もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ヴーエを眺める

2023年01月31日 | 美術

 Wikipediaでは『フランスの画家シモン・ヴーエ(1590(天正18)年~1649(慶安2)年)は、イタリアのバロック絵画をフランスに伝えた人物として知られ、父親と弟も画家である。父親から美術を学び、14歳で肖像画家としてイギリスで画業につき、21歳でオスマン帝国へ赴任するフランス大使に同行し37歳までヴェネツィア・ローマなどに滞在してイタリアのバロック絵画を吸収して成功した。その後、ローマでの成功にも拘わらずフランスに帰国し、さまざまな宮殿、邸宅、教会の装飾画を描き、イタリア美術の新しいスタイルをフランスにもたらした』と解説されている。
 ヴーエの絵で好きな点は、イエロー・オーカーというのであろうか、辛子色というのであろうか、いわゆる派手な色ではない茶色系統の着衣が絵全体に温かみを与えていることに尽きると思っている。
 ヴーエの生まれた1590(天正18)年は、本能寺の変・山崎の合戦で天下の雄となった豊臣秀吉が小田原城攻囲で北条氏を降して日本統一を成し遂げた年に当たる。
 最後に罰当たりの戯言を一つ。
 イエスの、荊冠・十字架上・十字架降下は多くの画家によって描かれているが、全体的には荊冠・十字架降下のイエスは筋骨隆々に、十字架上のイエスは求道者に相応しい痩身で描かれることが多いと感じているものの、ブーエの十字架上のイエスはたくましい姿に描かれている。


「悔い改めたマグダラのマリア(所蔵先不明)」


「天の慈善(ルーヴル美術館)」


「ギターを弾く女(メトロポリタン美術館)」


「十字架(所蔵先不明)」


盾形の鏡を知る

2023年01月30日 | 歴史

 日本最大の円墳とされる奈良市の「富雄丸山古墳」で盾形の鏡と蛇行剣が発見されたことを知った。

 富雄丸山古墳は4世紀後半に作られたとされているが、当時は既に前方後円墳が主流となっており、特に大和政権の権力者の墳墓は巨大化している中で、一時代前の円墳であることや発見された鏡と剣が玄室ではなく墳丘の張り出し部に収められていたことなどから、大和政権や大和文化とは一定の距離を置いた有力者の墳墓である可能性が指摘されている。
 盾形の鏡(高さ64㎝、幅31cm)はこれまでに出土したことが無く、剣(長さ230cm)の長大さも他に類を見ないとされており、いずれもが国産であることから、当時の技術水準の高さを示すとともに独自のデザインからは日本人の創造性の高さが窺い知れる。
 出土した鏡と剣は、現時点でも国宝級とされているが、今後の調査によっては新たな発見があるとともに、古代史・古代政権に関する新事実が明らかになることだろうと期待している。

 今回の発見を知って、日本産品のガラパゴス化は今に始まったことではなく、1500年以上も前に始まっていたのかと思った。
 ガラパゴス化の成功例としては、7世紀に輸入された表意文字である漢字を加工して表音のために仮名とカタカナを案出して倭語に適応させることで世界で最も難解な文字を操る文化を作り出したが、このことが世界に先駆けて女性文学者を生み出し、明治維新の西洋文化の吸収・膾炙に大きく貢献したとされていることが挙げられると思う。
 一方、失敗と呼ぶのは失礼かとも思うのだが、かって世界市場を席巻したテレビ等の白物家電が、国内消費者向けに多機能化を競った結果、単純明快な機能で良しとする国外では売れなくなってしまった。また、携帯電話も同様で「ガラパゴス携帯」なる新語を招いてしまったように思える。

 技術であれ思想であれ、移入・輸入したものを国内で深化させて自家薬籠に特化させることは望ましいことであると思うが、国外との関係を断ったガラパゴスにまで発展させてしまうことは危険であるように思う。
 アメリカの、それも一部左傾将校の押し付けた憲法を変えることなく、非戦にまで深化させたことを再考し、世界基準に適合させようとする現在の動きは必然に思える。
 本日の産経新聞「正論」で東京国際大学特命教授の村井友秀氏が、専守防衛を《毛沢東が愚か者の戦略と述べている》と書かれていた。
 専守防衛を国是としたウクライナでの市民の惨状・犠牲を観ると、必然的に領土内が戦場となる専守防衛は世界基準とは呼べないガラパゴス戦略と化しているように思えるが。


日教組の教研集会

2023年01月29日 | 社会・政治問題

 オンラインで開催されている日教組の第72次宇幾研究科全国集会(教研集会)で、リモート教育における懸念が発表された。

 教研集会における発表は、日教組の主張に沿ったもので反論・検証することなく全参加者が共有すべき認識とされており、「発表=日教組の指導」である。
 今回の発表ではコロナ禍のリモート教育で加速された「情報通信技術(ICT)化」について、
・管理・監視社会となり、プライベートが丸裸
・教育結果の集約(ビッグデータ化)で人格が乗っ取られ、子供の未来まで予測される
・人間の経験や感の軽視
・考えない人間を増やす
・5G機器の使用電波が悪影響  と報じられている。
 これを眺めると、共産党の常套手段である過激かつ針小棒大レトリックであるとは言え、全てを「杞憂」・「後ろ向き」・「偏向」とは言えないようにも思う。特に、ビッグデータ化は現在制度設計の段階であるので、これらの懸念を反映させて欲しいように思える。

 今後、IT教育や教育管理におけるIT化範囲拡大は避けて通れないように思える。不慣れなIT教育を担任する教師には同情するところであるが、10年後・20年後の日本の先進技術牽引者の動機づけを行っているとの使命感を以って取り組んで欲しいものである。
 王将戦で、20歳の藤井聡太王将に52歳の羽生善治九段が挑戦している。藤井王将はコンピュータ将棋の申し子とされる一方でAIが予測しない手筋を操ることで知られており、7冠⇒無冠となり羽生時代が終わったとされた羽生九段はAI将棋を学ぶことで復活・捲土重来を期している。
 「ルフィ」に操られて強殺犯人に転落した人、作為された食べログの★が全てと考える人、ネットのフェイク記事を無条件に信じる人、これらの混乱は電脳社会への分岐点にある今は仕方のない一面を持っているようにも思えるが、これらの人は電脳に関する正規教育を受けていないことにも由来するので、正しい電脳教育を受ける現在の小・中学生が社会の中核となれば・・・と期待している。
 今回の教研集会の発表は教育IT化の反面教師と捉えるのが適当であろうと思うが、ITが全能でないことも常に考えておかなければならないと思う。
 以前に紹介したインド人天才青年の「AIは便利なツールであるが、決して地動説は導けない」が改めて心に刺る。


国会論議と万里の長城

2023年01月28日 | 防衛

 代表質問が終わったが、防衛問題に関しては残念ながら低調な応酬であったと感じている。

 政府と野党の議論が噛合わない原因は何だろうと考えて、万里の長城に辿り着いた。
 「万里の長城」構築の理念は北方民族の脅威に対する専守防衛であり、原型は「春秋時代(紀元前700~前400年)」に構築された断続的な防塁とされ、紀元前200年代に秦の始皇帝がそれらを連結したとされているが、これらは既に失われて現存する万里の長城の殆どは、明代に造られたもので長城線は秦代に比べて遥かに南へ後退しているとされている。
 長城に対する歴代王朝の考えも一様ではなく、各王朝の防衛戦略によって長城の重要度・位置・維持整備が大きく異なり、特に北方からの脅威が顕著であった明王朝は長城による防衛を重視して現在残っている強固・長大な長城を整備したとされている。
 明代に造られた万里の長城の総延長は8,851kmであるが、点在する防塁や発掘されたものを含めると総延長は2万1196.18km(国家文物局)に及ぶとされている。

 日本における専守防衛の論を整理すると、共産党を除く各党が領海線を「万里の長城」と捉えているのは間違いのないところと思う。異なるのは自民・維新・公明?・国民?の各党が「長城内を守るためには長城外の司令部や投石機に対する反撃能力を持つことは必要であるが財源については異論」であるのに対して、立民・社民は「長城線を超えて来た石を落とせば良く、例え長城内に被害が生じても外に向けては一本の矢も放ってはならない、ましてや投石機の破壊など論外」で「そもそも、平和憲法の国に武力侵攻を企図する国は無い」との例えが成り立つように思える。
 共産党の反対意見は、日米安保破棄・自衛隊解体の綱領から考えて、「長城は必要ない。中露北が望めば共産・社会主義に飲み込まれても良い」という別次元の主張の延長にあるように思える。

 立民・社民の主張は世界情勢に目を閉じていることと軍事知識の欠如に負うところが大きいように思える。プーチン氏を筆頭とする全体主義指導者の存在、12海里の領海幅を超えるのに1分もかからない近代兵器の能力を、敵の第一撃で我の多くの国民が死亡して軍事・生活インフラの多くが壊滅的被害を受ける近代戦の様相を知れば、未来永劫に亘って平和憲法のお花畑に安住できるとするのは危険であるように思える。
 日本国憲法が説く「不戦」が時をかけて「国家観なき非戦」に変貌しているように思えるが。


韓国の新聞事情を知る

2023年01月27日 | 韓国

 韓国の新聞スキャンダルを知った。

 報道では、ソウル近郊の都市開発を巡る不正取引の首魁が、数十人の新聞記者に最大で9500万円にも及ぶ袖の下を贈って「報道の口封じ」を測ったものとされる。
 ハンギョレ新聞は9500万円を受け取った編集局副局長を解雇するとともに、社代表と編集局長の引責辞任を発表したと報じられているが、その他の新聞社でも大同小異の処分が為されていると思える。
 汚染を報じられた新聞社は、ハンギョレ新聞(左派)のほか、中央日報(保守)、朝鮮日報(保守)、韓国日報(中道)が挙げられているので、報道姿勢の左右に関係なく、ほぼ軒並みであるように思われる。
 韓国全国紙の発行部数として纏まった資料は見つけられなかったが、2016年時点の発行部数は、①朝鮮日報:151万部、②中央日報:98万部、③東亜日報:95万部との記事があり、別の記事ではハンギョレ新聞:20万部とされていた。
 新聞スキャンダルの背景には、先の大統領選で文在寅氏の後継を目指して敗北した「共に民主党」の李在明代表が大きく関わっているらしい。李在明代表は市長時代の背任疑惑・前述の首魁からの収賄容疑に加え、大統領選の資金疑惑が捜査対象とされているとされており、事情聴取も目前であるとされている。李在明代表は大統領選敗北後の国政選挙で議席を得た際にも不逮捕特権を得るためと揶揄されていたが、ここまで事態が進むと氏が韓国の「(国会議員の)金バッジには100の特権」を得ることを目指したというのは的を射ていたのかもしれない。

 ハンギョレ新聞は、軍事政権とメディアの癒着を正すとして1988年に創刊以降、文政権を始めとする親北勢力の牙城であったことは知られているが、今回のスキャンダルを「志操・矜持を悪銭で売り渡したもの」と観るならば、特定勢力との癒着以上に深刻な事態ではないだろうか。
 ハンギョレは「最も大切に守ってきた信頼が一瞬に崩れた」との謝罪文を掲載したとされているが、朝日新聞の女子挺身隊に関する誤報検証・報道姿勢改革・謝罪にも拘わらず、朝日新聞の偏向が是正されなかった経緯を思えば、ハンギョレでも同様の経過を辿るのだろうか。