地上100mの屋上からみたうわまち病院。津波の心配のないロケーションに救命センターがあることは横須賀市にとって重要です。市内にあるもう一つの救命センターは大規模な津波が来たときには低地から平地のうえ、地下に救命センターがあり、しかもその周辺の交通網が破壊される可能性が高いなかでは、うわまち病院の役割は重要です。久里浜に移動した際にはその機能が失われることになるので、最低限、ヘリポートを設置して、交通網が破壊されたときの対策が重要になります。
地上100mの屋上からみたうわまち病院。津波の心配のないロケーションに救命センターがあることは横須賀市にとって重要です。市内にあるもう一つの救命センターは大規模な津波が来たときには低地から平地のうえ、地下に救命センターがあり、しかもその周辺の交通網が破壊される可能性が高いなかでは、うわまち病院の役割は重要です。久里浜に移動した際にはその機能が失われることになるので、最低限、ヘリポートを設置して、交通網が破壊されたときの対策が重要になります。
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科は2009年より開設され、神奈川県横須賀、三浦地区における成人の心臓血管疾患に対して、外科治療を中心とする診療を行ってまいりました。
5名体制で、24時間緊急症例にも対応しております。また救命救急センターと連携し、ドクターカーで紹介もとの医療機関に患者様のお迎えに伺う体制を整えております。循環器科を中心とする院内の診療科と密接に連携し、患者様の病態に最も適切な治療方針を検討して方針を決定しております。
外来は火曜、金曜の週2日で、月曜、水曜、木曜は手術日としております。
2017年の手術件数は、383件で、スタッフの入れ替えなど体制を一新してからは、開設依頼最も多い件数となっており、前年に比較して100件以上増加しました(図1)。そのうちわけは、心臓胸部大血管手術133例、腹部大動脈瘤37例、末梢動脈手術23例、下肢静脈瘤手術118例となっております(図1)。
静脈瘤手術は血管内レーザー焼灼術を導入してからは日帰り手術が可能となり、横須賀・三浦地区唯一の治療施設として大幅に手術件数が増加しています。透析センター開設に伴い、シャント造設手術も増加しています(図2)。
地域における心臓血管疾患すべてに対応しているため、疾患のバリエーションが多くなっておりますが、特に近年は患者様の高齢化がすすみ、80歳以上の方も増えており、90歳以上の患者様に対しても疾患、病態によっては対応しております。
主な対象疾患として、
A.虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞、心筋梗塞後合併症)
B.心臓弁膜症(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁疾患など)
C.大動脈疾患(胸・腹部大動脈瘤、大動脈解離、大動脈ステントグラフト手術)
D.成人の先天性心疾患
E.末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)
F.静脈疾患(下肢静脈瘤レーザー治療など)
G.透析用シャント造設、経皮的シャント血管形成術
などの手術治療を担当します。
https://www.jadecomhp-uwamachi.jp/patient/shinryolist/cardiova/
感染性心内膜炎は主に大動脈弁や僧帽弁などの心臓内の組織に細菌が付着して繁殖し、弁破壊による逆流などが生じ、心不全を起こす重篤な病気です。臨床で多いのは、大動脈弁閉鎖不全や僧帽弁閉鎖不全、またはその両方です。
また、細菌の塊がはがれて、血流に乗って塞栓症を起こすこともあります。細菌塊が脳に流れると脳梗塞、また末梢の皮膚に流れ着くと、有痛性の結節(オスラー結節)などが見られます。流れ着いた動脈の先で、仮性動脈瘤(脳動脈瘤や脾動脈瘤などの末梢動脈瘤)を形成し破裂することもあります。
他に、血液の培養から細菌が同定される敗血症の状態が持続し、それによる多臓器不全が起こったりします。
最も多く同定される原因は歯科治療後に口腔内の細菌が血中に入り込んでしまうことですが、これは全体の一部で、多くはきっかけが不明です。
細菌感染の中で最も重症の形態の一つと言っていいと状態で、悪化した場合は死亡することも多い疾患です。
この病気の難しいところは、診断がつくのに時間がかかることが多く、診断されたときにはかなり重症化していることがあることです。熱が数週間~数か月続いて、風邪や肺炎などほかの疾患と間違われていることも少なくありません。
診断は血液からの細菌の同定、炎症所見高値、心エコーで細菌塊や膿瘍の同定などによります。
診断がつき次第、抗生物質の投与が開始されますが、細菌の菌種が同定されるまでは広範囲の菌種に有効な抗生物質を複数注射することを開始します。同時に他に細菌感染が起きているところがないか(化膿性脊椎炎の合併が多い)、仮性動脈瘤が出来ていないかなどを検索します。
心臓の弁膜症が悪化してこないかどうかを、定期的に検査します。
基本的には半数以上の患者さんは外科手術はしないで、抗生物質だけで治療することが多いですが以下の場合は外科治療が必要になります。
①適切な抗生物質を投与しても感染が制御できない
②弁の破壊による心不全・膿瘍形成
③塞栓を起こしそうな可動性の細菌塊がある
などです。
また、細菌の塊がはがれて、血流に乗って塞栓症を起こすこともあります。細菌塊が脳に流れると脳梗塞、また末梢の皮膚に流れ着くと、有痛性の結節(オスラー結節)などが見られます。流れ着いた動脈の先で、仮性動脈瘤(脳動脈瘤や脾動脈瘤などの末梢動脈瘤)を形成し破裂することもあります。
他に、血液の培養から細菌が同定される敗血症の状態が持続し、それによる多臓器不全が起こったりします。
最も多く同定される原因は歯科治療後に口腔内の細菌が血中に入り込んでしまうことですが、これは全体の一部で、多くはきっかけが不明です。
細菌感染の中で最も重症の形態の一つと言っていいと状態で、悪化した場合は死亡することも多い疾患です。
この病気の難しいところは、診断がつくのに時間がかかることが多く、診断されたときにはかなり重症化していることがあることです。熱が数週間~数か月続いて、風邪や肺炎などほかの疾患と間違われていることも少なくありません。
診断は血液からの細菌の同定、炎症所見高値、心エコーで細菌塊や膿瘍の同定などによります。
診断がつき次第、抗生物質の投与が開始されますが、細菌の菌種が同定されるまでは広範囲の菌種に有効な抗生物質を複数注射することを開始します。同時に他に細菌感染が起きているところがないか(化膿性脊椎炎の合併が多い)、仮性動脈瘤が出来ていないかなどを検索します。
心臓の弁膜症が悪化してこないかどうかを、定期的に検査します。
基本的には半数以上の患者さんは外科手術はしないで、抗生物質だけで治療することが多いですが以下の場合は外科治療が必要になります。
①適切な抗生物質を投与しても感染が制御できない
②弁の破壊による心不全・膿瘍形成
③塞栓を起こしそうな可動性の細菌塊がある
などです。
MICS:小開胸の心臓手術は創が小さい、胸骨を切らないことから、縦隔炎の発生がなく、ドレーンの排液も少ない。早期の回復が期待できる術式といえます。実際、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科で経験した小開胸の心臓手術の患者さん達は、みな通常よりも回復が速いため、早期に退院していきます。通常、術後約2週間で退院する冠動脈バイパス術や弁膜症手術の患者さん達も、約1週間で退院しています。
MICSによい適応の患者さんとしては
僧帽弁形成のみの手術、など手術手技がシンプル
上行大動脈の性状が良好で、4cm以下 ⇒ 大動脈遮断が安全に行える
大腿動脈送血が安全に行える、大腿動脈の太さが十分あり、腹部~胸部大動脈の性状が良好
残存心機能(左室機能)が良好
体厚がある程度ある(椎体~胸骨間距離)が十分ある
肺の癒着がない
片肺換気が可能(肺機能が良好)
などで、やはり比較的若くて元気な人向けともいえます。
一方、MICSの禁忌もしくは望ましくない患者さんとしては、その逆で
手術手技が広範囲にわたり、複雑
上行大動脈の拡大
大腿動脈が細い、大腿~腸骨~腹部~胸部下行大動脈の性状が不良
心機能が悪い(左室駆出率<40%)
体厚が薄い、胸郭が小さい
肺が癒着が著しい
片肺換気不能
などで、より安全確実な方法と考えた場合、特に高齢者では従来の胸骨正中切開を選択する場合が多いです。
MICSによい適応の患者さんとしては
僧帽弁形成のみの手術、など手術手技がシンプル
上行大動脈の性状が良好で、4cm以下 ⇒ 大動脈遮断が安全に行える
大腿動脈送血が安全に行える、大腿動脈の太さが十分あり、腹部~胸部大動脈の性状が良好
残存心機能(左室機能)が良好
体厚がある程度ある(椎体~胸骨間距離)が十分ある
肺の癒着がない
片肺換気が可能(肺機能が良好)
などで、やはり比較的若くて元気な人向けともいえます。
一方、MICSの禁忌もしくは望ましくない患者さんとしては、その逆で
手術手技が広範囲にわたり、複雑
上行大動脈の拡大
大腿動脈が細い、大腿~腸骨~腹部~胸部下行大動脈の性状が不良
心機能が悪い(左室駆出率<40%)
体厚が薄い、胸郭が小さい
肺が癒着が著しい
片肺換気不能
などで、より安全確実な方法と考えた場合、特に高齢者では従来の胸骨正中切開を選択する場合が多いです。
ハイブリッドとは、
1.
生物学で、異なる種類・品種の動物・植物を人工的にかけ合わせてできた交雑種。 「―のバラ」
2.
複数の方式を組み合わせた工業製品など。 「―車」
ということだそうです。
冠動脈疾患の治療において、ハイブリッド治療とは、虚血性心疾患において、冠動脈バイパス術とカテーテルインターベンションの組み合わせの手術ということになります。
それぞれのメリットを生かす治療で、両者のおいしいとこ取りともいえます。
カテーテル治療による低侵襲性
バイパス手術における確実性、長期開存
カテーテル治療困難な病変(完全閉塞病変 左主幹部 前下行枝近位部 狭窄長が長い病変 多発病変など)を低侵襲冠動脈バイパスでという治療で、うわまち病院心臓血管外科でも循環器科と共同し、左小開胸による冠動脈バイパス術と、バイパスしなかった病変のカテーテル治療の組み合わせを行っています。左開胸で完全血行再建可能な症例は、すべて左小開胸で行う場合もありますが、待機的に順番にバイパスとカテーテル治療を行う症例もあります。
こうしたどの病変にどの治療が適切か、なども、循環器科と心臓血管外科が構成するハートチームでの共同治療が有効です。左小開胸のCABGを積極的に導入していくことで、今後ハイブリッド治療が増加していく可能性があります。
1.
生物学で、異なる種類・品種の動物・植物を人工的にかけ合わせてできた交雑種。 「―のバラ」
2.
複数の方式を組み合わせた工業製品など。 「―車」
ということだそうです。
冠動脈疾患の治療において、ハイブリッド治療とは、虚血性心疾患において、冠動脈バイパス術とカテーテルインターベンションの組み合わせの手術ということになります。
それぞれのメリットを生かす治療で、両者のおいしいとこ取りともいえます。
カテーテル治療による低侵襲性
バイパス手術における確実性、長期開存
カテーテル治療困難な病変(完全閉塞病変 左主幹部 前下行枝近位部 狭窄長が長い病変 多発病変など)を低侵襲冠動脈バイパスでという治療で、うわまち病院心臓血管外科でも循環器科と共同し、左小開胸による冠動脈バイパス術と、バイパスしなかった病変のカテーテル治療の組み合わせを行っています。左開胸で完全血行再建可能な症例は、すべて左小開胸で行う場合もありますが、待機的に順番にバイパスとカテーテル治療を行う症例もあります。
こうしたどの病変にどの治療が適切か、なども、循環器科と心臓血管外科が構成するハートチームでの共同治療が有効です。左小開胸のCABGを積極的に導入していくことで、今後ハイブリッド治療が増加していく可能性があります。
胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤は、破裂前で無症状でも検診などで偶然見つかることがある疾患です。逆に症状が出現してからでは、いわゆる破裂してからでは、病院までたどり着けず、救命できない可能性が高い疾患です。なおさら、無症状の未破裂のうちに動脈瘤を発見し、破裂予防の処置(手術)をすることが重要です。
65歳以上の男性の1%に腹部大動脈瘤が見つかると言われ、特に高血圧、高脂血症、肺疾患、喫煙者などに多いとも言われています。過去に秋田県大森町の一般住民検1000人に対して腹部大動脈検診を超音波検査で、行ったところ、約1%に何らかの異常が見つかり、手術適応がある方も見つかりました。腹部大動脈瘤に関してはCTや超音波検査で、胸部大動脈瘤に関してはCTで早期発見が可能です。CTでは他に肺がんや膵臓癌など一般の検診では発見不可能な疾患も早期に発見できることもあります。ある程度の年齢になったら、人間ドックなどで2~3年に一度は検査してもらうといいと思います。
横須賀市立うわまち病院でもそうした大動脈疾患の早期発見に関する相談も外来でしています。
65歳以上の男性の1%に腹部大動脈瘤が見つかると言われ、特に高血圧、高脂血症、肺疾患、喫煙者などに多いとも言われています。過去に秋田県大森町の一般住民検1000人に対して腹部大動脈検診を超音波検査で、行ったところ、約1%に何らかの異常が見つかり、手術適応がある方も見つかりました。腹部大動脈瘤に関してはCTや超音波検査で、胸部大動脈瘤に関してはCTで早期発見が可能です。CTでは他に肺がんや膵臓癌など一般の検診では発見不可能な疾患も早期に発見できることもあります。ある程度の年齢になったら、人間ドックなどで2~3年に一度は検査してもらうといいと思います。
横須賀市立うわまち病院でもそうした大動脈疾患の早期発見に関する相談も外来でしています。
大動脈瘤や大動脈解離は、家族内で発症が重なることをしばしば経験します。
兄弟で大動脈解離になったり、親子でなったり、3人兄弟で三人とも腹部大動脈瘤破裂を起こし、最後の一人が救命された、とか。
血圧が高い、とか、喫煙している、とか危険因子を持っているわけではなくとも、発症してしまう事例をしばしば経験するので、やはりなんらかの遺伝的な関わりがあると思います。以前調べた時、兄弟が腹部大動脈りゅうを発症したときの、自分が腹部大動脈りゅうになる可能性は約3倍と言われていたのを記憶しております。
なので、そうした疾患をおもちの患者さんに遭遇したときは必ず、ご家族の検査もすすめています。
兄弟で大動脈解離になったり、親子でなったり、3人兄弟で三人とも腹部大動脈瘤破裂を起こし、最後の一人が救命された、とか。
血圧が高い、とか、喫煙している、とか危険因子を持っているわけではなくとも、発症してしまう事例をしばしば経験するので、やはりなんらかの遺伝的な関わりがあると思います。以前調べた時、兄弟が腹部大動脈りゅうを発症したときの、自分が腹部大動脈りゅうになる可能性は約3倍と言われていたのを記憶しております。
なので、そうした疾患をおもちの患者さんに遭遇したときは必ず、ご家族の検査もすすめています。
本日のニュースで、iPS細胞によって心筋シートを作成し心不全の患者さんの心臓に貼付する治療について、大阪大学の倫理委員会が許可した報道がされました。日本初の夢の新しい治療、日本の技術、研究レベルの高さに驚くとともに、今まで移植やDestination Therapyしか治療がなかった患者さんにとって、新たな福音になる可能性があると思います。
これまでは、骨格筋由来の筋芽細胞由来心筋シートが虚血性心疾患に対して保険が限定的に認められてきました。心筋症に対しては、効果が限定的で有効なResponderと、無効なNon-Responderに分かれると言われてきました。
これに比較してiPS細胞由来心筋シートha、新たな効果が期待できる可能性があります。
① 筋芽細胞は心筋細胞に変化しないが、iPS細胞は心筋細胞に変化しうる
② 筋芽細胞は移植された細胞からでるサイトカインの治療であり、治療効果に限界があるが、iPS細胞由来心筋シートは、サイトカイン療法に加えて、心筋細胞に同化して、傷んだ心筋を補充して、より高い効果を期待できる。
③ 産業化に優れている
④ 日本発の技術である
未来の医療を実感しつつ、目の前の患者さんにとって、最良の医療を提供する、これが非常に重要なことです。
5月16日厚生労働省が治験を承認したというニュースが全国に流れました。着実に新しい治療が進んでいることは、本当に夢のある話だと思います。
これまでは、骨格筋由来の筋芽細胞由来心筋シートが虚血性心疾患に対して保険が限定的に認められてきました。心筋症に対しては、効果が限定的で有効なResponderと、無効なNon-Responderに分かれると言われてきました。
これに比較してiPS細胞由来心筋シートha、新たな効果が期待できる可能性があります。
① 筋芽細胞は心筋細胞に変化しないが、iPS細胞は心筋細胞に変化しうる
② 筋芽細胞は移植された細胞からでるサイトカインの治療であり、治療効果に限界があるが、iPS細胞由来心筋シートは、サイトカイン療法に加えて、心筋細胞に同化して、傷んだ心筋を補充して、より高い効果を期待できる。
③ 産業化に優れている
④ 日本発の技術である
未来の医療を実感しつつ、目の前の患者さんにとって、最良の医療を提供する、これが非常に重要なことです。
5月16日厚生労働省が治験を承認したというニュースが全国に流れました。着実に新しい治療が進んでいることは、本当に夢のある話だと思います。
MICS: 低侵襲心臓手術と言われ、最近話題になっていますが、今年春の保険の改定で、加算手技料が認められるようになるようです。僧帽弁形成や大動脈弁置換術を右小開胸で内視鏡補助下に行った場合は、手技料の加算が認められます。横須賀市立うわまち病院でもMICS用の開胸器、手術機械などを購入する費用が、この加算によって補われる形になるので、より積極的にこうした手術が今後推進されていくものと思われます。
たしかにMICSで僧帽弁形成術を行った患者さんや、冠動脈バイパス術を行った患者さんは、今までの術後約2週間の入院期間が明らかに短縮されて、約1週間で退院していくことが多くなっております。政府としては手技料を認めることで、在院期間が短縮される方がはるかに医療費が縮小されることになり、医療費の削減に寄与することになるという目論見と思います。
たしかにMICSで僧帽弁形成術を行った患者さんや、冠動脈バイパス術を行った患者さんは、今までの術後約2週間の入院期間が明らかに短縮されて、約1週間で退院していくことが多くなっております。政府としては手技料を認めることで、在院期間が短縮される方がはるかに医療費が縮小されることになり、医療費の削減に寄与することになるという目論見と思います。
大動脈弁狭窄症に対して、通常の大動脈弁置換術が困難な場合に考慮する手術方法。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI:Trans-Catheter Aortic Valve Implantation)が普及するようになってから、その方法の手術を行うことは非常に少なくなりましたが、TAVIが困難な場合は検討する意味があります。
Apico ⇒ Apex 心尖部
Aortic ⇒ Aorta 大動脈
Conduit ⇒ Composite Graft 人工弁を含む人工血管による導管
で、文字通り、心尖部から人工弁を介在させた人工血管を大動脈に導く手術です。Apico-Aortic Bypassともいいます。
心尖部に人工血管を縫着し、人工弁は主にフリースタイル弁などの生体弁を間に入れて、人工血管の遠位側は主に下行大動脈に吻合します。これによって、心室からの出口が大動脈弁以外にConduitの部分も広がるので、圧の逃げる口が出来ることで左心室の負担を軽減します。以前経験した症例では、冠動脈バイパス術後の症例で、左開胸で心室細動下に行いました。術後の本来の大動脈弁を通過する血流と、Conduitを通過する血流がほぼ半々になり心不全が軽快しました。この手術は心室細動下や心拍動下でも可能です。
適応になるのは、上行大動脈の性状が悪い、冠動脈バイパス術後でグラフトが開存しているなど、正中切開で上行大動脈を操作することが困難な症例です。逆に、左開胸・分離肺換気が困難な症例ではできません。TAVIが困難な症例としては、Shaggy Aorta Syndrome、二尖弁、透析患者などがあり、この中で正中切開の弁置換が困難な場合は検討の価値があると思います。
手術手技としては補助人工心臓の脱血管を心尖部に縫着する手技と似ているので、補助人工心臓の経験のある外科医には比較的導入しやすいと思います。
Apico ⇒ Apex 心尖部
Aortic ⇒ Aorta 大動脈
Conduit ⇒ Composite Graft 人工弁を含む人工血管による導管
で、文字通り、心尖部から人工弁を介在させた人工血管を大動脈に導く手術です。Apico-Aortic Bypassともいいます。
心尖部に人工血管を縫着し、人工弁は主にフリースタイル弁などの生体弁を間に入れて、人工血管の遠位側は主に下行大動脈に吻合します。これによって、心室からの出口が大動脈弁以外にConduitの部分も広がるので、圧の逃げる口が出来ることで左心室の負担を軽減します。以前経験した症例では、冠動脈バイパス術後の症例で、左開胸で心室細動下に行いました。術後の本来の大動脈弁を通過する血流と、Conduitを通過する血流がほぼ半々になり心不全が軽快しました。この手術は心室細動下や心拍動下でも可能です。
適応になるのは、上行大動脈の性状が悪い、冠動脈バイパス術後でグラフトが開存しているなど、正中切開で上行大動脈を操作することが困難な症例です。逆に、左開胸・分離肺換気が困難な症例ではできません。TAVIが困難な症例としては、Shaggy Aorta Syndrome、二尖弁、透析患者などがあり、この中で正中切開の弁置換が困難な場合は検討の価値があると思います。
手術手技としては補助人工心臓の脱血管を心尖部に縫着する手技と似ているので、補助人工心臓の経験のある外科医には比較的導入しやすいと思います。
心不全の病態は、心臓が送り出す血液の量が足りなくなってしまうことでおこるいろいろな機能不全です。
一分間に心臓は約5リットルの血液を大動脈に送るといわれています。一回拍出量が80mlで一分間に60回の心拍数があるとすると、80×60=4800ml すなわち、毎分約5リットルです。
心臓の収縮により、一回は左室内の血液を、大動脈弁を通過して大動脈に送り出しても、すぐに大動脈弁逆流のように心臓に戻ってしまうと、その逆流した量はマイナスになります。また、僧帽弁逆流では、左心室から大動脈に向かう血液と、左房に逆流する血液があるので、逆流分がマイナスになります。他に、もし動脈管開存やバルサルバ洞動脈瘤破裂、動静脈瘻のように、右心系や左室内などに短絡してしまう血液があると、これもマイナスになります。こうした構造異常の場合は、外科手術の治療効果が非常に期待できる疾患です。
血液の流れる経路が正常でも、心臓の筋肉の動きが悪くなり、それによって左心室の血液を送り出せない状態もあります。これは心臓の筋肉そのものの病気で、虚血性心疾患による心筋の血流障害であれば冠動脈バイパス術などで血流を増やすことで心筋収縮の改善を期待できますが、拡張型心筋症やその他の心筋疾患のように、心筋細胞そのものの異常の場合は、なかなか外科治療では効果は期待できません。
この場合は、心臓そのものを交換する心臓移植や、機械によって心臓の機能を補助する補助人工心臓や各種の機械的循環補助装置が必要です。最新の研究では、骨格筋の細胞をシート状に培養して、心臓表面に張り付けることで心筋の収縮力を改善させる治療が注目され、虚血性心疾患が原因の場合は保険で認められ、一部の患者さんに対する治療が始まっています。近い将来、今話題のiPS細胞を使った心筋シートを臨床に使う日も近いといわれています。
こうした高額な先端治療をする前に、基礎的な治療としては、心機能を改善し生命予後(寿命)を延長する効果が証明されている薬剤もあります。
過去にはいわゆる強心剤といって、交感神経などを刺激して心筋収縮力をあげさせて心機能を改善する薬剤が主に使われていましたが、15年ほど前から、実はこの強心剤治療は寿命の延長効果どころか、寿命を短くするとも言われるようになり、逆に、交感神経の刺激を抑制して心臓を休ませる治療のほうが寿命が延長できるということがわかってきました。それ以来、広く心不全に使用されるようになったのが、β受容体拮抗薬、いわゆるベータブロッカーです。
ほかに心臓や血管に対する毒性の強い生理活性物質として、アキギオテンシンIIというホルモンがあります。血管を収縮させて、血圧を上昇させることで心臓の収縮時の負担を増加させる作用がありますが、このアンキオテンシンIIを生成させない、もしくは受容体を拮抗するACE阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬、またアンギオテンシンIIが刺激してアルドステロンを分泌させ、アルドステロンが体内に液体を貯留させることで心臓の負担を増加させることを阻害する抗アルドステロン薬、これも心不全の予後改善に有効と言われています。これらの基礎治療薬を組み合わせて長期使用することで、少しずつでも長期の成績を改善しようとする管理が、ここ10年ほどで一般化したと思います。
短期的には利尿剤も心臓の負担を軽減するという意味で効果がある処方です。
まとめますと、心不全の薬物治療は
①β受容体拮抗薬
②アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬
③抗アルドステロン薬
④その他の利尿薬
などがあります。
一分間に心臓は約5リットルの血液を大動脈に送るといわれています。一回拍出量が80mlで一分間に60回の心拍数があるとすると、80×60=4800ml すなわち、毎分約5リットルです。
心臓の収縮により、一回は左室内の血液を、大動脈弁を通過して大動脈に送り出しても、すぐに大動脈弁逆流のように心臓に戻ってしまうと、その逆流した量はマイナスになります。また、僧帽弁逆流では、左心室から大動脈に向かう血液と、左房に逆流する血液があるので、逆流分がマイナスになります。他に、もし動脈管開存やバルサルバ洞動脈瘤破裂、動静脈瘻のように、右心系や左室内などに短絡してしまう血液があると、これもマイナスになります。こうした構造異常の場合は、外科手術の治療効果が非常に期待できる疾患です。
血液の流れる経路が正常でも、心臓の筋肉の動きが悪くなり、それによって左心室の血液を送り出せない状態もあります。これは心臓の筋肉そのものの病気で、虚血性心疾患による心筋の血流障害であれば冠動脈バイパス術などで血流を増やすことで心筋収縮の改善を期待できますが、拡張型心筋症やその他の心筋疾患のように、心筋細胞そのものの異常の場合は、なかなか外科治療では効果は期待できません。
この場合は、心臓そのものを交換する心臓移植や、機械によって心臓の機能を補助する補助人工心臓や各種の機械的循環補助装置が必要です。最新の研究では、骨格筋の細胞をシート状に培養して、心臓表面に張り付けることで心筋の収縮力を改善させる治療が注目され、虚血性心疾患が原因の場合は保険で認められ、一部の患者さんに対する治療が始まっています。近い将来、今話題のiPS細胞を使った心筋シートを臨床に使う日も近いといわれています。
こうした高額な先端治療をする前に、基礎的な治療としては、心機能を改善し生命予後(寿命)を延長する効果が証明されている薬剤もあります。
過去にはいわゆる強心剤といって、交感神経などを刺激して心筋収縮力をあげさせて心機能を改善する薬剤が主に使われていましたが、15年ほど前から、実はこの強心剤治療は寿命の延長効果どころか、寿命を短くするとも言われるようになり、逆に、交感神経の刺激を抑制して心臓を休ませる治療のほうが寿命が延長できるということがわかってきました。それ以来、広く心不全に使用されるようになったのが、β受容体拮抗薬、いわゆるベータブロッカーです。
ほかに心臓や血管に対する毒性の強い生理活性物質として、アキギオテンシンIIというホルモンがあります。血管を収縮させて、血圧を上昇させることで心臓の収縮時の負担を増加させる作用がありますが、このアンキオテンシンIIを生成させない、もしくは受容体を拮抗するACE阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬、またアンギオテンシンIIが刺激してアルドステロンを分泌させ、アルドステロンが体内に液体を貯留させることで心臓の負担を増加させることを阻害する抗アルドステロン薬、これも心不全の予後改善に有効と言われています。これらの基礎治療薬を組み合わせて長期使用することで、少しずつでも長期の成績を改善しようとする管理が、ここ10年ほどで一般化したと思います。
短期的には利尿剤も心臓の負担を軽減するという意味で効果がある処方です。
まとめますと、心不全の薬物治療は
①β受容体拮抗薬
②アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬
③抗アルドステロン薬
④その他の利尿薬
などがあります。
成人の先天性心疾患で最も多いといわれているのが、二尖弁です。大動脈弁は通常3枚の羽根、3尖で構成されますが、それが二枚の羽根でできているのです。2尖しかないと、十分に収縮期に大動脈弁が開放されず、弁尖に収縮のたびに過剰な負担がかかるため、早期に硬化して大動脈弁狭窄症になりやすいといわれています。また大動脈弁逆流も起こりやすい為、通常より若い年齢で大動脈弁置換術を受ける頻度が高くなります。
まだ大動脈弁は左室と大動脈では、大動脈の組織の延長の性格が強い為、大動脈の疾患と関連することもあります。特に二尖弁の患者さんは、上行大動脈の拡大が起こりやすく、その場合、将来大動脈解離を発症しやすいと言われています。大動脈が4cm以上に拡大している場合は、大動脈の人工血管置換術を追加するのが一般的です。
大動脈弁は左心室と大動脈の間の逆流防止弁で、これが固くなってうまく開放できなくなると、大動脈の圧と、左心室の圧の間に収縮期の圧格差が出来、左室内圧が異常に高くなって、左室信金への負担が増えることが大動脈弁狭窄症の病態と言われています。
血圧=大動脈圧が例えば120mmHgの時に、圧格差が60mmHgあったとすると、左室内圧は120+60=180mmHgとなっている、ということになります。心筋への負担が増えることで、左心室の筋肉が肥大し、左室内腔が狭くなり(中心性肥大)、拡張障害も同時に起こります。心筋内圧が上昇すると、冠動脈から心筋内への血流も流れにくくなり、また心筋重量の増加とともに心筋細胞数も増加しているため、冠血流の需要が増加し、心筋細胞の虚血が起こりやすくなります。こうして心筋への負荷が増えることが持続的に起こり、左室の収縮不全に進行していきます。左室の収縮不全が起こる(左室駆出率が低下する)と、左室から大動脈へ血液を送り出す力も低下し、大動脈弁と左室の間の圧格差が末期には低下していくことになります。
心筋障害が進行した大動脈弁狭窄症は、心停止下の手術の時も、心筋保護液が心筋細胞に行き渡らない可能性が高くなり、また、冠血流再開後の心筋の回復も不十分になりやすくなります。術中に危険な不整脈が持続したり、人工心肺から離脱できなくなる低拍出症候群(LOS:Low Output Syndrome)になりやすくなります。すなわち、手術の危険性が増加するため、そこまで進行しないうちの手術な望まれます。
まだ大動脈弁は左室と大動脈では、大動脈の組織の延長の性格が強い為、大動脈の疾患と関連することもあります。特に二尖弁の患者さんは、上行大動脈の拡大が起こりやすく、その場合、将来大動脈解離を発症しやすいと言われています。大動脈が4cm以上に拡大している場合は、大動脈の人工血管置換術を追加するのが一般的です。
大動脈弁は左心室と大動脈の間の逆流防止弁で、これが固くなってうまく開放できなくなると、大動脈の圧と、左心室の圧の間に収縮期の圧格差が出来、左室内圧が異常に高くなって、左室信金への負担が増えることが大動脈弁狭窄症の病態と言われています。
血圧=大動脈圧が例えば120mmHgの時に、圧格差が60mmHgあったとすると、左室内圧は120+60=180mmHgとなっている、ということになります。心筋への負担が増えることで、左心室の筋肉が肥大し、左室内腔が狭くなり(中心性肥大)、拡張障害も同時に起こります。心筋内圧が上昇すると、冠動脈から心筋内への血流も流れにくくなり、また心筋重量の増加とともに心筋細胞数も増加しているため、冠血流の需要が増加し、心筋細胞の虚血が起こりやすくなります。こうして心筋への負荷が増えることが持続的に起こり、左室の収縮不全に進行していきます。左室の収縮不全が起こる(左室駆出率が低下する)と、左室から大動脈へ血液を送り出す力も低下し、大動脈弁と左室の間の圧格差が末期には低下していくことになります。
心筋障害が進行した大動脈弁狭窄症は、心停止下の手術の時も、心筋保護液が心筋細胞に行き渡らない可能性が高くなり、また、冠血流再開後の心筋の回復も不十分になりやすくなります。術中に危険な不整脈が持続したり、人工心肺から離脱できなくなる低拍出症候群(LOS:Low Output Syndrome)になりやすくなります。すなわち、手術の危険性が増加するため、そこまで進行しないうちの手術な望まれます。
三重総合文化センターで本日まで開催されている日本心臓血管外科学会総会に参加しました。会長要望演題で僧帽弁形成術の再手術のセッションに参加しました。自治医大さいたま医療センターでは過去十年で400例ほどの僧帽弁形成術を行った症例のうち、十年の再手術回避率は95.7パーセントで、初回に他施設で手術した症例を含めて、弁形成後に再手術を行った症例は16例あり、そのうち半数の七例は最初から弁置換、残りの7例は再弁形成を試みましたが、弁形成が成功したのは4例でした。
近年は僧帽弁形成術のレベルも向上してきているので、僧帽弁形成術後の再手術でも、再度弁形成が成功する症例が増えてきていると思います。とはいえ、僧帽弁形成術後の僧帽弁逆流再発自体が少ない為、ハイボリュームセンターとはいってもまだまだ経験が少ない、というのが現状のようです。横須賀市立うわまち病院でも、過去一年に3例の僧帽弁形成術後の再手術を担当しましたが、3例とも再形成に成功しています。
近年は僧帽弁形成術のレベルも向上してきているので、僧帽弁形成術後の再手術でも、再度弁形成が成功する症例が増えてきていると思います。とはいえ、僧帽弁形成術後の僧帽弁逆流再発自体が少ない為、ハイボリュームセンターとはいってもまだまだ経験が少ない、というのが現状のようです。横須賀市立うわまち病院でも、過去一年に3例の僧帽弁形成術後の再手術を担当しましたが、3例とも再形成に成功しています。
急性大動脈解離の治療 臓器虚血への対応
腸管虚血
急性大動脈解離における腸管虚血は重篤で死亡率が高い
発生頻度 A型1.5-5.8% B型 1.0-7.4%
メカニズム
① 偽腔の圧迫による真腔狭窄
② 腹部分枝への解離の進展による分枝の真腔の狭窄
③ 非閉塞性腸管虚血(NOMI:Non Occlusive Mesenteric Ischemia)
臨床所見
① 腹痛
② 腸管壊死に伴う全身への影響
③ 敗血症および血管内脱水による循環不全
診断
発症時から腹痛や下血を発生している場合は診断が容易であるが、意識障害を合併していたり、術後の未覚醒や人工呼吸管理中の状態では診断が困難な症例が多い。腸管壊死に至る前に診断することが救命につながるため、腸管虚血を痛がった場合は迅速かつ積極的に検査・治療を進めていく必要がある。
もっとも重要な検査所見は造影CTである。たとえ腎機能障害を合併していても、造影剤を使用して腸管虚血を診断することが優先される。腸管虚血を呈する急性大動脈解離のCT所見は、上腸間膜動脈および腹腔動脈が分岐するレベルでの解離した大動脈の真腔狭窄、これらの動脈への解離の進展、および造影途絶所見である。また、腸間膜内の動脈の造影所見の有無や腸管壁の造影効果も参考になる。虚血に陥った腸管は麻痺性イレウスによって内腔が拡張したり、壁やケルクリングが浮腫を起こすことによって肥厚する所見を呈する。また腹水の出現なども同時に見られることが多い。大動脈解離の血行動態は刻々と変化することが多いため、病態によっては繰り返し造影CTを行い比較する。
腸管虚血に陥った症例では、乳酸アシドーシスが腸管壊死に陥る前から呈することが多いため、乳酸のモニタリングが重要である。動脈血液ガス所見のBase ExessやpH値も同時に比較して乳酸アシドーシスが進行した場合は迅速な対応が必要である。腸管壊死に陥った場合は、CKやLHD、GOTもなどの血清生化学検査値も上昇してくるが、この段階ではもはや救命できる時期を逸している可能性がある。
腹部エコーは腹腔の観察にはリアルタイムに繰り返し検査できるため有用であるが、腸管虚血の症例では、腹腔内ガスが多く観察が困難な症例が多い。検査の再現性に乏しい欠点があるが、腸管壁の浮腫やSMA血流の低下などが参考になる。経験的には上腸間膜動脈の血流速度を測定し、50cm/s以下(通常は1m/s程度)の症例は腸管虚血に陥っている可能性がある。
CTが発達した今日では、腸管虚血を疑う大動脈解離の症例に対して血管造影を行うことは稀であるが、NOMI(非閉塞性腸管虚血)を疑う症例では、腸管壁の造影効果の血管拡張薬の動注による改善所見によって診断する必要がある。これによって診断された場合は、カテーテルを上腸間膜動脈等に留置して、血管拡張薬の持続動注療法に移行する。
試験開腹が必要な症例もある。実際に腸管が壊死に陥っている場合は診断が容易であるが、色調が悪いという程度の変化しか見られない症例もある。こうした症例はその後、壊死にまで進行することもあるため、腹腔内圧が上昇して臓器障害が進行する、いわゆるAbdominal Compartment Syndromeの制御もかね、かつ繰り返し腸管壁を観察できるように閉腹せずにおくことも考慮する。
腸管虚血に陥ると、容易に腸管壁の細菌バリアが破綻してBacterial Translocationから敗血症に至るため循環が不安定であったり、炎症所見の高値、発熱など見られる場合は早めに血液培養をとっておく必要がある。
腸管浮腫による循環血液量の減少も血行動態が不安定になる一因なため、適切な血行動態のモニタリングも管理には必要である。
腸管虚血の診断:
CTでの腸管壁造影所見、上腸間膜動脈および腹腔動脈の造影所見
腹部エコーでの上腸間膜動脈血流の検出および血流速度測定
試験開腹での腸管の観察
乳酸アシドーシスの観察
生化学検査所見 CK LDH GOT WBC上昇
治療
① 大動脈解離のプライマリーエントリーの閉鎖(Central Operation)
② ステントグラフト留置による真腔の拡大
③ 開窓術による真腔血流の増加
④ 分枝へのバイパスまたは血管内治療
⑤ 薬物治療(パパベリンやプロスタグランジンE1など血管拡張薬の選択的持続動注)
⑥ 腸切除・人工肛門造設
⑦ 腹腔内の減圧
詳細は 大動脈解離診断と治療のStandardより(筆者が執筆担当部分)
NOMI:
血管病変による急性大動脈解離による腸管虚血は主に、真腔狭窄、解離の分枝内への進展など画像所見によって判別もしくは予測可能なことがおおいのですが、いわゆる非閉塞性腸管虚血(NOMI)の場合は、画像所見ですぐに診断することは困難なため、これは腹痛、ラクテートの上昇がみられた時には、まず優先的に疑って対処する必要があります。上記症状が疑われた場合はまず、腹痛の発症機序の検索が必要ですが、NOMIが疑われた場合は、造影CTで小腸や結腸の造影の染まり方を検討し、造影むらがある、部分的に染まりが悪い場所がある場合は、直ちに腹部血管造影を行います。造影で末梢の染まりが悪い、門脈の造影が遅延するなどの所見の場合は、試験的に血管拡張薬(パパベリンやプロスタグランジン製剤)を選択的に動注し、それによって造影所見が改善するかを確認します。造影所見が改善すれば、NOMIと診断され、持続動注療法を開始します。また診断が確定できない、という場合も、疑った場合は持続動注療法にうつことが多いです。
先日経験した症例は幸い、動注療法で腹痛が軽快し、麻痺性イレウスにはなりましたが、アシドーシスに至る前に改善し、救命できました。
高齢、腎機能低下、術中の過大侵襲などが原因と引き金になります。高齢者の患者さんを手術した場合は、あらかじめ念頭に術後管理を行う事が早期発見早期治療につながると思います。
腸管虚血
急性大動脈解離における腸管虚血は重篤で死亡率が高い
発生頻度 A型1.5-5.8% B型 1.0-7.4%
メカニズム
① 偽腔の圧迫による真腔狭窄
② 腹部分枝への解離の進展による分枝の真腔の狭窄
③ 非閉塞性腸管虚血(NOMI:Non Occlusive Mesenteric Ischemia)
臨床所見
① 腹痛
② 腸管壊死に伴う全身への影響
③ 敗血症および血管内脱水による循環不全
診断
発症時から腹痛や下血を発生している場合は診断が容易であるが、意識障害を合併していたり、術後の未覚醒や人工呼吸管理中の状態では診断が困難な症例が多い。腸管壊死に至る前に診断することが救命につながるため、腸管虚血を痛がった場合は迅速かつ積極的に検査・治療を進めていく必要がある。
もっとも重要な検査所見は造影CTである。たとえ腎機能障害を合併していても、造影剤を使用して腸管虚血を診断することが優先される。腸管虚血を呈する急性大動脈解離のCT所見は、上腸間膜動脈および腹腔動脈が分岐するレベルでの解離した大動脈の真腔狭窄、これらの動脈への解離の進展、および造影途絶所見である。また、腸間膜内の動脈の造影所見の有無や腸管壁の造影効果も参考になる。虚血に陥った腸管は麻痺性イレウスによって内腔が拡張したり、壁やケルクリングが浮腫を起こすことによって肥厚する所見を呈する。また腹水の出現なども同時に見られることが多い。大動脈解離の血行動態は刻々と変化することが多いため、病態によっては繰り返し造影CTを行い比較する。
腸管虚血に陥った症例では、乳酸アシドーシスが腸管壊死に陥る前から呈することが多いため、乳酸のモニタリングが重要である。動脈血液ガス所見のBase ExessやpH値も同時に比較して乳酸アシドーシスが進行した場合は迅速な対応が必要である。腸管壊死に陥った場合は、CKやLHD、GOTもなどの血清生化学検査値も上昇してくるが、この段階ではもはや救命できる時期を逸している可能性がある。
腹部エコーは腹腔の観察にはリアルタイムに繰り返し検査できるため有用であるが、腸管虚血の症例では、腹腔内ガスが多く観察が困難な症例が多い。検査の再現性に乏しい欠点があるが、腸管壁の浮腫やSMA血流の低下などが参考になる。経験的には上腸間膜動脈の血流速度を測定し、50cm/s以下(通常は1m/s程度)の症例は腸管虚血に陥っている可能性がある。
CTが発達した今日では、腸管虚血を疑う大動脈解離の症例に対して血管造影を行うことは稀であるが、NOMI(非閉塞性腸管虚血)を疑う症例では、腸管壁の造影効果の血管拡張薬の動注による改善所見によって診断する必要がある。これによって診断された場合は、カテーテルを上腸間膜動脈等に留置して、血管拡張薬の持続動注療法に移行する。
試験開腹が必要な症例もある。実際に腸管が壊死に陥っている場合は診断が容易であるが、色調が悪いという程度の変化しか見られない症例もある。こうした症例はその後、壊死にまで進行することもあるため、腹腔内圧が上昇して臓器障害が進行する、いわゆるAbdominal Compartment Syndromeの制御もかね、かつ繰り返し腸管壁を観察できるように閉腹せずにおくことも考慮する。
腸管虚血に陥ると、容易に腸管壁の細菌バリアが破綻してBacterial Translocationから敗血症に至るため循環が不安定であったり、炎症所見の高値、発熱など見られる場合は早めに血液培養をとっておく必要がある。
腸管浮腫による循環血液量の減少も血行動態が不安定になる一因なため、適切な血行動態のモニタリングも管理には必要である。
腸管虚血の診断:
CTでの腸管壁造影所見、上腸間膜動脈および腹腔動脈の造影所見
腹部エコーでの上腸間膜動脈血流の検出および血流速度測定
試験開腹での腸管の観察
乳酸アシドーシスの観察
生化学検査所見 CK LDH GOT WBC上昇
治療
① 大動脈解離のプライマリーエントリーの閉鎖(Central Operation)
② ステントグラフト留置による真腔の拡大
③ 開窓術による真腔血流の増加
④ 分枝へのバイパスまたは血管内治療
⑤ 薬物治療(パパベリンやプロスタグランジンE1など血管拡張薬の選択的持続動注)
⑥ 腸切除・人工肛門造設
⑦ 腹腔内の減圧
詳細は 大動脈解離診断と治療のStandardより(筆者が執筆担当部分)
NOMI:
血管病変による急性大動脈解離による腸管虚血は主に、真腔狭窄、解離の分枝内への進展など画像所見によって判別もしくは予測可能なことがおおいのですが、いわゆる非閉塞性腸管虚血(NOMI)の場合は、画像所見ですぐに診断することは困難なため、これは腹痛、ラクテートの上昇がみられた時には、まず優先的に疑って対処する必要があります。上記症状が疑われた場合はまず、腹痛の発症機序の検索が必要ですが、NOMIが疑われた場合は、造影CTで小腸や結腸の造影の染まり方を検討し、造影むらがある、部分的に染まりが悪い場所がある場合は、直ちに腹部血管造影を行います。造影で末梢の染まりが悪い、門脈の造影が遅延するなどの所見の場合は、試験的に血管拡張薬(パパベリンやプロスタグランジン製剤)を選択的に動注し、それによって造影所見が改善するかを確認します。造影所見が改善すれば、NOMIと診断され、持続動注療法を開始します。また診断が確定できない、という場合も、疑った場合は持続動注療法にうつことが多いです。
先日経験した症例は幸い、動注療法で腹痛が軽快し、麻痺性イレウスにはなりましたが、アシドーシスに至る前に改善し、救命できました。
高齢、腎機能低下、術中の過大侵襲などが原因と引き金になります。高齢者の患者さんを手術した場合は、あらかじめ念頭に術後管理を行う事が早期発見早期治療につながると思います。