横須賀うわまち病院心臓血管外科

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昔の病院と今の病院・なぜ今、うわまち病院の新築なのか

2018-08-30 05:58:13 | 心臓病の治療
 戦後に建築された病院の建て替えがここ20年ほど前から続いています。これは、病院だけではなく、いろいろなビルも戦後に建てられたものが40年以上経過して立て直されているのと同じような現象です。
 一つは戦後というか、昭和の建築素材や建築様式が現代の生活にあわなくなってしまっていることがあります。一つは耐震基準がより厳しくなり、大規模な補強などが必要になっていること、また一つはエレベーターなどの可動部分が古くなって大規模な修繕などが必要になっていること、気密性などの問題で、レベルアップされた現代生活に合わないということ、などが考えられます。
 しかし、病院の新築に関しては、これ以上に、医療の内容が大きく変わってきて、それに合わせるためには、新しい建物でなくてはならない、ということです。
 年々、医療が変わってきたことの多くは、医療機器が高度化すると同時に、なんでも機械化、電気化され、それがないと医療が成り立たなくなるまでになってしまっていること、もう一つはプライバシーとIC(Informed Conscent)の時代になっていることです。昔の病院で、自分が想像するのは、自治医科大学の卒業生としてへき地の病院に数年間勤務していた時代で、昭和30年代に建築された病院です。今は15年ほど前に、それらの病院は新築されています。同じ県内の病院もほぼすべて、その頃に新築されています。おそらくその頃の建築技術では、30年くらいで建て替えになるようなものしか、建築可能なコストでは建てられなかったのだと思います。
 
 昔の病院では、まず、医療機器を患者につなげておくという発想がなかったので、それを維持する電気の配線がそもそもありませんでした。8人部屋の掃除のために掃除機をかけるためのコンセント、それに各ベッドの明かりをつけることくらいでした。24時間モニターをつける、精密持続点滴をする、人工呼吸器をつける、酸素吸入するなど、特殊な場合を除いて必要とされていなかったのです。そこにモニターや人工呼吸器などを持ってきて、タコ足配線で医療機器をつけたために、おそらく過電流になり、酸素供給や人工呼吸器の作動に異常が来てしまったこともありました。昔は点滴も、看護師さんが、自分の腕時計の秒針と、点滴の落下速度を調整しているのが当たり前でしたが、今ではその光景はまったく見られません。数十万円する輸液ポンプなどを一つ一つの点滴にとりつけています。昔の病院では、一人一人の患者さんのための想定されるコンセントがない、足りない、という意味で、建て替えないと現代の医療に対応できない、ということです。
 もう一つはプライバシーとICの普及です。未だに病院は大部屋が主流で、個室に入る場合は個室料金が上乗せになったり、他の患者さんから治療上、隔絶するために個室を使用したりしていますが、ホテルに宿泊するときに、今時、相部屋になる経験など、ほとんどないのと同じで、なぜ、病院では相部屋なのか?やはり少しお金を払っても個室にしてほしい、という人が増えているのは当然だと思いますし、もし個室料金が別途かからないのだとすれば、当然個室をみなさん希望するのではないでしょうか?大部屋は医師や看護師が巡回するときに、まとまっていた方が仕事しやすいという病院側の理由で設定されています。確かに、日本の医療者が欧米に比較して、スタッフの数が半分以下ですから、全てを個室にするには医師、看護師の数が2倍以上に増やす必要があります。その分、医療費も海外なみに現在の2倍以上にかける必要が出てくるでしょう。今や医療費は中国の半分、アメリカの5分の1くらいにまで国家間の格差が広がっていて、それでいて医療技術のレベルはその欧米と引けをとらないくらいの専門性の高さを維持しているのはすごいと思います。これを進むべき方向に改善していくと、当然個室になってくるでしょうし、一人当たりのコンセントの数、必要なアンペア数、空間の広さ、更にインターネット環境などに加えて、プライバシー確保のためとスペースは、今後ますます必要になってくると思います。それらに対応するには、古い病院では狭くて対応できません。
 また、現在はICの時代です。病気の説明をするのに、プライバシーが確保されたスペースがどうしても必要ですが、昔の病院では、説明用のスペースやプライバシー確保のためのスペースは全く想定されていません。大部屋の隣の患者さんたちが、皆、スタッフの会話や患者さんへの説明を、耳をダンボにして聞き耳を立てています。医療者にとっても非常にやりにくい環境です。唯一大部屋で役に立つのは、急変時に他の患者さんが、医療者に知らせてくれる、アラームもしくはモニターの役目をしてくれることです。また、患者間に繋がりができて退院後も交流が続いているっていう話もよく耳にします。しかし、やはり病状説明をするスペースなどは別個に、しかも複数必要になります。前任地の大学病院(築30年ですが、新数年の新病棟も同じつくり)の大学病院でも説明用のスペースは病棟に一つしかなかったりして、その部屋は医師の間で取り合いになります。こうしたスペースはお金を生むわけではないので、最小限に設計されてしまいますが、よりよい医療を提供する為には絶対に必要なスペースです。

 現在の横須賀市立うわまち病院では、建物そのものの老朽化が目立つのはごらんのとおりですが、それ以上に、一人当たりのスペース、患者説明のスペース、医療機器を提供するためのスペースと電源、エレベーターの広さ、現代の医療にそぐわない部分がたくさん出てきており、よりよい医療を市民に提供するためには、どうしても新しい建物にする必要があります。集中治療室や救命センターなどリフォームで対応してきた部署もありますが、リフォームにも限界があります。出来れば、100年とは言わなくても、50年以上経過しても、リフォームなどでいつまでも使えるような構造にすることが理想です。それが結果的には税金の投入額が少なくて済む、後の世代にかける負担を減らすことになります。

 またその意味では、病院の立地も非常に重要です。一部の地域の人にしかサービスを提供しないような立地では、意味がありませんし、病院の経営も縮小になります。この規模の病院を新たに移転する場合、当然のことながら、市の中央部に立地することが公共の利益になります。高齢化がますます進む横須賀地区では、交通の便が良い、徒歩での移動も可能なのが理想です。一部の人の利権のためだったり、一部の地区の街の活性化とかいって医療サービスの提供という面を無視した計画で、間違った方向に進んでしまうことがないように計画する必要があります。
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横須賀市立うわまち病院集中治療部

2018-08-29 06:28:53 | 心臓病の治療
https://www.facebook.com/uwamachiICU/?fb_dtsg_ag=Adxb0T_FCnHi4g9sUekBF7jZ9QWC5cXXgVj_hZSIQVntkw%3AAdwS7UksBrfHRYl6_r2zaSlvvH6cTcWHcaaykMc2KltSxA

横須賀市立うわまち病院 集中治療部は、うわまち病院の医療の質をあげるのに、非常に有力な武器となる部署です。重症患者や大きな手術の術後管理を引き受ける集中治療部は、心臓血管外科診療における最も重要なパートナーの一つです。集中治療部=ICU(Intensive Care Unit)に入室する患者さんの約4割を心臓血管外科の患者さんが占め、主に心臓・大血管手術後の管理のために入室します。他の診療科の術後患者や、救急搬送された重症患者も入室します。牧野部長が入職して以来、重症感染症管理、集中治療管理、そして内科の専門教育と、病院の質が大きく前進しました。今後ますますの活躍を期待します。

https://www.jadecomhp-uwamachi.jp/gaiyou/bumon/icu/

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横須賀市立うわまち病院 新築移転に関しての名称変更の是非

2018-08-28 10:44:07 | 心臓病の治療
 横須賀市立うわまち病院は、国立病院の統廃合の結果、横須賀市に移管され、その時に、地域医療振興協会に管理委託が決まった際に、住民などからの名称募集で「うわまち病院」に決まった経緯があると聞いています。
 病院移転の話が昨今取りざたされておりますが、場所がどこに決まろうとも、現状の病院機能を維持する場合は、この100名以上の常勤医師が在籍し救命センター、専門診療科を取りそろえ、心臓血管外科や、泌尿器科のロボット手術など先進的医療を実践しているのにふさわしい名称にするべきと考えます。
 横須賀住民医療を責任もって担うのに最もふさわしい名称として、

「横須賀市立医療センター」

というのが妥当と考えますが、いかがでしょうか。

 現行と同じ場所に最終的に設置する場合、「横須賀市立うわまち医療センター」とか、変更しないという案もありますが、市にとって大きなプロジェクトになりますし、市民のための、横須賀市を代表する医療機関にふさわしい名称がよいと思います。いずれ名称に関しては、場所の決定と同時に、基本設計をする上で早期に決定する事項であるため、年内には決まる方向になるのではないかと思います。
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病院の総合力 = ハートチームの実力

2018-08-27 07:32:27 | 心臓病の治療
 最近の心臓血管外科のキーワードとして、ハートチームという言葉をよく耳にします。主に、患者さんの治療方針について、他職種で協議して適切な方針を決定していく、という内容で学会でも議論をされています。特に大動脈弁置換術のカテーテル治療(TAVI)などでは、治療方針をチームで相談するという施設基準も設けられたりしています。これは、外科医の独断的な治療方針になるのを避けて、患者サイドの医療経済的にも適切な方針を決定するのに役立つというものです。
 しかしながら、本来のハートチームは治療方針の決定だけでなく、一人の患者に対して病院の総合力として他職種として、治療に総合的にあたるというのが理想ではないでしょうか?
 循環器の専門施設などでは、たしかに心臓外科専用の手術室やICUだったりで自由に設備を他の診療科と競合することなく使用することができる、として外科医としては、理想的な環境として向かう方向性があります。うまく機能すると、効率よく多くの手術をこなすことができるので、ハイボリュームセンターになるほど、専門施設化する傾向にあります。しかしながら、こうした専門施設では、たとえば、脳神経外科や消化器科がなかったり、他の専門内科がなかったりすることで、こうした複雑な合併症を持っている患者さんなどは対応しなかったりすることも見られます。また、術後に合併症を起こしたりすると、他の病院に転院が必要なこともあります。
 そうした意味では、合併症を持つ患者さんの場合は、いろいろな病状に対応できる施設、いわゆる病院の総合力が高い施設が理想的です。こうした合併症や難しい病態に合わせてその都度患者さんにカスタムメイドされたようなチーム構成が可能な病院が総合力が高い病院とも言えます。横須賀市立うわまち病院では、2002年に横須賀市から管理委託されて公設民営化されてから、診療科も徐々に増加し、現在28の診療科があり、心臓血管外科も2009年に開設されております。それまで活発に診療していた循環器内科に心臓血管外科が加わることで、それまでできなかった、特殊なカテーテル治療や植え込み型除細動器などの新しい治療ができるようになっただけでなく、外科治療もスムーズに開始できるようになりました。心臓血管外科が開設されて以来、共同に連日カンファレンスなどを通じてハートチームとしての機能を形成してきました。それに加えて、心臓血管外科解説と同時に複数の常勤麻酔科医体制となり、また自治医科大学さいたま医療センターからの麻酔科応援もあり、24時間緊急症例にも対応可能となりました。心臓血管外科だけでなく、他診療科の緊急手術にも対応可能となりました。手術室の体制も徐々に充実し、手術スタッフの夜勤勤務も開始され、より早急に緊急手術ができる体制が構築されております。うわまち病院開設以来、救急医療の充実を病院をあげて努力してきましたが、ドクターカー2台を運用し、救命センターが開設され、より救急体制の充実によって、様々な救急疾患に対応できる環境の中、心臓血管外科も救急部の協力を得て、スムーズな救急対応が可能となっております。2017年からはICU専属医師の体制が確立し、周術期の管理、院内感染対策も充実しました。医師の補助的な手技を実施可能な診療看護師(NP:Nurse Practitioner)も導入され、より周術期管理が充実してきております。高齢者の患者さんが多いうわまち病院では、他の診療科に関連する合併症を持つ患者さんも多い為、その都度、その専門家が院内にいるため事前に相談も可能ですし、術後の合併症に対する対処も適切に可能となっています。たとえば、創部の感染や癒合不全には、形成外科も併診し、また栄養・感染に対する対処で感染専門医や栄養管理チームが加わり、リハビリテーションの担当者、精神的なケアを行う緩和ケアチームも参加し、また、ご家族や社会背景にかかわる職種として医療相談室もかかわってきます。こうした院内のリソースをすべてハートチーム運用の流れの中で集学的に参加することで、より患者さんの病態や社会的背景にも適切にあわせて診療が可能となっています。また、これが地域の医療ともいえる形だと思います。
 これだけの職種をかかわることができる病院というのが理想の形とは思いますが、これを維持するためには相当数の患者さんの数も必要であるため、どうしても病院のロケーションや周辺に住む住民の人口や人口密度は病院運営に非常に重要です。
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神奈川ハートセミナー OSGにおける遠位側吻合の工夫

2018-08-24 14:21:57 | 心臓病の治療


 来週横浜で行われる「神奈川ハートセミナー」では、オープンステントにおける遠位側吻合の工夫について、座談会形式で討議される予定です。
発売以来5年目となったオープンステントは、かなり定着してきた印象がありますが、その挿入手技、吻合方法などには各施設統一されたものはなく、特に遠位側吻合は各施設でいろいろと工夫がされているものと思います。今回、県内の主要施設の責任者クラスが集まり、その方法などについて討議される予定です。当院としても、2014年に発売直後、東日本で第一例目を挿入した経験の術者として、その工夫などをコメントさせて頂く予定です。
内容としては、昨年の血管外科学会総会で発表したような、全周マットレス縫合を用いることによって、若手外科医にも安心して執刀させられる方法とし、確実かつ教育的な手技を基本とする、とコメントする予定です。
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MICS 低侵襲心臓手術の対象疾患

2018-08-23 06:22:59 | 心臓病の治療
横須賀市立うわまち病院 心臓血管外科で対象とする低侵襲心臓手術 MICS = Minimally Invasive Cardiac Surgery の対象疾患は

① 僧帽弁形成術・僧帽弁置換術
② 大動脈弁置換術
③ 心房中隔欠損症手術
④ 心臓腫瘍(主に心臓粘液腫)
⑤ 冠動脈バイパス術
⑥ 部分肺静脈灌流異常根治術(右上肺静脈)
⑦ 大動脈弁+僧帽弁の同時手術
⑧ メイズ手術・肺静脈隔離術
⑨ 左心耳切除手術
⑩ 上記疾患+三尖弁の同時手術

等を対象としています。

この中で、

① 上行大動脈の性状が良好である事
② 胸骨と椎骨の間の距離が充分あること(9cm以上が望ましい)
③ 左室機能が良好である事
④ 高度肥満BMI>30でない
⑤ 肺機能が良好で、片肺換気が可能である事
⑥ 高度の肺癒着がないこと
⑦ 出血傾向がないこと

術前の検査でこれらの条件がある程度予測可能ですが、術中になって初めてMICS困難と判断される可能性もあり、この場合は、従来の方法(胸骨正中切開)に変更する可能性があります。
また術中の出血に対して止血困難な場合は、創部の延長、胸骨切開の追加が必要な場合があります。
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横須賀市立うわまち病院 移転の是非

2018-08-21 16:55:34 | 心臓病の治療


 横須賀市立うわまち病院は病棟が老朽化が進んでおり、できるだけ速やかに立て直しをする必要があるのは、誰の目から見ても明らかと思います。2009年にうわまち病院に心臓血管外科を開設した時には、5年後を目処に病院を建て直しすると聞いておりましたが、残念ながらその後の市の方針で、立て替えの計画は大きく遅れて現在に至っております。現市長になり、早期に立て替えを進めるために現在の場所での立て替えを断念したと、発表され、非常に不安を感じます。

 もともとの国立横須賀病院から、赤字病院の整理のために市に移管し、公設民営として、うわまち病院が誕生しました。それによって患者サービスの改善、救急患者の積極的受け入れ、高度医療の推進などによって黒字経営を続けております。2009年の心臓血管外科開設は筆者が初代部長として、開設準備から携わり、機器の選定、スタッフの教育、ICUの開設・運営を皮切りに、特に大きかったのが、麻酔科の常勤医師の招聘に成功したことでした。これにより、夜間の緊急手術が可能となり、それまでほんとど行われなかった夜間・休日の緊急手術が可能となり、心臓・胸部大血管の救命手術も実施できる体制が構築しました。それによって、筆者の前任地の鎌倉の病院や、葉山の病院まで救急患者を搬送する必要がなくなりました。心臓血管外科においては、病院における高度医療の旗印として、低侵襲心臓手術など、県内の病院ではまだあまり行われていない手術にも対応しています。診療科も28診療科に増加し、100名以上の常勤医師が常駐し、この規模にしては非常に拡充し発展していることに、横須賀市の住民の方にご評価頂いている部分も大きいと思います。

 今後病院の建て直しにあたって、同じ場所での新築移転であれば、現在の体制を堅持拡充する方向で準備を進めるということになりますが、もし別の場所へ移転ということになれば、病院の目的、必要な体制が大きく変わる可能性があります。もともと横須賀・三浦地区は三方を海に囲まれており、大都市圏と違い、隣接した市町村以外から患者さんが来る環境ではありません。そのため、病院経営的には、より患者さんのアクセスが良好なロケーションとすることが非常に重要です。もし、一部の人が主張するように久里浜など郊外へ移転した場合は、主に久里浜地区で必要な医療規模に限定した病院規模でよいことになります。また、近隣に大病院があるから中央地区には必要ないと考えているひともいるかもしれませんが、それは間違いです。それは百貨店などの店舗が複数あるから、その街に買い物に行くのと似ています。患者さんにとっても病院を複数選択できる環境がより良い医療を提供することになり、病院のサービス低下を防ぐことになることは、うわまち病院が出来る前の横須賀の医療を考えれば自明のことと思います。心臓血管外科をかかえる病院である以上は中央地区のアクセスがいい場所に存在することが必須です。記事のごとく、これからもうわまち病院としての役割を存続させるには、そのことを理解している人間によって構想を進めていく必要がある、と私見ながら、横須賀の医療を担う一員として、また診療科を運営する責任者として思います。

 病院の現地での立て替えの障害としてアクセス道路が狭く、新しく開発するのに必要な規定以上の広さがないということがあります。病院が他の場所へ移転してしまうことの商店街の更なる損失、および住民の方の利便性の損失はかなり大きいはずで、拡幅にご理解を得られないはずはないと、確信しております。
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心不全の兆候

2018-08-19 21:46:24 | 心臓病の治療
心不全の典型的な兆候
① 息切れ 安静時・労作時
② 浮腫
③ 栄養障害 るい痩 = 心臓悪液質ともいい、末期がんのようにるい痩が著明になる状態
④ 動悸 労作時・安静時  頻脈を伴うものが多い
⑤ 不整脈  拡張末期圧上昇に伴う心房負荷が原因の上室性頻拍や心房細動、心室性期外収縮や心室頻拍 これらによる動悸や胸部圧迫感、眼前暗黒感、意識消失
⑥ 咳、喘息症状

検査所見としては
① 胸部レントゲンで心拡大、胸水貯留(特に右胸腔)、肺野のうっ血所見
② 典型的なものはないが、頻脈 その他の不整脈
③ 心臓超音波検査での、下大静脈~肝静脈うっ滞、胸水・心嚢液貯留、心腔の拡大、頻脈、左室収縮力の低下、二次性の僧帽弁逆流や三尖弁逆流、肺高血圧
など
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大網充填術のタイミング

2018-08-18 17:20:48 | 心臓病の治療
縦隔炎、胸骨骨髄炎の発生時には、適切な抗生剤、ドレナージ、洗浄、引圧吸引療法、栄養管理など集学的な治療が必要になりますが、その中でも、最終的な創閉鎖には大網充填術を行うことが多く、しかも有効です。
その適切なタイミングとしては、感染が完全に制御された段階で出来るだけ速やかに、ということになります。
まだ感染が残存しているときに大網充填した場合は、特に人工血管感染など人工物がある場合や、胸骨骨髄炎でまだ感染が残っていると再発、再燃のリスクがあります。特に人工血管感染の場合は、確実に感染が制御された段階まで引圧吸引療法を継続する必要があります。培養が2回、陰性化してから最近は大網充填することが多いです。無菌性(培養しても菌が同定されなかった症例)でも、長時間培養しないと検出されない菌が原因のことも少なくないので、慎重に対応する必要があります。
 軽度の感染は約1週間後ですが、人工血管感染の場合は2~3週間から1ヶ月以上待ってから大網充填する場合もあります。
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縦隔炎・胸骨骨髄炎にならない心臓手術 = 胸骨を切らないアプローチ

2018-08-14 06:21:59 | 心臓病の治療
 縦隔炎、胸骨骨髄炎は心臓手術で最も歓迎されない合併症の一つで、最近はNPWT(Negative Pressure Wound Therapy=陰圧吸引療法)などのおかげで死亡率は低下し、治療としては確立してきたように思いますが、初めからこの縦隔炎や胸骨骨髄炎にならないようにするのが最も優先されることです。
 手術部位感染(SSI = Surgical Site Infection)は、術中の落下細菌や皮膚の常在菌などが汚染源となることが多く、手術室内の環境から細菌が混入しないようにすること、そして患者さん側の感染しにくい状態を構築すること(栄養状態・免疫力など)などが予防になりますが、そもそも、縦隔や胸骨自体が感染に対して脆弱であることが前提にあります。縦隔炎のほとんどが胸骨骨髄炎を合併しており、胸骨骨髄炎を起こさなければ縦隔炎の頻度も減少すると考えられます。

 ですので、胸骨を正中切開する、または部分切開すること自体を行わない手術方法にすることで、根本的な解決となります。右開胸の弁膜症手術や左開胸か上腹部正中切開の人工心肺非使用冠動脈バイパス術は、小さい目立たない創で手術をすることで患者さんの満足度の高い手術であり、術後の呼吸状態が良いことや回復が速く入院日数が短くて済むことがメリットですが、外科医として最も残念な合併症=SSIが発生しないことが、最大のメリットとも言えます。その意味で安全に側方アプローチでの手術が可能な患者さんは、今後ますますこのアプローチが選択されることが増加すると考えられます。

 肋間開胸アプローチのデメリットもしくはリスク・注意点として、体型によっては視野が不良、肺の癒着がひどい人には適応できず、かつ術前に予測できないことが多い、肺機能が悪く片肺換気に耐えられない患者さんには適応困難、肋間神経の疼痛が胸骨正中切開よりも強いことが多い(神経ブロックで対応可能)、術後に乳房の変形が起こることがあり、女性の患者さんの場合は皮膚切開の位置に細心の注意が必要、大動脈の性状が悪い、拡大しているなどの症例は危険性が高い、研修医の開胸・カニュレーションの機会が減少する、などあります。安全に実施できない患者さんは無理にこのアプローチを採用する必要はありませんが、創の大きさにこだわらずに、創を拡大することだけで適応可能なのであれば、採用を検討すべきと言えると思います。
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冠動脈バイパス術における低侵襲化

2018-08-13 19:10:39 | 心臓病の治療
冠動脈バイパス術における低侵襲化

 高齢化が世界最速のテンポで進みつつある日本において、心臓血管疾患は今後数十年にわたって社会的リソースを逼迫するまでに増加すると考えられています。心臓血管外科手術は危険性・侵襲度ともに高い治療が多く、専門性の高い領域ともいえますが、治療を低侵襲化することで、より高齢者に治療範囲を広げ、また短期間に合併症なく治療を遂行することで限られたリソースを効率的に利用し、来る心不全パンデミックにも対応する一つの手段となりうるものと考えられます。低侵襲心臓手術をMinmally Invasive Cardiac Surgery = MICSと最近は呼ぶことが多くなっています。心臓血管外科領域でも低侵襲治療が年々発達してきていますが、特に今回は、冠動脈バイパス術における低侵襲化について紹介します。

人工心肺を使用しない心臓手術
 心臓血管外科手術の特徴として、人工心肺を使用して心停止や、循環を停止させて治療を行う侵襲度の高い手術が多い中、21世紀に入り大きく発達したのが、人工心肺を使用しない心臓大血管手術です。この中で、冠動脈バイパス術は手術の低侵襲化と低コスト化が同時に実現されたものとして特に社会的貢献の大きかったものと考えられます。他に、大動脈疾患に対するステントグラフト留置術、大動脈弁狭窄症に対する経皮的大動脈弁留置術(TAVI)、僧帽弁逆流に対するクリップによる経カテーテル的僧帽弁形成術(Mitraclip)など、他にも人工心肺非使用の心臓血管外科手術が進化していますが、デバイス費用が高額で適応も限定されるなど、まだ課題があります。

オフポンプ冠動脈バイパス術
 人工心肺非使用(オフポンプ)の冠動脈バイパス術は、拍動する吻合部を固定する専用のスタビライザーが発達したことで普及し、今や日本国内の冠動脈バイパス術の7割がオフポンプで行われております。心臓を動かしたまま血管吻合する職人芸的な技術は、特に日本の外科医に好まれ、最も高い頻度で行われています(世界平均3割)。積極的な施設ではオフポンプを標準術式として、当院も含めて100%オフポンプで行われています。人工心肺非使用により脳梗塞の頻度や感染症が減少し、特にハイリスク症例や透析患者の手術成績が向上しました。術中の使用するヘパリンも半量で済み、人工心肺による凝固因子の消費もないため、出血量が少なく止血も容易で、輸血も少なくて済みます。自己血回収装置の使用で多くの症例では無輸血で実施可能です。人工心肺を使用しない分、医療費は約30万円以縮小されます。

MICS-CABG
最近では胸骨を切離することなく、左小開胸や上腹部切開で複数の冠動脈バイパス術を行う、いわゆるMICS-CABGも試みられています(図1)。専用の開胸器や内視鏡を使用して内胸動脈を剥離し、人工心肺を使用せずに心拍動下に血管吻合します。左開胸では心臓を脱転せずに吻合可能なため、正中切開に比較して吻合中の血圧が安定します。同じ視野で右内胸動脈の採取や、心臓下壁の右冠動脈への血行再建も可能です。別創で腹部正中切開を行い、横隔膜経由で右胃大網動脈を吻合する場合もあります。小開胸もしくは小開腹の心拍動下冠動脈バイパス術は、術中の侵襲が小さいため手術室で人工呼吸器から離脱し、縦隔炎や胸骨骨髄炎の発生は皆無で、1週間以内での退院も可能です。
 横須賀市立うわまち病院でも積極的にMICS-CABGに取り組んでおります。

Hybrid治療
左小開胸で完全血行再建しなくとも、残存病変にカテーテルインターベンションを組み合わせたHybrid治療によって、より低侵襲に短期間で治療できる症例も増えてきました。より短時間で低リスクに治療を完結するために、症例によってはハートチームで、Hybridを検討することも必要です。





















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Shaggy Aorta Syndrome  = 高度の大動脈粥状硬化

2018-08-11 08:57:14 | 心臓病の治療


 高度の大動脈の粥状硬化病変が、大動脈全体にわたっていることを、Shaggy Aorta Syndromeと呼びます。図の大動脈内部に粥腫が、汚れた下水管のように、内面にヘドロのような粥腫=Soft Plaqueが付着して、血流に洗われる様子は、波に洗われる海草のような状態になっています。この粥腫が、血流によってちぎれて、末梢に流れ着くといわゆる塞栓症としての症状を呈し、脳梗塞や下肢動脈塞栓症の原因となります。足趾に塞栓を起こした場合は、Blue toe症候群と呼ぶこともあります。この粥腫、触るとすぐに崩れるような柔らかいヘドロのようなもので、自然に塞栓を起こすこともありますが、手術操作などでは容易に飛散してしまい、術中の塞栓症を高率に引き起こすため、こうした大動脈の性状の患者さんは手術リスクが上昇します。人工心肺を回して、通常とは違う血流パターンになっただけで飛散したり、また送血管の挿入操作、大動脈の遮断操作でも容易に飛散します。大動脈の切開、吻合の操作自体も危険性があがるため、手術中の注意としては、飛散した粥腫組織を回収したり、血流をフラッシュして除去したり、水で洗って回収するなど様々な工夫で、合併症を予防するように務める必要があります。
 特にこうしたShaggy Aorta Syndromeを合併していて手術リスクが上昇する手術は、主に胸部大動脈瘤の手術であり、術中発生する脳梗塞の頻度も他の手術よりも高い傾向にあります。人工血管置換だけでなく、ステントグラフト留置術などの血管内治療においてもガイドワイヤーの操作などで、容易にこの粥腫を飛散させてしまう危険があります。胸部大動脈疾患だけでなく弁膜症手術などでも、人工心肺の装着・運転、大動脈遮断などリスクを伴う手技があるため、同様に塞栓症のリスクがあります。冠動脈バイパス術においては、特に日本において、人工心肺を使用しない、いわゆるオフポンプCABGが主流となっている為、術中の脳梗塞の頻度が激減しています。特に上行大動脈に静脈を吻合したり、そのための部分遮断鉗子をかける操作が可能かどうか、術中の表在超音波検査で評価したりと、予防対策もされるようになっています。
 手術を受ける患者さんの大動脈の状態が、Shaggy Aortaかどうかは、単純CTでは判別不能であり、やはり造影CTを撮影する必要があります。最近広まっている、MICS(小開胸による弁膜症手術など)では、足の付け根から大腿動脈送血を行う場合が多い為、安全に手術が実行可能かどうか判断するために、術前の造影CTは重要です。もし、大動脈の性状が悪い場合は、腋窩動脈送血、上行大動脈送血など、送血部位を変更する必要があります。

 安全に手術を実施するためには、その患者さんに通常の人工心肺装着が安全にできるのか、通常の大動脈操作が安全に実施できるのか、などを術前に評価する必要があります。
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胸腹部大動脈置換と冠動脈バイパス術の同時手術

2018-08-10 12:48:09 | 心臓病の治療



冠動脈バイパス術と胸腹部大動脈置換を同時に行うことは、めったに経験しませんが、左開胸手術では同一視野で心臓、下行~胸腹部大動脈を操作することが出来るため、不安定狭心症がある患者さんなどでは、同時手術も可能です。カテーテル治療との組み合わせや、胸骨正中切開の冠動脈バイパス術との二期的分割手術も可能ですが、入院期間の短縮やそれぞれのリスク低減には同時手術を検討してもいいと思います。月間 胸部外科という雑誌にその症例報告が掲載されました。
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台風の日の外来診療と患者対応

2018-08-09 06:09:29 | 心臓病の治療
大きな台風が日本列島を襲い、未曽有の大被害の危険性、という言葉がニュースで耳にします。たしかに今まで経験していないような豪富や水害がいつもテレビをにぎわしています。
台風の時は、船が揺れて岸壁に当たると船体が破損する危険があるという事で、沖合などに船を避難させるそうですが、横須賀湾に一隻も鑑定がいなくなり、これほどまでに空っぽになった状態は珍しいと思います。2~3日前まではロナルドレーガン、いずも、しらせなど大きな船がたくさん停泊しているときには横須賀市内のホテルも満室だったそうですが、台風が接近する昨日からは横須賀湾だけでなく市内も空っぽになっています。



昨日は、足の不自由な患者さんのご家族をタクシーに乗せるところまでお手伝いしたり、外来で具合の悪い患者さんに遭遇し、自家用車に乗せるところまでお手伝いをして、正面ロビー周辺に1時間ほどおりましたが、台風にも関わらず外来受付周辺にはたくさんの患者さんがおり、たまには病院の玄関で患者さんの動きなどを患者目線で見るのも日常診療の中では非常に有意義だと感じました。
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南極観測船しらせ帰港

2018-08-06 16:20:40 | その他


南極観測船しらせが横須賀に帰ってきました。年に2~3回の頻度で帰港しているようですが、本当に大きな舟で、いずもに匹敵する大きさです。
横須賀では他では見られない軍艦などが見られます。

自治医科大学の卒業生の先輩でも何人か、南極観測隊に参加された人がいるようです。自分もチャンスがあれば、と思いますが、基本的に心臓血管外科医は病院からあまり離れてはいけない暗黙のルールがあるのも事実で、参加は難しいですね。
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