横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」の乗員2名が新コロナウィルスに感染していることが報じられた。
米海軍は直ちに横須賀基地を48時間閉鎖するとしたが、ダイヤモンド・プリンセスと同様に閉鎖空間という艦船の特殊環境を考えれば、感染者が2名に留まることは考えられない。また、サンディエゴを母港とするセオドア・ルーズベルトでも30人の感染者が報告されているため、西太平洋海域防御を主任務とする全空母が行動不能になったとも報じられている。これらの状況から、専門家(?)の間では「空母不在の状態に乗じて、中国が台湾海域等で挑発行動に出る可能性が有る」と危惧していることも報じられているが、ロナルド・レーガンが行動不能と観ることは疑問であると考える。通常でも、乗り遅れた乗員を待つことなく空母が出港するのは日常的であり、自分が見た限りでも乗り遅れた乗員30人ほどが収容のためのヘリを待っていたことがある。乗員5000人のうちの欠勤者30人は艦の運用に影響するほどのものでは無く、おそらく感染者が2・300名になったとしても行動不能とは言えないのではと考える。国防長官も国防総省職員に対し「危機に付け込んでくる可能性が有るが、必要とあれば世界各地での安全保障体制を修正する」と通達して中国を牽制したように、コロナ禍が空母の行動力を制約したり戦闘力発揮を阻害していると観るのは早計と思う。軍事作戦によって得られる国益とそれに伴う軍人の損耗予想を天秤に乗せて行動を決定するのは世界の常識であり、自衛隊員に危険が及ぶ恐れが有るので中東海域でのタンカー護衛は不適切とする野党や一部国民の主張は、国際感覚では理解されない基準である。その基準に照らせばロナルド・レーガンは行動不能と認識されるであろうが、世界基準では両艦ともに強大な戦闘力であり続けると思う。中国をはじめとする独裁国家は無論のこと西側国家でも軍人をおろし金ですりつぶす非情さを持っており、それ故に、その非情さを受容する軍人に対して社会的地位と恩恵を与え、尊敬を持っているものであると考える。
国民の安全確保を最優先し平時における軍人の損耗もまた避けたいアメリカとしては、両空母を横須賀とグアムで長期停泊させることになるだろうが、前段の理由から空母が行動不能、戦闘力喪失の事態とは判断していないと思う。中国としても武漢ウィルスを「米軍の生物兵器」と誤魔化して「中国こそ世界に先立ってウィルスに立ち向かい勝利した正義の国」との情報戦に不利益となる軍事行動は控えるだろうと観ているが、中国を表す当て字は「無理辺に拳骨」とされている行動様式を考えれば空母乗員の感染を空母兵力の空白と捉える危険性もないとは言えない。「火事場泥棒には気を付けよう」がアメリカの本音ではないだろうかと推測するものである。