7月29日に第1回関東大動脈外科カンファレンスという研究会が行われます。クローズドな催しですが、オンラインで大動脈診療について話し合う会となっております。特別講演として筑波記念病院の西智史先生のステントグラフト治療に関するレクチャーと、筆者が急性大動脈解離に関するレクチャーを行い、それについてディスカッションする内容となっております。今回は3拠点をつないでの会となりますが、こうした現地会場を結んだ企画というのはこれから発展していくのかもしれません。
一般の下行大動脈に対する人工血管置換術 と異なり,人工血管に置換する大動脈の瘤 より中枢部側および末梢部側の各前壁だけ を切離し,切離した中枢側部位から人工血 管を大動脈に挿入してこれを末梢側に引っ 張って通し,中枢部,末梢部とも切離して いない後壁側正常血管に人工血管を吻合す る方法.手術侵襲が小さい反面,人工血管 に置換した範囲の肋間動脈を視認できない ため,その再建はできなくなる。
との説明がありますが、ネットでの検索では同術式の説明が見当たらず、自分も経験がないので具体的にはどのような手技で行うのか理解できません。おそらくステントグラフト手術が発達した現在では、実施する必要のない術式なのかもしれませんが、オープンステント内装術(LIQS)の中枢側の固定のようなことを遠位側で行うということなのでしょうか?参考までにどなたか教えていただけないでしょうか。
この、プルスルー法を実施した際に発生した脊髄虚血による対麻痺の件での訴訟が複数あるようです。
急性大動脈解離、特に上行大動脈に解離がおよぶStanford A型の解離は直ちに手術をしないと救命できない症例が多い重大な疾患です。心臓血管外科の診療の中では緊急手術のなかで最も多いのが、この急性大動脈解離です。死因の一位は、大動脈破裂による心タンポナーデで、他に、大動脈弁逆流、分枝の閉塞による臓器虚血(Malperfusion)などが命を脅かす病態です。
一刻を争う症例が多く、少しでも早く手術室へ入室し、人工心肺を開始して、種々の循環不全に対応する必要があります。
急性大動脈解離が搬送されてきた時点で、常にそのまま手術室に入れる状況とは限らないのが現状で、その時に心臓血管外科チームが他の手術中であったり、手術室がすべて使用中であったり、またICU入室が満床のためできない、心臓血管外科医はいても麻酔科医、臨床工学技士、ナースなどのスタッフが足りないなどの現実的な状況が常にあり得ます。というのも、年間の発生数10万にあたり5~10人の急性大動脈解離のためだけにスタッフが常備していることはあり得ませんし、その緊急対応が必要な症例が同時に複数発生することもあります。
いずれにしろ、一刻も早く手術室へ搬入して救命のための処置を開始することが救命に最も近づくことは間違いありません。そうした状況を少しでも打開するために、東京都では急性大動脈解離スーパーネットワークを立ち上げて、その発生時点で受け入れ可能な施設がネットワークを構築して情報共有することで、適切に対応できる施設はどこか、ということを効率よく受け入れできる体制を作っています。
前任地である自治医科大学さいたま医療センター心臓血管外科においても、急性大動脈解離の相談があるときは、直ちに手術室へ搬入できるかどうかを判断し、受け入れ困難な場合は近隣の主に関連施設に応需を依頼する方針とし、決して手術が出来ないのに不用意に受け入れはしないことで、患者さんが最も適切な対応が最短で受けることが出来るようにしています。
横須賀市においては横須賀市立うわまち病院以外に横須賀共済病院にも心臓血管外科があり、どちらの施設がより早期に対応できるかによって、場合によっては患者を転送することで救命を優先しています。この5年間に2例の急性大動脈解離を横須賀共済病院へ転送をお願いし、また横須賀共済病院からは年間数例の転送症例を受けれいています。この両病院が急性大動脈解離などの緊急手術が対応できないときは横須賀市街の病院へ転送することになり、現実としてはこの5年間で、横須賀市立うわまち病院から転送した大動脈の救急疾患は、横浜市立大学病院、湘南鎌倉総合病院、川崎幸病院にそれぞれ1例ずつを転送依頼しました。それでも9割以上の依頼症例を転送することなく受け入れており、こうした工夫によって急性大動脈解離の救命率は非常に高い数値を維持しております。
横須賀市立うわまち病院の急性大動脈解離の手術死亡率は約3%で、全国平均の約10%を大きく下回っております。これは、最も早く手術室へ搬入できる施設で治療することを優先している結果とも言えます。
多くの急性大動脈解離を治療している施設ほど、救命率が低い傾向にありますが、これはそれほど救命困難な重症例も数多く手術していることを表しており、必ずしも施設の診療レベルを表しているものではないということに注意が必要です。
一刻を争う症例が多く、少しでも早く手術室へ入室し、人工心肺を開始して、種々の循環不全に対応する必要があります。
急性大動脈解離が搬送されてきた時点で、常にそのまま手術室に入れる状況とは限らないのが現状で、その時に心臓血管外科チームが他の手術中であったり、手術室がすべて使用中であったり、またICU入室が満床のためできない、心臓血管外科医はいても麻酔科医、臨床工学技士、ナースなどのスタッフが足りないなどの現実的な状況が常にあり得ます。というのも、年間の発生数10万にあたり5~10人の急性大動脈解離のためだけにスタッフが常備していることはあり得ませんし、その緊急対応が必要な症例が同時に複数発生することもあります。
いずれにしろ、一刻も早く手術室へ搬入して救命のための処置を開始することが救命に最も近づくことは間違いありません。そうした状況を少しでも打開するために、東京都では急性大動脈解離スーパーネットワークを立ち上げて、その発生時点で受け入れ可能な施設がネットワークを構築して情報共有することで、適切に対応できる施設はどこか、ということを効率よく受け入れできる体制を作っています。
前任地である自治医科大学さいたま医療センター心臓血管外科においても、急性大動脈解離の相談があるときは、直ちに手術室へ搬入できるかどうかを判断し、受け入れ困難な場合は近隣の主に関連施設に応需を依頼する方針とし、決して手術が出来ないのに不用意に受け入れはしないことで、患者さんが最も適切な対応が最短で受けることが出来るようにしています。
横須賀市においては横須賀市立うわまち病院以外に横須賀共済病院にも心臓血管外科があり、どちらの施設がより早期に対応できるかによって、場合によっては患者を転送することで救命を優先しています。この5年間に2例の急性大動脈解離を横須賀共済病院へ転送をお願いし、また横須賀共済病院からは年間数例の転送症例を受けれいています。この両病院が急性大動脈解離などの緊急手術が対応できないときは横須賀市街の病院へ転送することになり、現実としてはこの5年間で、横須賀市立うわまち病院から転送した大動脈の救急疾患は、横浜市立大学病院、湘南鎌倉総合病院、川崎幸病院にそれぞれ1例ずつを転送依頼しました。それでも9割以上の依頼症例を転送することなく受け入れており、こうした工夫によって急性大動脈解離の救命率は非常に高い数値を維持しております。
横須賀市立うわまち病院の急性大動脈解離の手術死亡率は約3%で、全国平均の約10%を大きく下回っております。これは、最も早く手術室へ搬入できる施設で治療することを優先している結果とも言えます。
多くの急性大動脈解離を治療している施設ほど、救命率が低い傾向にありますが、これはそれほど救命困難な重症例も数多く手術していることを表しており、必ずしも施設の診療レベルを表しているものではないということに注意が必要です。
LIQS手術=Less Invasive Quick open-Stentingは弓部大動脈瘤に対して大動脈弓部の切開口から遠位側に向かってオープンステント挿入し、大動脈内側から人工血管部分を縫着する術式です。弓部大動脈置換術をオープンステントの近位側に行なわなくて良いので短時間で手術可能です。当院で行なった症例でも、通常4時間以上かかることの多い、弓部大動脈置換+オープンステント挿入術が3時間ほどで終了することが可能です。
しかしながら、この低侵襲な術式にも落とし穴があり、重大な合併症を発生するリスクがあります。
① 一つは、Blindで行なう連続縫合で人工血管部分を大動脈内側に縫着する場合に、針の運針で食道をあやまってかけてしまい、食道損傷から縦隔炎を発生するリスクがあります。この合併症を発生させないための工夫としては全周にわたってできるだけ大動脈壁を周囲組織から剥離しておくこと、また、過去に全周マットレス縫合で固定した場合は全ての運針の支出点が食道をひっかけていないことが確認できるため、こうした方法も良い方法です。
② 上記に関連してブラインドで縫着する部分でもし針穴から出血した場合は止血に非常に難渋することがあるということです。全周マットレス縫合で固定し、その大動脈の外側の固定にもフェルトなどを置いて補強することで出血を予防することが出来ます。
どんな良い術式にもちょっとした落とし穴がありえます。こうしたピットフォールを常日頃から熟知しておくことは重要です。
しかしながら、この低侵襲な術式にも落とし穴があり、重大な合併症を発生するリスクがあります。
① 一つは、Blindで行なう連続縫合で人工血管部分を大動脈内側に縫着する場合に、針の運針で食道をあやまってかけてしまい、食道損傷から縦隔炎を発生するリスクがあります。この合併症を発生させないための工夫としては全周にわたってできるだけ大動脈壁を周囲組織から剥離しておくこと、また、過去に全周マットレス縫合で固定した場合は全ての運針の支出点が食道をひっかけていないことが確認できるため、こうした方法も良い方法です。
② 上記に関連してブラインドで縫着する部分でもし針穴から出血した場合は止血に非常に難渋することがあるということです。全周マットレス縫合で固定し、その大動脈の外側の固定にもフェルトなどを置いて補強することで出血を予防することが出来ます。
どんな良い術式にもちょっとした落とし穴がありえます。こうしたピットフォールを常日頃から熟知しておくことは重要です。
オープンステント挿入術は弓部大動脈瘤に対してより低侵襲な手術方法として定着した感があります。通常は鎖骨下動脈の遠位もしくはその近位側からオープンステントを挿入し、その近位側は弓部大動脈置換を行なうのが一般的です。しかし、弓部大動脈瘤の瘤よりも近位側の正常な部分は人工血管と置換せず、弓部大動脈の一部を切開したところからオープンステントのみを挿入留置し、近位側を弓部大動脈の中に縫着して終わる方法を日本大学の秦先生が提唱しLIQS手術と命名しています。LIQS手術は、Less Invasive Quick openStetingの略で、この方法ですと、弓部置換を行なわないためより短時間での手術が可能で、オリジナルの方法では平均手術時間2時間14分ほどだそうです。
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも可能な症例はこれまで3例ほど実施しておりますが、症例事に切開部位、縫着方法などに個別の工夫が必要で、特に安全性を考慮して、循環停止中の脳分離送血併用を行なっていることもあるため、単純なLIQS手術では三時間半くらいで終わっておりますが弓部置換を追加するよりは一時間近く手術時間が短い印象があります。
高齢者や合併症のある患者さんには低侵襲な方法として検討すべき術式です。商業メースのオープンステントが市場に出てから7年近くたち、その術式としてオープンステント挿入術の保険点数も弓部置換を伴うものと、オープンステント挿入のみの方法で手術手技量にも差がつけられており、このLIQS手術はオープンステント挿入術として計上されるものと思いますが、このオープンステント挿入術とLIQS法が全くの同一のものなのか、他の施設ではこうした術式を行なう場合にLIQS手術と呼んでいるのか、もしくは日本大学の秦先生以外はあまり実施されていない手術方法なのか、学会などでも発表しているのを聞いたことがないのでわかりません。我々自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の医局でもおそらくLIQS手術の経験があるのは、横須賀市立うわまち病院だけかもしれません。しかし、非常に低侵襲でいい手術方法なので、症例によっては積極的に採用してよい術式と思います。
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも可能な症例はこれまで3例ほど実施しておりますが、症例事に切開部位、縫着方法などに個別の工夫が必要で、特に安全性を考慮して、循環停止中の脳分離送血併用を行なっていることもあるため、単純なLIQS手術では三時間半くらいで終わっておりますが弓部置換を追加するよりは一時間近く手術時間が短い印象があります。
高齢者や合併症のある患者さんには低侵襲な方法として検討すべき術式です。商業メースのオープンステントが市場に出てから7年近くたち、その術式としてオープンステント挿入術の保険点数も弓部置換を伴うものと、オープンステント挿入のみの方法で手術手技量にも差がつけられており、このLIQS手術はオープンステント挿入術として計上されるものと思いますが、このオープンステント挿入術とLIQS法が全くの同一のものなのか、他の施設ではこうした術式を行なう場合にLIQS手術と呼んでいるのか、もしくは日本大学の秦先生以外はあまり実施されていない手術方法なのか、学会などでも発表しているのを聞いたことがないのでわかりません。我々自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の医局でもおそらくLIQS手術の経験があるのは、横須賀市立うわまち病院だけかもしれません。しかし、非常に低侵襲でいい手術方法なので、症例によっては積極的に採用してよい術式と思います。
胸部大動脈瘤に対する上行大動脈置換術。ちょうど手術時間が3時間00分00秒。まさにドラマのようなピッタリの時間で終了。キリのいい数字って気持ちいいです。この手術に筆者は参加しておらず、若手のチーム編成で担当してもらいましたが、筆者としては皮膚縫合の段階で術者となった若手のドクターに、3時間切るように命じたのですが、一秒遅れました。
毎週木曜日に行っている心臓血管外科のズームカンファレンスで受けた質問で、腸骨動脈瘤の手術適応のサイズと何歳まで手術可能か、というのがありました。
腸骨動脈瘤の一般的な手術適応のサイズは3cmです。だいたいご高齢の患者さんが多いので、定期的にフォローアップしてこれ以上年を重ねる前に手術した方が望ましいというタイミング、拡大の速度、患者さんのADL、治療意欲などをみながら総合的に判断するとともに、患者さんおよびご家族の希望も聞いて手術適応とするのかどうかを最終的に決定しています。
腸骨動脈瘤のみの場合は開腹せず後腹膜アプローチからの人工血管置換でより低侵襲に治療可能ですし、最近はステントグラフトでうまくいく症例もありますので、術式に関しても患者さんのADLなどを見て相談しています。
基本的に寝たきりの患者さん、ADLが自立していない患者さんについては手術はお勧めしていませんが、社会的な事情やご家族の強いご希望があれば相談には応じています。
腸骨動脈瘤に限らず他の心臓血管外科手術症例についても個別の適応については相談しています。
腸骨動脈瘤の一般的な手術適応のサイズは3cmです。だいたいご高齢の患者さんが多いので、定期的にフォローアップしてこれ以上年を重ねる前に手術した方が望ましいというタイミング、拡大の速度、患者さんのADL、治療意欲などをみながら総合的に判断するとともに、患者さんおよびご家族の希望も聞いて手術適応とするのかどうかを最終的に決定しています。
腸骨動脈瘤のみの場合は開腹せず後腹膜アプローチからの人工血管置換でより低侵襲に治療可能ですし、最近はステントグラフトでうまくいく症例もありますので、術式に関しても患者さんのADLなどを見て相談しています。
基本的に寝たきりの患者さん、ADLが自立していない患者さんについては手術はお勧めしていませんが、社会的な事情やご家族の強いご希望があれば相談には応じています。
腸骨動脈瘤に限らず他の心臓血管外科手術症例についても個別の適応については相談しています。
横須賀市立うわまち病院での急性大動脈解離の緊急手術は年間10例前後です。横須賀市内には当院以外に、横須賀共済病院にも心臓血管外科があるので、この二施設で急性大動脈解離の緊急手術が行われており、それぞれの施設でほかの手術中だったりしてすぐに対応できない場合は患者さんを紹介して、どちらかの施設で緊急手術ができるような体制を目指しております。やはり地域の緊急疾患は地域で完結することが理想ですし、特に急性大動脈解離は搬送する間に命を失う可能性がある急性疾患ですので、移送するにしてもできるだけ短時間で手術室に入れるところを選択することが救命の鍵になります。
うわまち病院から横須賀共済病院にお願いした症例もありますし、横須賀共済病院から紹介される症例もあり、うわまち病院の場合の急性大動脈解離の緊急手術症例の多くは、横須賀共済病院もしくは横須賀市立市民病院からの症例です。特に横須賀共済病院からの紹介症例のほとんどは、日中の定時手術に同時に緊急手術に対応できないという理由での搬送ですので、ほとんどが日中、特にお昼前後の時間帯が多く、手術日が重なっていない時間帯が多いので、当院に搬送後もすぐに手術室に入れることが多い印象です。当院の手術室が空くまで時間がかかる、もしくは実施中の手術の目途がたっていない、という理由で受け入れできなかった場合もあります。
この二施設が緊急手術受け入れできなければ、横浜市、鎌倉市、川崎市内の病院まで搬送しなければなりません。
これからも二施設で連携しながら三浦半島の患者さんを地域で完結できるような体制を維持していく必要があります。
うわまち病院から横須賀共済病院にお願いした症例もありますし、横須賀共済病院から紹介される症例もあり、うわまち病院の場合の急性大動脈解離の緊急手術症例の多くは、横須賀共済病院もしくは横須賀市立市民病院からの症例です。特に横須賀共済病院からの紹介症例のほとんどは、日中の定時手術に同時に緊急手術に対応できないという理由での搬送ですので、ほとんどが日中、特にお昼前後の時間帯が多く、手術日が重なっていない時間帯が多いので、当院に搬送後もすぐに手術室に入れることが多い印象です。当院の手術室が空くまで時間がかかる、もしくは実施中の手術の目途がたっていない、という理由で受け入れできなかった場合もあります。
この二施設が緊急手術受け入れできなければ、横浜市、鎌倉市、川崎市内の病院まで搬送しなければなりません。
これからも二施設で連携しながら三浦半島の患者さんを地域で完結できるような体制を維持していく必要があります。
大動脈解離における分類において昨年、新しい表記方法の提案があり、今後は学会発表や論文などでの表記はこの方式に変更していくものと思われます。
A型かB型かと、それに大動脈解離を呈している範囲(Zone0~12)を表記することでより、大動脈解離の実像が分かりやすくなる可能性があります。
たとえば、下行大動脈の上部から腹部大動脈まで解離している場合は、B4,9と記載します。A型の場合はZone0の表記は不要で、単に末梢側の管理範囲を記載し、たとえばA10などとなります。I型とは、上行大動脈に解離がおよぶがエントリーがはっきりしない、日本で言う血栓閉塞型と言われるものです。血栓閉塞型という分類はこれではなく、内膜血腫=Intramural hematomaという分類をしています。日本の場合は内膜血腫も実はエントリーが見えないだけどどこかに小さいエントリーがあって真腔と偽腔が交通している、という概念で考え、通常の大動脈解離と同じ扱いをしています。
今までのA型、B型、DeBakey分類などは今後表記されなくなるとおもいますが、内膜血腫おける考え方の違いから日本の場合はすぐにこの表記方法が普及するか微妙ですが、洋ものを重視する古来からの日本人の性格からはすぐに一般化するのかもしれません。
再発性多発軟骨炎は原因不明の指定難病で、日本国内に約500人の患者さんがいるそうです。この疾患では大動脈壁の脆弱性から大動脈瘤を形成する可能性があり、その、急速に拡大する大動脈瘤に対してALPSアプローチから上行~弓部~下行大動脈置換術を実施した経験があります。急速に拡大する瘤に対してそれまで軟骨炎に対して大量のステロイド剤を使用していたのを、急速に減量し準緊急での手術となりました。ベーチェット病など、他の結合組織病のように組織が脆弱で吻合や止血に難渋した印象はありません。
こうした患者さんは他の大動脈組織にも同様の急速な変化を来す可能性があり、バルサルバ洞拡大や大動脈弁輪拡張症から大動脈弁逆流による心不全を起こす可能性もあります。軟骨炎とともに定期的な大動脈の検査も必要です。
こうした患者さんは他の大動脈組織にも同様の急速な変化を来す可能性があり、バルサルバ洞拡大や大動脈弁輪拡張症から大動脈弁逆流による心不全を起こす可能性もあります。軟骨炎とともに定期的な大動脈の検査も必要です。
急性大動脈解離の緊急手術を受け、救命された患者さんが、その後の人生を孤児のお世話をすることで社会貢献していることを聞いて、感動しました。
救ってもらった命を、他の人の為に使う、久しぶりに聞いた美しい話だと思いました。心臓血管外科医としてたくさんの命を救ってきた、と思うことがある反面、その救われた命を他の人に使うといった精神、現在の日本人には無くなってしまった感性かと思っていました。海外ではそうした精神が息づいていて、心臓移植を最初に受けた患者さんがその後の人生を心臓移植の普及に人生をかけた、というような偉大な功績をあげるといった美談を聞いたことがありますが、日本人ではそうした美談、あまりないように思いますが、いかがでしょうか。
そうした美談、積極的に社会に紹介していく必要があるのではないかと思いました。
そうした孤児の人数は横須賀市が異常に多いのだそうです。先々月の横須賀市の後方に大々的に大きな写真で特別養子縁組の宣伝をされていましたが、興味のある方は連絡ください、としか記載されておらず、具体的な実情は全くわかりませんでした。日常生活では全く接することがない、そうした子ども達、ドラマや映画の話、としか思っていない人、筆者も含めてほとんどの人だと思いますが、もう少しDisclosureしないと、こうした美談も生まれない社会がますます悪い方向へ行ってしまうのではないでしょうか・・・。
救ってもらった命を、他の人の為に使う、久しぶりに聞いた美しい話だと思いました。心臓血管外科医としてたくさんの命を救ってきた、と思うことがある反面、その救われた命を他の人に使うといった精神、現在の日本人には無くなってしまった感性かと思っていました。海外ではそうした精神が息づいていて、心臓移植を最初に受けた患者さんがその後の人生を心臓移植の普及に人生をかけた、というような偉大な功績をあげるといった美談を聞いたことがありますが、日本人ではそうした美談、あまりないように思いますが、いかがでしょうか。
そうした美談、積極的に社会に紹介していく必要があるのではないかと思いました。
そうした孤児の人数は横須賀市が異常に多いのだそうです。先々月の横須賀市の後方に大々的に大きな写真で特別養子縁組の宣伝をされていましたが、興味のある方は連絡ください、としか記載されておらず、具体的な実情は全くわかりませんでした。日常生活では全く接することがない、そうした子ども達、ドラマや映画の話、としか思っていない人、筆者も含めてほとんどの人だと思いますが、もう少しDisclosureしないと、こうした美談も生まれない社会がますます悪い方向へ行ってしまうのではないでしょうか・・・。
脳虚血に関しては、人工血管置換術を行うことで脳の障害が悪化する可能性がありますので慎重に判断する必要があると思います。すでに不可逆的な脳の障害があり、この脳の状態が致命的な場合は手術適応なしと判断することがありますが、通常は心タンポナーデの解除、弓部分枝入口部の狭窄の解除などで生命を保存する必要がある場合はCentral Operationを行います。ただこの場合は、一刻も早く脳の血流を確保することが優先されますので、胸骨正中切開を虚血のある側の頸部に延長して総頚動脈を露出し、人工心肺開始と同時に頸動脈から直接送血を行っています。救急外来でPCPSを設置してこの処置を試みている施設もありますが、これは主にすぐに手術室に入れない状況で行っているもので、施設の事情次第と思います。頸動脈の血行再建は、Central Operationと同時にこの頸部に人工血管を吻合して再建しています。そのため、脳虚血がある症例はCentral Operationと頸部の血行再建を同時に行っている、と言えると思います。
(血管外科学会総会発表に対する質問への回答)
(血管外科学会総会発表に対する質問への回答)
腸管虚血を合併する急性大動脈解離に対するCentral Operationの妥当性について発表しています。
この発表について
CentralOperationを行ったにもかかわらず、腸管虚血が残存し、下肢血流も不十分な症例に遭遇したことがあります。そのような症例の場合、先生であれば腸管の血管にバイパスをする際、インフローはどこから持ってくるのが良いとお考えでしょうか?
というご質問に対しての回答:
Central Operationを行っても下行大動脈以下の真腔狭窄が解除されない場合に下肢と腸管虚血が残存するということは、上行大動脈置換もしくは部分弓部置換術を術式として選択し、下行大動脈のリエントリーから偽腔に血流が多く流入してしまうことで起こりえます。下行大動脈の真腔を拡大させる弓部置換+オープンステントでは通常起こりません。この時にとる対処としてSMA,CeAへのバイパス追加よりも優先して行うべきは真腔の拡大であり、これには
①下行大動脈にステントを留置して真腔拡大(+リエントリー閉鎖)
②上行大動脈置換した人工血管から両側大腿、もしくは外腸骨動脈へバイパスを作成
③開腹して腹部大動脈に開窓術を追加する(経カテーテル的な開窓も可)
のいずれかを行う必要があります。
上記①②③を行って真腔狭窄が解除されても腸管虚血が残存する場合は、分枝内での真腔狭窄残存や内膜断裂などが起こっている可能性が高く、この場合はバイパス追加が必要となります。この時のソースとしては通常外腸骨動脈または総腸骨動脈が妥当で、そのためにも上記①②③により真腔の拡大措置を優先する必要があります。開窓術を行った後に解離のある腹部大動脈に大伏在静脈を吻合してバイパスを追加した経験がありますが、手技的な不安が大きく、おすすめできません。また、経験はありませんが②の下肢の血行再建した人工血管をソースにすることも可能と考えます。
いずれにせよ、術前CTで下行大動脈の真腔狭窄がある症例は弓部置換+オープンステントを行うべきであり、最初の術式選択で真腔狭窄を残さないようにすることが重要と考えます。その意味でも今回の発表での、腸管虚血がある症例にCentral Operationを優先することが妥当、という結論が正しいと信じて日常診療を行っております。
と、返答しました。
この発表について
CentralOperationを行ったにもかかわらず、腸管虚血が残存し、下肢血流も不十分な症例に遭遇したことがあります。そのような症例の場合、先生であれば腸管の血管にバイパスをする際、インフローはどこから持ってくるのが良いとお考えでしょうか?
というご質問に対しての回答:
Central Operationを行っても下行大動脈以下の真腔狭窄が解除されない場合に下肢と腸管虚血が残存するということは、上行大動脈置換もしくは部分弓部置換術を術式として選択し、下行大動脈のリエントリーから偽腔に血流が多く流入してしまうことで起こりえます。下行大動脈の真腔を拡大させる弓部置換+オープンステントでは通常起こりません。この時にとる対処としてSMA,CeAへのバイパス追加よりも優先して行うべきは真腔の拡大であり、これには
①下行大動脈にステントを留置して真腔拡大(+リエントリー閉鎖)
②上行大動脈置換した人工血管から両側大腿、もしくは外腸骨動脈へバイパスを作成
③開腹して腹部大動脈に開窓術を追加する(経カテーテル的な開窓も可)
のいずれかを行う必要があります。
上記①②③を行って真腔狭窄が解除されても腸管虚血が残存する場合は、分枝内での真腔狭窄残存や内膜断裂などが起こっている可能性が高く、この場合はバイパス追加が必要となります。この時のソースとしては通常外腸骨動脈または総腸骨動脈が妥当で、そのためにも上記①②③により真腔の拡大措置を優先する必要があります。開窓術を行った後に解離のある腹部大動脈に大伏在静脈を吻合してバイパスを追加した経験がありますが、手技的な不安が大きく、おすすめできません。また、経験はありませんが②の下肢の血行再建した人工血管をソースにすることも可能と考えます。
いずれにせよ、術前CTで下行大動脈の真腔狭窄がある症例は弓部置換+オープンステントを行うべきであり、最初の術式選択で真腔狭窄を残さないようにすることが重要と考えます。その意味でも今回の発表での、腸管虚血がある症例にCentral Operationを優先することが妥当、という結論が正しいと信じて日常診療を行っております。
と、返答しました。
胸部外科学会関東甲信越地方会が東京の都市センター会館で行われました。横須賀市立うわまち病院からは、先天奇形に対する手術歴がある患者さんに発症した急性大動脈解離に対して、マルパーフュージョンから救うために緊急手術を行った症例報告を行いました。非常に難しい手術でしたが、やはりその難しい手術に対してどういうアプローチをするかということが、成功への秘訣です。
まずは、過去に手術歴があると心嚢内は癒着していて破裂して出血しても心タンポナーデにはならないので、じっくり考える余裕があること、アプローチを左開胸にして、癒着した心臓を極力さわらないということも重要です。
まずは、過去に手術歴があると心嚢内は癒着していて破裂して出血しても心タンポナーデにはならないので、じっくり考える余裕があること、アプローチを左開胸にして、癒着した心臓を極力さわらないということも重要です。
腹部大動脈瘤は心臓血管外科の手術の中でも件数の多い手術のひとつです。最近は血管内治療も多くなってきましたが、開腹しての人工血管置換術はまだまだその確実性、再発防止の観点からは有用です。
その腹部大動脈瘤の手術では血管の性状が悪い部分を切開して人工血管置換術を行う必要があるため、それによる塞栓症や狭窄が出来たりすることを防ぐことが手術成績維持のために重要です。
事前の評価として術前の造影CTを十分に検討することが重要です。石灰化病変やプラークの位置、腰動脈など分枝の状況の評価を頭に入れておく必要があります。また、性状が良好な部分も認識しておく必要があります。
術中の評価として事前のCT評価どおりかどうか、解剖学的に吻合しやすい位置にあるか、また形態はどうかなどを評価します。
最終的に遮断、吻合する位置を性状の良好な位置で操作することが、トラブルを防ぐことに最も有用です。もし予想以上に性状が悪い、吻合が難しいという場合は、性状の良好な場所を選んで遮断や吻合をすることが重要です。多くの場合は腸骨動脈領域が石灰化が著しい、または粥腫が豊富な場合は、より遠位側の外腸骨動脈は性状が良好なことが多いので、無理に条件の悪い部位に勝負をかけるのではなく、確実に「勝てる場所」で勝負することが重要になります。それは外科医の力量によっても大きく左右されることになるので、外科医の吻合のテクニック、確実性がどうかも術式に反映されてしかるべきです。再吻合や追加吻合することなく、確実に一発で決める、ということが最優先です。「私、失敗しないので」というのは、まさに正しいことで、「通常の手術においては」失敗しない場所で勝負することが重要です。
若手の医師を指導する場合は特に、その若手医師の技量がどの程度か、それ合わせた吻合位置を選択するなどを想定しながら手術に望むことも常に考えておく必要があります。
その腹部大動脈瘤の手術では血管の性状が悪い部分を切開して人工血管置換術を行う必要があるため、それによる塞栓症や狭窄が出来たりすることを防ぐことが手術成績維持のために重要です。
事前の評価として術前の造影CTを十分に検討することが重要です。石灰化病変やプラークの位置、腰動脈など分枝の状況の評価を頭に入れておく必要があります。また、性状が良好な部分も認識しておく必要があります。
術中の評価として事前のCT評価どおりかどうか、解剖学的に吻合しやすい位置にあるか、また形態はどうかなどを評価します。
最終的に遮断、吻合する位置を性状の良好な位置で操作することが、トラブルを防ぐことに最も有用です。もし予想以上に性状が悪い、吻合が難しいという場合は、性状の良好な場所を選んで遮断や吻合をすることが重要です。多くの場合は腸骨動脈領域が石灰化が著しい、または粥腫が豊富な場合は、より遠位側の外腸骨動脈は性状が良好なことが多いので、無理に条件の悪い部位に勝負をかけるのではなく、確実に「勝てる場所」で勝負することが重要になります。それは外科医の力量によっても大きく左右されることになるので、外科医の吻合のテクニック、確実性がどうかも術式に反映されてしかるべきです。再吻合や追加吻合することなく、確実に一発で決める、ということが最優先です。「私、失敗しないので」というのは、まさに正しいことで、「通常の手術においては」失敗しない場所で勝負することが重要です。
若手の医師を指導する場合は特に、その若手医師の技量がどの程度か、それ合わせた吻合位置を選択するなどを想定しながら手術に望むことも常に考えておく必要があります。