もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

トランプ考

2025年03月06日 | アメリカ
 トランプ大統領の施政方針演説の詳細が報じられた。
 内容は、就任以後の大統領令や各国首脳との会談で明らかにされたものの総集編とされ、サプライズは無かったとされている。
 トランプ大統領の名は、トランプ(Trump)であるが、日本でトランプと云えばカード遊び(トランプ::tramp)が連想される。日本でいうトランプは英語では単にカード(cards)と呼ばれているらしい。
 何故にカードをトランプと呼ぶようになったかと云えば、コントラクト・ブリッジ(以下、ブリッジ)でトランプは「切り札」を意味するが、trampを連呼するその遊びを観た通弁が名称と勘違いしたことに由来すると云うのが通説となっている。
 ブリッジでは、戦う若しくは応援するに足る持ち札を貰った時、切り札を特定せずに戦える若しくは切り札を特定できない時に「ノー・トランプ゚」とコールし、ノー・トランプで戦えば獲得できる点数も多い。
 また、trampには「強く踏みつける」「放浪者」という意味があるそうでもある。
 トランプ大統領のこれまでを観る限り、Trumpよりもtrampと書く方が正しいのではないだろうか。アメリカン・ファーストを達成して「アメリカを世界の切り札とする」を皮切りに、意に従わない相手は「強く踏みつけ」、NATO内で「放浪者となることも意に介さない」、と将にtrampまっしぐらであるが、その反面、切り札を特定できない「ノー・トランプ」状態の可能性も無しとしない。
 しかしながらtrampにも弱点がある。ブリッジでは最強のカード♠Aが切り札の指定によってはカード内最弱の♣2に負ける場合がある。
 関税遊び、ウクライナ和平と傍若無人の感あるトランプ大統領であるが、氏に対するtrampを発見したり既に手中にしている列国指導者もいるかもしれない。どーもプーチン氏はtrampの可能性に気付くか既に手中にしている可能性が窺えるが!果たして。

金のポケベル

2025年02月11日 | アメリカ
 訪米中のネタニエフ首相が、首脳会談に際してトランプ大統領に贈った金のポケベルが物議を醸している。
 金のポケベルは、ガザ紛争勃発直後ハマス支援に参戦したヒズボラ戦闘員間での通信手段として広く用いられていたポケベルにモサドが爆薬を仕掛けて遠隔爆発させ、12人の民間人を含む少なくとも42人が死亡3,000人以上が負傷したことに由来している。
 ガザ紛争は現在6週間の停戦期間中であるが、ハマス側の人質解放は遅々として進まず、現在までに人質13人を解放しただけである。これに応じる形でイスラエルが釈放したのは刑務所などに収容していたパレスチナ人600人とされている。また、15日にも行われると期待されていた人質交換も、ハマス側がイスラエルの停戦義務違反を主張して延期になりそうな状況を観れば、人質を解放しないハマスが人質を”人間の盾”として使用しているのは間違いのないところと思う。
 ポケベルによる民間人の死傷やガザ侵攻から国際刑事機構(ICC)はネタニエフ首相への逮捕状を発行しているが、ICC加盟国ながら処置を不満として拠出分担金の供出を停止しているアメリカを、ネタニエフ氏は大手を振って訪問している。
 そんな中での、金のポケベルはどのような意味を持つのであろうか。
 伝統的なパレスチナ贔屓からの反ユダヤ的イスラエル叩きと、云うことを聴いてくれる可能性がある相手(文明国)には厳しくするという知識人の最も好む粗材であるらしく、テレビの有識者は挙って金のポケベルは国際社会に公然と挑戦するものとする意見が多い様である。
 自分は、ネタニエフ氏が国際社会の思惑などに顧慮することく、如何なる手段を以てもイスラエルを守り抜くということを広く示すために、敢て公にされるであろうプレゼントとして使用したのではないかと思っているので、強い指導者に相応しい演出と観ている。安倍昭恵夫人に道を開いてもらった石破総理の訪米手土産は金色の兜であったとされるが、日本製鉄のステンレス兜を持参する気は無かったであろう。
 トランプ氏は、1期目には米大使館を3教の聖地エルサレムに移転させるとし、今期はガザ地区をアメリカが所有するとし、イスラムの反発を倍加させている。
 ガザ紛争は、どのような決着を迎えるのだろうか。

アメリカの航空事故とDEI

2025年02月01日 | アメリカ
 ワシントン近郊の、レーガン国際空港で着陸態勢の小型旅客機と陸軍ヘリが空中衝突して、67人が犠牲となった。
 事故原因の究明はこれからであるが、トランプ大統領や関係者からは「管制ミス」を指摘する声が聞こえる。特に大統領からオバマ・バイデン大統領が旗振りしたDEI政策の影響が航空機の管制業務の質を低下させてことを匂わせる発言がなされた。
 発言の真実性に関しては何とも言えないが、米経済界やEUの動きを俯瞰すれば単なる政敵叩きと切って捨てられないように思える。
 アメリカでは、バイデン政権末期から証券市場への上場基準にあったDEI目標が廃止され、大企業は相次いでDEIの部署や規模の縮小を表明している。EUでもDEI数値目標を縮小する動きが各地で相次いでいる。
 DEIの概念に含まれる移民と少数者について考えてみた。
 アメリカンドリームに代表される社会の活性化は、移民やマイノリティーのうちの「うつろう人々」の血の滲むような努力で達成されるので、当初の差別は低賃金を厭わない頑張りが自国民の単純労働者の職を奪いかねないいう懸念で起きるが、時代が進めば「うつろわぬ人」が増えて治安悪化や文化破壊の原因となることに忌避感でなされるように思える。その「うつろわぬ人々」を含めてDEIという括りで一括保護することは、「うつろう人」やDEIで保護された者に席を譲らざるを得ない人の競争意欲を奪って、理想とする社会の活性化には寄与しない事例が起きてしまうように思う。
 日本でも外国人定住者が増えているが、中国人によるアパートの事実上の占拠や川口市のクルド人の状況を観る限り、彼等の多くが「うつろわぬ人」であるように思う。EUの調査でも、現住地の制度・文化よりもイスラムに忠実でありたいとする意見は世代を追って増加し、移民4世になると7割にも達するらしい。
 女性の自立や男女平等運動に尽くした平塚らいてうは、法律による定量的な保護を求め、与謝野晶子は女性自身の意識改革を優先すべきとして、目的は同じながらも袂を分かったとされる。
 日本でも、人類愛と云う高邁な理想を掲げてDEIを法的に推進しようとする意見があるが、DEI括りで一括保護すべきか、「うつろわぬ人」をどうするのか、避けて通れない時期にあるように思う。

グリーンランド購入を学ぶ

2025年01月12日 | アメリカ
 トランプ次期大統領が、デンマーク領グリーンランド購入意欲を覗かせた。
 同島の購入については、前のトランプ政権時にもチラッと聞いたことを思い出したが、4年経った今もトランプ氏は購入の意欲を持ち続けているようである。
 調べてみると、アメリカのグリーンランド購入意欲は、今に始まったことではなく、既に1946年にはトルーマン大統領がデンマークに同島の購入を打診して拒否されているらしい。グリーンランドは地勢的にソ連(ロシア)を扼する絶好の位置にあって、1946年当時は東西冷戦に備えたバレンツ海等の制海権確保の目論見からであったろうが、80年を経た現在では、軍事的重要性に加えて経済活動上の北極圏航路の重要性が増し、更には同島の永久凍土にはレア・アースが大量に埋蔵されていることが分かっており、戦略的価値は飛躍的に向上している。
 アメリカが、グリーンランドを購入したいとする背景には、アメリカの大半がフランス、スペイン、メキシコ、ロシアから購入した土地であるという歴史とは無縁ではないように思う。勿論「購入」とは言え、戦争の結果や相手の国力疲弊等の要因もあって、適正な値段であったかどうかは不明であろうが。
 トランプ氏の観測気球に対してデンマーク・EUは、「グリーンランドは売り物では無い」と不快感を示しているが、トランプ構想にも一縷の光明があるようにも感じる。現在、グリーンランドはデンマークから自治領と認められ、住民投票の結果次第で独立する権利をも保有しているらしい。であればQアノン的発想であるが、アメリカはグリーンランドの独立を後押し(画策)し、その上でグリーンランド国(仮称)からアメリカ52番目の州となることを要望させるというシナリオがトランプ氏の机上に置かれているのかもしれない。
 今回のグリーンランド買収構想に触発され、歴史上に恫喝や武力行使を伴わない純粋な形の領土買収があるのか知りたいと思ったものの簡便な資料に辿り着くことはできなかったが、近世アメリカの実情から考えれば、星の数ほどもあるのではないだろうかと思っている。

USスチール買収の行方

2025年01月06日 | アメリカ
 日本製鉄のUSスチール買収計画が頓挫している。
 両社から約1兆4千億円で買収に合意したと発表された際、自分は”USスチールが買えるの?”と思った。はたせるかな、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対声明、 買収計画を審査する対米外国投資委員会は結論を出せずに大統領に判断を丸投げ、バイデン大統領は国防生産法の対象企業として売却不可の判断を示して現在に至っている。
 USスチールは1901年の設立当初はアメリカの鉄鋼生産の3分の2を支配していたが技術革新に失敗して順次シェアを落とし、昨年には24位まで下落しているとされる。
 何故に国内シェア24位の鉄鋼会社の買収ができないのか考えれば、偏に「USスチール」という社名が原因であるように思う。「US」を冠した社名が、国民に“アメリカ製造業の象徴・鉄は国家なり”のシンボルで、最強国アメリカが幾度の戦争に勝利した原動力・牽引力という印象を与えているのではないだろうか。もし社名が「デトロイト製鉄」であったならば、国民感情・対米外国投資委員会も「アッそう」程度で終わるように思える。
 トランプ次期大統領も買収不可の姿勢で、日本製鉄は法廷闘争も已む無しとしているようであるが、日本政府に特段の動きが無いのは気がかりである。もしUSスチールは国防生産法の対象というバイデン大統領の認識が米国民の認識と等しいのであれば、アメリカの戦時生産に僅かでもの貢献、若しくは発言力を得ることができるチャンスであり、政府は座視すべきではないように思う。報道によると、武藤経産大臣は「重大な関心を持っている」と述べているようであるが、ハテ?何に対して関心。何に興味。まさか、自分と同程度の野次馬的関心ではないだろうが、政府お得意の遺憾砲ほどの効果もないコメントであるように思える。せめて「同盟国として、強いアメリカ建設に寄与し、緊急時には応分の協力ができるよう、買収実現を願う」程度の援護はできないものだろうか。
 鉄血宰相と呼ばれるビスマルクが議会の演説で《現下の大問題の解決は、演説や多数決によってではなく鉄(軍事力)と血(犠牲)によってなされる》と呼びかけたが、鉄の意味は次第に文字通りの鉄そのものに変質し、1901年の官営八幡製鉄所の火入れ式では初代首相の伊藤博文が「鉄は国家なり」と社員を鼓舞したとされる。
 ”ラストベルト”の代表格とされて、米財界も持て余している感ある「USスチール」であるが、名前持つ印象からか更なる運命が待ち構えているように思う。