もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アメリカの銀行破綻とは

2023年03月14日 | アメリカ

 アメリカの2銀行の破綻が報じられた。

 最初に、以下の記述は経済音痴の故に誤解などが多いだろうことを予めお断りさせて頂く。
 10日にカリフォルニア州を拠点とするシリコンバレー銀行が、12日にニューヨーク州のシグネチャー銀行がそれぞれ経営破綻したことで、先進国では珍しい「取付騒ぎ」が起きている。
 2行の経営破綻は、相互に影響しあったいわゆる連鎖倒産ではないものの、連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げが共通の原因とされているようである。
 米財務省とFRBは、2行の経営破綻は限定的なものでリーマンショックの再来ではないとするとともに取り付け騒ぎ沈静化のために「全預金者の完全保護」を表明したが、経営破綻の原因が原因だけに全銀行にも破綻や業績悪化の可能性があると指摘されていることを思えば、他行も安泰とは呼べない事態かとも思える。
 「経済は生き物」と呼ばれるが、経済政策の一環として金利を操作すると専門家でさえ予測できない副作用が出るものであるらしいことは、「抗がん剤治療」が思わぬ副作用を引き起こすことと似ているように思える。
 アメリカは、中国との経済摩擦で低迷する国内経済刺激策として低金利を導入したが、ウクライナ事変という外的要因も加わって急激な物価上昇・悪性インフレを招いた。そのためにインフレ抑制のために段階的に金利を引き上げたが、引上げに際して考えもしなかった銀行の信用不安という新たな事態を招いてしまったと理解している。
 日本でも、穏やかなインフレを目指したアベノミクスでゼロ金利の金融緩和を採用したが、数年かかっても初期の目的は達し得なかった。そのため、識者やメディアでは景気刺激策としての金融緩和は有害で撤廃すべしとする主張を良く耳にしたが、その方々は今回のアメリカ2行の例で示された「金利を操作することで出現した想定外の副作用」をどのように観ているのだろうか。

 今年はかっての「春闘」を思い出されるような労使の攻防が再現され、長年に渡って一時金や賞与で肩代わりされ続けた賃上げについても「ベースアップ」が相次いでいる。
 この様変わりは、ウクライナ事変によってもたらされたものであることは間違いなく、更には防衛装備増強にまで及んでいることを思えば、ロシアの横暴が引き起こしたウクライナ事変は日本にとって「令和の黒船」のようにも思える。
 預貯金の利息が1%であっても0.0001%であっても大して違わない貧民の自分ではあるが、米銀行の信用不安が浦賀(今は成田?)に上陸すれば、それは大ごとで、金利を操る黒田総裁イヤ植田総裁には熟慮をお願いしたいものである。


米国の中間選挙に思う

2022年11月04日 | アメリカ

 アメリカの中間選挙が大詰めを迎えている。

 報道を観る限り、民主・共和両党の対決だけではなく、両党に共和党トランプ派を加えた三つ巴の様相を呈して当落を測り得ない様相を呈しているらしい。
 混迷・混乱の原因は、民主党バイデン大統領の指導力不足と民主党左派への警戒感に起因するようで、大統領選の揺り戻しであろうと推測している。特に、グランドデザインを持たないままの移民寛容政策、ウクライナ侵攻を許したことが大きな要因ではないかと感じているが、トランプ氏の強権を嫌ってバイデン氏を選んだものの、バイデン氏の健康不安に加え、大統領職継承順位2位のカマラ副大統領、同3位のペロシ下院議長が揃って急進左派であることから、有権者がアメリカの左傾を懸念している様子が見て取れる。
 また、大統領宣誓式で「ノー・サイド」「分断融和」を訴えたものの、就任後に相次いだ韓国の積弊清算にも似た前政権の全否定は、国民の更なる分断を煽る結果となったようである。
 移民寛容政策は、単に民主党に投票することが期待できるマイノリティ層拡大を目論んでのこととは衆目の一致するところであるが、トランプ以降の不法移民の急増でメキシコとの国境を持つ4州では対応に苦慮しており、白人富裕層の多い地区に不法移民を飛行機で送りつける州知事も現れた。この空気を読んだかバイデン政権も、メキシコへの不法移民強制送還を拡大するとしたが、この決定もメキシコを含む国境4州の混乱に拍車をかけるだけと冷ややかに受け止められている。
 ロシアのウクライナ侵攻を許したことも共和党政権の失点と捉えられているようで、失点回復のためであろうかペロシ下院議長に台湾を訪問させるという演出を見せたが、これに関してもホワイトハウス報道官は、対中曖昧戦略の転換ではないという隔靴掻痒に終始している。
 これらの様相を観ると、有権者の間には強いアメリカを再興しつつあったトランプ氏復活待望論は想像以上に根強いように感じられるが、大統領権限が屹立しているアメリカでは、例え上・下院で共和党が過半数を占めたとしても、大統領への対抗手段は予算案の否決くらいしかできないために、アメリカの左傾を食い止めるには次期大統領選まで待たなければならないように思える。

 一旦預けたものの「空白の3年間」しか残せなかった日本の民主党、一旦期待したものの「市場の混乱」を招いて45日間で首相を見限った英国、ウクライナ人の生命と世界の食料・エネルギーを混乱させる要因となったバイデン氏、一時の熱狂と一点のみの期待感で選ばれた指導者が辿る道筋を示しているように思える。
 おりしも国会では、憲法も軍事も忘れたかの「統一教会一点」の論議に狂奔しているようであるが、経験に学ぶことを知っている賢明な有権者は、おいそれとは立憲民主党に政権を託す愚は侵さないと思っており、ガリレオ風に「それでも北朝鮮のミサイルは頭上を飛び交っている」と嘯く事態にはならないことは確実であると思っている。


イーロン・マスク氏を学ぶ

2022年10月23日 | アメリカ

 イーロン・マスク氏の言動が波紋を広げている。

 氏は、宇宙開発企業スペースXや電気自動車企業テスラ等のCEOで保有資産は3020億ドル(約35兆円)とされており、アメリカン・ドリームを絵に描いたような人物と思っていた。
 ウクライナ事変では、ウクライナの要請に応じる形でスペースXの運営するスターリンクシステムを提供するとともに約2万台のスターリンク端末を寄付してロシアに破壊された官/軍/民の通信インフラの代替機能を果たし、ウクライナの継戦に於いては正面装備供与に劣らない貢献をしていると思っていた。しかしながら、10月14日には米国防総省に「ウクライナでの無償提供は自社のみでは無期限に継続できない。継続する場合は資金提供が必要」との書簡を送ったことが報じられ、何やら冷水を浴びせられた思いがした。当該書簡は翌日には撤回されたとされているが、アメリカのウクライナ直接支援には含まれない解決が図られたのであろうと邪推している。
 一昨日、マスク氏が「台湾を一国二制度の下に中国化する選択肢もある」との発言が報じられた。香港で立証された「中国の横紙破りによる一国二制度の破綻」を忘れたかのように・アメリカの台湾政策を無視するように、中国政府の公式見解そのままの発言をしたことは、氏にとって上海にあるテスラの権益保護以外のことは脳裏に無いようにも思える。

 マスク氏は、多くのアメリカ大企業と同様に民主・共和両党に政治献金しているものの、政治的には中道より「やや右寄り」との評価が一般的であるが、ウクライナ支援や台湾に関する発言を観る限り、右も左もない「金銭至上主義者」と呼ぶべきであるようにも思える。
 彼の国籍がどうなっているのか判らないが、Wikipediaで眺めた彼の生い立ちは、高校までは南アフリカで、大学は母親の出身地であるカナダで過ごした後にアメリカに移住したとされているので、恐らく多重国籍者であろうと思っている。
 カルロス・ゴーン氏の拝金主義が露わになった際、ゴーン氏がポルトガル・レバノン・フランスの多重国籍であることを知ったが、貧乏人の僻みで云えばマスク氏にもゴーン氏と同種の匂いが感じられる。
 かって、祖国を持たない漂流者のユダヤ人が信じる物は銭だけといわれてきたが、多重国籍者が忠誠を尽くす対象は国家以外であるようにも思える。
 云わずもがなの一言「蓮舫議員、如何ですか」


前進党の旗揚げに思う

2022年09月27日 | アメリカ

 アメリカで新政党「前進党」の旗揚げ集会が報じられた。

 アメリカには共和党・民主党以外にも50近い小政党が存在しているが、上下院の議席を見ても上院に2名の無所属議員がいる以外は、全て民主・共和党とされているので、小政党は議席を持っていないようである。
 アメリカの政党は他国の政党と比較して非常に緩やかで、民主・共和党にも党首はおろか綱領も存在しないと理解している。そのため、日本のような議員に対する党議拘束なども存在せず、議員は個人の信条に従って活動するために多数党の提出した法案が否決されるというようなケースも茶飯事である。
 今回の前進党の旗揚げに注目したのは、同党のスローガンが「左でも右でもない。前へ」であると報じられたからである。事実、旗揚げ集会には民主・共和党の重鎮も名を連らねており、2大政党の確執にうんざりした無党派層にとっては「干天の慈雨」的出現かとも考えられる。
 Wikipediaによるアメリカ有権者の政党別登録者数は、7200万人が民主党、5500万人が共和党、4200万人が無所属もしくは小政党とされているが、今回旗揚げした前進党は他の小政党より抜きんでた存在となるのか興味が持たれる。
 自分もこれまでは2大政党が時宜に応じて政権を握ることが民主主義国家にとって望ましいと考えてきたが、その前提は2大政党が国益に沿って行動する・国民に奉仕することでは一致しており、若干の振り幅はあるにせよ外交と国防については、いずれの政党が政権についてもそれが損なわれないことが重要と考えてきた。近年のアメリカを眺めると、カマラ・ハリス副大統領や、ナンシー・ペロシ下院議長に代表される急進左派とトランプ右派の確執は抜き差しならぬ局面に及んだように思える。さらに、ほぼ対極に位置する両陣営の泥仕合は必然的に国民の分断・衝突をますます尖鋭化させているように思える。しかしながら、アメリカの救いは大東亜戦争や9.11テロの例が示すように、アメリカが攻撃された場合には、確執を捨ててアメリカの旗の下に強固に団結するという歴史を持っていることである。

 前進党が掲げた「左でも右でもない。前へ」は、アメリカ社会の回復・改善に説得力を持つものであろうが、このスローガンをアメリカ以上に必要としているのは日本ではないだろうか。
 インド・太平洋戦略で世界的潮流を創出した指導力に対する国葬を、経費・統一教会・モリカケ桜の小市民的次元で矮小化して政局に利用する、小姑的な嫉みと後ろ向きは、世論を「左に」「後に」誘導する試み以外の何もでもないように思える。
 以上のことから、アメリカでの前進党の旗揚げと日本における維新の台頭・急進は同根であるようにも思える。


アメリカの人工中絶違憲判断に思う

2022年06月26日 | アメリカ

 米国連邦最高裁は、1973年の「ロー対ウェード判決」によって50年間に亘って合憲とされていた人工中絶を覆して、違憲とする判断を示した。

 アメリカの人工中絶論争は、人道・人権・人種・宗教の要素が複雑に交差する根深い問題で、特に宗教における相違は国民分断の一要素ともされている。人工中絶の是非については置くとして、違憲・合憲それぞれの判断を下した判事のコメントは他山の石とすべき示唆があるように思った。
 違憲とした判事は「憲法は中絶について何も触れていない。憲法に従い中絶問題は米国民に選ばれた代表に返す時だ」、合憲とした判事(最高裁長官)は「中絶の権利無効化にまで踏みこむ判断は司法制度に重大な動揺を与える」)としている。このことは、司法判断の基準は「憲法(法律)に規定されているか否か」だけで、国民が望むならば、国民(立法)が憲法を変えなければならないという、極めて常識的なものであるように思える。

 立憲民主党の泉代表は、外国人記者クラブでの各党首揃い踏みの場で「安保関連法のうち憲法違反の疑いがある個所の廃止」を訴えたが、自民党の岸田総裁から「どの個所が憲法違反か」と質問されて立往生したとされる。もともと日本国憲法には国防に関しての記載がなく、国是とされている「専守防衛」にしても国際慣習法的な自衛権という概念を後付け借用したものに過ぎないので、憲法規定が無い以上、安全保障関連法に対する合憲・違憲は論拠を持たないものに思える。
 また、泉代表は長野県で開かれた立憲民主党の国政報告会で、支持者の女性から「憲法を改正して自衛隊を明記する必要があるのでは」と問われ、絶句したとも伝えられている。
 以上のことを鳥瞰的に眺めれば、国民は、戦力不保持を謳った憲法堅持ならば自衛隊・安保関連法の廃止を訴えるべきであり、戦力である自衛隊を容認した国土防衛を容認するならば、憲法改正をも主張しなければならない、と思っているように感じられる。
 「戦力不保持憲法を堅持したうえで、戦力による防衛を求める」という破綻した論理は、果たして賢明な有権者の心を捉えるものだろうか。

 日本の最高裁でも、基地訴訟等に関して「自衛隊の存在に関する適否は司法の権限が及ばない」として判断を避けているのは、今回のアメリカ連邦最高裁の判断と軌を一にするものであるように思う。
 国民(代表=国会)が憲法を作り・改正して、司法がその厳格な遵守と執行を監視することが、法治国家の基本であると思うのだが。