横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

冠動脈疾患と腹部大動脈瘤

2018-05-30 13:36:02 | 大動脈疾患
 冠動脈疾患と腹部大動脈瘤は同時に合併していることが多い疾患です。どちらも原因が共通しており、喫煙、高血圧、高脂血症など、動脈硬化の促進因子が関与しているためと言われています。
 腹部大動脈瘤の術前検査で冠動脈の評価を行うと1~3割の患者様に治療が必要な冠動脈病変が見つかると言われています。心臓血管外科に腹部大動脈瘤で紹介されてきたのに、この虚血性心疾患が診断され、先に心臓の治療をするということは日常非常に多く経験されます。腹部大動脈瘤の術中に出血が多いときなどは特に、心筋虚血なども発生しやすいため、早期に治療しておく必要があります。
 最近は冠動脈の評価に必ずしもカテーテル検査による冠動脈造影は必要なく、冠動脈CTで十分評価できる患者様が増加しています。しかしながら、冠動脈の石灰化が高度な人の場合は、CTでは評価困難なため、やはり冠動脈造影が必要になる人もいます。
 どちらにしろ、病気が複数見つかって落ち込むよりも、何か起きる前に早期に見つかってよかったって思ってもらえたらよいのではないかと思います。

 腹部大動脈瘤の術後、長期的には、実は長生きしていない患者様が多いと言われています。5年後に生存している人は5~7割ほど。せっかく動脈瘤を治したのにどうして長生きできないか、これにはいくつか理由が言われておりますが、一つは冠動脈疾患を合併して心不全や心筋梗塞を起こすことが最大の死因と言われています。また、他にはがんや肺炎なども続きます。やはり高齢者が治療対象になっていることも関係しております。
 治療後も動脈硬化に対する十分な対策を継続的に必要になります。
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MitraClip(ミトラクリップ(マイトラクリップ))

2018-05-29 06:04:20 | 弁膜症
 僧帽弁閉鎖不全症をカテーテルで治す、もしくは軽減する。経カテーテル的大動脈弁位人工弁留置術(TAVI=Transcatheter Aortic Valve Implantation)に続いて、僧帽弁逆流に対してクリップ用のデバイスを使用して僧帽弁の逆流を制御する治療がこの春から保険償還が認められるようになりました。これは、僧帽弁の前尖と後尖の弁縁を、クリップではさんで接合させ、逆流を減少させる手技です。頸静脈的にカテーテルを挿入し、心房中隔をブロッケンブロー法で貫通させてデバイスを移送し、左房側から左室側にカテーテルを設置する画期的な方法です。従来の開心術による僧帽弁形成術ができないハイリスクの患者様に対して、非常に有望な治療法と言えます。腱索断裂による僧帽弁逸脱症などいわゆる、変性による僧帽弁逆流(DMR:Degenerative Mitral Regurgitation)だけでなく、左室拡大に伴う僧帽弁のテザリング(Tethering)や心房細動に伴う僧帽弁輪拡大などの僧帽弁の動きには異常がない機能性の僧帽弁逆流(FMR:Functional Mitral Regurgitation)にも同様に有効と考えられます。
 開心術における僧帽弁の修復方法としてEdge to edge Repairという方法がありますが、これは前尖と後尖を縫合して逆流を制御する手技で、前尖と後尖の中央部(A2とP2)を縫合して僧帽弁口を二つにする、いわゆるDouble Orifice法が典型的なやり方で、これと同じような手技をカテーテル手技を用いてクリップで挟むようなイメージの治療です。

ミトラクップの特徴
1 人工心肺が必要のない僧帽弁形成術
2 拍動下でのリアルタイムな僧帽弁逆流の評価が可能
3 開胸・開心を伴わない静脈アプローチのみの低侵襲治療
4 僧帽弁逆流が最大限減少する部位への弁膜把持が何度でも施行可能
5 外科的介入を温存可能

適応条件
僧帽弁閉鎖不全症>III度
左室駆出率>30%

付帯条件
僧帽弁置換術における死亡率(STSスコア)>8%
高度の大動脈石灰化や上行大動脈の可動性アテローマ症例(Shaggy Aorta)
縦隔への放射線治療歴や縦隔炎の既往
機能性僧帽弁閉鎖不全症かつ左室駆出率40%以下
75歳以上の左室駆出率40%以下
冠動脈バイパス術後
2回以上の心臓胸部大血管手術歴
肝硬変
その他の外科手術の危険因子
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上手に禁煙を達成する方法

2018-05-26 12:06:46 | その他
心臓血管外科の扱う病気は喫煙と関係しているものが非常に多いです。特に虚血性心疾患や大動脈疾患は、体質もありますが、喫煙していることでより病気に拍車がかかります。40~50代の働き盛りの男性で、血圧が高く、レスラーのような体系で、しかも喫煙している人、これだけでいつ突然死してしまうかわからない状態、といっても過言ではないと日々の診療で実感しています。こうした男性はお子さんがまだ小さかったり、教育に一番お金がかかる時期だったりで、万が一倒れた場合は社会的影響の多い一家の屋台骨のような存在です。日本経済においても、この年代の人たちがこの国を支えています。そうした人たちが救命センターに毎日のように心停止など重篤な状態で搬送されてきます。残念ながらこうした人たちにも喫煙者が多いということは肌身に日々感じます。

 さて、手術を受ける前には禁煙が術後合併症を減らし、手術死亡率を減らすともいわれていますが、なかなか毎日喫煙している患者さんにとって禁煙は難しいようですね。若いころから何の疑問も持たずに喫煙することが習慣化している中で、突然何を言っているんだと、気分を害する患者さんがいるのも事実です。確かに男性にとって昔は喫煙するのは当たり前だったし、銀行や市役所の窓口も、職員室の先生も、外来している医者ですら喫煙しながら仕事しているのが普通でしたから。とはいえ、これからオリンピックを開催する国としては禁煙を進めていかなければなりません。

 ではどうやって禁煙を実行するか。まずは禁煙をする、という決意がなければ難しいと思います。決意さえあればなんとかなるはずです。それでも、楽に上手に禁煙をすすめるにはどうしたらよいでしょうか。

 具体的には
① 朝起きてすぐに煙草を吸わないというルールを実行する。実は身体依存の状態の人は就眠中の血中ニコチン濃度が下がるために起きてすぐ吸いたくなるというのでです。朝起きて吸わず、少なくとも午前中は吸わないことにすると、身体依存の状態からより早期に脱却できます。

② 代替になるものを使用する。医療機関で処方されるガムやパッチなど、ニコチンの入ったものを使用して、その間は喫煙しない時間を長くすることで禁煙により近付けるというもの。最近は水蒸気を出すアロマスティック(VitCoolなど http://www.vitcool.com/ )もあり、一見喫煙しているようにみえても喫煙ではなく、その気分にだけ浸れるような器具を使用するのもいいと思います。VitCoolの場合は医療機関でなくとも購入できるので、より気軽に始められます。いずれにしと喫煙代に相当する程度の費用がかかりますが、禁煙が達成された暁には不要になるので、将来的には相当な節約になるはずです。

③ つもり貯金。煙草を購入したつもりで、それをすべて貯蓄に回す。1日400円として月に12000円。大手銀行の定期預金よりもかなり利率が良く、優秀な資産運用商品といえます。

④ 自己啓発的な教育をするサービス業をあらたに開発してはどうでしょう?結果にコミットする、という会社でダイエットだけではなく、ゴルフや英会話などにも参入しているところが新たに禁煙にコミットするサービスを始めてはどうでしょうか?また、禁煙のサークルやクラブ活動なども悪くないと思います。

いろいろで、結果的に禁煙に成功した人は、人生充実してますオーラがみなぎっている人が多く、幸せを失う空気から、幸せを呼び込むオーラを発するように変化している人が多い印象があります。
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心臓によい食事は?

2018-05-25 06:48:37 | その他
 テレビの健康番組は依然として人気ですが、これからますます高齢化が進む日本においては健康問題は非常に重要な課題であり、日常生活に追いて大きなウェイトを占めるものです。体にいい食べ物、これを食べると健康になる、こうしたキーワードは常に注目を集める気がします。
 実は、これを食べると良くなるといいうよりも、この食事が心臓に悪いので、これを食べないようにする、または出来るだけ摂取を減らす、というほうが重要な可能性があります。

心臓に悪い食べ物

 おそらくナンバーワンは、塩分でしょう。昔から人間にとって塩は重要な価値のある食べ物です。この味は人を惹きつける。しかしながら、塩は体に水分貯留を促し、血圧を上昇させ、心臓や血管に対する負荷を増大させます。入院中はいいのに、退院しああとすぐにむくんだり、心不全を起こしてしまう心臓の悪い患者様がいますが、おそらくこれは自宅に帰ってからの塩分摂取が過剰になることが原因していると考えられます。いろいろ注意しても、入院中のような塩分制限はなかなか難しいものです。塩分の過剰摂取は日本人に多い胃がんの発生とも関係があるとも聞いたことがあります。胃がんの多い秋田県秋田市と、同じ緯度にありながら、胃がんの少ない岩手県宮古市では塩分と野菜の摂取の違いが発生に関係があるのではないか、という論文を昔みたことがあります。塩分摂取に慣れた日本人がナトリウム制限すると、低ナトリウム血症になることは、経腸栄養している患者様で昔よく経験しましたが、本来腎臓はナトリウムを99%再吸収できるので、アマゾンの原住民でナトリウムをほとんど摂取しない民族でも血中のナトリウムは維持できるというのをテレビで見たことがあります。
 なかなかおいしい食事が氾濫しすぎている現代社会においては、かなり難しいことかもしれませんが、塩分摂取の制限は日常から心がけたいものです。

次に、LDLコレステロールを上昇させる食べ物、脂質、カロリー。この豊かな時代においては、栄養を取りすぎないようにすることが非常に難しいですが、体系のダイエットだけでなく、心臓血管病予防のためのダイエットは非常に重要です。LDLの人生の暴露量が動脈硬化と関係あるとすると、若いころからの嗜好が影響するのだと思います。

とりあえず、この二つの制御なくして、他に心臓によいといわれれるものを摂取しても意味がないものとなってしまう事でしょう。
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高齢者心臓血管外科手術の適応

2018-05-23 20:29:28 | 心臓病の治療
 日本はこれからますます超高齢化社会が進むと言われていますが、それに従ってご高齢の患者様も増加していくことが予想されます。
 大動脈弁狭窄症も、年齢とともに大動脈弁が動脈硬化と比例して硬くなって可動制限が起き、その頻度が増加する疾患ですが、前任地での大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術の平均年齢は2005年は65歳ほどだったのに対し、2015年には75歳と10年間で10歳も増加していました。加齢とともに増加する心臓血管外科関連の疾患として、他に、僧帽弁閉鎖不全症、虚血性心疾患、大動脈疾患、下肢動脈疾患などさまざまあります。

 高齢者はどこまで手術するか。悩ましいところではありますが、心臓血管外科の治療には大きく二つの目的があります。
① 具合の悪いところを直して機能を改善し症状をよくする手術
② 今後起こるだろう重大な疾病を予防する
この二つです。

①は弁膜症や虚血性心疾患など生死に関わるような重篤な自覚症状を、手術によって改善することが出来ます。苦痛を取り除くための治療といえます。
②一方、それに対して②は大動脈瘤など現在は無症状でも、破裂したら恐ろしいことが起こるかもしれないので、予防的に行う治療です。

苦痛を取り除く、もしくは和らげるのが医療の役割の一つですから、この意味で苦しんでいる患者さんは年齢と関係なく苦痛を緩和してあげる適応があります。その意味で心臓血管外科手術で苦痛をとってあげられるならこれほど医者冥利につきるものはありません。
一方、予防手術はその意味を十分理解していただく必要があるため、認知症や寝たきりに近い患者様の場合は適応とならないことが多いです。
 そのほかにご本人の希望なども重視すべき点であると思います。
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透析患者と心臓弁膜症

2018-05-22 19:24:52 | 弁膜症
第2回 三浦半島Cardiovascular Semnarにおいて、自治医科大学心臓血管外科教授 川人宏次先生より、「透析患者と心臓弁膜症」という題でご講演いただきます。
 透析患者様の場合は、非常に動脈硬化が速く進行する、血管などに石灰沈着が起こるなどの特徴があり、特に弁膜症においては、大動脈弁狭窄症が高頻度に発生し、特に弁の石灰化が著しくなる傾向にあります。まだ大動脈も石灰化しやすく大動脈遮断や大動脈切開などの手術操作が困難な場合がすくなくありません。冠動脈疾患や下肢の動脈閉塞症などの血流障害が合併している頻度が高いといえます。また、周術期はNOMI(非閉塞性腸管虚血)など、原因不明の病態が起きやすく手術死亡率が一般に高いと言われています。
 より安全な治療には、早期発見早期治療が重要ですので、透析患者様の場合はより動脈硬化や大動脈弁狭窄症に着目した日常での検査が重要です。
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リウマチ性弁膜症

2018-05-20 23:23:06 | 弁膜症
リウマチ熱(リウマチねつ)とは、A群溶連菌に感染して後1~3週間に生じる全身性の非化膿性疾患の一つである。特徴として結合織の炎症が関節、心臓、血管、神経等を冒すとされる。特に心臓では弁膜、心内外膜、心筋が好発部位であり、5~15歳が好発年齢である(ウィキペディアより)

子供のころにかかったリウマチ熱のせいで、心臓の弁膜に炎症をおこし、数十年後にわたり弁の変性が起こって、いわゆるリウマチ性弁膜症となることがあります。おもに大動脈弁や僧帽弁に弁尖の肥厚、短縮、硬化がおこり、大動脈弁、僧帽弁に、狭窄症や閉鎖不全症、またはその両方を引き起こし、二弁以上にわたって弁機能障害を引き起こすことも少なくありません。高度成長期以来、日本も文明先進国の仲間入りを果たし、早期から抗生物質を広く使われるようになったため、溶連菌感染の発生自体が少なくなり、リウマチ性弁膜症の患者さんは年々減少しています。昔は弁膜症手術の多くはリウマチ性であったのに対し、近年は変性疾患による僧帽弁閉鎖不全症や加齢に伴う大動脈弁狭窄症のほうが圧倒的に多くなっております。これは抗生物質の普及が大きく関与しているといわれていますが、まだ抗生物質の普及が進んでいないアジア、アフリカ諸国などではいまだ、心臓手術のメインはリウマチ性弁膜症に対する弁置換術とも言われています。日本では抗生物質が無効なウィルス感染が引き起こすいわゆる感冒に対しても広く抗生物質が使用され、結果的にリウマチ熱の発生も減少したと考えられますが、不要な抗生物質の反乱が耐性菌を増加させ社会問題にもなっている昨今、抗生物質を使用しない傾向が今後ますます進むとも言われています。たしかに無駄な抗生物質使用は減少しますが、今後数十年後にはそのためにリウマチ性弁膜症がもしかしたら再び増加する可能性があるのかもしれません。
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抗凝固療法の薬剤

2018-05-19 07:35:07 | 心臓病の治療
心房細動による脳梗塞予防、深部静脈血栓症や肺塞栓症の再発予防、人工弁への血栓付着予防のために従来はワーファリンが使用されてきました。ワーファリンは凝固因子を活性化する際に必要なビタミンKをブロックすることで、凝固因子2,7,9,10を機能させずに凝固を阻止する作用機序ですが、十年ほど前から第10因子を直接ブロックする薬剤が発売されるようになり、心房細動や静脈血栓症に関してはこちらが最近は使われることが多くなってきました。この新しい抗凝固薬はビタミンKとは関係しないので、納豆などの食事制限もなく、効き具合を毎回採血して測定する必要もありません。ワーファリンとちがって拮抗薬はまだ限定的ですが、半減期も短いので、効き目も早くきれます。


しかしながらワーファリンが1mg6円50銭なのにたいして、この新しい第10因子阻害剤は1錠500円近くします。医療費が生活費を圧迫しやすい特に年金世帯の人などにとっては、毎月の自己負担5000円の出費は決して少なくありません。医療者は製薬メーカーの宣伝を真に受けて高額な薬剤でも気軽に処方しがちですが、患者さんの生活も考えると少しでも安価な薬剤を選択する方が患者さんのためになることもあります。最近も金銭的な理由から二名ほど第10因子阻害剤からワーファリンに戻した患者さんが何人かいます。

心房細動に関しては、カテーテルアブレーションで心房細動がなおっても殆どの患者さんは抗凝固療法を継続しないといけないそうなので(CHADSスコア2点以上は継続が必要) 治療後も長期的に継続されているのが現実だそうです。
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アドレナリン

2018-05-18 15:34:43 | その他
今日診察した80代の患者さんが、アドレナリンが出すぎていて動悸がするので何とかしてほしいといっていました。前回診察した医師がベンゾジアゼピン系を処方しており、それが有効とのことでしたので、継続処方して様子を見ることにしました。アドレナリンは交感神経系の神経伝達物質であり、血管収縮による血圧上昇、心拍数増加、瞳孔の散大などありますが、アドレナリンを生理的に拮抗するにはアルファ受容体拮抗薬や、ベータ受容体拮抗薬などになります。しかし、褐色細胞腫のような症状もないので患者さんの方の診断が違っているのでしょう。しかしながらアドレナリンの名前が出てきたのは驚きました。

アドレナリンは、日本人の高峰譲吉博士が世界で初めて発見したホルモンです。海外ではエピネフリンとも呼ばれていますが、日本人なら当然のことですが、自国の発見者に敬意を払ってアドレナリンと呼ぶべき、と学生時代に教育されました。高峰譲吉博士は三共製薬を作った三人の一人でもあり、消化酵素タカジアスターゼを発見、商品化した人でも有名、と、昔聞いたことがあります。

アドレナリンの緊急薬品に、エピクイックというのがありますが、やはり、アドクイックって名前に変更すべきです。
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心臓を若返らせる三大栄養素

2018-05-16 19:33:04 | その他
 カリウム、マグネシウム、カルシウム、これが心臓を若返らせる三大栄養素だといいます。最近健康番組で島根県のある島の住民が心筋梗塞の率が低いことに注目し、その研究の結果、この三大栄養素を多く摂取していることが関係していると報道されていました。
 バナナ(カリウムが豊富)と海藻(マグネシウムが豊富)を多く摂取していることが関係しているとも。(マグネシウムの多い食品上位100位以内にはバナナは入っておらず、マグネシウム多いのはやはり、海藻類、イワシ、ナッツ、お茶、ココア、コーヒー、大豆製品、ゴマなどのようです。また、マグネシウムとカルシウムの両方が多いのはバジル。出典1)

 学生時代の恩師で日本の心電図の祖ともいえる、世界で初めて異型狭心症を発見した和田敬先生は、心臓を元気にするためにマグネシウムとカリウムの合剤を日常から内服していて、それがいつまでも元気の秘訣だと、もう25年以上も前に聞いていましたが、今更ながら、その合剤が高血圧性心疾患による拡張不全が原因の心不全を予防する、ということだったのです。
 高血圧性心疾患による心不全は、拡張不全が原因とも言われ、利尿剤による対症療法と降圧薬による後負荷の軽減くらいしか治療法がないと言われていますが、マグネシウムが心臓の拡張能を改善するのが本当であれば、より積極的に摂取することが、より心臓の寿命を延ばすことにつながると思います。恩師の偉大さを今再確認いたしました。


 和田敬先生から神奈川の実習や毎月の勉強会で手取り足取り、聴診の仕方から脈のとりかた、頸静脈拍動の見方、胸部レントゲンの読み方、そしてもちろん心電図の見方と、循環器の基本を手ほどきを受けたことが、現在の循環器診療にすすむきっかけになり、未だにその教えを日常臨床に生かしています。


(出典1 https://k-nihondo.jp/gold/column/%E6%88%90%E5%88%86/%E3%83%9F%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AE%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9TOP100.html)
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横須賀市立うわまち病院 新病院建設に関する答申

2018-05-15 23:36:46 | その他
横須賀市立病院運営委員会
答 申 書
平成30 年(2018 年)3月29 日

1.はじめに
横須賀市立うわまち病院は、三浦半島の東部に位置し、平成14 年7 月1 日
に国立横須賀病院の移譲を受け、指定管理者制度(当初は管理委託)による
運営を行っている。現在、許可病床数417 床(稼働病床数387 床)、診療科28
科を有し、地域医療支援病院、救命救急センター、地域周産期母子医療セン
ターの指定を受けるなど、急性期医療を中心に回復期リハビリテーション病
棟を保有し、横須賀・三浦二次保健医療圏において重要な役割を担っている。
そのような中、国立横須賀病院時代の中央病棟や外来棟は昭和40 年代初め
に建設され、施設・設備の老朽化や狭隘化が大きな課題となっている。
横須賀市立市民病院は、平成22 年4月に直営から指定管理者制度に変更し
運営を行っている。現在、許可病床数は感染症病床6床を含み482 床(稼働
病床数318 床)、診療科29 科を有し、地域医療支援病院、災害拠点病院の指
定を受けるなど、三浦半島西側の拠点病院としての役割を担っている。
また、平成28 年10 月には、地域包括ケア病棟を開設するなど、回復期機
能の充実も進めている。
平成28 年10 月、神奈川県が策定した地域医療構想において、より一層の
高齢化や人口減少が予測される中で、団塊の世代が75 歳以上になる平成37
年(2025 年)の必要病床数が示された。横須賀市は今後の地域の医療需要を
鑑みながら、市民が安心して暮らすことのできる医療環境を整備するため、
市立2病院が担うべき役割や連携について検討する必要がある。
こうした背景から、平成27 年2月5日、本委員会に「うわまち病院が担う
べき医療機能について」、「うわまち病院の建替えについて」、「市民病院との
機能分担について」の3件が諮問され、これまでに延べ13 回の委員会を開催
し、様々な観点から慎重に議論を重ね、答申をまとめた。
なお、各諮問事項についての議論が相互に関連しているため、本答申にお
いては、「市立病院が担うべき医療機能と機能分担について」、「うわまち病院
の建替えについて」の2件に整理した。
2
2.答申
(1)市立病院が担うべき医療機能と機能分担について
市立2病院体制を維持しつつ、連携の強化、経営の効率化を図るため基本
協定の一本化を図られたい。
市立2病院体制については、横須賀市の東側をうわまち病院が、西側を
市民病院がカバーすることで、神奈川県地域医療構想(以下、「地域医療構
想」という)において、脳卒中の患者搬送時間が西側で60 分圏内となって
いるほかは、概ね30 分圏内となっている。このことからも、横須賀市の地
域性を考慮して2病院体制は維持していくことが望ましい。
病床数については、地域医療構想において、「横須賀・三浦構想区域」の
総必要病床数に対して現状では不足していることから、現在の市立2病院
の許可病床数899 床を維持し、稼働病床数を増やす方向で検討されたい。
市立2病院の具体的な病床数は、患者数の動向等を見ながら検討されたい。
なお、地域医療構想において、回復期病床数が大幅に不足していること
から、高度急性期及び急性期機能を維持しつつ、回復期病床の充実を検討
されたい。
診療科目については、市立2病院とも地域医療支援病院に指定され、地
域における拠点病院としての役割を担っているため、引き続き、現状を踏
襲することが望まれる。
病院機能について、うわまち病院は、現状の指定に加え、新たに神奈川
県がん診療連携指定病院や災害拠点病院の指定を検討されたい。
小児・周産期医療については、横須賀共済病院及びうわまち病院が中心
的役割を担っている。近年の患者数減少が影響して両病院共に空床が発生
している状況や、当該診療科の医師確保の難しさ、さらに医師の労働環境
の改善が求められていることを踏まえ、市民病院で休止している入院診療
に係る小児科及び周産期医療(通常分娩除く)については、うわまち病院
への集約化が望ましい。
なお、外来診療に係る小児科及び通常分娩については、地域住民の利便
性等を鑑み、引き続き市民病院で担うことが望ましい。
また、高齢化が進む中、在宅医療の重要性が高まっており、今後ますま
す医療と介護の連携が求められるので、対応されたい。
運営形態については、市立2病院とも指定管理者制度を導入し、うわま
ち病院においては、恒常的に収支が黒字となっている。市民病院において
も、平成22 年度から平成29 年度までの指定管理期間において、指定管理
者の赤字を補てんする運営交付金を当初の想定額より約38 億円削減する
3
ことができたことは、大きな成果である。このため、引き続き、指定管理
者制度を踏襲することが望ましい。
なお、さらに市立2病院の連携を強化するとともに、経営の効率化を図
るため、基本協定の一本化を検討されたい。
(2)うわまち病院の建替えについて
うわまち病院は老朽化が進んでいることから早期建替えを望むが、財政
状況が厳しい中、施設規模等については、十分検討されたい。
中央病棟、外来棟は建築後50 年以上が経過し、老朽化が進んでいる。さ
らに、患者の受け入れが限界に近い状態となっているが、現在の施設では、
これ以上稼働病床を増やすことができないことから、できるだけ早く建替
える必要がある。
建設費については、財政状況が厳しい中、必要最小限の施設規模とし、
経費の削減を図られたい。
財源については、補助制度や地方交付税の優遇措置を有効活用し、少し
でも財政負担を減らすよう努められたい。
建設場所については、現地で建替える場合、診療を休止できないので、
建設手法を十分に検討されたい。
さらに、県道から病院までの進入路が狭く、救急車輌等の通行に支障を
きたしていること、今後、建設工事に支障をきたす恐れがあることから、
決定した後は速やかに対応されたい。
市内の医療機関の立地状況を踏まえ、移転して建替えることも検討され
たい。その場合には、移転先の慎重な選定や、用地取得に要する費用を十
分に勘案されたい。
現地建替え又は移転建替えのいずれの場合であっても、採算面を慎重に
考慮して建替え後のうわまち病院の経営持続性に留意されたい。
建設スケジュールについては、平成37 年度中の新病院開院を目指し、計
画の進捗把握には十分に留意されたい。


以上のような答申が横須賀市立うわまち病院建て替えの検討内容として横須賀市のホームページ掲載されました。
患者さんのニーズが多様化し、より専門的かつ高度な治療が必要になるなかでは、一日も早く新病院での体制を構築することが、地域の人々のサービス向上につながるものと思います。
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心臓は血液を全身に循環させるエンジン

2018-05-14 23:46:52 | その他
 人間の体とは、神様が設計したとは思えないほど理にかなってうまくできているものです。
 心臓は体に全身に血液を送り出すポンプの役割をしているとよく言われますが、心臓から押し出された血液が大動脈弁を通過して大動脈に送れられ、末梢の臓器や毛細血管に届けられるには、一方向に流れるための構造が必要です。ドクター若松が発明した手動式給油ポンプには内部に二つの逆流防止弁が付いていて、この弁の機能によって低いところから高いところへ、こちらの部屋からこちらの部屋へというように液体を移動させることができます。この構造と似たようなものが、自動車のエンジンです。エンジンにも二つの逆流防止弁があり、吸気バルブと排気バルブ、この二つの弁が高速に開閉することによって、ガスが送り込まれ、シリンダー内で爆発し、排気バルブを通して排気することでエンジンのサイクルが生まれます。

 これらと心臓もよく類似しており、吸気バルブを僧帽弁、排気バルブを大動脈弁と考えると、まったく同じ構造をしています。エンジンや給油ポンプのほうが、人間の構造をまねしたといったほうが正しいのかもしれません。それでいて、心臓は人間の臓器の中で最も単純なマシーンとも言われています。なので、もっとも人間界で人工臓器を作るにあたりいち早く実用化するのが人工心臓とも言われてきましたが、本当の実用化までにはもう少し時間が必要なようです。
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急性心筋梗塞の機械的合併症③-急性心筋梗塞後左室破裂

2018-05-10 06:16:59 | 心臓病の治療
急性心筋梗塞の機械的合併症の一つ、左室破裂、大きく分けて二つの形式があります。

①Blowout Type と ②Slow-rupture type または Oozing rupture Typeがあるといわれます。心室中隔穿孔が中隔が破れて左室内の血液が右室に流れ込むのに対し、左室破裂は左室の自由壁が破れて左室の外に血液が出てしまう病態で、心嚢内に出血する為、心タンポナーデから心原性ショックに陥り、重大な生命の危機につながります。

 Blowout Typeは文字通り、左室の外に一気に破裂してしまうタイプで、破裂部位から拍動性に左室外に出血するため、急速に循環が破綻して突然死のリスクの高い状態です。速やかに開胸して出血部位を止血しないと救命できません。心嚢内に出血した血液は凝固していることが多いので、一般的に行われる心嚢穿刺で血液を除去する処置では、対処できないことが多く、ドレーンを留置しても血液が充分ドレナージできない場合は直ちに開胸処置へ移行する必要があります。経験的には左冠動脈回旋枝領域の心筋梗塞、いわゆる左室側壁の梗塞に合併することが多く、特に、心筋梗塞後にパンチで穴をあけたように、局所的に左室壁がすり鉢状に薄くなっていくことが心エコーで観察されることがあり、このような症例が極めてこの左室破裂の危険性が高いです。このタイプの心筋梗塞は梗塞範囲が限局的で比較的小範囲なため、外科的な止血は比較的しやすい印象があります。具体的には左室形成針など大きめの針のついた縫合糸で、フェルトで補強しながら破裂部位を止血しますが、良好な視野で安全な縫合部位を認定しながら止血する必要があるため、手術室内で行う必要があります。

 一方、Oozing ruptureは、文字通り(Oozeとは染み出す、にじみ出るの意味)左室の梗塞部位からにじみ出るような出血が起こる破裂形態で、じわじわと心嚢内に血液が貯留して、こちらも心タンポナーデによる血行動態の悪化を招きます。心嚢内に貯留した血液は凝固していない場合は心嚢穿刺やドレーン留置で貯留液を除去することで救命できる可能性があります。左室内の血液が直接左室外に出血することよりも、心筋梗塞を起こした心筋内に出血した血液などのことが多く、また静脈性の血液のことも少なくありません。心嚢内の圧が、上昇して自然に止血されることもあります。しかしながら心嚢内の貯留液が増加傾向、穿刺ドレナージしてもすぐに心嚢液が貯留する、ドレナージされている血液が出続ける、ドレナージしているのにエコーで心嚢液が依然として貯留してる、などの場合は、開胸による止血が必要になります。実際に開胸してみると、Blowout Typeであるのに、心嚢内の圧が上昇たり血圧が低下して一時的に止血されているだけのこともあります。Oozing ruptureは、左冠動脈前下行枝領域のいわゆる前壁中隔梗塞で起こることが多いです。
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横須賀市立うわまち病院のNEWホームページ

2018-05-07 19:36:52 | 心臓病の治療
https://www.jadecomhp-uwamachi.jp/patient/shinryolist/cardiova/

ホームページが修正されました。グラフがサイズ変更してみやすくなりました。GoogleやYahooでも検索上位に上がるように期待していますが、ホームページ作成の仕方の問題があるのか、もしくは新しいアドレスなので、時間がかかるのか、検索対象としてはまだまだです。
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心筋梗塞の機械的合併症③ 乳頭筋断裂の治療

2018-05-06 05:29:56 | 心臓病の治療
 心筋梗塞後に発生する乳頭筋断裂は、乳頭筋の心筋が壊死したことによって発生します。乳頭筋が断裂すると、それに付着する腱索が根元からその固定されている地盤を失うので、通常の腱索断裂による僧帽弁逸脱よりかなり広範囲の逸脱が突然発生します。広範囲の逸脱による大量の僧帽弁逆流、かつ、逆流に慣れていない心臓に突然、急激に発症する僧帽弁逆流は、急速かつ重症の急性心不全を発症させ、死亡する可能性の高い状態になります。救急車で急性心不全で搬送されたり、急性心筋梗塞で入院中に急速に進行する重症心不全の場合は、心筋梗塞後の機械的合併症の可能性があり、その中の一つが乳頭筋断裂です。通常は突然発症する重症の僧帽弁逆流を心エコーで発見すれば、この病態を疑います。完全に乳頭筋が断裂した場合は、乳頭筋のHeadが収縮と拡張に合わせて大きく振り回されるので、その筋塊が動くのがエコーで見える場合もあります。不全断裂の場合は、乳頭筋のHeadが、その基部からちぎれかかっているような病態で、この場合は、逸脱の範囲が小さい可能性がありますが、経時的に急速に僧帽弁逆流が重症化していることで疑います。
 乳頭筋には、前乳頭筋(内側・Postero-Medial Pappilary )と後乳頭筋(外側・Antero-Lateral Papillary Muscle)があります。そして、両方の乳頭筋は下壁側に付着しています。乳頭筋の血流支配は、前乳頭筋は側壁側なので、回旋枝領域の心筋梗塞で発症し、後乳頭筋は中隔側なので右冠動脈となっているため、右冠動脈とくに後下行枝(4PD)領域の心筋梗塞で発生します。前乳頭筋の断裂を発生しうる急性心筋梗塞の原因となる病変冠動脈はどれか、次より選べ - 1.前下行枝、2.回旋枝、3.右冠動脈 ⇒ 正解 2 と、いうような試験問題を、大学の卒業試験のために作成したことが過去にあります。
 通常、乳頭筋断裂の場合は、さらに断裂が今後進んだり、他の部位に付着する腱索にも影響が出たりと、僧帽弁逆流のメカニズムが変化していく可能性があるため、弁形成術を行う事は困難であるため、治療は基本的に弁置換術となります。まずは確実な逆流の制御を行い、救命することが最優先のため、不確実な弁形成術をこことみることは通常ありませんが、特殊な場合は弁形成術が可能となる可能性があります。
 弁置換術は、生体弁か機械弁か、その年齢で選択することになり、一般には65歳以上は生体弁、それ未満は機械弁が一般的です。
 急性心筋梗塞がベースになって発症する僧帽弁逆流であるため、乳頭筋断裂以外の機械的合併症である、左室破裂や心室中隔欠損症を同時に発症することは稀ですが可能性があります。また周術期の不整脈なども起きやすいので、周術期管理は慎重に行う必要があります。
 乳頭筋断裂の救命率は、毎年のアンケート結果を見ても、まだまだ低いようです。
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