美術鑑賞では邪道であろうが、ナポレオン像を並べてみた。
同じフランス人で同じナポレオンを描きながら、早い時期のルイ・ダヴィッド(1748~1825年)・ジャン・グロ(1771~1835年)・フランソワ・ジェラール(1770年~1837年)の描くナポレオンと、約40年後に活躍したポール・ドラローシュ(1797年~1856年)では、大きく印象が違っている。また、ドラローシュと同時期ながらナポレオン失脚後にベルギーに亡命せざるを得なかったドミニク・アングル(1780年~ 1867年)がダヴィッドに近い表現であるのも興味深い。
かって絵画は信仰心涵養や為政者の事績広報の手段であり、画家は受動的に世相を映す写真家であるよりも積極的に世論を形成・情勢するジャーナリストと捉えても良いのではないだろうか。それでも画業で食っていくためには自分の主義・主張とは異なる注文にも応じざるを得ない場合も多かったであろうが、この辺は現代日本のジャーナリストにも通じるようにも感じられる。
などと考えながら、前述の画家の描くナポレオン像を紹介することとした。ネット上には更に多くのナポレオンに由来する絵画が存在するが。一覧の最後にドイツ人画家の作品を参考掲示。
ダヴィッド「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」-ウィーン美術史美術館
ダヴィット「書斎のナポレオン」-米・ナショナルギャラリー
ジェラ-ル「戴冠式正装のナポレオン」-不明
ジャン・グロ「アルコレ橋のナポレオン」-エルミタージュ美術館
ジャン・グロ「マドリードの降伏を受け入れるナポレオン」-フランス歴史博物館
ジャン・グロ「皇帝ボナパルト」-不明
ドラローシュ「アルプスを越えるボナパルト」-不明
ドラローシュ「フォンテーヌブローのナポレオン」-不明
アングル「玉座のナポレオン」-フランス軍事博物館
アングル「ナポレオンの肖像」-クルティウス美術館
アドルフ・ノルテン(独)-ナポレオンのモスクワからの退却-不明