もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アメリカの航空事故とDEI

2025年02月01日 | アメリカ
 ワシントン近郊の、レーガン国際空港で着陸態勢の小型旅客機と陸軍ヘリが空中衝突して、67人が犠牲となった。
 事故原因の究明はこれからであるが、トランプ大統領や関係者からは「管制ミス」を指摘する声が聞こえる。特に大統領からオバマ・バイデン大統領が旗振りしたDEI政策の影響が航空機の管制業務の質を低下させてことを匂わせる発言がなされた。
 発言の真実性に関しては何とも言えないが、米経済界やEUの動きを俯瞰すれば単なる政敵叩きと切って捨てられないように思える。
 アメリカでは、バイデン政権末期から証券市場への上場基準にあったDEI目標が廃止され、大企業は相次いでDEIの部署や規模の縮小を表明している。EUでもDEI数値目標を縮小する動きが各地で相次いでいる。
 DEIの概念に含まれる移民と少数者について考えてみた。
 アメリカンドリームに代表される社会の活性化は、移民やマイノリティーのうちの「うつろう人々」の血の滲むような努力で達成されるので、当初の差別は低賃金を厭わない頑張りが自国民の単純労働者の職を奪いかねないいう懸念で起きるが、時代が進めば「うつろわぬ人」が増えて治安悪化や文化破壊の原因となることに忌避感でなされるように思える。その「うつろわぬ人々」を含めてDEIという括りで一括保護することは、「うつろう人」やDEIで保護された者に席を譲らざるを得ない人の競争意欲を奪って、理想とする社会の活性化には寄与しない事例が起きてしまうように思う。
 日本でも外国人定住者が増えているが、中国人によるアパートの事実上の占拠や川口市のクルド人の状況を観る限り、彼等の多くが「うつろわぬ人」であるように思う。EUの調査でも、現住地の制度・文化よりもイスラムに忠実でありたいとする意見は世代を追って増加し、移民4世になると7割にも達するらしい。
 女性の自立や男女平等運動に尽くした平塚らいてうは、法律による定量的な保護を求め、与謝野晶子は女性自身の意識改革を優先すべきとして、目的は同じながらも袂を分かったとされる。
 日本でも、人類愛と云う高邁な理想を掲げてDEIを法的に推進しようとする意見があるが、DEI括りで一括保護すべきか、「うつろわぬ人」をどうするのか、避けて通れない時期にあるように思う。

グリーンランド購入を学ぶ

2025年01月12日 | アメリカ
 トランプ次期大統領が、デンマーク領グリーンランド購入意欲を覗かせた。
 同島の購入については、前のトランプ政権時にもチラッと聞いたことを思い出したが、4年経った今もトランプ氏は購入の意欲を持ち続けているようである。
 調べてみると、アメリカのグリーンランド購入意欲は、今に始まったことではなく、既に1946年にはトルーマン大統領がデンマークに同島の購入を打診して拒否されているらしい。グリーンランドは地勢的にソ連(ロシア)を扼する絶好の位置にあって、1946年当時は東西冷戦に備えたバレンツ海等の制海権確保の目論見からであったろうが、80年を経た現在では、軍事的重要性に加えて経済活動上の北極圏航路の重要性が増し、更には同島の永久凍土にはレア・アースが大量に埋蔵されていることが分かっており、戦略的価値は飛躍的に向上している。
 アメリカが、グリーンランドを購入したいとする背景には、アメリカの大半がフランス、スペイン、メキシコ、ロシアから購入した土地であるという歴史とは無縁ではないように思う。勿論「購入」とは言え、戦争の結果や相手の国力疲弊等の要因もあって、適正な値段であったかどうかは不明であろうが。
 トランプ氏の観測気球に対してデンマーク・EUは、「グリーンランドは売り物では無い」と不快感を示しているが、トランプ構想にも一縷の光明があるようにも感じる。現在、グリーンランドはデンマークから自治領と認められ、住民投票の結果次第で独立する権利をも保有しているらしい。であればQアノン的発想であるが、アメリカはグリーンランドの独立を後押し(画策)し、その上でグリーンランド国(仮称)からアメリカ52番目の州となることを要望させるというシナリオがトランプ氏の机上に置かれているのかもしれない。
 今回のグリーンランド買収構想に触発され、歴史上に恫喝や武力行使を伴わない純粋な形の領土買収があるのか知りたいと思ったものの簡便な資料に辿り着くことはできなかったが、近世アメリカの実情から考えれば、星の数ほどもあるのではないだろうかと思っている。

USスチール買収の行方

2025年01月06日 | アメリカ
 日本製鉄のUSスチール買収計画が頓挫している。
 両社から約1兆4千億円で買収に合意したと発表された際、自分は”USスチールが買えるの?”と思った。はたせるかな、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対声明、 買収計画を審査する対米外国投資委員会は結論を出せずに大統領に判断を丸投げ、バイデン大統領は国防生産法の対象企業として売却不可の判断を示して現在に至っている。
 USスチールは1901年の設立当初はアメリカの鉄鋼生産の3分の2を支配していたが技術革新に失敗して順次シェアを落とし、昨年には24位まで下落しているとされる。
 何故に国内シェア24位の鉄鋼会社の買収ができないのか考えれば、偏に「USスチール」という社名が原因であるように思う。「US」を冠した社名が、国民に“アメリカ製造業の象徴・鉄は国家なり”のシンボルで、最強国アメリカが幾度の戦争に勝利した原動力・牽引力という印象を与えているのではないだろうか。もし社名が「デトロイト製鉄」であったならば、国民感情・対米外国投資委員会も「アッそう」程度で終わるように思える。
 トランプ次期大統領も買収不可の姿勢で、日本製鉄は法廷闘争も已む無しとしているようであるが、日本政府に特段の動きが無いのは気がかりである。もしUSスチールは国防生産法の対象というバイデン大統領の認識が米国民の認識と等しいのであれば、アメリカの戦時生産に僅かでもの貢献、若しくは発言力を得ることができるチャンスであり、政府は座視すべきではないように思う。報道によると、武藤経産大臣は「重大な関心を持っている」と述べているようであるが、ハテ?何に対して関心。何に興味。まさか、自分と同程度の野次馬的関心ではないだろうが、政府お得意の遺憾砲ほどの効果もないコメントであるように思える。せめて「同盟国として、強いアメリカ建設に寄与し、緊急時には応分の協力ができるよう、買収実現を願う」程度の援護はできないものだろうか。
 鉄血宰相と呼ばれるビスマルクが議会の演説で《現下の大問題の解決は、演説や多数決によってではなく鉄(軍事力)と血(犠牲)によってなされる》と呼びかけたが、鉄の意味は次第に文字通りの鉄そのものに変質し、1901年の官営八幡製鉄所の火入れ式では初代首相の伊藤博文が「鉄は国家なり」と社員を鼓舞したとされる。
 ”ラストベルト”の代表格とされて、米財界も持て余している感ある「USスチール」であるが、名前持つ印象からか更なる運命が待ち構えているように思う。

多様性重視風潮に揺り戻し

2024年12月21日 | アメリカ

 ナスダックが上場の基準として設けている多様性に関する基準が無効と判断されことが報じられた。

 2021年にナスダックは米証券取引委員会の承認を得て、上場の基準として取締役に女性やマイノリティーが一定の割合で登用されていることを設けていたが、これが逆差別を招くとして裁判所が無効と判断したものである。
 報道によると、アメリカでは「多様性・公平性・包括性(DEI)」の取り組みが行われており、特に2020年に起きた白人警官による黒人への暴行死が取り組みを加速させたとされている。
 今回の訴因は「人種やジェンダー意識を個人の能力よりも高く評価する傾向」であるとされているので、アメリカ社会全体でも「過ぎたDEI」に対する是正・揺り戻しが起きているようである。また、多くの企業でDEI対処の部署が縮小・廃止されるという事態も起こっているそうで猶更である。
 日本でも雇用機会均等法などによって女性の地位向上が図られて、それなりの成果を上げているようであるが、「能力において女性候補者とほぼ同等か僅かに上回っている男性が」男性と云うだけで昇任や昇給について女性の後塵を拝することは無いのであろうか。
 これまで日本では、主として黒人やヒスパニックなど人種的に使用されていたマイノリティー(少数派)という用語も、近年のジェンダー平等思想の普及につれてLGBTも「マイノリティー」の範疇に加わって来つつあるように感じるので、将来的には健常者と云うだけでLGBT者に後れを取るケースも起きる可能性があるようすら思える。
 かって雇用機会均等法成立のきっかけを作ったウーマン・リブの闘士が、「法に依ってしか守られない平等には何の価値もない」と述べていたことを思い出す。おそらくであるが彼女は、法に依る規制や庇護は、現在の様な軋轢・分断・不平等をひき起こすだろうことを既に予知していたのかも知れない。
 「アメリカの現在は数年後の日本」と云われるが、日本で現在営々・嬉々として取り組んでいるジェンダー平等施策も、数年後にはアメリカ同様に「逆差別の温床」とされるのかも知れない。

 文中に「LGBT」という字句を使用したが、最初に浮かんだ言葉は性同一性障害者であった。この言葉が適当かどうか調べると、実にいろいろな症状・名称・分類があり、精神医学の知識が無い自分では理解できなかったので、分かりやすいLGBT(L:レズビアン(Lesbian)・G:ゲイ(Gay)・B:バイセクシュアル(Bisexual)・T:トランスジェンダー(Transgender)を使用した。更にLGBTも、最近はQ:クエスチョニング(迷っている人)を含めた「LGBTQ+」と変化しているらしいが、自分の頭では処理困難。
  現在、喫煙者も大きく減少しマイノリティーと呼ばれるに十分に相応しいと思うが、何の恩恵・庇護もないままに来春には増税=値上げが決定したらしい。嗚呼!!


アメリカの銀行破綻とは

2023年03月14日 | アメリカ

 アメリカの2銀行の破綻が報じられた。

 最初に、以下の記述は経済音痴の故に誤解などが多いだろうことを予めお断りさせて頂く。
 10日にカリフォルニア州を拠点とするシリコンバレー銀行が、12日にニューヨーク州のシグネチャー銀行がそれぞれ経営破綻したことで、先進国では珍しい「取付騒ぎ」が起きている。
 2行の経営破綻は、相互に影響しあったいわゆる連鎖倒産ではないものの、連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げが共通の原因とされているようである。
 米財務省とFRBは、2行の経営破綻は限定的なものでリーマンショックの再来ではないとするとともに取り付け騒ぎ沈静化のために「全預金者の完全保護」を表明したが、経営破綻の原因が原因だけに全銀行にも破綻や業績悪化の可能性があると指摘されていることを思えば、他行も安泰とは呼べない事態かとも思える。
 「経済は生き物」と呼ばれるが、経済政策の一環として金利を操作すると専門家でさえ予測できない副作用が出るものであるらしいことは、「抗がん剤治療」が思わぬ副作用を引き起こすことと似ているように思える。
 アメリカは、中国との経済摩擦で低迷する国内経済刺激策として低金利を導入したが、ウクライナ事変という外的要因も加わって急激な物価上昇・悪性インフレを招いた。そのためにインフレ抑制のために段階的に金利を引き上げたが、引上げに際して考えもしなかった銀行の信用不安という新たな事態を招いてしまったと理解している。
 日本でも、穏やかなインフレを目指したアベノミクスでゼロ金利の金融緩和を採用したが、数年かかっても初期の目的は達し得なかった。そのため、識者やメディアでは景気刺激策としての金融緩和は有害で撤廃すべしとする主張を良く耳にしたが、その方々は今回のアメリカ2行の例で示された「金利を操作することで出現した想定外の副作用」をどのように観ているのだろうか。

 今年はかっての「春闘」を思い出されるような労使の攻防が再現され、長年に渡って一時金や賞与で肩代わりされ続けた賃上げについても「ベースアップ」が相次いでいる。
 この様変わりは、ウクライナ事変によってもたらされたものであることは間違いなく、更には防衛装備増強にまで及んでいることを思えば、ロシアの横暴が引き起こしたウクライナ事変は日本にとって「令和の黒船」のようにも思える。
 預貯金の利息が1%であっても0.0001%であっても大して違わない貧民の自分ではあるが、米銀行の信用不安が浦賀(今は成田?)に上陸すれば、それは大ごとで、金利を操る黒田総裁イヤ植田総裁には熟慮をお願いしたいものである。