横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

MICS-CABGにおける複数肋間開胸アプローチの有用性

2024-08-28 01:32:34 | 心臓病の治療
 MICS-CABGにおいて、上行大動脈への中枢側吻合、下壁領域への吻合操作の難しさが技術的障壁として、普及を妨げており、LITA-LADの1枝バイパスにとどまっている施設が多い理由の一つと考えられます。
 これに対して1か所の左側方開胸から複数肋間を介して心臓操作を行うことがMICS-CABGの技術的課題を解決する一手になりうるかを考察します。
 8~10cmの皮膚切開で左第5肋間アプローチをメインの操作肋間として、心膜切開、内胸動脈採取等を行った後、上行大動脈の部分遮断、中枢吻合が視野操作性不良の場合に同じ皮膚切開から第4肋間開胸に切り替えて中枢側吻合を行い、末梢吻合の際には再び第5肋間開胸に移行します。もしくは、4PDなど下壁領域の吻合視野、操作性が不良の場合に、同様に同じ皮膚切開から第6肋間開胸からのアプローチに変更して末梢吻合を行います。場合によって肋骨弓を離断して視野の改善を図ります。
 複数肋間開胸アプローチによって良好な視野、操作性を確保したMICS-CABGはより吻合の質を確保する有用なオプションであり、今後の多枝MICS-CABG普及の一助になると考えらます。
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Left atrium to left ventricle conduit

2024-08-10 08:16:19 | 心臓病の治療
 僧帽弁狭窄症に対しては通常、人工弁置換術が行われますが、弁置換術後も房室間狭窄が残った場合は、僧帽弁輪の弁輪拡大は困難なので、他の方法としては、左心耳に導管をたてて人工弁を介在させ左室に血流を流すという術式が可能性のある血行再建方法です。
 主に小児心臓手術で実際に実施されているようですが、症例報告によると、導管は心尖部ではなく、側壁に吻合しているようです。操作上は心尖部が簡単そうですが、側壁に吻合するのは、屈曲を避ける、できるだけ短くして血栓形成を予防するなどがその理由なのでしょうか?
 症例があれば是非やってみたい手術です。
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ブラックペアン2についての感想(続き)

2024-08-09 14:37:32 | 心臓病の治療
 ブラックペアン第5話 ストーリーには手が込んでいましたが、注目の心臓手術シーンでは、流れるようなスムースな展開でした。こうした医療ドラマはプロがみても楽しめるように、わざとちょっとした違いを作ったりしてくれていて、そこがまた見ていて楽しめる部分の一つです。
 前回のブログに「続き希望」のボタンを頂きました。推してくれた方、ありがとうございます。
 その前に記載したブログでは、通常上行大動脈に挿入するこの送血管、いったいどこに入っているのだろう?との疑問に、ある仲良しの心臓外科教授から、「遠位弓部送血!」と高難度の手技の答えを頂きました。それが正解だとすると、たしかに世界一の外科医にしかできない高難度手術です!でも管の中の血液が静脈血の色なんですけど・・・。
 問題のシーンは以下

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