子である蒋経国の知遇を得て国民党へ入党、蒋経国政権の政務委員、台北市長、台湾省主席等を歴任し、1984年には蒋経国によって副総統候補に指名されている。1988年に蒋経国が死去したため総統を継承2期12年間台湾を率いた。氏の最大の功績は、一方的に国共内戦の終結を宣言して中華民国(国民党・蒋一族)が掲げ続けてきた「反攻大陸」という空疎なスローガンを下ろし、中華人民共和国が中国大陸を有効に支配していることを認めると同時に、台湾・澎湖・金門・馬祖には中華民国という別の国家が存在するという現実路線に転舵したことであると思う。そのため、国民党でありながら中国からは台湾独立の精神的支柱とみなされ第3次台湾危機のような恫喝を受けている。一般的に台湾の政情は、国民党=中国との完全一体化若しくは1国2制度に依る同化志向、民主進歩党=台湾独自路線とされるが、李登輝氏が国民党でありながら現実的な選択をしたことは、共産党独裁国家の危険性を忌避する意識が強かったためと思われるが、父祖の地が台湾であり、外省人のように何が何でも父祖の地中国本土を踏みたいという意識が無かったことも関係しているように思う。

 1971年のアルバニア決議を不満として国連を去った後、世界各国から断交されて孤児となった台湾が今もって永らえているのは、李登輝氏や衣鉢を継いだ国民の功績であろうと思う。習近平中国の世界制覇の野望が明らかとなって、世界には再び中国と距離を保って台湾問題を再評価しようとする空気が感じられる。アメリカは要人の往来を解禁するとともに最新鋭武器の売却を容認し、英仏はアメリカの行う自由の航行作戦に参加しているが、残念ながら日本には台湾擁護に対する特段の動きがない。歴史に"If"は禁物であるが、尖閣諸島の台湾帰属に疑義を表明していた李登輝氏に対する支援等を行っていれば、別の展開になっていた可能性もある。ともあれ、日本人以上に日本人であった李登輝氏に”合掌”。


新MD構想の行方と岩屋毅議員

2020年07月30日 | 与党

 イージスアショア配備断念に伴って、新しいミサイル防衛(MD)構想を模索する自民党検討チームの活動が停滞している。

 停滞の根本は敵基地攻撃能力保持の是非にあると思うが、検討チーム内では岩屋毅前防衛大臣に代表される専守防衛堅持論者の厚い壁が取り沙汰されている。岩屋議員の主張は、従来の矛(米)・盾(日)論を堅持しようとするもので、日本を取り巻く安全保障環境や軍事環境の劇的な変化(悪化)から目を背ける退嬰的なものに映る。現在でさえも、尖閣諸島に対する中国脅威の顕在化、朝鮮半島における軍事バランス崩壊の懸念、北朝鮮の核武装と高度に近代化されたミサイルの実戦配備等を考えれば、常識的には安保条約改定前後の1960年代には日米両国が合意していた矛盾理論は破綻しつつあると考えるべきではないだろうか。それよりも、アメリカが自国第一とするモンロー主義に回帰して南シナ海以北における米軍の軍事力は相対的に低下して矛の打撃力が鈍っていることと極東における軍事バランスを対中経済戦争の交渉材料にしかねないアメリカの変質を等閑視しているのではないだろうか。検討グループで有力とされる新MD構想は、「レーダー・発射機分離配備」「メガフロートにシステムを搭載」「イージス艦の増強」が主なものとされているが、その何れにも具現化には少なくとも5年、常識的には10年以上かかると考えられるので、その間の米軍の動向、とりわけアメリカが日本のために矛を振ってくれるか否は予断を許さないものと思う。以前から言われていることであるが、専守防衛の致命的な点は、武力攻撃を受けて初めて防衛力行使が可能となるために、最初に攻撃を受けた国民は守れないことにある。瀬戸内寂聴氏は9条堅持を持論とされており、そのためには一部の国民が外敵によって殺されるのはしょうがないとの覚悟を述べられているが、大多数の護憲・専守防衛堅持論者に共通するものではないだろう。マイナンバー制導入に際して徴兵制復活のためと反対し現在も議席を保持している議員も存在するが、中国コロナの給付・支援金の支給作業遅れは当該制度の未整備と指摘されることに対して沈黙している。中曽根康弘氏は、政治家は将来の歴史の被告席に座る覚悟を信条としたが、頑なな専守防衛で国民に被害が及んだ時、岩屋氏や野党党首は被告席で裁かれる覚悟で政治活動をされているとは思えない。

 岩屋氏には、IR汚職の1員として中国企業(500ドットコム)から100万円の賄賂を受け取ったという気懸りな面がある。アメリカの変質が明らかな今も、防衛大臣として四囲の緊迫した軍事情勢に接した今も、専守防衛堅守の姿勢を崩さない議員の心底に、利敵行為を良しとするダーティーな焔は無いのだろうか。少なくとも瓜田に沓を履いた議員の動向には注視する必要があるように思える。


TikTokと媚中を学ぶ

2020年07月29日 | 中国

 自民党の「ルール形成戦略議員連盟(以下「議連」、会長:甘利明氏)」が中国発のアプリ使用に制限を加えことを提言した。

 議連の念頭にあるのは、若者を中心に広がっている中国のByteDance社が開発した携帯端末用動画編集アプリTikTokとされ、60秒以内のショートムービィ―の編集や投稿が手軽に行えることから世界中では60億人・日本でも950万人がインストールしているとされている。TikTokに対する安全性の疑念は早くから指摘され、昨年(2019年)末以降にアメリカは公的機関・軍での使用を禁じ、インドは国内での使用を全面的に禁止し、英・豪・加・新西蘭(NZ)でも使用制限が検討されている。各国がTikTokを安全保障上の脅威と捉えているのは、中国企業が政府からの要求に対しては保有する全ての情報を提出することを義務付けられているためであり、アプリのダウンロード時に入力した個人情報は中国政府に開示したと同様であるためとされる。先の台湾総統選挙では中国発とみられる露骨な選挙干渉・選挙妨害が現実に引き起こされていることから、台湾人のメールアドレスや電話番号が中国人民解放軍のサーバー部隊(民間偽装を含む)に把握されスパムメール等に利用されたことは確実視されている。日本でのTikTok運営実態は不明確で、日本ByteDanceなる企業が新宿にあるとされているが、指揮系統や資金の流れについては把握されていない現状でもあるらしい。各国のTikTok規制・排除の動きに対してByteDance社は「中国政府から情報提出が求められたこともないし、例え求められても提出しない」と個人情報保護を表明しているが、アプリのダウンロードとリアルタイムに諸情報が中国政府に渡っていると考えるべきであろうと思う。あるバラエティー番組で、通りすがりの人のアドレス帳を起点に順次辿って行くと5人目で松本人志氏の電話番号が明らかにされるということがあった。自分のPCアドレス帳からでも辿って行けば何人目かでは安倍総理の個人電話番号に辿り着くのも可能であるのだろう。議連の提言に対して日本のIT専門家は、ByteDance社のコメントを信じる、中国政府に渡る個人情報は軽微、表現の自由を損なう、等々総じて規制反対の言が多いようにも見受けられる。

 昨日までの本ブログで、二階俊博氏、今井尚哉氏、中前吾郎氏を親中北派と書いたが、永田町内では「媚中派」と呼ばれているらしい。”媚中”という言葉が一般的かと変換したら、候補の5~6番目にあったので巷間にも言い慣わされた言葉であったのだろうと、不明と政治記事を斜め読みする安易さを恥じるところである。ウィキペディアで”媚中派”は、「2002年頃の造語で、中国に親近感を持つ親中派の政治家、言論人、外交官の中でも、とりわけ過剰なまでの贖罪意識を持ち出し、国防、国益を度外視していると考えられる対中迎合姿勢の激しい人物に対し、軽蔑もしくは抗議の意味で使用されている」と正しく?解説されていた。マイナンバーの銀行口座紐づけには猛反対する傍らで、TikTokを擁護する一団にも媚中派としてカウントされる資格があるのではないだろうか。他人を色眼鏡で区分けするのは品性下劣の極みとは思うが、先の知(痴)れた老人の戯言・繰り言と自省しつつも、使い続けようと思っている。


総理補佐官の今井尚哉氏を知る

2020年07月28日 | 与党

 アメリカのシンクタンクが、今井尚哉総理補佐官が対中融和派のキーマンの一人であるとする報告を国務省に提出したことが報じられた。

 報告は、有力なシンクタンク「戦略国際問題研究所」が国務省の支援を得て2年間に及ぶ調査の末に作成したもので、日本における中国統一戦線工作部の影響力と成果について纏めたものとされている。この中で、日本の対中融和勢力の中心人物として、二階俊博自民党幹事長とともに内閣総理大臣秘書官兼補佐官の存在を挙げている。二階幹事長については習主席の国賓招待の旗振り役として中国擁護の姿勢が鮮明であるとは知っていたが、アメリカが注視する今井補佐官について良く知らなかったので調べてみた。今井氏は1982(昭和57)年通産省入庁、2012年の第2次安倍内閣に安倍総理に乞われて政務担当の総理秘書官に就任、以後一貫して官邸勤務を続け2019年の第4次安倍内閣で政策企画の総括担当補佐官を兼務している。シンクタンクの報告では、今井氏が安倍首相に対して中国の一帯一路構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)に融和的な姿勢を取るよう説得しており、二階幹事長と同等の影響力があると分析している。更に二階派と呼ばれる派閥も実態は「二階・今井派」であるとして、両氏の思想と行動が一体であることをも示唆している。田中角栄氏の政務秘書を23年間務めた早坂茂三氏、橋本・小泉両政権で総理補佐官を務め先日中国ウイルスで死去した岡本行夫氏など、退任後にメディアで活躍した秘書官や補佐官は知っているが、自分のような素人は現役総理補佐官の動向については良く知らない。しかしながら、政界では、ロシアとの共同経済活動や中国の一帯一路やAIIBへの参加に積極的な今井氏は、影響力の大きさから「影の総理」と見る向きもあるともされており、報告作成の趣旨に照らせば二階氏・今井氏に中国統一戦線工作部の影響力が及んでいる懸念が込められているのではないだろうか。

 昨日のブログで、文部科学省の地理歴史科主任教科書調査官である中前吾郎氏の明らかな偏向と、氏が構築したとされる「省庁をクロスドメインする親中北ネットワーク」が霞が関・永田町で無視できない勢力になっていることを懸念したが、今回の調査・分析を見る限りあながち穿った見方ではないように思える。二階派にはIR汚職で起訴された秋元司議員も所属していたことから、中国統一戦線工作部と傀儡企業の注力の方向が、中前氏のネットワークを介した一体・同根であるように感じられる。自分はこれまで立憲民主党などが中国の意をくんでいると書いたが、考えてみれば政策決定に殆ど影響力を持たない野党を支援するよりも、政策を立案・決定する官僚・与党を直接薬籠に入れる方が効果的であり、獅子身中の虫は案外なところに巣くっているのかも知れない。


教科書検定の謎が解ける

2020年07月27日 | 野党

 中学校で来年度に使用される歴史教科書の検定委員の適格性と検定そのものが疑われている。

 疑惑は週刊アサヒ芸能が報じたもので、文部科学省の地理歴史科主任教科書調査官である中前吾郎氏の名前が、韓国で押収された「北朝鮮工作員名簿」に記載されているとするものである。名簿は、金正恩体制批判ビラを飛ばした韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」を強制捜査する過程で押収され、中身は学識者・文化人・実業家などとして一般人に紛れて活動している中北の「アンダーカバー若しくはスリーパー」と呼ばれる「身分を仮装した工作員」のリストとされている。自由北韓運動連合は北朝鮮工作員の動向を探っていたとみられるが、名簿には韓国諜報機関が把握していなかった人物が記載されていたとされている。韓国はCIAに情報を提供して関連情報を求め、日本にはCIA経由で通報・照会されたとされている。中前吾郎氏は、筑波大学を卒業後、同大学助手を経て、韓国・霊山大学の講師に就任した際に韓国内で北朝鮮工作員に「スカウト」されたとされ、その後、日本に戻って都内の大学の講師に就任する傍ら、毛沢東思想を称揚する著作を出版するとともに、かつてはオウム事件などを利用した日本転覆を画策し、現在は沖縄の基地問題などに関わる一方で各省庁に親中北ネットワークを築くなど、活発に活動しているとされている。2019年11月に起きた呪縛史観からの脱却を目指した「新しい歴史教科書をつくる会」が編纂した「新しい歴史教科書(自由社)」が、再申請も認められない一発不合格となったことでも、主任教科書調査官である中前氏が主導的な役割を果たしたとされている。この様に思想的に偏ったとしか言いようのない人物が、どのような選考過程を経て教科書調査官に選任されたのだろうか。毛沢東礼賛の著作や沖縄の反基地闘争に肩入れすることだけでも調査官に相応しい人物とは思えない。改めて文科省の「審議会委員と教科書調査官の役割や選任について」を見ると、「教科書調査官のうち文部科学大臣が指名する者14人を、担当する教科を定めて主任教科書調査官とする」となっていたので、調査・審査の中心に中野氏を指名した文科相の責任は極めて重大と考えざるを得ない。調査官に選任され、更には主任調査官に指名された背後には、中野氏が構築したとされる親中北ネットワークの存在が、霞が関・永田町で無視できない勢力になっていることも考えられる。誰がどんな審査をして選抜したというのかについては、公安関係者は「米韓も関心が高いが、現在進行中の捜査であり回答を控える」とし、中野氏もアサヒ芸能の取材に対して、完全否定ではなく「(取材は)お受けすることができません」と大学を通じて回答したのみとされている。

 もし中野氏の行為が報道されたとおりであっても防諜(利敵諜報)罪や反逆罪が無い日本では、法律で裁かれることもないし公職を含めた職を失うこともなく、社会から道義的責任を指弾されることもない。その他の教科書調査官の地理歴史科委員は、鈴木楠緒子、橋本資久、黒澤良、小宮一夫、鈴木正信、藤本頼人の各氏が任命されており、中野氏以外の現職や信条は確定できなかったが、検定が中野氏の強引な主張の結果であろうとも検定意見には応分の責任があり、中野氏に同調した委員の存在も疑える。折に触れて露わになる高大連携歴史教育研究会や教科書調査官の偏向を見ると、日本の史学会の汚染と中北の浸透は極めて深刻であるように思える。まさか文科相までも汚染されているとは思いたくないが。