もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

上瀬谷通信施設跡地利用

2023年09月15日 | 国政・行政

 2015年6月30日に全面返還された米海軍上瀬谷通信施設跡地の利用計画が漸くに動き出したことが報じられた。

 上瀬谷通信施設は、当初は米海軍の通信(送受信)施設とされていたが、1960年9月に上瀬谷通信施設に勤務していたNSA(国家安全保障局)職員2人がソ連に亡命して、NSAの指揮下で電波傍受・暗号解読・分析・通信保全などを主任務としていることを明かした。それまでアメリカ政府はNSA自体の存在を認めていなかったが、この亡命を機にNSAの存在が明らかとなったという因縁の施設である。
 その後、冷戦の終結や先進国の軍用通信が衛星中心となったことから、上瀬谷の機能は順次三沢や沖縄に移されて、返還時は無人であったとされている。
 そんなこともあってであろうか、パーティーなどで「所属は横浜BASE」という軍人には、それ以上聞かないのが礼儀であったし彼等もさりげなく話題をそらせたものである。
 上瀬谷基地の面積は2.5㎢(250ha:250町歩)と広大であるが、所有者が国有地 45.2%、市有地9.4%、民有地45.4%と複雑であるために跡地の再開発は中々に進展しなかった。返還後には宅地開発が有力視されたがアクセスや将来所要に難があることから頓挫し、USJを模した映画会社とタイアップするテーマパーク構想には乗ってくる会社が無く、漸くに平成9年度に花博会場として使用されることが決まっていた。
 今回の再開発計画は、花博終了後に三菱地所が主導して「テーマパークを核とした複合施設」を整備し、年間入場者数も当初1,200万人、将来的には1,500万人と予測されているが、大勢のリピーターに支えられるミッキーのような突出したキャラクターがいないこともあって、「サぁ!どうだろう」の危惧は拭えないようにも思える。

 上瀬谷跡地の様な首都圏にも近いために変換地には民間ディベロッパーも触手を動かすが、過疎地域の米軍用地が返還された場合にはそうはいかないように思える。基地交付金を減額される自治体、借地料を得ていた地権者は言うに及ばず、基地雇用者や米軍人相手の商売人まで80年続いた生活設計の大幅修正を余儀なくされだろう。土地にしても、人里離れた演習場などは返還後に荒れ果てて放置されることは間違いないだろう。
 さりとて、有効な対策を提示できないが、戦略・戦術・武器の変化に伴って、米軍から返還される用地は今後も増えるように思える。日本国の土地を取り戻すことは慶事とすべきであろうが、そこには悩ましい問題が連れ子として同伴していることを覚悟しておかなければならない。


二大政党制の終焉か

2023年08月22日 | 国政・行政

 アメリカ大統領選で第3政党が台頭する可能性が取りざたされている。

 某大学が実施した世論調査で、「第3政党候補への投票を考えるか」に対して、47%が「yes」と回答し内訳では無党派層64%、民主党支持者35%、共和党支持者38%に上っているらしい。
 調査した大学の中立性などが不明なため、100%信頼できるものではないと思うが、二大政党の不毛な政争に飽き飽きした民情の一端を示しているのではないだろうか。
 現在、自由主義諸国で単一政党で政権維持しているのはアメリカ・カナダ・韓国くらいで、その他の国ではいくつかの政党が連立して政権を維持している。特に、移民問題に揺れるヨーロッパでは選挙のたびに連立の枠組みが変わっているように思える。
 自分は、議会制民主主義にあっては外交と国防について大きく乖離しない二大政党のうち、選挙で過半数を得た方が政権を担当するという二大政党制があるべき姿と思っていたが、国民の価値観が多様化した現在では二大政党背は消えゆく運命ではと思うようになった。まして日本のように憲法と防衛に関して両極端の政党に依る政権交代は国民生活を混乱させるとともに、諸外国からの信頼を失う原因となるように思い始めた。
 内治・外交に極端な二大政党の韓国では、政権交代の度にゴールポストが動いたり、場合によってはゴールポスト自体が消え失せる卓袱台返しが茶飯事であった。文政権にあっては、朴政権が取得したTHAADを可動させず、GSOMIAすら政争の具として弄んだ。尹錫悦大統領は危殆に瀕した日米韓の協調を修復しようと努めているが、これこそ2大政党制の悪しき好例に思える。
 今、立民が政権の座に就いたら、巡航ミサイルの取得計画やイージス艦の建造計画は多額の違約金を払ってでも「八ッ場ダム」とされる可能性も有り、日米関係は冷え込んで日本は名誉の孤立の道を選ばなければならなくなるだろう。そうなれば、中国は手を差し伸べるどころ力の力の空白を狙って漁夫の利を得ようとするのは間違いのないところであるように思う。

 次回の大統領選でアメリカ国民が、どのように選択するのかは分からないが、日本の将来も自公安定政権は霧散霧消し、全政党が対象のジグソーパズルに依る政権運営が常態化するのかも知れない。
 戦後における革新?政党の政権を並べて眺めてみると、いずれも短命で期待する程の実績を残せていないように思える(民主党政権に依る空白の3年間の功罪は生々しすぎるので割愛)。

片山哲内閣 1947(昭和22)年-1948(昭和23)年 社会党主体の連立-急進的な炭鉱国有化問題で混乱・瓦解
 ※1955(昭和30)年 保守合同で自民党誕生-55年体制確立
細川護熙内閣 1993(平成5)年-1994(平成6)年 新生党主体の連立-消費税の「腰だめ増税発言」で瓦解
 ※55年体制の終焉と話題に
羽田孜内閣 1994(平成6)年 新生党主体の連立
村山富市内閣 1994(平成6)年-1999(平成8)年 社会党主体の連立-自衛隊違憲の党是を捨てた社会党退潮の加速
鳩山由紀夫内閣 2009(平成21)年-2010(平成22)年 民主党主体の連立-??
菅直人内閣 2010(平成22)年-2011(平成23)年 民主党主体の連立-??
野田内閣 2011(平成23)-2012(平成24)年 民主党主体の連立-??


大学の世界ランキングに思う

2023年08月12日 | 国政・行政

 大学の世界ランキングで、東大28位、京大46位、阪大80位、東工大91位とランク付されたことが報じられた。

 ランキングは英国の大学評価機関「QS」が行うもので格付は国際的にも認知されているとされている。評価項目は、教員一人当たりの論文数や外国人留学生数など9項目であるらしいが、政・財・学界が技術立国を標榜している割には、この程度で大丈夫なのだろうかと心配である。さらには、私立のマサチューセッツ工科大学・ハーバード大学・スタンフォード大学が上位にランクアップされているのに対し、日本の私立大学が顔を見せないのも残念に思える。
 国立科学博物館が、「収蔵品の格納棚整備」のためにクラウドファンディングを企画・実行したことも報じられたが、技術立国の基礎ともいうべき国立の博物館で収蔵設備に不足を来すなどあってよいものだろうか。
 二つの事象を並べると、どうも教育に関する国の資源の注力方法に問題があるのではと思える。更には、日本学術会議が固執する「軍事(転用可能を含む)研究拒否」が、教授頭脳の海外流出や留学生の減少などに影響しているのも見逃せないように思えるし、国立科学博物館の窮状には民主党政権が行なった「事業仕分け」が大向こうの喝采を浴びたことも遠因となっているように思える。
 かっては「駅弁大学」であったが現在はコンビニ並みに乱立しているために、少子化の現状では学生集めに苦慮する学校法人も多く、結果として低素質者であっても学校さえ選ばなければ「誰でも大学に入れる」状態に近いともされている。

 自分の様な無学・狭量な人間を作らないためためにも大学における知的教育と人格陶冶の必要性は理解し期待もしているが、今回のランキングや昨今の状況を見ると、教育の改革・改善のためには国費注力の方向性改善と日本学術会議のがん細胞除去は急務であるように思える。
 しかしながら、日大が2年間私学助成金の全額カットを科されながらも改革の気配すら見せないのは授業料収入がある「年商ウン百億円の日銭商売」の強みだろうか、エネルギー輸出で日銭・戦費に事欠かないロシアが西側の経済制裁にもへこたれないことと通じるように思える。


政府広報に思う

2023年06月22日 | 国政・行政

 ここ2,3週間、マイナンバーカードの紐付け作業について連日報道されている。

 報道の多くは、登録時の人為的ミスであるが、マイナンバー制度不要論も依然として根強く残っているように思えるが、ここに来て、マイナンバー制度の拡充はIT後進国の汚名返上のみならず、更なる少子化社会の将来に備えるためには必要不可欠であるとの意見も出始めている。
 その際、一様に「マイナンバー制度のメリットに対する広報が不足している」との意見が付け足されるが、この「為政者が行う広報」とは何だろうか。
 今回のケースでは、岸田総理も通常国会閉会時の会見でメリットを述べているとされるが「サテ?」記憶にない。会見をダイジェスト編集するテレビでは流れないし、会見の全文を掲載する新聞報道でも興味のある防衛と憲法以外は斜め読みしたのであろう。
 総務省・デジタル庁はパンフレット等を作成してい広報に努めているのだろうが、パンフレットは何処に行けば手に入るのか知らないし、通常の街ブラでは目にしたことが無い。
 ためしに、総務省・デジタル庁のHPを開いても、河野大臣の動画を除けば文字ばかりでハナから読む気を失わせるデザインである。
 テレビでCMを流すのも一法であろうが、15~30秒間では伝えられるものは多くないし、お決まりの「続き・詳細はWEBで」に終わるのは目に見えるように思える。

 マイナメリットの浸透には、政府がキャッチ・コピーを案出し電波・活字媒体を総動員して雨嵐と流すことで国民への刷り込みを図るのが最も有効ではと思う。
 キャッチコピーで民心を駆り立て・統一することは洋の東西を問わずに行われており、戦前の日本でも、今にまで語り継がれる「鬼畜米英」「八紘一宇」「重油の一滴は血の一滴」などの秀抜な惹句が国民の団結と戦意高揚に大きく役立ったとされている。「リメンバー・パールハーバー」はアメリカの非戦世論を一挙に覆し、中国の「造反有理」「革命無罪」「百家争鳴」も意味不明ながら自分でも記憶している。また、中国国民党政権が掲げた「抗日有理、愛国無罪」は韓国に受け継がれ現在まで命脈を保っているかのようであるとともに、安倍総理射殺犯人への減刑嘆願書に署名する人々にも受け継がれているようにも思える。
 「たかが惹句・されど惹句」、政府広報に活用して欲しいものである。


”文書”を考える

2023年03月05日 | 国政・行政

 高市大臣VS小西議員のバトルは「文書」に起因している。

 報道によると、小西議員が提示した文書には安倍総理と高市大臣の電話でのやり取りなども含まれているとされる。
 経験則であるが、自衛隊では「文書」とは「発簡番号を付して指揮官の意を正式に伝達する物」と狭義に捉えており、今回報じられたような「下僚が作成した通話記録」等は文書とは看做されない。
 このことは、指揮官の意に反した幕僚や下級指揮官の暴走を防ぐためであり、異様・不審な命令を排除するためのチェック機能として確立したものであろうと思っている。
 勿論、文書とする前には計画・起案者が関係部隊などと調整する必要があって、電話や書簡形式による意見交換などはある。文書起案に際しては、法的な位置づけ、計画の背景などについて、簡略に纏めて原議に記載し保存されるが、調整の詳細などを記した決裁者への説明資料が正式な文書として扱われることも無いし、調整などの逐一が「文書」に記載されることも無い。
それらの経験から小西議員が提示した物を、「文書」と呼ぶことには違和感がある。仮に、「説明資料」として作成された物を文書であるとしても、用済み後は文書管理者の監視下に置かれないために容易に改竄・捏造できるものであると思うので、信憑性に劣るように思える。第一、大勢の陪席者がいる電話会議でもないだろう総理と総務大臣の交話内容が記載されていることには大きな疑念が沸くものである。

 自分の忘備録・雑学の意味合いが大きいが、大東亜戦争劈頭の真珠港奇襲攻撃に関する命令を時系列に並べると、
〇 昭和16年11月5日 大海令第一号
 ・帝国ハ自存自衛ノ為十二月上旬米国、英国及蘭国ニ対シ開戦ヲ予期シ諸般ノ作戦準備ヲ完整スルニ決ス
 ・連合艦隊司令長官ハ所要ノ作戦準備ヲ実施スべシ
〇 昭和16年11月11日 大海令第五号
 ・連合艦隊司令長官ハ作戦実施ニ必要ナル部隊ヲ適時作戦海面ニ向ケ進発セシムべシ
〇 昭和16年12月1日 大海令第九号
 ・帝国ハ十二月上旬ヲ期シ米国、英国及蘭国ニ対シ開戦スルニ決ス
〇 昭和16年12月2日 大海令第十二号
 ・連合艦隊司令長官ハ十二月八日午前零時以後大海令第九号ニ依リ武力ヲ発動スべシ
※ 昭和16年12月2日 GF(連合艦隊)電令作第十号
  「ニイタカヤマノボレ1208」
 となるが、電報と云え余分なことは一切書かれていないことが分かる。
 長文の電文も短時間で送信できるよう通信技術が進歩した今では、電報であっても作戦の背景を記述するケースも考えられるが、起案者・決済者の常識の範囲内であろうと考える。