もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

スザンナと長老たち

2023年03月27日 | 美術

 昨日のブログで、ガーシー容疑者を応援したであろうSNS世代を念頭に置いて尤もらしく書いたことを後悔している。

 自分の現在を思いつつ昨今の世情を観ると、連日のように高齢者の不祥事が報じられる。曰く、ブレーキとアクセルの踏み間違い・近隣トラブル・老々夫婦間トラブル・・・と、いずれもが悲惨な結末であることが多い。
 本来、経験を積んだ高齢者は、世の手本とまではなれなくても、社会に迷惑を掛けない存在であるべきであろうが、背中に苔が生えても中々に枯淡の境地には辿り付けないのが実状である。
 そんな後悔の念にさいなまれながらPCの私設美術館を眺めていると、若い半裸の女性を好色の眼で覗き見する老人が描かれているカニャッチの「スザンナと長老たち」という絵に目が留まった。”スザンナって誰”とWikipediaで調べてみると、
 《ヘブライ人の美しき人妻スザンナが、人払いをして庭で水浴をしていると、性欲を持て余した2人の好色な長老が覗き見した。彼女が家へ戻ろうとした時、長老たちは彼女の前に立ちはだかり、「我々と関係しなければ、お前が庭で青年と密会していたと告発する」と脅迫した。スザンナが拒絶したために脅迫通り逮捕され死罪に処されそうになったが、青年ダニエルの粘り強い調査と推理で、長老たちの嘘が暴かれて長老は処刑され、美徳が勝利を収めた。》というものであるらしい。
 煩悩を捨てきれないのは男性のみに限らず女性も同様であるらしく、江戸時代中期の旗本・朱子学者新井白石が母親に「女性の煩悩はいつ消えるのか」と問い掛けたら母は無言で火鉢の灰をかき混ぜることで、「死ぬ(灰になる)まで消えることは無い」と答えたとされている。
 本日は、自戒を込めて4人の画家の描く「スザンナと長老たち」である。1枚にはスザンナしか描かれていないがご容赦を。なお、カニャッチはいつか御披露しようと思っていた画家であり、画家のあれこれと残余の絵は後日に。
 なお、バスケット孫の春休み襲来のために、10日ほどブログをお休み致します。


カニャッチ(エルミタージュ美術館蔵)


グエルチーノ(プラド美術館蔵)


ジェンティレスキ-(所蔵先不明)


サンテール「水浴のスザンナ」(ルーヴル美術館蔵)

 


民意と民度

2023年03月26日 | 歴史

 フランスの年金支給年齢引き上げに対するデモが長期化・尖鋭化している。

 リタイア大国とされるフランスでは、62歳からの年金受給を前提に60歳でリタイアするのが一般的で、もはや「文化」と呼ばれるほどに定着していたが、少子・高齢化等によって年金制度の将来は決して明るくないとされていた。この不安解消のためにマクロン大統領は支給開始年齢を2030年までに64歳まで段階的に引き上げる法案を成立させたが、既得権の侵害との反対デモはますます尖鋭化している。
 先進各国の実情を見る限り、フランスが目指す64歳支給開始は当然若しくは已むを得ないように思えるが、フランス革命に象徴される自由フランス人にとっては「62歳支給は先人が勝ち取った譲れない成果」と捉えて我慢ならないものであるらしい。デモには「国民投票で決すべき」との主張もあるらしいが、そうなれば受給年齢62歳据え置きが圧倒的に勝利することは間違いないだろう。
 国民投票で僅差ながら示された離脱賛成結果を民意としてEU離脱を選択したイギリスは、永い経済低迷と単純労働者の不足に喘いでいる。
 国民投票で離脱に投票した人々のその後が報じられたが、半数以上が「自分の選択は誤りであった」と答え、地域に依っては8割近くにも及ぶとされている。勿論、国民投票は秘密投票であるために、正確なデータは望むべくもないが、紹介された「思い出したくもない。聞かないでくれ」が正直なところであるように思える。振り返れば、EU残留を目指すキャメロン首相が国民投票に打って出たのは、事前の予測では残留賛成が圧倒的多数を制すると観られていたために、燻ぶり続ける問題を民意の名の下に一挙に決着しようと企図したことに端を発している。しかしながら一転して離脱が多数を占めたのは、離脱派のリーダーが流した「EU拠出金が無くなれば、国民の医療費が無料となる」という嘘の主張であったとされている。件のリーダーは国民投票後にあっさりと主張は嘘であったと告白し、表舞台から姿を隠してしまった。
 マクロン大統領が、デモの実情を知りながらも強行採決で支給開始年齢を引き上げたのは、国の重要な方針を究極のポピュリズム政治である国民投票(直接民主政治)に委ねることが危険であることを現在進行形で示している英国の失敗例に学んだためと思える。

 国の将来のための改革には当然に今を生きる国民の痛みが要求される。それに対して、賢人の指導による「米百俵」で凌ぐか、ポピュリズムで「ハンニバルを追ったカルタゴ」となるのか、政治家の選択責任は極めて重い様に思えるが、国民にも同等の責任が求められるように思う。
 あのガーシー容疑者を選んだ28万人は、彼に日本の将来を託せると判断したのだろうか、それとも単に「いいネ!!」クリックした結果であろうか。いずれにしても、先日の「嘘泣き動画」で目が覚めたであろうし、目が覚めて欲しいものである。


必勝しゃもじに思う

2023年03月25日 | 野党

 岸田総理が、ウクライナからの帰朝7時間後に参院予算員会に出席された。

 今回のウクライナ訪問は、安全確保のために国会の事前承認という慣例に従わない行動であったので、当然のことながら質問の中心は、ウクライナの現状・支援の要否・閣僚の海外訪問慣例の見直しなどであると思って注視したが、案に相違して、既に不確かであることが明らかとなっている小西文書、それも争点たるべき放送法運用の如何ではなく高市大臣の更迭であった。加えて、総理がジェレンスキー大統領に贈った”必勝しゃもじ”が取り上げられたのには驚かされた。
 ”必勝しゃもじ”を取り上げたのは、立憲民主党の石垣のり子議員であるが、G7首脳のウクライナ訪問に際しては全ての国が直接の軍事支援をプレゼントしているので、その流れから、更には提案型政党を標榜する立憲民主党であれば「プレゼントは”しゃもじ”ではなく”武器・弾薬”とせよ」と迫るかと思いきや「選挙やスポーツ競技ならいざ知らず戦争状態に必勝という言葉は相応しくない」という寒々しい論旨であった。
 自分は、”必勝”は過去の出征兵士に贈られた寄せ書きなどにも多く使われたように、元来は戦場に赴く兵士を鼓舞したり銃後の民の継戦意欲を涵養するために使用されたものが、次第にいろいろな勝負事に拡大使用されるようになったと思っているので、”必勝”は戦時にこそ相応しい言葉ではないだろうか。
 それとも、石垣議員にとっては必勝エールの送り先がウクライナであることが問題で、プーチンであれば諸手を挙げて賛成するのであろうか(笑)。
 もともと、”しゃもじ”に必勝が書かれたのは、「飯(召し)取る」のダジャレ・親父ギャグの類で米食文化の日本でしか通用しないものであるので、ゼレンスキー大統領にとっては、ODAとともに激励の応援メッセージ程度に受け取られたであろうことを思えば、長旅の疲れを癒すこともできない総理に質すほどの質問であろうか。

 石垣のり子議員を知らなかったのでWikipediaで一覧すると、”しゃもじ”質問も成る程と思える人のようで、反日のためなら何でも許せるどこぞの国で根拠もなく旭日旗を戦犯旗と読み替える人々と似通った心情をお持ちかとも思える。
 国政選挙惨敗からの脱却と政権奪取の準備・助走を企図するとした立憲民主党のネクスト・キャビネット(内閣)は何をしているのだろうか。小西洋之議員はネクスト内閣官房副長官であるので、文書騒動はその意に沿っての活動でもあるのだろうか。
 石垣・小西両議員の言動を観る限り、立憲民主党の人材不足は深刻であるように思えるが、如何に。


首狩り族の攻防

2023年03月23日 | 憲法

 小西文書に基づく高市大臣を巡る攻防は、本意を離れて今や首狩り族の様相を呈してしまい興味を失った。

 「行政文書」とは呼べないメモ・覚書の類で、かつ相当数が作成者不明である文書(資料)が公人を攻撃する材料となるのであろうかという疑問を拭えない。
 日本の歴史学会では、文字資料を第1級資料として尊重し当時の時代背景に基づく推論は一切排除されると聞いているが、今回の応酬を観る限り永田町でも同様であるような気がする。
 総務省職員が放送法の運用や改正に関する検討を命じられたら、基本的な手法に則って考えられる限りのアウトプットを列挙することから始めるだろう。その場合、「何もしない」を最初に・・・最後は「国営放送(NHKではない)1局のみとする」まで多くの選択肢を縦軸に列挙し、それぞれの項目の利害・合憲性・社会に及ぼす影響・・・を横軸にしたマトリックス図を作成するだろう。以後の作業に当っては多くの資料を集めるが、中には根拠が曖昧な聞き書きや伝聞、何らかの意図を隠した働きかけなども混入することは避けられない。その検討結果を以って省内の合議・修正を経たものが、「放送法の運営に関する総務省の総意」として大臣のレクチャーなどに使用され、大臣が同意すれば、それが「総務省・大臣の公式見解」となるものと思う。
 小西文書は、いわば検討過程で収集・作成した雑多な資料に過ぎず、なにより作成者が不明なものが多いことを考えれば、総務省の総意はもとより総務相の公式見解とはとても呼べない物で、ひそかに恣意的・悪意を込めて捏造された「文集」が正鵠であるように思える。

 文集の真贋・真偽はともかく、小西議員が文書を振りかざして追及したのは、「放送法の適用評価を現行の”局単為”から”番組単位”に拡大する懸念」であり、報道の自由を守るという社会正義であったが、いまや高市大臣の首狩りという低次元のお家芸に変質している。
 小西議員の問題提起時には、報道ステーションやサンデーモーニングは紛れもない偏向番組と思っている自分でも、倫理規定を番組単位にまで拡大することは危険で言論統制・弾圧の前兆と捉えていたが、問題がタイムリーなものではなく総務大臣時代の旧聞を今に持ち出したことに加えて文集提供者に関する暗い噂が取り沙汰されるに及んで、攻撃の本意は「高市大臣が進めるセキリュティ・クリアランス潰し」ではなかろうかと推測している。
 セキリュティ・クリアランス如何によっては、出世街道から外される官僚は少なくないだろう。高い秘密情報にアクセスできない人物が管理職に登用されることも無いだろうし、現在の管理職でも職に留まれない人間も出てくるだろう。かって文科省事務次官を事実上更迭された前川喜平氏のような胡乱な人物が権勢を握ることも無いだろうし、小西議員に文集を提供した官僚が管理職に留まれるとは思えないが。


プーチン大統領に逮捕状

2023年03月19日 | 報道

 国際刑事裁判所(ICC)が、プーチン大統領に対する逮捕状を発行した。

 逮捕状容疑はウクライナからの子供連れ去りを始めとする「戦争犯罪」とされている。
 現在ICCに加盟しているのは123か国でロシア、アメリカ、中国、インド、イスラエルなどは加盟していないので逮捕・裁判は現実的には不可能であろうが、国家元首に対する史上3人目の逮捕状発行の意味は大きい様に思うとともに、ウクライナ事変が終結した後もICCの逮捕状は有効であるために、事変後のプーチン外交にも少なからぬ影響が出てくるように思える。
 コロナ禍はリモートでの首脳会談を普通のこととしてしまったので、事変後にあってもプーチン氏がICC加盟国を訪問して対面形式の首脳会談を行う必要性は少なくなったとはいえ、国際舞台でのパフォーマンスを制約されることはロシアにとって少なからぬ痛手となるだろう。
 国家元首に対するICCの逮捕状発行の先例2人は、リビアのカダフィ大佐、スーダンのバシル大統領であるが、いずれも逮捕・裁判はできなかった。
 ICCの逮捕状発行は、ウクライナ事変はプーチン氏の悪行とするのが世界的な評価と示したに等しいと考えるべきであろうが、日本のネット上には《ウクライナ事変はアメリカを始めとする西側世界が原因》とする意見も少なくないことをかねがね不審に思っていたが、
 本日の産経新聞の「新聞に喝」で麗澤大客員教授の飯山陽氏が、朝日新聞2月24日の社説で、《(事変の遠因は)世界がクリミア併合に目をつぶったことや、日本が北方領土返還のために経済協力を続けたことにあり、”冷戦勝利に浮かれた西側の傲慢にロシアが反発したため”》と断じ、紙背に《プーチンに戦争させたのは西側》を隠しつつも《被害者はロシア》とする論調を掲げていることを知って、ウクライナ事変でロシアに一定以上の理解を示す日本のネット諸氏の主張は、単なる朝日新聞の引き写し・誘導であるのかと納得できた。

 朝日新聞の社説を読み替えれば、大東亜戦争の原因は「ABCD包囲網で日本を封じようと欧米諸国の傲慢に日本が反発した」ことに依っており責任は連合国が負うべきとすると同義で、それはそれで東京裁判を無効と考える自分の考えとは同じであるものの、大東亜戦争での祖国日本を断罪する一方でウクライナ事変でのロシア擁護を主張する報道姿勢には些かの疑問を持つところである。