心臓血管外科手術の術後は体重が平均でも3~5kg増加し、浮腫が起きやすくなります。術中の循環維持の為、多めに輸液が入ることに加えて、人工心肺による非日常の循環が、血管の透過性を亢進させ、血管内から血管外へ水分が抜け落ちていきやすくなります。そのため、肺がむくんで(肺の間質浮腫、肺水腫や胸水貯留が起こる)呼吸機能が悪くなったり、下腿などにむくみ(浮腫)が出やすくなります。それに加えて、血管内は脱水に傾くため、腎血流が低下して尿も出にくくなるという悪循環が起き、より回復に時間がかかることになります。また手術侵襲や薬剤による腎機能へのダメージも回復を遅くする理由の一つになります。特に、腎機能の指標である血清クレアチニン値が上昇する症例は、その後の死亡率が高いとも言われています。
一般にこうした水分貯留による浮腫などには、利尿剤が使用され、尿中へより水分を多く排泄して改善を期待することになります。
利尿剤は主に腎臓の尿細管に作用して水分や電解質(ナトリウムやカリウムなど)を再吸収させることを防ぐことによって水分を排泄する効果を期待します。利尿剤でもっとも多く使用されているのはフロセミドなどのループ利尿剤ですが、こちらの薬剤は安価で効果も大きいのですが、電解質も一緒に排泄するので電解質の異常が来やすい、腎臓にダメージを与える可能性がある。電解質の異常から血清浸透圧を低下させ血管内の水分は排泄するが血管外の水分はなかなか排泄させないために血管内脱水を引き起こして腎機能の悪化とともに浮腫が改善しないという症例もあります。
一方新しい水利尿薬とも言われる、バソプレシン受容体拮抗薬は水の再吸収を集合管でブロックすることにより、水分のみを体外に排泄する効果があり、利尿効果も大きく、電解質の排泄がないために電解質異常が来にくく、血管内のナトリウム濃度=浸透圧が上昇して、血管外の水分を血管内に引き込んで浮腫を改善しやすい効果があるとも言われています。血管内脱水が来にくいことから腎機能の悪化を起こしにくいともいわれており、特に心臓血管外科手術後の周術期管理には活躍が期待できる薬剤です。血清ナトリウムが上昇する可能性があるので、最初から血清ナトリウムが高めの患者さんには使えませんが、先週行われた都内での大規模なセミナーでも、より副作用が現実では少ない、ということが期待され、特に心不全パンデミックとも言われ、今後ますます心不全患者さんが爆発的に増加する時代においては、汎用されていく薬剤と思われます。
昔は存在しなかった新薬が開発されることで、手術後の管理も改善され結果的に患者さんの治療に役立つ、ということが、時代とともに進んでいることをこうしたことで実感することが多いのも心臓血管外科などより先進的な医療を実践しているものとしては実感することですが、こうした新しい治療方法もいち早く取り入れて良好な成績を目指すのも医師としての務めであると思います。
以下、ウィキペディアより
2010年10月に厚生労働省に「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不充分な心不全における体液貯留」について承認[2]された後、2013年9月に「肝硬変における体液貯留」について[3]、2014年3月に「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行抑制」について[4]それぞれ追加承認を取得した。
米国では、2009年5月に低ナトリウム血症について承認された[5]後、多発性嚢胞腎について優先審査品目に指定されている[6]。
カナダでは2015年2月、ADPKDの治療薬としての使用が承認された[7]。同月、欧州で欧州医薬品委員会がADPKDの治療薬としての承認を勧告し[8]、5月に欧州委員会が承認した[9]。
臨床試験[編集]
2004年の臨床試験で、低血圧や低カリウム血症のない心不全患者に対して従来の利尿薬と併用された場合に、トルバプタンは水分の排出を増加させ、血中ナトリウム濃度を改善し、腎機能障害を起こさない事が示された[10]。2012年に公表された臨床試験(TEMPO 3:4 ClinicalTrials.gov登録番号:NCT00428948)の結果、主要評価項目ならびに副次的評価項目が達成された。トルバプタンを平均1日投与量95mgで3年以上投与すると、腎容積の増大が偽薬と比べて50%抑制(ト群:2.80%/年、偽群:5.51%/年、p<0.001)され、腎機能低下が約30%抑えられた(クレアチニン低下量 ト群:2.61mg/mL/年、偽群:3.81mg/mL/年、p<0.001)[11]。
禁忌[編集]
トルバプタンは以下の患者には禁忌である[12]。
トルバプタンまたは類似化合物に過敏症の既往のある患者
無尿の患者(心不全または肝硬変患者に用いる場合)
口渇を感じない患者
水分摂取が困難な患者
高ナトリウム血症の患者
重篤な腎機能障害(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)のある患者(嚢胞腎患者に用いる場合)
慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害(嚢胞腎患者に用いる場合)
適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者(心不全または肝硬変患者に用いる場合)
妊婦または妊娠している可能性のある婦人
副作用[編集]
添付文書に記載されている重大な副作用は、腎不全、血栓塞栓症、高ナトリウム血症、肝機能障害、ショック、アナフィラキシー、過度の血圧低下、心室細動、心室頻拍、肝性脳症、汎血球減少、血小板減少である。
米国FDAはトルバプタンに肝毒性があり肝機能障害を引き起こす可能性があるとして、トルバプタンを30日間を超えて投与すべきでない事、および肝障害のある患者に投与すべきでない事を決定した[13
一般にこうした水分貯留による浮腫などには、利尿剤が使用され、尿中へより水分を多く排泄して改善を期待することになります。
利尿剤は主に腎臓の尿細管に作用して水分や電解質(ナトリウムやカリウムなど)を再吸収させることを防ぐことによって水分を排泄する効果を期待します。利尿剤でもっとも多く使用されているのはフロセミドなどのループ利尿剤ですが、こちらの薬剤は安価で効果も大きいのですが、電解質も一緒に排泄するので電解質の異常が来やすい、腎臓にダメージを与える可能性がある。電解質の異常から血清浸透圧を低下させ血管内の水分は排泄するが血管外の水分はなかなか排泄させないために血管内脱水を引き起こして腎機能の悪化とともに浮腫が改善しないという症例もあります。
一方新しい水利尿薬とも言われる、バソプレシン受容体拮抗薬は水の再吸収を集合管でブロックすることにより、水分のみを体外に排泄する効果があり、利尿効果も大きく、電解質の排泄がないために電解質異常が来にくく、血管内のナトリウム濃度=浸透圧が上昇して、血管外の水分を血管内に引き込んで浮腫を改善しやすい効果があるとも言われています。血管内脱水が来にくいことから腎機能の悪化を起こしにくいともいわれており、特に心臓血管外科手術後の周術期管理には活躍が期待できる薬剤です。血清ナトリウムが上昇する可能性があるので、最初から血清ナトリウムが高めの患者さんには使えませんが、先週行われた都内での大規模なセミナーでも、より副作用が現実では少ない、ということが期待され、特に心不全パンデミックとも言われ、今後ますます心不全患者さんが爆発的に増加する時代においては、汎用されていく薬剤と思われます。
昔は存在しなかった新薬が開発されることで、手術後の管理も改善され結果的に患者さんの治療に役立つ、ということが、時代とともに進んでいることをこうしたことで実感することが多いのも心臓血管外科などより先進的な医療を実践しているものとしては実感することですが、こうした新しい治療方法もいち早く取り入れて良好な成績を目指すのも医師としての務めであると思います。
以下、ウィキペディアより
2010年10月に厚生労働省に「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不充分な心不全における体液貯留」について承認[2]された後、2013年9月に「肝硬変における体液貯留」について[3]、2014年3月に「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行抑制」について[4]それぞれ追加承認を取得した。
米国では、2009年5月に低ナトリウム血症について承認された[5]後、多発性嚢胞腎について優先審査品目に指定されている[6]。
カナダでは2015年2月、ADPKDの治療薬としての使用が承認された[7]。同月、欧州で欧州医薬品委員会がADPKDの治療薬としての承認を勧告し[8]、5月に欧州委員会が承認した[9]。
臨床試験[編集]
2004年の臨床試験で、低血圧や低カリウム血症のない心不全患者に対して従来の利尿薬と併用された場合に、トルバプタンは水分の排出を増加させ、血中ナトリウム濃度を改善し、腎機能障害を起こさない事が示された[10]。2012年に公表された臨床試験(TEMPO 3:4 ClinicalTrials.gov登録番号:NCT00428948)の結果、主要評価項目ならびに副次的評価項目が達成された。トルバプタンを平均1日投与量95mgで3年以上投与すると、腎容積の増大が偽薬と比べて50%抑制(ト群:2.80%/年、偽群:5.51%/年、p<0.001)され、腎機能低下が約30%抑えられた(クレアチニン低下量 ト群:2.61mg/mL/年、偽群:3.81mg/mL/年、p<0.001)[11]。
禁忌[編集]
トルバプタンは以下の患者には禁忌である[12]。
トルバプタンまたは類似化合物に過敏症の既往のある患者
無尿の患者(心不全または肝硬変患者に用いる場合)
口渇を感じない患者
水分摂取が困難な患者
高ナトリウム血症の患者
重篤な腎機能障害(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)のある患者(嚢胞腎患者に用いる場合)
慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害(嚢胞腎患者に用いる場合)
適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者(心不全または肝硬変患者に用いる場合)
妊婦または妊娠している可能性のある婦人
副作用[編集]
添付文書に記載されている重大な副作用は、腎不全、血栓塞栓症、高ナトリウム血症、肝機能障害、ショック、アナフィラキシー、過度の血圧低下、心室細動、心室頻拍、肝性脳症、汎血球減少、血小板減少である。
米国FDAはトルバプタンに肝毒性があり肝機能障害を引き起こす可能性があるとして、トルバプタンを30日間を超えて投与すべきでない事、および肝障害のある患者に投与すべきでない事を決定した[13