もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

防衛装備について

2023年07月31日 | 防衛

 産経新聞の正論欄で、「軍事力の必要性を認める勇気を」と題する主張を読んだ。

 論者は神谷万丈防大教授で、論旨は防衛装備移転3原則見直しの加速を求めるものであるが、《・・・平和と軍事を180度正反対の概念と捉えるのは間違っている。軍事力は平和を破壊する道具ともなり得るが、それを必要に応じて使わなければ平和を守ることができないのが現実だ」と云う点に集約されていると理解した。閑話休題。
 現在、抑止力(基地攻撃能力)の拡充整備に関して反対する人が少なくない。反対の意見を読むと、「反撃力保有は先制攻撃に繋がる」という意見が少なくないが、そこには神谷教授が指摘する「平和と軍事の概念」が大きく作用しているかのようである。さらに日本において軍事・防衛を語る上で見逃せないのは、有識者を始めとする世相が、人間不信とりわけ政治家と軍人(自衛官)を信じないとの意識を底流としているようで、そこから「軍事力を持てば使いたくなるに違いない」との意見が生まれ、「だったら軍事力を持たせなければ良い」に発展しているように思えてならない。
 一人では生きて行けない現代社会では多くの人と何らかの接点を持つことを余儀なくされるが、多くの場合、無意識のうちに周囲の人々の「善意の倫理観」を信じて生きている。電車に乗る場合には「運転者が正常であること」を信じ、信号のある交差点では赤信号で車が停止してくれることを疑わない。しかしながら話が政治家に及ぶと「国民の不利益になることを画策しているに違いない」となり、自衛官には「強力な武器を持たせれば戦争を始めるに違いない」を思考の出発点にしているかのように感じられる。

 神谷教授は防衛力整備に勇気を持とうと提言されておられるが、日本にあっては勇気を求める以前に「人間・社会を信じる」ことから始めるべきように思える。社会・国家が「構成員個々の”餅は餅屋”状態」で平衡・機能していることを前提にするならば、例え政治家や自衛についても”餅屋”としての存在と主張に対して、もっと謙虚で理性的でなければならないと思う。
 疑惑を誇張し、大臣の首を狩り、果てには安倍氏の命を奪う、・・・という”引き算の原理”は、人間・社会不信の暗い世相しか招かないように思える。
 自分の最も不得手な形而上の問題であり、生兵法の自覚を告白して、終演。


10日の菊なれど

2023年07月30日 | カープ・スポーツ

 我等のカープが首位攻防戦を戦っている。

 カープの快進撃を首位に立った翌日に書こうと満を持していたが、突発的な「今日用(きょうよう)」の出来で翌日に延期したら阪神に苦杯を喫して一日天下に終わってしまった。
 シーズン途中の「たかが首位」とは言え「されど首位」であり、開幕前には最下位もあり得る5位と覚悟していた自分としては、天にも昇る日々を過ごしている。
 投手陣が力を発揮できず・秋山選手以外の打撃陣は機能せず、の状態で最下位も経験した序盤が嘘のような現実を目にすると、そこには団体競技の持つ不思議な力が働いているように思える。
 守りを重視した東京五輪の稲葉ジャパンには5人(曾澤捕手は棄権)も選出されながら、パワー野球を目指したWBCの栗山ジャパンには1名(栗林投手も途中離脱)しか選ばれなかったことに示されるように、カープには守備では球界随一の菊池選手を除いて超一流の選手は見当たらないが、投手を除くほぼ全員が複数のポジションはこなせるものの年俸的には1.3~1.5級の選手である。
 現在、クリーン・アップが定位置であったマクブルーム・西川両選手が戦線離脱中であるが、快進撃が両選手の離脱を契機に始まったことは、今後の日本野球を変えることにも繫がるのではと思っている。これまでは、「打順は固定した方が良い」とされて選手も打順に特化した技術を磨いていたが、固定観念としての打順に特化したエキスパートを育成し固定し得ても、それが当て嵌まるのは初回のみであって、2回以降は先頭打者は1番打者の、次の打者は2番打者の役割を求められることとなるので、4番は大砲である必要は無く、単に4番目を撃つ選手で十分であるように思える。
 これを如実に示したのが、ここ4試合で観られた上本選手の4番起用である。上本選手は長距離砲ではないが得点圏打率と出塁率は高いので、例えば3番秋山選手が出塁した場合には得点圏打率を、無走者の場合には出塁率に期待して次打者での得点を狙う、という目論見で4番に起用されたのではないだろうかと思っている。上本選手の4番起用の成功例は、「3番~5番には中・長距離砲を並べる」という常識から「打順に関係なく中・長距離砲の次にはしぶとい短距離砲を置く」への転換点となるように思える。

 今日現在、阪神タイガースは首位をキープしているが、これは村上・大竹両投手の予想外の活躍と、カープがタイガース当面の敵である巨人・横浜・ヤクルトを圧倒していることに依っており、両投手が調子を落とし、かつ、カープが疲れた場合にはカープとともに沈没する危ういものと思っている。
 関西在住の虎キチ諸氏に言いたい。「阪神優勝のためにはカープの頑張りが不可欠であり、西に足を向けて寝ないように」。関東の虎キチ諸氏は、西に中日・阪神・広島があるので、ご随意に。


Big motor事案に思う

2023年07月29日 | 報道

 Big motor社の不祥事が連日報じられている。

 自分は、単にBig motor社のガバナンスの問題と捉えているが、先日、そこそこ著名なコメンテーターがTVで「監督官庁の責任は重い」と発言されていた。
 経済に暗いので以下の記述は正確ではないかもしれないことを予めお断りして書き進めるが、
 さて中古車販売の監督官庁は?を知らないので調べてみると、「中古車販売」の許認可は古物営業法によって、都道府県の公安委員会であるらしい。そもそも古物営業法は、故買によって犯罪者が盗品を換金することを防ぐとともに、犯罪捜査の利便性を高めるために整備されたものらしく、申請者が暴力団関係者や住所不定者で無ければ誰でも認可されるほどの緩さで、事業者に求められているのも盗品等の疑いがある場合の警察への通報くらいであるように理解した。しかしながら、今回の事案に対して経産省がBig motorへのヒアリングを実施しているところを観れば、認可した公安委員会以外にも、同社の活動を監督する官庁があるのかも知れないが、経産省の監督は杜撰な審査で保険金を垂れ流していた保険会社に向けられたものであろうと推測している。閑話休題。
 本日の主題は、コメンテーターの言動に関してである。
 同人は、過去の官製談合や放送事業と電波法の関係などについて、官の許認可制度を厳しく否定されていた。特に電波法による周波数の割り当ては自由な表現・報道を制限するという趣旨から、全ての電波を市場に委ねるべきであるとしていた。そうなれば、金満中国の国営企業が大手を振って日本の通信・放送事業を我が物にする事態は当然に予想されるだろうことは全く意に介する気配も無く、テレ朝・TBSの偏向番組擁護に終始していた。国の骨幹を担う電波についてすら官の関与を否定する一方で、Big motor社に対する官の監督責任を問うのはいかにも、耳障りの良い論調で身過ぎ良すぎする御都合主義と云わざるを得ないものに思える。

 自由経済社会では、個人の経済活動に対する官の関与を極力小さくすること目標にし、日本でも岩盤規制の撤廃が合言葉としてもてはやされた時期があり、漸くに新規起業や他業種への参入が容易となったと思っている。規制の撤廃は、企業の経済活動は市場原理で行われるとともに企業の存続・淘汰も市場の自浄作用に期待するものであるために、Big motor経営者のように悪意を持った商業活動も市場から排除されない限り淘汰されないという宿命を持っていると思っている。
 平成28年のデータでは、全国の企業等数は約386万社とされているので、この全てに官が目を光らすことは物理的にも不可能で、明るみに出た違法行為の対処・パッチ充てが精一杯ではないだろうか。
 以上のことから、「過去の主張は置いて、何かあれば官の責任を追及する」コメンテーターに些かの不信感を持つ場面であった。


水の起源・海の起源

2023年07月26日 | 科学

 数年前までは「地球の水は落下や衝突した隕石・小天体によってもたらされた」という説が有力視されていたが、現在では否定的な説が有力であるらしい。

 新しい説は、宇宙の塵や小天体が合体して地球が誕生する過程で、もともと小天体が持っていた水が蓄積されたとするものであるが、「はやぶさ2」が持ち帰った試料等の分析をもとに計算すると地球は水深10㎞にも及ぶ”水球”となるらしい。原始地球では、地表が灼熱状態であったために水は水蒸気となって滞留していたが、地表の温度が下がるにつれ雨となって地球に降り注ぎ前記の”水球”状態となった。その後、地殻プレートの動きにつれて水は地球内部(マントルはおろか核にまで)に取り込まれた結果地表が現れて、現在の様な姿になったとされている。
 この説では、水の起源はミステリーではなく陸地が存在することの方がミステリーであるが、この地殻変動によって表層の水が内部に取り込まれる現象は現在も続いているとされているので、地球の未来は、当面は温暖化で水位が上昇するものの、数億年後には地表の水は全て内部に取り込まれて、他の岩石惑星と同じように荒涼とした”砂球”になる運命を背負っているようである。かって火星表面には水があり、現在でも内部には水を持っていることは確実視されているので、火星もこのような経過を辿ったものかもしれないと思う。

 宇宙の始まりは138億年前のビッグバンとされ、最新のジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡は既に136億年前に生まれた銀河を捉えており、ビッグバン直後に誕生した「ファースト・スター」を特定するのも時間の問題とされている。
 ビッグバンで現宇宙が生まれ、46億年前に太陽系が形成され、4億年前に生命が生まれ、200万年前に人類が現れ、・・・と多くの謎が解明されて行くが。
 最後に、どうしても分からないのは、「ビッグ・バンって何が爆発したの」ということである。もしや更なる巨大宇宙があって、その中の恒星の一つが起こした超新星爆発では無いのか。とすれば、現宇宙は更なる巨大宇宙の「ほんの一部」に過ぎないことになるが。

 


あゝモンテンルパの夜は更けて

2023年07月25日 | 芸能

 モンテンルパ収容者の帰還70周年記念の会が行われたことが報じられた。

 小学校低学年の頃、ラジオから流れる渡邊はま子さん(1910(明治43)-1999(平成11)年)の『あゝモンテンルパの夜は更けて』を聴き、子供心にも感じるところがあったのだろうか、今も全体のメロディーと1,,2小節の歌詞はそらんじている。
 報道を読んで、あれから70年も経ったのかと思うと同時に、既に帰還者の全員が亡くなられた今も「モンテンルパの会」が続いているのを奇跡と感じた。
 改めてWikipediaの解説を要約・引用すると
 《1952(昭和27)年1月、渡邊はま子さんは、フィリピンのモンテンルパ市のニュー・ビリビッド刑務所に多数のBC項戦犯訴追者が収監され、既に14人が処刑されたことを知った。渡邊さんは、「戦後7年も経つのに」との思いから、銀座の鳩居堂から香を同刑務所宛に送ったところ、6月になって渡邊さんに楽譜と短い手紙が入った一通の封書が届けられた。それが、「モンテンルパの歌(原題):代田銀太郎作詞、伊藤正康作曲」であった。渡邊さんは、早速歌をビクターレコードに持ち込み、ほとんど修正無しで吹き込み、題名は「あゝモンテンルパの夜は更けて」と改められて同年9月に発売され、20万枚のヒット曲となった。
 同年12月、渡辺さんはニュー・ビリビッド刑務所を慰問されたが、国交が無いフィリピン政府に戦犯慰問の渡航を嘆願し続けて半年後の事だった。
 その後、この歌のヒットや渡邊はま子さんを始めとする努力がフィリピン政府を動かして、1953(昭和28)年7月、フィリピンのキリノ大統領による独立記念日特赦によって、収監者108名全員の日本への帰艦が実現した》となっている。

 驚くべきは、渡邊さんが日本人の収容を知った9か月後に楽曲発売、11か月後に慰問実現、1年半後には恩赦・帰還が実現したというスピードである。
 A項戦犯の東京裁判は、既に1948(昭和23)には結審・判決・執行が完了していたこともあって、当事者や親族以外は戦犯・収容者に対して目が向いていなっかであろうし、メディアも同年(1952(昭和27年)4月のサンフランシスコ講和条約のほうに関心が移っていたものと思える。
 この渡邊さんの活動は、モンテンルパの会以外では語られることも少なくなっているが、スピード感と熱情は広く語り継がれるべきものではないだろうか。
 渡邊さんが歌手活動の功績によって1973(昭和48)年に紫綬褒章を受章された後、1981(昭和56)には勲四等宝冠章を受勲されているのは、この行動によるものであったのではないだろうか。