横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

胸部外科学会2019京都

2019-10-26 07:31:56 | 心臓病の治療
食欲と学問の秋、がっかいしーずんでもあります。
次週は、胸部外科学会が京都で開催予定で横須賀市立うわまち病院からも3つの演題が採用され、発表予定です。最近の学会はスライドやポスターを英語で作成しなければならないのが多くなりましたが、発表言語は英語か日本語から選択で、ほとんどは日本語で発表されています。しかし、中には国際セッションというのがあり、発表言語は英語のみです。昨年に引き続いて、うわまち病院から採用されたものの一つが国際セッションであり、英語で発表しなければならず、珍しく原稿をなどつくって練習しようかと思います。セッション参加発表の半分が外国からの演題で、筆者は日本人としては最初のプレゼンになるため、かなり緊張します。

国際セッションの発表は、循環器内科と共存共栄のためのMICS-CABG

で、もうひとつの演題は、右小開胸アプローチによる大動脈弁と僧帽弁の同時手術の2例という発表です。この、ミクスによる2弁手術は他の施設ではまだほとんど実施されていない手技ですが、この一年で4例を実施経験し、手技としては確立した感があります。

今週末の個人的なイベントのため夏休みと重なり、約一週間緊急対応不能となります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僧帽弁手術における視野をよくするコツ

2019-10-25 03:10:10 | 弁膜症
 僧帽弁の逆流に関しては現在は9割以上、自己弁を温存する形成術を行っていますが、この形成術を完璧にするためには良好な視野の確保が不可欠です。
 この僧帽弁を観察するための良好な視野確保のためにはいくつかのコツがあります。

 一つはアプローチ:胸骨正中切開か右側方開胸か。角度的には、僧帽弁は右側から見た方が左房から観察する外科医にとっては正面視することになるので観察しやすくなります。そのため、正中切開よりは右側方開胸がベターです。横須賀市立うわまち病院では僧帽弁手術の9割以上(可能であればすべての症例で)の患者さんで右側方開胸での僧帽弁手術を行っており、複数の弁手術が必要な場合も、たとえば大動脈弁+僧帽弁+三尖弁手術においても右小開胸での手術を実施しています。

 一つは左房への到達方法:右側左房切開か、中隔アプローチか、上方アプローチ(Superior Trans-septal approach, Transplantar approachともいう)か。どれも悪くありませんが、一般的には右側左房切開が最も多く採用されています。その他は視野は良好でも修復に時間がかかる難点があります。完全鏡視下手術においてはどのアプローチでもカメラのレンズの位置と向きで決まるので関係ないかもしれません。右側左房切開も胸骨正中切開で視野が悪い場合は、左房上壁を左心時の付け根まで、左房後壁を下大静脈の付近から奥に僧帽弁輪にコの字型に延長して拡大し、Retractorで大きく(力を入れて)押し広げることで視野を改善します。それでも最悪の場合は、奥の奥の手として、上大静脈を右心房から切り離すと右房が良好な視野が得られます。さらにそれでも最悪の場合、それに加えて上行大動脈を一時的に離断してしまえば、かなり改善するはずですが、そこまでした経験はありません。ただ、上行大動脈置換術を併施する場合に、僧帽弁の視野が著しく良好であることはしばしば経験します。

 一つはRetractorの種類、扱い方:複数の方向に左房切開からRetactorを挿入して展開するほうが視野が良好になります。横須賀市立うわまち病院では基本的に2本のRetractorでFibrous Trigonの方向に牽引展開して前尖が広がって全体が見えるように視野出ししています。右小開胸の場合はYozu-Adams開胸器のSをA1側、XSをA3側にかけて展開します。正中切開の場合はCosgrobe開胸器を使用して同方向に牽引します。

 一つは逆行性心筋保護併用の場合のカニューレ、バルーン:これらによって僧帽弁の後交連付近の視野が悪くなることがあり、バルーンを虚脱させたり、カニューレが牽引されているのを戻して位置調整したりすると改善することがあります。

 一つは、左房壁や弁輪に糸かけして、牽引:これによって操作部位を一か所一か所露出させて観察しながら手術します。

 最近、右小開胸で大動脈弁置換+僧帽弁形成術を行った症例で、右房切開して冠静脈洞から挿入した逆行性心筋保護用のカテーテルの為に視野が悪かった患者さんに対して、このカニューレの位置調整によって最終的に視野が改善した症例を経験しました。いわゆるMICS(低侵襲心臓手術)アプローチにおいて大動脈弁+僧帽弁手術を同時に行ったのは、この1年で4例目ですが、他の施設でまだやられていないこの手術、横須賀市立うわまち病院ではほぼ確立した術式という実感があります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脊髄栄養動脈を閉塞する可能性のある大動脈手術における脊髄虚血予防対策③

2019-10-22 06:22:42 | 大動脈疾患
外科手術を実際に行う場合の具体的は脊髄虚血の予防対策として

① AKAの同定 造影CTやMRIで部位を同定しておけばどこを再建する、注意するか、または手順などを事前に検討することができます。

② 椎骨動脈、内腸骨動脈の血流支配の確認 こちらも造影CTやMRIで確認が必要です。特に椎骨動脈は左右差があることが多いのでどちらかの鎖骨下動脈を閉塞する手技を行う場合は注意が必要です。

③ 冷却  脳循環停止や頸動脈再建を伴う弓部大動脈手術の脳保護のように、冷却することで脊髄虚血のダメージを小さくすることができます。より低体温の方が有効性が高いのですが、その手術を脳循環停止を伴うような超低体温(20℃以下)とするのか、25℃程度の低体温とするのかは議論の余地がありますが、これらの低体温とするには心停止を伴うため、上半身の循環補助も考慮する必要もあります。心拍動下に下半身の循環遮断する場合は34~35℃くらいまでしか冷却することができないので、この範囲での対策となります。

④ 鎖骨下動脈の拍動血流維持したままの手術 十分な冷却はできませんが、鎖骨下動脈の拍動血流維持のままの手術は、椎骨動脈経由の前脊髄動脈への血流を維持したままの手術が可能です。この場合は冷却をあまりしないので、止血能が良いことが多く、多量の出血が脊髄虚血の一因と言われているので、こうした多量出血を予防できます。また、ステントグラフト留置は、心拍動下での手術である為、椎骨動脈血流を維持しながらの手術となり、このため人工血管置換術よりも対麻痺の発生頻度が低いと言われています。

⑤ 術中の血圧維持、貧血予防: 低血圧、貧血がより脊髄虚血を助長すると言われ、これを予防するような管理が重要です。MEPに異常が検出されたときに低血圧、貧血を改善することで虚血が改善したという報告もあります。ヘモグロビン値で10g/dl以上、平均血圧80mmHg以上を維持するように麻酔管理、術後管理します。

⑥ 大動脈解放時の肋間動脈の(一時的)閉塞による側副血行圧低下の防止:AKA血流はネットワーク支配されていると言われ、大動脈を解放して血圧が低下したところで、肋間動脈から大量のバックフローがあるとAKAに向かう血流を盗血(スティール)してしまうため、大動脈解放と同時に肋間動脈をA-Shield catheterで一時的に閉塞するか、結紮閉塞させることでAKAに向かう血流圧を低下させずに済みます。

⑦ 肋間動脈再建:同定されたAKAに繋がる肋間動脈に人工血管を縫着し、そこから分枝血流送血して脊髄血流を維持します。大動脈解放後にMEPが消失した症例で、肋間動脈再建して血流再開したところMEPが復活した経験を聞いたことがあります。

⑧ 血流改善が期待できる薬剤を使用:血圧を上昇させるための昇圧剤、輸液。有効性は不明ですがプロスタグランジンE1(PGE1)が脊髄血流を改善する可能性があります(この血流改善作用が脊柱管狭窄症の症状改善作用のメカニズムと言われています)。

⑨ 脊髄ドレナージ:虚血に伴う浮腫が原因で脊髄内圧の上昇を防止して、この圧上昇がさらに虚血を悪化させることを防止するために、閉鎖空間である脊髄腔から圧を逃がすためのドレナージチューブを留置して、脊髄腔圧を8~15cmH2O以下にして虚血の悪化を防止することが期待されます。

⑩ ナロキソン: 機序はしりませんが、脊髄腔圧を低下させることで効果があると言われています。

⑪ ステロイド: 脊髄浮腫の悪化防止に期待できる可能性があります。

⑫ 術中の内腸骨動脈の血流維持: 大腿動脈からの送血をしながら内腸骨動脈の血流維持をすることで、内腸骨動脈経由の脊髄血流を維持したまま手術することで脊髄血流が低下することを防止します。

これらの方策を駆使しても完全には予防できないかもしれませんが、外科医としてはこれらを十分考慮、準備して手術に向かわなければなりません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脊髄栄養動脈を閉塞する可能性のある大動脈手術における脊髄虚血予防対策②

2019-10-22 06:11:11 | 大動脈疾患
 脊髄虚血の診断は、一番はその症状で、上肢は動くのに下肢が動かない対麻痺を診た場合は最初に疑います。しかし、一度発生した対麻痺は回復する症例もありますが、そのまま後遺症として残ってしまう可能性も高い為、発生を未然に防ぐか、早期に検出して出来るだけ後遺症を軽くするための治療を早期に開始する必要があります。

 症状出現前に検出可能な最も鋭敏な検査モダリティとしては、MEP(運動誘発電位)です。脊髄虚血は主に脊髄の前側である運動領域が障害を受けるため、後ろ側の感覚領域の異常を検出するSEP(感覚誘発電位)よりもMEPのほうが脊髄虚血に関与すると言われます。下肢筋肉を電気刺激しそれで誘発された脳波の反応を検出するものです。脊髄虚血が起こると、このMEPが検出されなくなるため、虚血が起こった瞬間を診断して対策することができます。

 術中にMEPに異常が検出され、原因となる肋間動脈の血行再建したり血流遮断を解除したらMEPが正常化し、脊髄虚血による対麻痺を回避できたという報告もあります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脊髄栄養動脈を閉塞する可能性のある大動脈手術における脊髄虚血予防対策①

2019-10-22 05:36:19 | 大動脈疾患
 脊髄の血流支配は、複数の栄養動脈から行われていると聞いています。
 教科書的なのは、Adamskievics動脈(アダムキーヴィッツ動脈 以下、AKA)という、一般に第8~11胸椎レベルから8割分岐すると言われる肋間動脈から分岐して椎体内に向かう動脈です。この部分だけ肋間動脈だけ太いので、大根動脈という異名もあります。このAKAを閉塞すると、脊髄の前側を主に栄養するため、運動領域が主に虚血になり、運動脈を起こします。胸椎レベルでの運動領域の脊髄梗塞は下半身の麻痺を意味し、両下肢が動かなくなる「対麻痺」を後遺症として残します。脳梗塞の場合は、椎体交叉を通じて反対側の上肢と下肢の半身が麻痺する片麻痺(半身不随とも一般に言われます)を呈するのに対して、一般には交通事故などで脊椎麻痺を起こしたときに対麻痺は見られ、その後の生活は車いすでの移動が必要になる生活です。患者さんとしても非常につらい生活を強いられますし、心臓血管外科医としても非常につらい合併症です。
 胸腹部大動脈置換術においては2-5%の術後発生率で、胸部大動脈置換や下行大動脈置換術でも発生の可能性が1%ほどあると言われています。このつらい合併症を予防するためにはどのような対策があるのか。外科医はこの予防のための最大限の努力をする必要があります。

 脊髄の血流支配はAKA1本だけではなく、多重支配であると最近は言われており、その一本だけ閉塞したからといって必ずしも対麻痺が発生するとは限りません。周辺の肋間動脈がAKAとネットワークを形成しており、その周辺を広範囲に閉塞した場合により発生しやすいくなり、またAKAのような脊髄に到達する動脈は複数本ある場合もあります。よって広範囲に肋間動脈や腰動脈を閉塞した場合に発生しやすくなります。急性大動脈解離の場合で、肋間動脈や腰動脈が広範囲に偽腔から分岐し、偽腔が血栓閉塞したり血流が低下した状態には発生しやすくなります。また、腹部大動脈置換術後に胸部の大血管手術を行う、またはその逆の場合は発生頻度が高まります。例えば、下行大動脈にステントグラフト留置術を実施後に、胸腹部大動脈置換術を施され、その間の正常部分からAKAが分岐している場合に、この正常部分が瘤化したり解離して拡大した場合には最も脊髄虚血が起こりやすい肋間動脈閉塞を起こす手術をしなければなりません。こうした患者さんの手術をする場合にいかに脊髄虚血の発生頻度を極力低下させるのか、非常に議論のあるところです。

 また、脊髄の栄養支配は肋間動脈系だけでなく、鎖骨下動脈から分岐する椎骨動脈の枝である前脊髄動脈から栄養される分、または内腸骨動脈の分枝で骨盤内を栄養する枝から精髄内へ向かう枝なども関係すると言われ、これらがあるために肋間動脈をすべて閉塞しても必ずしも対麻痺が発生していないのはこのためと言われています。前述のステントグラフト留置後で肋間動脈が閉塞した症例や胸腹部大動脈置換後で肋間動脈や腰動脈を広範囲に閉塞している症例に追加の大動脈手術をする場合に特に発生しやすい為、十分な対策を検討する必要があります。

②へ続く
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界一の焼き鳥

2019-10-19 18:34:35 | 心臓病の治療


昔、ニューヨークにいったときに、アメリカの食べ物で一番美味しいものは?って地元育ちのキムにきいたところ、チキンって答えが帰って来て絶句しました。鶏肉しか美味しいものないの?ちょっと、日本人として優越感を少しだけ感じた瞬間の1989年。

ところがところか、いまはどうでしょう?筆者として日本の誇る世界一に名乗れる日本料理の一つは焼き鳥!

特にここ、比内鳥の専門店では世界一の焼き鳥と世界一の親子丼が食べれます。まさに、地鶏料理のガストロノミーです!

味覚は年齢と共に変化するものかもしれませんが、この比内やさんの焼き鳥と親子丼は、世界に誇れる味間違いありません。数少ない秋田が本店の東京に支店を持つお店として、郷土の誇りです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

眼瞼黄色腫の臨床的意義

2019-10-19 01:40:12 | その他
 眼瞼黄色腫は高脂血症の人にできやすいと昔から言われています。すなわち、眼瞼黄色腫のある人は心筋梗塞になりやすいのではないか、と。
 しかしながら、眼瞼黄色腫と心筋梗塞などの心血管イベントとが関連したことを証明する論文は一つもなく、臨床的意義はない、というのが現時点の結論だそうです。
 それよりは、家族性高コレステロール血症におけるアキレス腱の肥厚やひざ関節の黄色腫のほうが心筋梗塞の発症と関連すると言われています。

 眼瞼黄色腫を消失させるのに最も有効なのはプロブコール(シンレスタール、ロレルコ)で、半年ほどで消失させることができるそうです。スタチンは必ずしも有効ではなく、消失まで数年単位でかかりますが、LDLを低下させることによる二次的な効果で消失させることができます。プロブコールは黄色腫のコレステロールの蓄積を除去しますが、冠動脈のプラークのコレステロールを除去する能力はスタチンの方が強力で、こうした体の部位と薬効の違いはまだよくわかっていないそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

観艦式のために艦艇集合

2019-10-17 20:39:37 | 心臓病の治療



観艦式は台風の影響て中止になりましたが、たくさんの艦艇が集められたためか、横須賀基地は混んでいて、連環の計のようになっています。このように停泊するのって難しそうですね。

外国からショウタイサレタ艦艇では中国のミサイル巡洋艦が七色の電飾をつけたのが話題になってましたが、どちらに停泊されていてのでしょうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家を守るヤモリ

2019-10-17 20:33:51 | 心臓病の治療



もともと三浦半島は山や森が多く自然が一杯です。うわまち病院周辺にもたくさんの生き物がいます。たまたま窓を開けたら頭上からボタッ!

家の守り神が降ってきたので、そとに逃がしてあげました。

手術室は新築した南館、ICUは改装したエリアで患者さんの管理をしてますので、衛生環境に関してはご心配なく。院内にも他の施設よりもかなり多い感染制御医師もいます。心臓血管外科にもICD(感染制御医師)がいて、病院内の感染制御に協力しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

神奈川心臓血管外科iNOカンファレンス

2019-10-14 23:56:43 | 心臓病の治療
 年一回、心臓血管外科領域におけるiNO使用およびその効果について、カンファレンスがあります。今回は岩手医大教授の金先生の特別講演を交えて、神奈川県内の大学病院の使用経験についてのプレゼンテーションがありました。
 
 主に解離や重症症例に関しては一定の効果がある、特に、酸素化の改善、循環の改善についての効果が認められますが、どの症例が有効か、などはこれからの課題として議論されました。神奈川県内でも大学病院以外ではほとんどまだ導入されていませんが、横須賀市立うわまち病院ではいち早く導入しています。NO開始と同時に肺動脈圧は著名に低下しますが、酸素化の改善という点に対しては効果不十分と思われる症例が多い印象でしたが、東海大や岩手医大の経験では有効率は78%ほどと高い結果だったそうです。
 今後も適応症例には積極的に使用していく予定です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

劇的救命:心臓血管外科の場合は劇的の中の劇的!

2019-10-13 14:21:29 | 心臓病の治療
劇的救命とは、絶体絶命の状態から命を助けることです。
心臓が一度止まってしまった、出血性ショックで心臓が止まりそう、そんなそのままでは数分後には帰らな人を三途の川の淵からこの世に引き戻すドラマチックな瞬間でもあります。医師としての誇りをもてる、そして医師という資格をもってよかった、と心から思える瞬間でもあります。

心臓血管外科における劇的救命とは、やはり大動脈解離によるタンポナーデを解除し大動脈置換術によって救命したり、大動脈瘤破裂の緊急手術で救命するなど日常的に行われている緊急手術がそれにあたり、救命できた場合の喜びは患者さん本人、ご家族と同じくらい担当する医師も感動と喜びを感じます。

特にこうした患者さんのなかで、一度心停止した、心室細動になった患者さんを蘇生して手術、救命できた場合は、まさに劇的の中の劇的救命、心臓外科医にしか救えない瞬間です。この心停止した大動脈瘤や大動脈解離を救命できるのは、ほぼ手術室の中で心停止した場合のみです。いかに迅速に診断し、手術室をセットアップし、手術室へ入室させるかがカギになります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台風一過

2019-10-13 11:44:15 | その他


台風19号。ものすごい風と雨、交通機関をすべて運休にするのも仕方ないですね。筆者もさいたままで電車が動かないので自家用車で行こうと考えましたが、千葉で軽自動車が横転して死亡された方がいるニュースを聞き、他人様にご迷惑をおかけするリスクもあると判断し常識的な判断として取りやめて病院の回診をしたあとは自宅待機しておりました。やることもない、ということで、貯まった録画ドラマを見ながら昼から🏠飲みでした。人の往来の多い横須賀の街は誰も歩いておらず、自動車すら見ないというのも珍しい光景でした。風邪のピークは台風中心部が神奈川県付近を通過した20-21時くらいでしたが、この時は震度3並みの揺れを自覚しましたが。比較的短時間で済んでそのあとは静粛でした。
本日は一転してピーカン晴れ。横須賀からは富士山、東京湾ごしに横浜のランドマークタワーや、スカイツリーまでくっきり見えます。
今年最後の台風でありますように。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

数学者が考えた花火のようなシャンデリア

2019-10-12 05:47:03 | 心臓病の治療


 兜町のフレンチガストロノミー、アサヒナガストロノームの店内でも採用されているシャンデリア、新宿高島屋で販売しているのを見つけました。このシャンデリア、外側の金属部分と内側の金属部分の間にLED電球を均等に配置して、LED電球で外側と内側を連結し、内外の金属部分にプラスとマイナスの電源をつないで配線の代わりとしているので、一見配線のない電球に明かりがついているように見えます。この幾何学的なデザインは数学の研究者が考案したそうです。暗いところで点灯すると花火のようにみえます。
 輸入品の為、一般家庭への設置は配線工事が別途必要だそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台風19号・災害下の心臓血管外科診療

2019-10-12 05:37:34 | その他
 関東地方を直撃する超巨大な台風19号のため首都圏の交通は麻痺する予定です。すでに横須賀は暴風圏内のようで、ものすごい風雨が始まっています。交通がマヒしても、心臓血管外科スタッフは病院施設徒歩圏内に居住しているため、大規模災害や緊急手術にも可能な限り対応です。
 筆者も県外での予定をすべてキャンセルして横須賀にて待期です。

防災対策として
主に停電・断水対策です。

夜間の停電、断水に備えておフロの水を入れ替えて、満タンにためておく。
飲用水を鍋その他にためておく。
ご飯を明日の分まで多めに炊いておく。
停電してもいいように、冷凍庫のアイスは食べてしまう。
最も安全な場所を確認。

などでしょうか?すでにコンビニエンスストアでは食料は売り切れと聞いています。
皆さんも極力外出は控えて嵐が去るのを待ちましょう。

必ず夜は明ける、必ず朝は来る、あけない夜はない = まるで夜中の緊急手術で止血している場面のような気持ちです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

急性大動脈解離における心タンポナーデの解除

2019-10-08 23:47:03 | 心臓病の治療
急性大動脈解離における死因の7割は大動脈破裂に伴う心タンポナーデと言われています。急性大動脈解離の手術の目的の第一は、この、心タンポナーデから突然死をすくうことにあります。CTやエコーで心嚢液貯留がある症例は要注意となりますし、それによって急いで手術室へ移動するか、手配に時間を要しても待つことができるかを判断することができます。
 心タンポナーデの簡便な解除方法として、心嚢切開や心嚢穿刺があります。

 心嚢切開は剣状突起下で6~8cmの皮膚切開をおき、剣状突起の下から頭側に向かってのぞき込むような形で剥離して心膜を露出し、その心膜を切開することで達成できます。意外に剣状突起から心膜までの距離があるので、筋鈎などで助手が胸骨というか胸郭を前方に牽引することで視野が改善しやりやすくなります。血餅などがあるタイプの心タンポナーデの場合はこのような直接の切開でないとドレナージできないことがあります。
 
 もう一つは心嚢穿刺です。エコーガイド下にガイドワイヤーを心嚢内に挿入し、それを通じてピッグテイルカテーテルや透析用カテーテルなどを留置し、心嚢液を除去する方法です。簡便で清潔操作で実施可能ですが、血餅があるタイプではすぐにカテーテル先端が血餅にあたり、それ以上引けなくなることが多いので効果には限界があります。

 いずれも開胸から人工心肺装着が可能な環境下で実施することが望ましく、過去に救急外来で心膜切開した患者さんで救命できた経験はありません。心嚢穿刺で一時的に血圧上昇した症例もすぐに血液が再貯留して血圧が低下し急いで手術室へ急行しなければならないという事態を何度か経験しております。

 すなわち、急性大動脈解離に対する心嚢ドレナージや心膜切開は手術室入室してから実施することが重要ということになります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする