福岡県北九州市小倉で行なわれました。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科からは3演題を発表しましたが、今回の学会は多くの現地出席者があり、情報交換の場としても有用でした。
発表した内容として
①頸動脈閉塞した急性A型大動脈解離に対して頸動脈送血を優先した手術によって術後脳障害のリスクを減らすというもの
既に手術を開始する前に不可逆的な脳障害になっている症例もあり、術前に症状が軽快している場合は脳内ネットワークによる血流で維持されるため、特に脳保護を考えなくてもよい、という意見もありましたが、当院でのここ数年の大動脈解離の死亡率は3%と全国的にも最も低く、再手術率もグループ内で10年で10%ほどと、どのグループよりも良好な成績を示しているため、信じた治療を邁進することは間違いないことを証明しています。
②下大静脈浸潤を伴う後腹膜腫瘍に対して人工心肺を使用して下大静脈合併切除、下大静脈再建を行なった症例の報告に対しては、やはり他施設でも同様に人工心肺補助を最初から行なう、という意見が多かったです。当院の症例ではスタンバイしていて、主科である泌尿器科から依頼があった時点で手術に参加しましたが、スムースに人工心肺補助につなげられたので問題なく実施できました。最初からヘパリンを投与して参加するのに比較すると、ヘパリンない状況である程度の剥離がされていたので、最低限の出血で済んだと思います。
③LIQS手術について、座長からご自身の経験から脳梗塞が多いのでは、と言う意見がありましたが、当院で行なっている方法は脳分離送血を併用して脳保護を重視した手技としているので、循環停止時間はシンプルな方法よりも長くなりますが、その分、手技的に安全域の高い手術になっていると思います。OSTAR=Open Stenting for Thoracic Aortic Repairという名称を、当院のドクターが提唱しましたが、このネーミングに関しては再考の必要があるように思います。もう少しいいネーミングはないでしょうか?LIQS手術に関しては日本大学の学内雑誌かなにかにしか投稿されていないので、通用するネーミングを新たに考える必要がありそうです。当院と同じく胸骨部分切開で行なうMINI Openstentingという名前を提唱した施設もあり、こちらのほうが良さそうです。このOpenstentingに関しては、弓部置換の後ろにつけるエレファントトランクとは違うためFET(Frozen Elephant Trunk)という名称をつけるのは間違いと思われます。
小倉って食べ物も美味しく、街も大きくて非常に魅力的なところでした。また是非小倉で学会をやってほしいものです。