横須賀うわまち病院心臓血管外科

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心房細動における抗凝固療法不適応症例に対する左心耳切除術

2019-12-18 17:36:29 | 不整脈


来年3月に開催される三浦半島抗血栓療法セミナーにおいて、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科から、心房細動における抗凝固療法不適応症例に対する左心耳切除術についてお話させていただきます。

心房細動において形成される左房内血栓は9割は左心耳内に形成されるため左心耳を切除してしまうと左心房内に血栓形成される危険性は著しく低下し、抗凝固療法をしなくとも、抗凝固療法中の患者さんと脳梗塞の発症頻度は変わらない、とも言われております。

出血性合併症などのため、または抗凝固療法をしたくない患者さんにとって左心耳切除術は一つのオプションとして有効な治療手段になると考えられます。

横須賀市立うわまち病院としては心房細動に対するマネージメントとして
①抗凝固療法
②カテーテルアブレーション
③メイズ手術(冷凍凝固療法、高周波治療)
④左心耳切除術
を患者さんにとって適切な治療法を選択して積極的に治療していく方針です。
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心房細動からの脳梗塞を予防する②=左心耳の閉鎖・切除

2018-06-10 08:46:20 | 不整脈
心房細動によって心房内に血栓を形成し、その血栓が脳血管に流れ着くことによって脳梗塞を発症させること、心原性脳塞栓症ともいいます。
心房内に血栓ができる場合、9割は左心耳にできています。左心房は袋状の空間に、左心耳といういわゆる心臓の耳のような形の部分が加わって構成されています。手術中に観察できる左心耳は左心室の頭側、主肺動脈の左側に外側からは見えますが、一方、左房内からは僧帽弁口の頭側で、左側の肺静脈口との間に入口が見えます。

左心耳に血栓ができなくすることが、心内血栓の予防に大きく貢献します。

②心房内に血栓ができないようにする治療が、心房細動を治す①に加えて、重要な治療となります。

一つは、抗凝固療法によって血液が固まらないようにすることで、心房内の血栓形成を予防します。注射剤としてはヘパリンがありますが、内服薬としては、代表的なのはワーファリンや、Xa阻害剤などによる抗凝固療法です。抗血小板薬を併用することで効果が追加されます。抗凝固療法には、一方で出血のリスクがあります。ワーファリンには種々の薬物相互作用があるので、食事の制限があったり、他の薬剤との飲み合わせの問題もありますし、Xa阻害剤(最近はNOAC、DOACといわれています)はワーファリンと効果が同じで、より早期に効くし、毎回の採血でのPT(プロトロンビン時間)検査が不要の為、近年普及してきているのではありますが、まだ後発品がないため、お値段がワーファリンの約100倍と高価です。患者様によっては、こうした薬剤が使えない人も少なからずいます。

抗凝固療法ができない患者様には、左心耳を閉鎖または切除することが予防に有効と言われ、その効果は抗凝固療法と変わらないという報告もあります。左心耳を閉鎖することで、薬物を内服が必要なくなる、とまで言えるかどうかはまだ情報が不十分かもしれませんが、今後エビデンスが蓄積されれば一生内服する薬物治療から解放される可能性があります。
 左心耳を閉鎖する方法として、、経カテーテルに左心耳内に傘状のデバイスを挿入留置して塞いでしまう方法(ウォッチマン = Boston Scientific社)があります。左心耳の形に合わせて、サイズ・形態を選択します。他には外科的に閉鎖、もしくは切除する方法。多くはメイズ手術や僧房弁手術と同時に、外側から左心耳を切除する、もしくは左房内から左心耳の入り口を糸で縫合して閉鎖する方法です。
 今後注目される方法として、左心耳を外側から専用のクリップのような装置で挟んで、そのクリップを留置して閉鎖する方法で、この方法ですと、心停止下で行う必要がない為、人工心肺非使用のバイパス手術時に併用したり、左小開胸、内視鏡補助下で人工心肺非使用下に行うことも出来ます。残念ながらまだ保険償還がとれないので、自費診療にするか、もしくは病院の持ち出しとして使用されていますが、今後保険償還が取れる、もしくは新たな術式として保険で認められる方向にあるといわれ、そうなると爆発的に手術を受ける患者様が増加する可能性があります。特にインテリジェンスの高い患者様には、その予防効果が注目され、希望者が多いと聞いています。まだ関東地方でも左心耳閉鎖のみを行っている施設は少ないですが、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも、適応のある患者様では今後積極的に左心耳の閉鎖術を行っていく方針とする予定です。
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心房細動からの脳梗塞を予防する①

2018-06-09 11:26:42 | 不整脈
 心房細動は、不整脈の中で最も多く遭遇する不整脈ですが、左心房の中に血栓を形成し、それがはがれおちたものが血流にのって、脳血管に流れると脳塞栓、多臓器に流れた場合もその臓器ごとの塞栓症状を引き起こします。下肢動脈には下肢の急性動脈閉塞、腸管では腸管虚血、いずれも命にかかわる重大でかつ突然前触れなく発症する病気です。
 その意味で、無症状の心房細動でも、血栓形成を抑制して、突然の重病を予防していく必要があります。

① 心房細動そのものを治療する
 弁膜症に関係して心房細動を呈している場合は弁膜症の手術が必要です。弁形成や弁置換術が前提になります。また心不全を呈している場合は、心不全の原因にそった治療が必要になります。
 弁膜症がない、心房細動ではカテーテルアブレーションというカテーテル治療が有効な場合があります。これは心房壁の一部を経カテーテル的に電気的に焼灼したり冷凍凝固する方法です。有効率7割・
 また、メイズ手術といって、開心術として心房をあけて、心房壁の一部を同様に電気的に焼灼したり冷凍凝固することで心房細動を治す治療もあります。こちらも有効率は約7割といわれています。
 心房細動が両側の肺静脈が起源になっていることがあるので、最近は両側の肺静脈を胸腔鏡下に焼灼する肺静脈隔離術を行う施設もまだ少ないですが始まっています。

発作性心房細動の場合は、抗不整脈薬で心房細動が予防できれば、それが一番簡便な方法のひとつです。ベータ遮断薬やいくつかの抗不整脈を内服、または発作時に注射することは古典的な治療ですが、発作性心房細動には一時的に効果が期待できます。心拍同期したカウンターショック(心臓への直流通電)も術後などの発作性心房細動では、洞調律に復帰させるのに時々行われます。

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