2006-0921-yms119
どうしてか長いあやめをね出しせず
袂に隠すことも出来ない 悠山人
○紫式部集、詠む。
○返し。せっかく頂いたのに、どうしたのかしら、長い根が袂に包みきれないの。今日も長い泣き音(声ともならない泣き声)の涙を、包み(隠し)きれない、そのわけ(文目=あやめ)も分からないのと、おんなじね。平安も末期になると、急速に浄土信仰(無常観が中心)が勢いを増すのだが、それにしても一方で開明的な紫、他方で無常観も徹底している。平王クには、語釈の各説が詳しい。平王ク歌番号072。
¶あやめ=「菖蒲」「文目」の掛詞。(短歌写真、去年07月24日)。紫式部~新潮版は、「あやめ」の漢字表記はすべて前者だと記憶する。私の場合は便利のため、おおむね前者に「しょうぶ」、後者に「あやめ」を宛てて現代詠とする。
¶わかで=分からないで。終止形は「わく(分く。別く)」。
□紫119:なにごとと あやめはわかで けふもなほ
たもとにあまる ねこそたえせね
□悠119:どうしてか ながいあやめを ねだしせず
たもとにかくす こともできない