香箱の中のゼンマイ切れ修復トライ
前回、ゼンマイを切ってしまったブローバですが、所有している腕時計は手巻きの古いものが多いので、他にも何本かゼンマイ切れのものがあります。プロの時計屋さんに持ち込むと、25,000円以上かかるのではないか・・・。しかも古い時計は部品のゼンマイの在庫がほとんど無いので、結局修理不能と言うことになります。そこで、切れたゼンマイの修復にトライしてみます。
スイスMadeのスモールセコンド、クロノメータービノス(VINOS)10JEWELSです。針はブレゲ―ブルーです。よい時計です。
程度は悪くないのですが、ゼンマイが切れていました。
裏蓋を開けると、中の状態も良好です。テンプもスムースに動きます。ゼンマイを巻く歯車を2枚外し、香箱を押さえている受板も外して、ゼンマイの入っている香箱を取り出します。
切れたゼンマイの双方に、上側と下側それぞれ2か所の切れ目を入れて、これを互い違いに差し込んでつなげる計画です。普通ゼンマイは、切れてしまえば取り替えるしかないのですが、私の場合予備の在庫など無いし、古い時計ではそもそも在庫がほとんど見つかりません。
古い時計のゼンマイは、特に芯の部分がネジの巻き上げで巻き込まれて強く曲げられますので、どうしても金属疲労が起きて、割れ易くなってしまいます。ゼンマイは消耗品でもあるのです。
この、ゼンマイの側面に切れ目を入れて、そこに互い違いに切れてしまって2つになったゼンマイを差し込んで繋げる。このことを考え出すのに半年以上かかりました。思考実験の結論です。あくまでも頭で考えた事なので、実際にやってみて検証することになります。ちょっと、大袈裟ですがwww
ゼンマイに溝を切るのに、当初は極細のヤスリを使うつもりでした。やってみたらゼンマイが硬く、焼き入れしているので当然なのですが、溝が削れません。そこでハンドドリル、マイクログラインダーをホームセンターで買って来て使いました。
付け替えできる、いろいろな形状のダイヤモンドドリルがあります。
細い円盤状のダイヤモンドヤスリで削りました。
ゼンマイの幅は2mm程しかないので、とても細かい作業です。でも何とか削ることができました。
写真はハンドドリルで溝を削った後です。当初は極細のヤスリでトライしてみましたが、全く歯が立ちませんでした。
芯側のゼンマイを差しているのが、極細のヤスリです。これは溝の仕上げに使いました。削った面に傷があると、そこからひび割れが広がって、再び割れてしまいます。
もう一方の香箱側のゼンマイは、
香箱側のゼンマイもハンドドリルで切れ目を2ついれます。
香箱に収まっているゼンマイは引っ張りだすと納める時に面倒なので、外に飛び出さないようダブルクリップで留めて削ります。
ゼンマイを互い違いに差し込んで繋げ、香箱に収納し蓋をして完了!
香箱のゼンマイには、錆止めを兼ねてオイルをさしておきます。
粘度の低いスピンドルオイルですが原液なので、油皿の上で、タミヤの塗料の溶剤で薄めて使いました。
組み上げて完成!
ネジを巻いてみて、大丈夫そうです。しっかりリュウズを巻き上げることができて、テンション(気分ではありません。巻上げの抵抗のことですwww)が上がってきました。
そもそも金属疲労を起こして切れてしまったゼンマイなので、それに溝を切って繋げて、巻き上げたら又切れてしまいそうで。取りあえずは切れることはなかったのですが、巻上げは半分くらいまでとした方が良さそうです。
これで完成!!!・・・と思ったのですが実はこの時計、始め何処の具合が悪いのか分解して調べているときに、ガンギ車の地板側の軸受けを破損してしまいました。組み上げて動かそうとしたときに、思い出しました。なにしろ、この方法を考え出すのに半年かかりましたから。
ガンギ車の軸受け部分に石が入っていて、時計の石は結構軟らかいです。それを壊してしまいました。地板に細い穴が掘られていて、そこに黒い石が埋め込まれていました。今度は、この軸受けの修復を考えなければなりません。
でもこの方法が上手くいったので、在庫の無いゼンマイ切れの時計の修理に目途が立ちました。前回アップした、ブローバの修理に取り掛かれます。 そして腕時計の修理は続くのです・・・
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