戦後に建築された病院の建て替えがここ20年ほど前から続いています。これは、病院だけではなく、いろいろなビルも戦後に建てられたものが40年以上経過して立て直されているのと同じような現象です。
一つは戦後というか、昭和の建築素材や建築様式が現代の生活にあわなくなってしまっていることがあります。一つは耐震基準がより厳しくなり、大規模な補強などが必要になっていること、また一つはエレベーターなどの可動部分が古くなって大規模な修繕などが必要になっていること、気密性などの問題で、レベルアップされた現代生活に合わないということ、などが考えられます。
しかし、病院の新築に関しては、これ以上に、医療の内容が大きく変わってきて、それに合わせるためには、新しい建物でなくてはならない、ということです。
年々、医療が変わってきたことの多くは、医療機器が高度化すると同時に、なんでも機械化、電気化され、それがないと医療が成り立たなくなるまでになってしまっていること、もう一つはプライバシーとIC(Informed Conscent)の時代になっていることです。昔の病院で、自分が想像するのは、自治医科大学の卒業生としてへき地の病院に数年間勤務していた時代で、昭和30年代に建築された病院です。今は15年ほど前に、それらの病院は新築されています。同じ県内の病院もほぼすべて、その頃に新築されています。おそらくその頃の建築技術では、30年くらいで建て替えになるようなものしか、建築可能なコストでは建てられなかったのだと思います。
昔の病院では、まず、医療機器を患者につなげておくという発想がなかったので、それを維持する電気の配線がそもそもありませんでした。8人部屋の掃除のために掃除機をかけるためのコンセント、それに各ベッドの明かりをつけることくらいでした。24時間モニターをつける、精密持続点滴をする、人工呼吸器をつける、酸素吸入するなど、特殊な場合を除いて必要とされていなかったのです。そこにモニターや人工呼吸器などを持ってきて、タコ足配線で医療機器をつけたために、おそらく過電流になり、酸素供給や人工呼吸器の作動に異常が来てしまったこともありました。昔は点滴も、看護師さんが、自分の腕時計の秒針と、点滴の落下速度を調整しているのが当たり前でしたが、今ではその光景はまったく見られません。数十万円する輸液ポンプなどを一つ一つの点滴にとりつけています。昔の病院では、一人一人の患者さんのための想定されるコンセントがない、足りない、という意味で、建て替えないと現代の医療に対応できない、ということです。
もう一つはプライバシーとICの普及です。未だに病院は大部屋が主流で、個室に入る場合は個室料金が上乗せになったり、他の患者さんから治療上、隔絶するために個室を使用したりしていますが、ホテルに宿泊するときに、今時、相部屋になる経験など、ほとんどないのと同じで、なぜ、病院では相部屋なのか?やはり少しお金を払っても個室にしてほしい、という人が増えているのは当然だと思いますし、もし個室料金が別途かからないのだとすれば、当然個室をみなさん希望するのではないでしょうか?大部屋は医師や看護師が巡回するときに、まとまっていた方が仕事しやすいという病院側の理由で設定されています。確かに、日本の医療者が欧米に比較して、スタッフの数が半分以下ですから、全てを個室にするには医師、看護師の数が2倍以上に増やす必要があります。その分、医療費も海外なみに現在の2倍以上にかける必要が出てくるでしょう。今や医療費は中国の半分、アメリカの5分の1くらいにまで国家間の格差が広がっていて、それでいて医療技術のレベルはその欧米と引けをとらないくらいの専門性の高さを維持しているのはすごいと思います。これを進むべき方向に改善していくと、当然個室になってくるでしょうし、一人当たりのコンセントの数、必要なアンペア数、空間の広さ、更にインターネット環境などに加えて、プライバシー確保のためとスペースは、今後ますます必要になってくると思います。それらに対応するには、古い病院では狭くて対応できません。
また、現在はICの時代です。病気の説明をするのに、プライバシーが確保されたスペースがどうしても必要ですが、昔の病院では、説明用のスペースやプライバシー確保のためのスペースは全く想定されていません。大部屋の隣の患者さんたちが、皆、スタッフの会話や患者さんへの説明を、耳をダンボにして聞き耳を立てています。医療者にとっても非常にやりにくい環境です。唯一大部屋で役に立つのは、急変時に他の患者さんが、医療者に知らせてくれる、アラームもしくはモニターの役目をしてくれることです。また、患者間に繋がりができて退院後も交流が続いているっていう話もよく耳にします。しかし、やはり病状説明をするスペースなどは別個に、しかも複数必要になります。前任地の大学病院(築30年ですが、新数年の新病棟も同じつくり)の大学病院でも説明用のスペースは病棟に一つしかなかったりして、その部屋は医師の間で取り合いになります。こうしたスペースはお金を生むわけではないので、最小限に設計されてしまいますが、よりよい医療を提供する為には絶対に必要なスペースです。
現在の横須賀市立うわまち病院では、建物そのものの老朽化が目立つのはごらんのとおりですが、それ以上に、一人当たりのスペース、患者説明のスペース、医療機器を提供するためのスペースと電源、エレベーターの広さ、現代の医療にそぐわない部分がたくさん出てきており、よりよい医療を市民に提供するためには、どうしても新しい建物にする必要があります。集中治療室や救命センターなどリフォームで対応してきた部署もありますが、リフォームにも限界があります。出来れば、100年とは言わなくても、50年以上経過しても、リフォームなどでいつまでも使えるような構造にすることが理想です。それが結果的には税金の投入額が少なくて済む、後の世代にかける負担を減らすことになります。
またその意味では、病院の立地も非常に重要です。一部の地域の人にしかサービスを提供しないような立地では、意味がありませんし、病院の経営も縮小になります。この規模の病院を新たに移転する場合、当然のことながら、市の中央部に立地することが公共の利益になります。高齢化がますます進む横須賀地区では、交通の便が良い、徒歩での移動も可能なのが理想です。一部の人の利権のためだったり、一部の地区の街の活性化とかいって医療サービスの提供という面を無視した計画で、間違った方向に進んでしまうことがないように計画する必要があります。
一つは戦後というか、昭和の建築素材や建築様式が現代の生活にあわなくなってしまっていることがあります。一つは耐震基準がより厳しくなり、大規模な補強などが必要になっていること、また一つはエレベーターなどの可動部分が古くなって大規模な修繕などが必要になっていること、気密性などの問題で、レベルアップされた現代生活に合わないということ、などが考えられます。
しかし、病院の新築に関しては、これ以上に、医療の内容が大きく変わってきて、それに合わせるためには、新しい建物でなくてはならない、ということです。
年々、医療が変わってきたことの多くは、医療機器が高度化すると同時に、なんでも機械化、電気化され、それがないと医療が成り立たなくなるまでになってしまっていること、もう一つはプライバシーとIC(Informed Conscent)の時代になっていることです。昔の病院で、自分が想像するのは、自治医科大学の卒業生としてへき地の病院に数年間勤務していた時代で、昭和30年代に建築された病院です。今は15年ほど前に、それらの病院は新築されています。同じ県内の病院もほぼすべて、その頃に新築されています。おそらくその頃の建築技術では、30年くらいで建て替えになるようなものしか、建築可能なコストでは建てられなかったのだと思います。
昔の病院では、まず、医療機器を患者につなげておくという発想がなかったので、それを維持する電気の配線がそもそもありませんでした。8人部屋の掃除のために掃除機をかけるためのコンセント、それに各ベッドの明かりをつけることくらいでした。24時間モニターをつける、精密持続点滴をする、人工呼吸器をつける、酸素吸入するなど、特殊な場合を除いて必要とされていなかったのです。そこにモニターや人工呼吸器などを持ってきて、タコ足配線で医療機器をつけたために、おそらく過電流になり、酸素供給や人工呼吸器の作動に異常が来てしまったこともありました。昔は点滴も、看護師さんが、自分の腕時計の秒針と、点滴の落下速度を調整しているのが当たり前でしたが、今ではその光景はまったく見られません。数十万円する輸液ポンプなどを一つ一つの点滴にとりつけています。昔の病院では、一人一人の患者さんのための想定されるコンセントがない、足りない、という意味で、建て替えないと現代の医療に対応できない、ということです。
もう一つはプライバシーとICの普及です。未だに病院は大部屋が主流で、個室に入る場合は個室料金が上乗せになったり、他の患者さんから治療上、隔絶するために個室を使用したりしていますが、ホテルに宿泊するときに、今時、相部屋になる経験など、ほとんどないのと同じで、なぜ、病院では相部屋なのか?やはり少しお金を払っても個室にしてほしい、という人が増えているのは当然だと思いますし、もし個室料金が別途かからないのだとすれば、当然個室をみなさん希望するのではないでしょうか?大部屋は医師や看護師が巡回するときに、まとまっていた方が仕事しやすいという病院側の理由で設定されています。確かに、日本の医療者が欧米に比較して、スタッフの数が半分以下ですから、全てを個室にするには医師、看護師の数が2倍以上に増やす必要があります。その分、医療費も海外なみに現在の2倍以上にかける必要が出てくるでしょう。今や医療費は中国の半分、アメリカの5分の1くらいにまで国家間の格差が広がっていて、それでいて医療技術のレベルはその欧米と引けをとらないくらいの専門性の高さを維持しているのはすごいと思います。これを進むべき方向に改善していくと、当然個室になってくるでしょうし、一人当たりのコンセントの数、必要なアンペア数、空間の広さ、更にインターネット環境などに加えて、プライバシー確保のためとスペースは、今後ますます必要になってくると思います。それらに対応するには、古い病院では狭くて対応できません。
また、現在はICの時代です。病気の説明をするのに、プライバシーが確保されたスペースがどうしても必要ですが、昔の病院では、説明用のスペースやプライバシー確保のためのスペースは全く想定されていません。大部屋の隣の患者さんたちが、皆、スタッフの会話や患者さんへの説明を、耳をダンボにして聞き耳を立てています。医療者にとっても非常にやりにくい環境です。唯一大部屋で役に立つのは、急変時に他の患者さんが、医療者に知らせてくれる、アラームもしくはモニターの役目をしてくれることです。また、患者間に繋がりができて退院後も交流が続いているっていう話もよく耳にします。しかし、やはり病状説明をするスペースなどは別個に、しかも複数必要になります。前任地の大学病院(築30年ですが、新数年の新病棟も同じつくり)の大学病院でも説明用のスペースは病棟に一つしかなかったりして、その部屋は医師の間で取り合いになります。こうしたスペースはお金を生むわけではないので、最小限に設計されてしまいますが、よりよい医療を提供する為には絶対に必要なスペースです。
現在の横須賀市立うわまち病院では、建物そのものの老朽化が目立つのはごらんのとおりですが、それ以上に、一人当たりのスペース、患者説明のスペース、医療機器を提供するためのスペースと電源、エレベーターの広さ、現代の医療にそぐわない部分がたくさん出てきており、よりよい医療を市民に提供するためには、どうしても新しい建物にする必要があります。集中治療室や救命センターなどリフォームで対応してきた部署もありますが、リフォームにも限界があります。出来れば、100年とは言わなくても、50年以上経過しても、リフォームなどでいつまでも使えるような構造にすることが理想です。それが結果的には税金の投入額が少なくて済む、後の世代にかける負担を減らすことになります。
またその意味では、病院の立地も非常に重要です。一部の地域の人にしかサービスを提供しないような立地では、意味がありませんし、病院の経営も縮小になります。この規模の病院を新たに移転する場合、当然のことながら、市の中央部に立地することが公共の利益になります。高齢化がますます進む横須賀地区では、交通の便が良い、徒歩での移動も可能なのが理想です。一部の人の利権のためだったり、一部の地区の街の活性化とかいって医療サービスの提供という面を無視した計画で、間違った方向に進んでしまうことがないように計画する必要があります。