横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

忘れてはならない大動脈弁閉鎖不全症手術における大動脈遮断の重要性

2023-02-17 09:54:41 | 心臓病の治療
 大動脈弁逆流は大動脈から左心室に血液が逆流して心不全を起こす病気です。心臓外科医はこれを人工弁置換したり、場合によっては自己弁や自己心膜で形成して逆流を止める手術を行いますが、その際に、外科医が忘れがちなことがあります。また、そうした教育を受けていない外科医も多いということを最近になって改めて実感したので、教育する側の責任も重要です。
 大動脈弁逆流の治療は、結果として逆流が止まっていればその後の心不全を予防できたり改善したりできますが、手術の際にも逆流はまだあるなかで治療をするので、たとえば麻酔をかけて心室細動になってしまう、人工心肺を開始したとたんに心室細動になって心臓が非常に張ってしまって手術操作ができなくなってしまう、ということがあり得ます。筆者の場合もお1000例以上の経験の中で2回ほど人工心肺開始と同時に心臓が張ってしまいすぐに心室細動になってしまってすぐに大動脈遮断が必要になった経験があります。大動脈弁逆流の症例はすぐに遮断しなければならない症例がある、ということを改めて外科医は肝に銘じておく必要があります。
 また大動脈解離の手術で心尖部送血を行っているときに同様の事態に陥ったことがあります。ある程度の逆流であれば、左房左室ベントから血液を吸引して逆流の影響を減らせますが、それでも足りない場合は肺動脈ベントが有効場場合があります。循環停止できる温度まで冷却できるまで我慢しなければならない状況は外科医としては苦しいので、最近は心尖部送血は他の手段がない場合の限られた症例でのみ行っています。他の部位からの送血であれば大動脈遮断することで対処できます。
 最近自分では経験していませんが、大動脈弁逆流の手術におけるトラブル症例について耳にしたので、あらためて再認識しました。

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The selling points of our cardiovascular surgery department at Yokosuka General Hospital Uwamachi

2023-02-11 07:30:11 | 心臓病の治療
The Department of Cardiovascular Surgery at Yokosuka General Hospital Uwamachi (of which I’m the director) treats heart and vascular diseases in the city of Yokosuka and the surrounding municipalities, areas with a combined population of approximately 600,000. It’s the only facility in the region that can perform emergency surgeries and accept emergency patients every week, and for this reason it saves numerous lives.

Of the five staff members, three are board-certified specialists, and I’m a board-certified supervisor. The department is also a training facility for specialists, and I’m currently instructing two trainee surgeons.

The Yokosuka and Miura areas are home to a lot of elderly people, so the average age of patients is quite high and there are numerous high-risk surgical cases. To improve surgical outcomes we perform minimally invasive surgery using a thoracic endoscope. A small-incision approach is taken in half of our heart surgeries, and this results in fewer complications and shorter hospital stays. 

We perform the largest number of minimally invasive cardiac surgeries in Kanagawa Prefecture. We do an especially large number of minimally invasive coronary bypass surgeries (which are performed at only a few facilities in Japan), and we get referrals from distant hospitals. 

Recently endoscopic surgeries have been on the rise, and the same is true of less invasive endovascular procedures such as stent grafting.
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ヨシキ

2023-02-04 08:42:42 | 日記
一流芸能人YOSHIKIがプロデュースしたワイン、ヨシキを飲ませていただきました。深い味わいで、お肉に合います。大宮で一番美味しいと昔から言われている、新都心の高麗房、十年ぶりくらいで伺いましたが、内装がより、高級店にリニューアルされていました。自治さいたま心臓血管外科の医局員勧誘にもよく使われたお店で、筆者も何度かつれていかれ、そこで、『世界を相手に戦うのだ!』との教授の訓導を頂いたものです。当時は菜々緒もバイトしていました。相変わらずお肉は絶品でした。

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忍者に結婚は難しい

2023-02-04 08:04:00 | 心臓病の治療



先日見たドラマで、医師が病状説明している1シーン。蜂アレルギーによるアナフィラキシーショックで意識が戻らず血圧低下から回復しない、との内容。後ろにあるモニターの画面に表示されている収縮期血圧は116/83と正常。こういうドラマって筆者なような視聴者を喜ばすためにワザと間違いを演出してるんだと思います。
I like medical dramas. They are so dramatic to save patients’ lives and inspiring to us. But that’s not all. As a professional cardiovascular surgeon, I enjoy the detail in the medical technical scenes, and check out the end roll who did the medical spectatorship. Sometimes I find my friend’s name on it, or the filming location is somewhere I have worked or know. By looking at the small details of the background and tools used, I can feel familiar with the drama and enjoy the content of any medical scene more deeply. 
Sometimes I find something wrong with medical common sense or professional perception, which makes the drama all the more enjoyable for me. In the drama scene I saw last week, the doctor explained to the family that the patient was stung by a hornet and was in anaphylactic shock, leaving her unconscious and hypotension. However, on the biological monitor moving on the background, the blood pressure was extremely normal at 116/83.
I have recently come to believe that the medical mistakes in these medical dramas are created with the aim of entertaining medical professionals like me.
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MICS手術の創部痛は?

2023-02-01 18:00:18 | 心臓病の治療
 低侵襲の手術なので回復が速く、合併症が少ないことで今後ますます普及することが期待されるMICS=Minimally Invasive Cardiac Surgery=低侵襲心臓手術ですが、側方開胸は胸骨正中切開よりも痛みが強いと一般に言われています。横須賀市立うわまち病院で実施した患者さんのデータ比較では、術後三日間は側方開胸のほうが正中アプローチに比較して鎮痛剤の使用量、疼痛のスケールにおいて痛みが強く、その後は7日目、退院時、初回外来時においてはほぼ正中アプローチと同等という結果でした。
 今回、MICS-CABG=側方小開胸アプローチによる冠動脈バイパス術において、両側内胸動脈、右胃大網動脈、大伏在静脈を使用して4か所のバイパス術を実施した患者さんに対して術後の疼痛について質問したところ、胸部の手術創は痛くないが、右胃大網動脈を採取するために開けた上腹部の手術創のほうがはるかに痛いとおっしゃっていました。上腹部の手術創は胃切除術よりも小さい6~7cmの皮膚切開で胸部よりも若干小さくなっていましたが、腹部のほうが胸部よりも痛いとすると、今後は患者さんに対して、胃切除や腸切除の手術よりも痛くないですよ!と自信をもって伝えられるということになります。今後も症例を重ねて、腹部と胸部の手術ではどちらが痛いのかと比較していきたいと思います。
 患者さんの中ではMICSではありませんが、胸部大動脈瘤の手術と腹部大動脈瘤の手術を両方経験している患者さんも少なからずいますが、それらの患者さんにおいても侵襲のより大きな胸部の手術よりも、リスクが少なく短時間で終わる腹部大動脈瘤の手術のほうが痛いと口を揃えておっしゃいますので、MICSにおいてもこれは事実なのだと思います。
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