ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

支援を限定する障害程度区分

2008年04月22日 00時05分50秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/6止 支援を限定する障害程度区分 /和歌山
 ◇「不透明」「信用できない」戸惑う保護者ら
 「一人で歩けますか?」。知的障害の女性利用者(33)についての調査員の質問に、和歌山市の「くろしお作業所」の鈴木栄作施設長(40)は疑問を感じた。「できるできないを聞くだけで、どういう介助が必要なのかを聞く項目がない」

 障害者自立支援法の施行で、福祉サービスの利用に、障害程度区分の認定が必要になった。106の質問項目のうち、体の不自由さなどを問う要介護認定基準が8割近く。このため、知的、精神障害者の場合、障害程度が正しく反映されないケースが生じている。

 女性は中程度の区分3に認定。重度の自閉症で、感情の変化に応じた介助を必要とする。鈴木所長は「あまりに軽い。障害の程度は介護基準で測れない。根拠のない不透明な区分だ」と憤る。不服申し立てにも、複雑な手続きが必要なため、できないままだ。

 認定区分は利用できるサービスを決める指標となり、低く判定された場合は支援も制限される。例えば、ケアホームは区分2以上、重度訪問介護は区分4以上が対象。また、利用者1人当たりの報酬単価を決める基準にもなり、事業所にとっては収入にかかわる。

 認定は調査状況にも左右される。知的障害のある和歌山市の明渡哲人さん(28)は06年10月に区分4と判定されたが、3カ月後の再調査で5になった。2回目は、利用するケアホームの世話人が立ち会い、別の調査員が行った。母美津子さん(53)は「ころころ変わる区分は信用できない」と戸惑う。

 県の10障害者団体は07年10月、個々の障害者の生活ニーズに基づく支給決定の仕組み作りなどを国に求めるよう県に要望。厚生労働省障害福祉課は「より正確に障害特性を判定できるよう、区分の見直しに向けた実態調査の準備を進めている」と説明する。

 金川めぐみ・和歌山大准教授(社会保障法)は「最大の問題は認定の判断で支援が限られること。本人が自由に意思決定できる『自律』こそ障害者の自立であり、逆行している。生活における支援の必要度を反映する認定の見直しが必要だ」と話している。=おわり(この連載は清水有香が担当しました)

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 ■ことば

 ◇障害程度区分
 障害者自立支援法で、サービス利用の際に必要となる認定。障害程度別に6段階に分け、数が多い程重い。認定調査員による106項目の聞き取り調査を基に、コンピューターで1次判定。特記事項や医師の意見書などを考慮して学識経験者らでつくる審査会が2次判定し、市町村が区分を認定する。認定調査員は市町村職員や市町村が委託する相談支援事業者などが担当する。

毎日新聞 2008年4月20日 地方版


5 就労強化と工賃アップ /和歌山

2008年04月21日 00時27分51秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/5 就労強化と工賃アップ /和歌山
 ◇両立困難で事業断念--元作業所長
 午前10時。和歌山市の「くじら共同作業所」に、焼きたてのパンの香りが広がる。聴覚障害のある泰地哲夫さん(53)が毎朝7時に来て、生地作りから成形までこなす。「パンが売れるのはうれしいけど作業は大変。給料もなかなか上がらない」と表情を曇らせる。

 07年4月、障害者自立支援法に基づく新体系のうち、「就労継続支援」などを行う事業所に移行し、パン作りを開始。菓子作りが主だった移行前に比べ、売り上げは月約5万円伸びた。だが、利用者が2倍に増えたため、1人当たりの工賃は変わらない。白藤令所長(59)は「障害の程度によって、仕事の内容や量に差があるのは当たり前。工賃を上げようとすれば、負担が偏る」と言う。

 就労支援は同法の柱の一つ。一般企業への就労率の高い事業所や目標工賃を達成した事業所に対し、報酬を加算するなどして就労促進を図る。県は「障害者就労支援5か年計画」(07~11年)を策定。求職活動の支援や施設職員の指導力向上などに取り組むが、作業所からは「無理な労働で利用者に負担をかけるのが心配」といった声が上がっている。

 別の課題もある。すさみ町の「いなづみ作業所」は07年5月、移行から半年で「就労移行支援」事業を断念。能力の高い3人が就職で退所し、仕事が回らなくなった。利用者減で施設報酬も月約50万円減り、他のサービスを提供する事業所として再スタートした。

 当時、所長だった石神慎太郎さん(36)は「仕事のできるエース的存在を次々と外に出せば、作業所の労働力は落ちる。就労の強化と工賃アップは両立しない。就労に力を入れるほど、自分の首を絞めることになる」と指摘する。

 県障害福祉課は「事業所には、仕事のできる人材を育てる努力が必要。職員の意識改革を図り、支援体制を整えたい」とする。「障害者就業・生活支援センターつれもて」の加藤直人所長(51)は「障害の程度には個人差がある。労働量が限られる利用者にこそ支援が必要」と訴える。

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 ■ことば

 ◇障害者の就労支援事業
 障害者自立支援法施行に伴い、就労支援事業を、就職を目指す「就労移行支援」と、一般企業で働くことが難しい人を対象にした「就労継続支援」に再編。「就労移行支援」は利用期限2年で、作業訓練や職場実習、職場探しを行う。「就労継続支援」は雇用契約を結ぶA型と結ばないB型の2種類あり、働く場を提供しながら訓練する。利用期限はない。

毎日新聞 2008年4月19日 地方版


 日割り化で収入確保に苦慮 /和歌山

2008年04月21日 00時21分31秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/4 日割り化で収入確保に苦慮 /和歌山
 ◇「商売じゃないのに」作業所管理者
 「利用者の顔色をうかがいながら、実績を上げないといけない。福祉は商売じゃないのに」。和歌山市の「いこいの家共同作業所」管理者の上田朋行さん(38)はため息をつく。障害者自立支援法が始まった06年4月から施設報酬(補助金)の算定が月額から日額になったため、収入確保に苦しむ。

 同作業所は07年4月、新体系に移行。定員30人を40人に増やし、土日に仲間が集まりやすいイベントを開くなどして収入増を図る。支援計画の作成や目標達成の評価など事務作業も増えた。07年度の収入は前年度を維持したが、「職員の負担がこれ以上大きくなれば、支援の充実が図れない」と上田さんは言う。

 報酬の日割り化は、施設の運営に深刻な影響を与えた。利用者が1日休めば、その分の施設報酬が減る。また、施設報酬の1割はサービス利用料として利用者負担となるため、来てもらう回数が増えれば、利用者の支払いも増えるという板挟みにも苦しむ。

 岩出市の「きのかわ共同作業所」では、収入が05年度約5600万円から06年度約4700万円に激減した。同年から職員の昇給を凍結し、ボーナスもカット。小畑和江施設長(55)は「新しく人を雇う余裕もない。利用者が単価に見えてくる現実がつらい」と漏らす。

 国は06年12月、事業所の経営基盤の強化のため、08年度までに限り、前年度収入の9割保障を打ち出した。さらに、今月から通所サービス事業の報酬単価を4・6%引き上げ、定員を超す受け入れも可能人数を拡大した。しかし、いずれも時限的で、今後の見通しは立っていない。

 経営難でしわ寄せを受ける福祉の現場。山崎由可里・和歌山大准教授(障害者教育史)は「仕事に見合った給料が保障されず、福祉職をとりまく労働環境は悪化しており、福祉の先細りが懸念される。安定した施設経営ができるよう、根本から法を見直すべきだ」と指摘している。

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 ■ことば

 ◇施設報酬の日割り化
 国や自治体は施設定員に応じた定額の月払いで施設に補助したが、障害者自立支援法施行で、利用日数に応じた日割り計算に変更。利用者1人当たりの報酬単価は、利用するサービス内容や障害程度区分などで決める。事業所は定員以上の利用者を登録できるが、一定の基準を超えると報酬単価が減らされる。

毎日新聞 2008年4月18日 地方版

75歳以上医療制度に67歳障害者「自動加入」で負担増

2008年04月19日 01時01分30秒 | 障害者の自立
75歳以上医療制度に67歳障害者「自動加入」で負担増
2008年04月18日15時10分

 4月に始まった後期高齢者医療制度に加入するかしないかは本人が選択できる重度障害者が、十分な説明を受けないまま自動的に加入させられていた。家族に扶養されていた東京都江東区の男性(67)は、加入によって扶養から外れて保険料を本人負担することになった。

 65~74歳の重度障害者は、これまで、75歳以上と同様に老人保健制度(老健)を適用されていた。今回、老健が廃止され、新制度に加入することになった。ただ、所得によって保険料負担が増える人もいる。被扶養者の場合、これまでは保険料の本人負担は無かったが、新制度加入後は、本人負担となる。

 新制度への加入は、本人が拒否しない限り行政側が自動的に手続きをする。障害者団体は「事前説明が十分でなく、本人の意思に反して新制度に加入させられているケースが多い」と主張している。

 両足にまひがあり、歩くのに装具が必要な東京都江東区の男性は今月中旬、かかりつけの医院で受診した時に初めて新制度に加入していたことを知った。新制度のことは知っていたが、75歳以上の人が対象だと思っていた。

 これまで男性は長男が加入する医療保険で被扶養者扱いだったため、保険料負担は無かった。新制度では、軽減措置で最初の半年間は保険料負担はゼロだが、その後は支払わなければならない。

 収入は自身と妻の年金を合わせて月に約22万円。男性は糖尿病の持病があり、月1回ほど内科で受診する。神経内科や皮膚科にも通っており、医療費は妻と合わせて月約1万5千円。食費や光熱費、移動に必要なタクシー代などを差し引くと、ほとんど手元に残らないという。

 男性は「『どちらを選びますか』という知らせもなく勝手に新しい制度に移すなんてもってのほか。役所は何かあれば窓口に来いというが、障害者にとって役所まで行くのは簡単ではない」と憤る。

 江東区役所は今年に入り、新制度に加入するか意思を確かめる文書を障害者に送付した。ただ、書面には「届ければ加入しなくても良い」「希望しない場合はお早めに区役所に相談および届け出を」などとあるだけで、加入に伴う保険料負担に関する説明はない。脱退すれば被扶養者に戻れるため、男性は脱退する方向で考えたいという。(

揺れる障害者福祉:自立支援法2年/3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山

2008年04月17日 23時54分11秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山
 ◇生き残りに選択肢ない--5人通所副理事長
 5人の知的障害者が通う和歌山市の小規模作業所「ひぃふぅみぃ共同作業所」。06年に長屋の一室で開所し、地域の障害者の交流の場となっていたが、今月、別の地区に引っ越した。従来の約3倍の広さで、家賃は20倍以上。安定した運営を求め、新体系移行を目指す第一歩だった。

 開所当時は利用者3人。公的補助はなく、保護者の寄付などで月5000円の工賃を賄った。利用者5人となった昨年から年約350万円の市の補助を受けるが、運営は厳しい。障害者自立支援法に基づく「地域活動支援センター」になれば、年間600万円程度の補助が見込める。

 定員20人以下の小規模作業所は、地域の重度障害者の受け皿として80年代に全国に広がり、現在、6000カ所近くある。法定外のため、多くは経営が不安定だ。全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると、小規模作業所への公的補助の全国平均(05年)は年間で、都道府県約400万円、国110万円だった。

 しかし同法施行に伴い、国は06年4月、補助を打ち切った。新たに補助を得るには移行が原則だが、5年以上の実績や10人以上の利用者など条件がある。ひぃふぅみぃ共同作業所の尾崎直加副理事長(52)は「新しい場所で、なんとか利用者を増やしたい」と話す。

 条件を満たせず、移行の見通しが立たない施設もある。岩出市の「共同作業所ぷちこすもす」は利用者1人。すべてを自主財源で賄う。井原啓子理事長(54)は「1人でも利用者がいる限り、存在理由がある。資金の無い小さな作業所にこそ補助が必要」と訴える。

 県は07年度から2年間の期限付きで、移行を考える小規模作業所に上限250万円を補助。県障害福祉課は「経営安定のため、補助を活用して早めに移行してほしい」とするが、この補助を受けるにも、実績や定員数などの条件がある。

 尾崎副理事長は言う。「移行して、今までのように仲間の居場所であり続けられるか不安はある。それでも、生き残るために、私たちに選べる選択肢はない」。地域の障害者福祉を支えてきた小規模作業所は、存続の道を模索している。

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 ■ことば

 ◇新体系移行
 障害者自立支援法の施行で、障害種別に33あった従来の施設・事業体系を、各サービスの機能や目的に合わせて「六つの日中活動」に再編。療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターがある。06年度から5年間の経過措置が設けられ、国や自治体から補助金を受けるためには、その間に移行先を決めなければならない。複数の事業選択も可能。

毎日新聞 2008年4月17日 地方版