横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

ヴァヴェクペラ = VAVEcpella

2021-03-30 23:53:51 | 心臓病の治療
 肺塞栓症や肺水腫などで肺の酸素化能が低下した状態では、酸素化されていない血液が冠動脈に流れ込むことで心不全になったり、脳の低酸素ダメージが発生します。こうした心肺不全の状態を緩和する究極の循環補助が、V-V+V-A ECMO + Impellaです。ヴァヴェクペラと呼ぶそうです。肺の酸素化を改善するためのV-V ECMOだけでは、肺塞栓症などでは左心系に十分血液が環流しないために、Low Outputとなってしまうため左心系に血液を循環させるV-A ECMOを追加したものを、V-VA ECMO(VV+VA ECMO)と呼びます。これはECMOの送血回路を二股にして静脈側と動脈側の両方に同時送血する回路で、流量計をそれぞれのOutput側につけてクレンメで送血量を調整しますが、一般に送血される血液は調節しなくてもほぼ半分ずつになるそうです。これだけではVA ECMOによる後負荷があるので、それを緩和する補助装置がImpellaであり、左室内の血液を軸流ポンプによって大動脈に送りだりEDP上昇による左室心筋のダメージを最小限にできるそうです。
 このヴァヴェクペラに関しては、先日手術指導に来ていただいた九州大学教授の塩瀬先生に、当院での肺塞栓症例について相談した際にご教授いただいた究極の循環補助治療です。
 横須賀市立うわまち病院でも今後インペラ導入を検討しており、実現すればヴァヴェクペラを含むより高度な循環補助治療が三浦半島地区でも実現できるようになります。
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急性大動脈解離の緊急手術の地域完結 うわまち病院←→横須賀共済病院

2021-03-30 05:44:14 | 大動脈疾患
 横須賀市立うわまち病院での急性大動脈解離の緊急手術は年間10例前後です。横須賀市内には当院以外に、横須賀共済病院にも心臓血管外科があるので、この二施設で急性大動脈解離の緊急手術が行われており、それぞれの施設でほかの手術中だったりしてすぐに対応できない場合は患者さんを紹介して、どちらかの施設で緊急手術ができるような体制を目指しております。やはり地域の緊急疾患は地域で完結することが理想ですし、特に急性大動脈解離は搬送する間に命を失う可能性がある急性疾患ですので、移送するにしてもできるだけ短時間で手術室に入れるところを選択することが救命の鍵になります。
 うわまち病院から横須賀共済病院にお願いした症例もありますし、横須賀共済病院から紹介される症例もあり、うわまち病院の場合の急性大動脈解離の緊急手術症例の多くは、横須賀共済病院もしくは横須賀市立市民病院からの症例です。特に横須賀共済病院からの紹介症例のほとんどは、日中の定時手術に同時に緊急手術に対応できないという理由での搬送ですので、ほとんどが日中、特にお昼前後の時間帯が多く、手術日が重なっていない時間帯が多いので、当院に搬送後もすぐに手術室に入れることが多い印象です。当院の手術室が空くまで時間がかかる、もしくは実施中の手術の目途がたっていない、という理由で受け入れできなかった場合もあります。
 この二施設が緊急手術受け入れできなければ、横浜市、鎌倉市、川崎市内の病院まで搬送しなければなりません。
 これからも二施設で連携しながら三浦半島の患者さんを地域で完結できるような体制を維持していく必要があります。
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Intuity 神奈川県1例目実施

2021-03-30 05:32:13 | 心臓病の治療
 大動脈弁狭窄症に対するスーチャレス弁(縫わなくてよい人工弁)は短時間で人工弁の移植ができるためRapid Deployment Valveともいわれます。現在市販されているものとして、Edwards Scientific社のIntuityと、LivaNova社のPercevalがあります。横須賀市立うわまち病院では大動脈弁置換術の半数を右小開胸アプローチで実施しており、その質の向上、時間の短縮、術者の幅を広げるために今後は積極的にこのスーチャレス弁を採用していく予定です。
 すでに1例ずつPerceval、Intuityを実施しており、Intuityにおいては神奈川県内で第一例目を実施しております。Percevalにおいては、おそらく6例目くらいの実施を当院で行いました。
 Intuityにおいては19mm以上の弁輪径のサイズがありますが、実は実施しようとした3例中2例が19mmのサイズが入らいない、もしくはバレルのサイザーがようやく通過してもきつく、レプリカのサイザーが弁輪まで落ちないということで適応外と判断し、従来の生体弁置換に術中方針を変更しました。Intuityは既存のMagna弁の下に圧着するためにカフが装着されており、このカフが広がって弁下の部分で圧着させて固定するタイプの弁であり、このカフの部分が人工弁の本来のカフの部分よりも0.8mm大きいためにサイザーも大きめです。このため、従来の人工弁が通過する弁輪径でも入らないということが多く発生する可能性があります。特に横須賀市立うわまち病院では80才以上の高齢者の患者さんが1/3以上を占めており、小柄な女性が多いため弁輪径が小さい可能性が高い現状があります。術前の計測で23mmある患者さんでも19mmが入らないということも起きていますし、また、術前19mmギリギリという患者さんでも21mmが入ったという事例もありました。
 特にスーチャレス弁は適切なサイズを移植しないと弁周囲逆流が起きる可能性が増えるので術中のサイズ選択は非常に重要です。
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第26回日本冠動脈外科学会演題絶賛募集中

2021-03-28 06:04:40 | 虚血性心疾患
 今年の日本冠動脈外科学会は山口県で行われます。毎年、魅力ある地方都市で行われることが多いこの学会は個人的にはニッチな部分につて議論が行われることが多いので好きなのですが、この新型コロナウィルスパンデミックの影響で昨年は開かれませんでした。同じような学会で冠疾患学会というのもあるので、今後一緒になるとか、同時開催とかいう案も出ている、心臓血管外科領域としては若干マイナーなイメージの学会でもあります。
 学会くらいしか大手を振って旅行できる機会がない心臓血管外科医にとっては、こうした地方で行われる学会は年間スケジュールにおける楽しみな日程でもあります。特に、山口県は筆者も今まで訪れたことがなく、主幹する山口大学にはかつて苦楽を共にして一緒に働いた昔の仲間もいるので、とても楽しみにしています。昨年の東京での血管外科学会、京都での心臓血管外科学会、そして今年の名古屋での血管外科学会と、オンライン学会への変更によって非常に学会してしまいましたので、是非山口の冠動脈外科学会は是非現地で開催してほしいです。ハイブリッド開催にすれば、参加人数も増える可能性もあるし、また、現地に集まる人も少なくてすむのではないでしょうか。

 この第26回日本冠動脈外科学会、現在演題募集を締め切りを3月31日まで延長しての絶賛募集中です。締め切り2日前ですが、さきほど5時半にMICS-CABGに関連する演題応募をしました。締め切り二日前ですが、演題登録番号が10054でした。演題応募54人目ということでしょうか?山口は明治の偉人をたくさん輩出した日本の歴史を大きく変えるきっかけになった土地です。あと二日、たくさんの人が演題を応募してくれて活気ある学会になってほしいと心から願っています。
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桜満開!

2021-03-27 07:44:00 | その他


横須賀市立うわまち病院の敷地内にある桜も満開です。一日も早く花見が皆でできる日を待ちのぞみんでます。
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かしめる、とは?

2021-03-25 20:43:41 | 心臓病の治療
かしめる
リベットを用いて、板と板とを繋ぎ合せる場合に使う言葉で、穴を開けた2枚の板にリベットを通し、飛出た軸先端部(かしめ部)を専用工具,専用設備を使って潰し、固く密着させること。

とネットで検索したところ解説がありました。要は金属の固定、密着に使う専門用語で、一般的な言語で使うことの少ない言葉のようです。今日のモーニングカンファレンスで、かしめる、という言葉を初めて聞いたという人もいました。

かしめる、とはTAVI(経皮的大動脈弁挿入術)において、人工弁を小さく折りたたんで細いカテーテルの中に内装するために変形させる工程を指します。TAVIが一般的になってから、この「かしめる」という言葉をよく聞くようになりました。
 Sutureless人工弁のPercevalもこの「かしめる」工程が挿入前に必要になります。

かしめる は、感じでは加締める、とも書くようです。
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Rapid Deployment Valve : Perceval and Intuity

2021-03-25 18:30:23 | 心臓病の治療
 大動脈弁置換術においての最近のトピックとして、新しくスーチャレス弁が発売され、臨床使用できるようになりました。
 Self ExpandingのPercevalと、Magna弁の下にあるカフを圧着させるIntuityがあります。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、より手術時間の短縮を目指して、両者を導入しています。その適応に関しては、75歳以上の高齢者で、より大動脈遮断時間が短くなることのメリットが大きいと思われる、低左心機能症例やその他の合併症をお持ちの症例などを総合的に判断して行っています。

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緊急事態宣言解除

2021-03-22 06:57:16 | その他


ようやく緊急事態宣言解除ですが、宣言中も多くのCOVID-19患者が発生しており、このあと飲食店の制限がとれてしまうと更に感染拡大がすすんでしまうのではないでしょうか。早くワクチンがいきわたって防御態勢を構築するしかないと思います。早くマスクのいらない日常がもどってくれることを待ち望んでいます。
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低侵襲手術は時間が短くないと低侵襲ではない

2021-03-19 20:36:37 | 心臓病の治療
MICSとは、創が小さい、時間が短い、という重要な因子がありますが、


なかでも手術時間を短くするには

不要な操作をそぎ落とす

マインドフルネス:所見をありのままにとらえ、今行うべき操作を明確に定義し、遂行に集中する

直視、ロボット、鏡視下、手術時間は4時間で終わるならどの方法でもよい


と、この道の第一人者である名古屋第一赤十字病院 伊藤敏明先生のClosing Remarksでした。
外科医にとって非常に重い、意味のある言葉と思いました。
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MICS Expert Meeting

2021-03-19 19:54:54 | 心臓病の治療
 最近はオンラインの講演会も増えています。ウェビナーなどと呼んでもいますが、自宅にいながら、学会場に行かなくとも専門家の話が聞けるという非常に便利な時代になったものです。
 新型コロナウィルスの影響でこのようなオンラインカンファレンスの普及は加速したように思います。
 講演会の内容への質問はチャット機能を利用して行うことが多いのですが、多くは座長がそれをみてチャットの質問を取り上げるかどうかにかかっています。その時、かならず自分の所属氏名を記載することで座長から名前を言ってもらえることもあります。名前を言われず、コメントだけ盗られる場合もあります。
 今日はMICS手術におけるウェビナーで、日本のエキスパートの先生が講演してくれています。それを横目でこのブログを書いていますが、自宅のオンライン参加では、パソコンの画面をマルチウィンドウにすることで、メールのチェックやブログの記載、またはネットニュースを見たりといろいろ時間を有効に使えることもメリットです。

 扁平胸郭に対するMICS-MVPの講演をいま視聴していますが、チャットの質問に

扁平胸郭(Narrow Chest)の症例は、MICS-CABG用のThoratrac sysytemで開胸器ごと前方に釣り上げることで胸骨ー椎体間距離が開大して、手術が可能となります。1~2cm僧帽弁の前後径(A2-P2間)が広がり、またワーキングスペースも広がりますので、最短6cm前後の症例でもMICS可能となり、提示していただいたような症例でも、この方法でNarrow Chestの症例は当院では行っています。しかし、漏斗胸の場合はこの方法ではあまり改善しないように思いますが、いかがでしょうか?

というのを書き込みました。MICS-Expertの一人である明石医療センターの岡本先生もThoratrac sysytemで同じように釣り上げるそうです。名古屋の伊藤敏明先生はワイヤーを胸壁を貫いてそれを引き上げるといいともおっしゃっていました。やはりExpertの話を聞くのは勉強になります。
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オランダ少年

2021-03-19 19:19:21 | 心臓病の治療
 オランダは国土の四分の一が海面よりも低く、浅瀬を壁で囲み、その内部を干拓して国土の面積を広げています。この壁が壊れた場合は、多大なる被害が予想されます。
 心臓血管外科領域で時々耳にする「オランダ少年」とは、オランダの国土を指一本で救った美談です。干拓地を囲む壁に小さな穴があいて、海水がちょろちょろ入り込んでいるのを見つけたオランダ少年が指でその穴を塞いでオランダの国土を救ったのです。

 この美談になぞらえて、心臓血管外科でのオランダ少年とは、出血が止まらない術野の部位を外科医が指で出血を制御しているのですが一向に止血ができず、その指が話すことが出来なくなっている状態をさします。時々学会発表でほかの施設のドクターがオランダ少年、という言葉を
口にしているのを聞いて全国共通の概念なのだと思った記憶があります。

 先日都内の大学病院に手術のお手伝いに行きましたが、そこでは「オランダ少年」という言葉が通じなかったので、オランダ少年とはなんぞや、ということを情報提供させていただきました。
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Redo Bentall手術

2021-03-18 06:23:14 | 心臓病の治療
 Redo Bentall手術。心臓外科の手術の中で、最も大きな手術の一つとも言えます。Bentall手術は大動脈基部再建術の主な術式で、主にバルサルバ洞および大動脈弁輪が拡大して大動脈弁逆流を起こす病態に対して、バルサルバ洞を含む大動脈基部を大動脈弁ごと再建する手術です。この手術の難しさは、出血した場合は止血が難しい点、左右冠動脈の再建が必要で、この再建がうまくいかないと命にかかわります。筆者が初期研修医時代、初めてこのBentall手術に第3助手として入った二十代の男性の患者さんは出血が止まらず、10時間も手術時間がかかったうえ、術後ICUでも出血が持続して亡くなりました。昔は待期手術で亡くなる人も多かったと思います。今ではノウハウも蓄積してきたこと、医療技術の進歩なども加わって手術時間は4~5時間、待期手術の死亡もかなり減っているのではないでしょうか。
 しかしながら、前に心臓大血管の手術を受けた患者さんが再手術でこの大動脈基部再建術が必要になった場合は、外科医としてはかなり構えて行う手術であることに間違いありません。再手術の場合は癒着が起こった状態を剥離してからの手術になるので、冠動脈再建が難しくなる可能性が高い、ということが一つの理由ですし、癒着剥離がうまくできないために再建操作自体が難しくなることもあります。予定の初回手術では4~5時間で終わるところ、再手術ではおそらく7~8時間かかると思います。
 このRedo Bentall手術のポイントは、なんといっても冠動脈再建です。冠動脈を損傷した場合の、修復は困難となるため、冠動脈を閉鎖して大伏在静脈などでバイパスを作成するほうが確実です。また、再建した冠動脈にうまく血流が流れない、ということもあり得ます。その場合は、再吻合するよりも、バイパスを作成するほうが確実です。冠動脈再建部位から出血した場合は大動脈遮断解除後は見えなくなるので止血が非常に難しくなります。
 こうしたポイントを常に念頭に置きながら手術をすることで、危険回避しながら手術するためか、今までの経験上は、Redo Bentall手術の成績は実は悪くありません。危険予測とその対策を十分に行うことが、大きな手術を行う上で重要といえます。
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心臓手術後の患者さんは新型コロナウィルスワクチンを打っていいの? 答えはYES!

2021-03-18 06:11:36 | 心臓病の治療
 心臓手術後の患者さんは新型コロナウィルスワクチンを打っていいの?
 こんな質問をこの一か月以上、外来のたびに多くの患者さんにされます。テレビでは連日新型コロナウィルスのニュースが番組の最初、しかもおそらくニュース部分の半分近くを占めています。その中でも、最近はワクチンの副作用の話題ばかりを取り上げて、日本人のワクチン恐怖をあおっています。その一方で、ワクチンの効果に関しては報道している比率はその10分の1以下でしょうか。ワクチンは有効である、ということは海外で開始されている事実、日本政府が承認していることから当然みんな知っているでしょう、しかし、こんな危険性もある、ということを言いたいのでしょうが、視聴者からは、ワクチンは危険性ばかりで有効性がない、という印象を持たせる内容ばっかりです。同時に出演する感染症専門家が言い訳のように、「大丈夫だ」のようなことを開設しますが、番組の趣旨が視聴者に強いインパクトを与えるために危険性をあおることを目的にしているとしか見えません。
 心臓手術後の患者さんの多くは65才以上の高齢者で、特に新型コロナウィルスに罹患した場合に重症化し、死亡するリスクの高い人たちです。手術によって心不全が完治している人は、心臓の病気を持っていない人と同じリスクということになると思いますが、それでも高齢者は罹患した場合の死亡率は約2%あります。これは命がけで手術を受ける大動脈弁置換術などの手術死亡率と同じ、とも言えます。その手術リスクを大きく下げる効果がある、という薬があるならだれでも手術前にその薬を使いたいと思うように、新型コロナウィルスのワクチンもかかった場合は死亡率を下げる、ということがわかっているので、打つべき、と結論していいと思います。
 不安な情報がたくさん氾濫しているのは事実ですし、筋肉注射したあと、その夜から2-3日腕が上がらなくなるくらい痛いので手術の執刀前には打たないほうがいい、というようなことも実際に打った知り合いにも聞きましたが、それでも罹患し場合の恐怖を考えるとみな、一日も早くワクチンを打つべきでしょう。
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第185回 胸部外科学会地方会

2021-03-13 16:09:02 | 心臓病の治療
 胸部外科学会関東甲信越地方会が本日行われています。今回は完全オンライン開催となっています。参加者はだんだんオンラインのこうした学会に慣れてきた感がありますが、聴講者からの質問ができないのがイマイチです。せっかくのZoom会議なのが、チャット機能が閉鎖されて視聴者がディスカッションに参加できません。
 演者のみがディスカッションできるという学会のオープン性が失われている規格で残念に思っている人がたくさんいると思います。
 しかも前回の地方会がハイブリッド開催で久しぶりに学会場に足を運んでFace to Faceで議論が出来たこともあり、今回もそれを期待して演題を応募した人もおおのか、いつもよりもたくさんの演題が集まっているように見えます。

 是非次回は会場で顔を合わせながらの議論ができることを期待します。

 横須賀市立うわまち病院からは、二演題を応募しております。
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腋窩動脈送血を安定した送血路とするための工夫と教育(第49回日本血管外科学会総会発表)

2021-03-11 15:16:23 | 心臓病の治療
第49回日本血管外科学会総会の演題採用通知がきました。今回は、腋窩動脈送血を安定した送血路とするための工夫と教育というテーマで、特に横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では腋窩動脈送血についての教育を重視しており、普段のその注意点などについて報告使用と思います。残念ながら今回はオンライン開催で、ライブでのディスカッションがなく、非常に低調な学会になってしまいそうです。一日も早く新型コロナウィルスのパンデミックが終息して、学会場で活発な議論や交流が出来るようになる日を心待ちにしています。

 以下、抄録です。

【背景】腋窩動脈送血は、上行大動脈送血が困難な症例の代替送血路として重要で、特に胸部大動脈手術や粥腫の多い症例に有用であるが、近年は側方小開胸アプローチによる心臓手術に伴って実施される症例が増えている。腋窩動脈を露出、愛護的な取り扱い、人工血管の縫着、送血中の血圧管理など確実、安全に実施することが求められるため、特に若手医師への手技教育が重要である。
【目的】腋窩動脈送血実施における手技およびトラブルシューティングについて検討し、教育的観点から安全、確実な腋窩動脈送血を確立する。
【方法】2002年から2020年の同一術者における人工心肺手術1024例のうち、腋窩動脈送血を実施したのは200例(20%)で、人工心肺における送血路の実情を検討した。術式の内訳は急性大動脈解離53例、下行~胸腹部大動脈置換45例、冠動脈バイパス術25例、小開胸アプローチによる弁手術28例、正中切開による弁手術49例で、特に上行大動脈または大腿動脈送血が危険と判断した症例に多く採用した。人工血管縫着が198例、送血管留置が2例。
【手技】腋窩動脈の露出は大胸筋の背面に到達し、胸肩峰動脈を根部に向かって追跡して腋窩動脈本幹(第二部分)を露出し10分以内を目標にテーピングする。この際、小胸筋は中央で切離して、術野を拡大。最上胸動脈、肩甲下動脈の間で可能な限り長く剥離して人工血管縫着するスペースを確保。遮断は愛護的にブルドック鉗子を使用し、人工血管8~10mmを端側吻合する。人工血管分後部の末梢側にはターニケットをかけて、送血圧を術中に制御する。
【結果】腋窩動脈送血が中止し、送血路変更を要した症例は8例(4%)で、原因として腋窩動脈が細すぎる症例が2例、解離の進展2例、偽腔圧上昇1例、送血圧上昇2例、遮断による部分的な新たな解離発生1例。送血路の変更先として、対側の腋窩動脈1例、心尖部送血1例、解離している上行大動脈の真腔1例、大腿動脈5例であった。術後の脳梗塞発生は3例あり、内訳は、術前からの頸動脈解離していた大動脈解離が2例、循環停止を伴う下行置換1例であったが腋窩動脈送血との関連は不明。
【考察】理論上安全な腋窩動脈送血も4%に実際の送血に問題が発生し、送血路の変更などを必要としていた。人工心肺開始時の循環の変化を注意深く観察し、送血路の追加や変更など迅速かつ的確な対応を要する症例が多い。
【結語】腋窩動脈送血におけるトラブルシューティングから安全なリカバリーが出来るように普段から手技、対応に精通しておく必要がある。
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