横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

NO治療の可能性

2018-09-29 00:23:46 | 心臓病の治療
 一酸化窒素の吸入療法は1990年代に開発された比較的新しい治療法です。
 血管平滑筋の拡張作用があることから、主に吸入することにより肺動脈圧が低下することを利用して、先天性心疾患をもつ新生児の肺高血圧治療に成果が認められてきましたが、2016年より成人心臓手術後の肺高血圧に対する手術適応が認められ、 成人の心臓血管外科手術のみを扱う施設としては神奈川県内では最も早く横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも2017年から治療を導入しています。
 これにより特に、急性大動脈解離における術後のSIRS=Systemic Inflammatory Responce Syndromeに伴う肺障害に対して効果を上げています。急性大動脈解離は高度の全身炎症を起こすため、これによって白血球より産生される炎症性サイトカインが、肺胞上皮などを攻撃して炎症を惹起し、肺浮腫を起こすことによって一時的に呼吸機能が著しく悪化します。
 NOを吸入することで、NOが到達する肺胞に灌流する毛細血管が拡張し、喚起する肺胞ほどガス交換が盛んに行われるようになります。肺浮腫に陥った肺胞ではガス交換がうまく行えないため、NOが到達できず、血管拡張は行ず、これによっていわゆるV/Qミスマッチが解消されて、呼吸機能が改善します。
 また肺血管の拡張によって、右心室から肺動脈、肺静脈、左心房へと血流がよりよく灌流することになり、心不全が改善することが期待できます。


 特に肺高血圧もしくは右心不全を伴う症例には効果が期待できるため、両心補助(左心補助+右心補助)を必要とする症例に対して、左心補助だけで済む可能性が高くなります。補助人工心臓装着の際、両心補助でなく左心補助だけですむようになれば、装着の手術侵襲が大幅に削減され、救命率そのものを改善できる可能性が高くなります。極端に言うと、右心補助が必要なく、左心補助だけですむようになれば、開胸による全身麻酔手術である補助人工心臓装着を必要とせず、最新の循環補助装置であるインペラ(Impella)の装着とNO治療の組み合わせだけで劇症心筋炎などの症例を治療できることになります。次世代の治療として、より低侵襲で確実な救命の期待できる治療が進化していくものと期待できます。
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冠動脈バイパス術の低侵襲化

2018-09-27 18:48:54 | 心臓病の治療


感染防止、早期回復をはかるには、やはりより、低侵襲な手術が必要です。月刊 地域医学 2018年10月号より。
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Suturess Valve = Rapid Deploy AVR

2018-09-27 06:57:13 | 心臓病の治療
 Suturess Valve = スーチャーしない人工弁、これは通常、15本前後の縫合糸で弁輪に糸で縫い付ける人工弁を、縫わなくても設置できるので時間の短縮が可能となり、また、結びにくい視野でも設置可能とする新技術です。主に大動脈弁位に縫着する生体弁における新技術です。これにより、大動脈弁置換の時間が約半分になります。
 これは経カテーテル的大動脈弁置換術=TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implant)の技術が応用されています。現在まだ保険承認されていませんが、おそらく2019年には国内でも臨床使用可能となると思われます。Edwards社(USA)のIntuityとLivanova社(Italia)のPercivalの2社の製品があります。
 大動脈遮断時間が50~60分のところを30分以内となり、手術時間が短縮が可能と言われており、これにより

①冠動脈バイパスや大動脈瘤手術などの同時手術の場合に心停止時間を短縮
②小開胸の手術(MICS)において、縫合糸の結紮が困難な手技を回避できる

というメリットがあります。今年4月から小開胸胸腔鏡補助下心臓弁手術が保険加算が適応となって、今後ますますMICSが一般化する時勢では、早期の発売が期待されます。
先週行われた、大動脈弁治療のシンポジウムでも話題になりましたが、ここでもMICS-AVR(小開胸の大動脈弁置換)では、当院でも行っているStonehenge Techniqueによる大動脈弁置換がスタンダードな術式として今後の主流になるような感じで紹介されていました。
現在開催されている第71回日本胸部外科学会のランチョンセミナーでも紹介され、おそらく今年の年末もしくは来年初めには保険承認され臨床使用できるようになる、と予測されております。
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横須賀市薬剤師会学術講演会 最新の低侵襲心臓手術

2018-09-25 18:25:02 | 心臓病の治療


患者さんに直接薬剤の説明をしたり、コンタクトが多い職場としては薬局があります。薬剤師の方々にも心臓手術を理解してもらい、日々の日常の診療の一助になれば、そういう目的に講演会を企画してもらいました。先日の歯科医師を対象とした講演会に続いて、医師以外を対象にした講演会を対象に行いました。

薬剤師の先生方に、薬の話を全くしない内容での講演でしたので、若干の不安もありましたが、多くの薬剤師の方々に出席いただき、興味をもって聴講いただきました。普段の臨床の中で、どのような治療を受けて、どういった視点で医療をしているのか、ということを現場の意見や考え方を交えて知識を入れていただくのも、薬剤師としての仕事の幅も広がるのではないか、と思いました。

もし第二回目を要望されるようでしたら、次回は大動脈疾患の診療についてお話したいとお伝えしました。
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往診する心臓血管外科医

2018-09-24 15:32:04 | 心臓病の治療
 基本的に心臓血管外科医の仕事場は手術室です。手術するのが仕事ですから。それに関連して、術前の診断、病態の判断、治療適応の検討、手術プランの検討、そして手術、術後の集中治療管理、術後の評価、退院後の方針決定、退院後の外来管理などと一連の仕事は病院内で行われます。その中で地域の医療機関と連携しながら、基本的に退院後の患者さんは、紹介元もしくはかかりつけ医のもとで通院管理をお願いしています。
 創部の問題がある患者さんは、基本的にかかりつけ医に戻すことはできないため、その間、通院での創部管理などをおこないます。しかしながら、通院できない患者さんで創部に問題がある場合があります。

 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、フットワーク良く診療することをモットーにしていますから、他の医療機関や診療科などから依頼がある場合は直ちに横論で実行すべきと考えて日々診療しています。しかしながら、病院へ通院できない患者さんもあり得ますので、その場合は往診も可能な限り対応しています。2018年に入り往診して処置や診察をした事例が数件あります。これも訪問診療医、訪問看護ステーションなどとの連携で成り立つものです。それを積極的に、というほどではありませんが、必要で可能な事例にはできるだけ対応しています。
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下肢壊疽で足を失わないために−フットウェアの重要性

2018-09-23 14:55:23 | 心臓病の治療
https://medicalnote.jp/contents/180904-007-HH

フットケアの重要性は特に、下肢の血流障害、糖尿病や腎臓病を抱えている患者さんにとって重要です。
血流障害があると創が治りにくいので、ちょっとしたキズから感染や壊疽に発展して最悪の場合は切断にいたることもあります。普段からの注意事項も大事です。


下肢壊疽とは?

糖尿病性神経障害*や下肢閉塞性動脈硬化症*などによって「下肢壊疽えそ」を生じることがあります。

下肢壊疽とは、皮膚や組織が腐ってしまい黒や茶色に変色してしまう状態を指します。壊疽が皮下組織までにとどまっている場合であれば、壊疽した部分を削り取って再生を促す治療を行ったり、その部分に皮膚などの組織を移植する治療を行います。

しかし、さらに奥深くにある腱や骨にまで壊疽が進行している場合には、足や指を切断する必要があります。

* 糖尿病性神経障害…糖尿病によって末梢神経(感覚神経・運動神経・自律神経)が障害されること

* 下肢閉塞性動脈硬化症…動脈硬化の進行によって、下肢の血管が狭くなったり閉塞したりする病気

糖尿病による下肢壊疽は重症化しやすい

糖尿病性神経障害の場合、下肢壊疽が重症化しやすい傾向があります。なぜなら、糖尿病性神経障害では感覚神経が麻痺するため、足が壊疽していても痛みを感じないためです。壊疽による苦痛をご本人が感じないため、病院にかかるタイミングが遅れてしまい、切断に至るケースは少なくありません。

一方、下肢閉塞性動脈硬化症の場合には、壊疽による強い痛みを伴うため、早い段階で治療の介入ができることが多いです。治療方法は血管内治療やバイパス手術で、下肢の血流を改善させて下肢切断を防ぎます。

もっとも重症化しやすいのはその両方を患っている場合であり、最近はそのような患者さんが増加しています。

下肢壊疽に至るきっかけは?

歩いている人の足元

きっかけは「下肢の外傷」

下肢壊疽は、下肢の血流が高度に障害されている方や下肢の神経障害の方すべてに起こるわけではありません。

下肢壊疽が起こるきっかけの多くは、靴擦れや深爪、胼胝たこ、水虫などによってできた小さな外傷です。

たとえば、足の指に靴擦れができたとき、健康な方であれば傷は時間と共に自然と治癒していきます。しかし、下肢の血流が途絶えている方の場合、傷を治すための栄養や酸素を傷口に届けることができません。このように傷を治す力がないため、皮膚や組織はだんだんと壊疽していきます。



下肢の血流が少ない方であっても、下肢の外傷さえ防ぐことができれば、下肢壊疽を防げる可能性があります。そしてそのためには、自分の足の形に合ったフットウェアを使用することが非常に重要です。

自分に合ったフットウェアを身につける重要性

靴擦れなどによる壊疽を防ぐフットウェア

フットウェアとは、靴や中敷など「足に身につける物」のことです。

自分の足に合わない靴を履いて、靴擦れや胼胝たこができる経験は誰しもしたことがあると思います。下肢の血流障害や感覚障害がある方の場合には、それが下肢壊疽を引き起こす原因になります。

そのため、靴擦れや胼胝たこから生じる下肢壊疽を防ぐためには、一人ひとりの足の形や体のバランス、歩き方などに合わせたフットウェアを使用する必要があります。

足の変形が強かったり、下肢壊疽の既往がある方の場合、フットウェアは、治療用装具(靴型装具や足底装具)として保険診療で製作することができます(一部実費となる場合もあります)。

当院では、フットウェア外来という専門外来で足の健康を考えている靴屋さんや介護靴会社さんをご紹介したり、装具としてのフットウェアを作成したりしています。

自分の足で歩き続けることの大切さ

「自分の足で歩くことができる」ということは、生活の質を維持するうえで非常に重要な要素です。

自分の足に合ったフットウェアを使用しないと、歩くことによって靴擦れや胼胝たこができる恐れがあるため、「歩かないこと」が一番の治療になってしまいます。すると、せっかく足があっても歩くことから遠ざかり、足を切断した場合と同じくらいに日常生活を送ることが難しくなるでしょう。

患者さんによっては、下肢壊疽を回避しなければならないために仕事を続けることができなくなる場合もあり、生活を維持することも困難になります。そのため、医師から歩かないようにといわれても、無理して仕事を続けてしまい、最終的には足を失ってしまう方もいらっしゃいます。

ですから、自分の足で歩き続けて生活の質を維持するためにも、自分に合ったフットウェアを使用することはとても大切なことなのです。

日本の足医療は、発展途上にある

中田弘子先生

欧米には足を専門にみる「足病医」がいる

お話ししてきたように、下肢壊疽を防ぐためにはご自身に合ったフットウェアの着用が必要不可欠です。それにもかかわらず、足を守ることの重要性に対する認識は、日本においてまだまだ薄いのが現状です。

欧米では足の治療の歴史が長く、一般的な医師とは別に、足だけを専門的に診療する「足病医」という資格を持つ医師がいます。そのため、足にトラブルが起きたときの受診先が明確です。

しかし、日本では足を専門にみている医師は数少なく、足にトラブルが生じたときにどの診療科に受診すればよいのか判断に迷われる方は多くいらっしゃいます。

さらに、日本の保険診療の制度上、保険診療として作成できるフットウェアは1年半に1足に限られます(2018年現在)。日本は家の中で靴を脱ぐ文化があり、裸足では足がストレスにさらされている状態であるため、本来であれば家の外用と内用の2足のフットウェアが必要です。

しかし、こうした文化に十分対応した医療保険制度が整っているとは言いにくい状態です。このように、日本における足医療は、まだまだ解決するべき課題が残っています。

足を守る重要性を、できるだけ多くの人に知ってほしい

足のトラブルは、癌や心筋梗塞、脳梗塞などの病気と違って直ちに命に直結することはほとんどありません。しかし、生活をしていくうえで足は非常に重要で、足の病気によって困っている患者さんはとても多くいらっしゃいます。

また、直接的に命にかかわることはなくても、下肢閉塞性動脈硬化症や下肢切断した方の5年生存率は、癌の5年生存率とあまり変わらないという結果も出ています※。

少しでも多くの方に、自分で歩くことができる大切さや、正しいフットウェアを身につける大切さを知っていただき、足を守る重要性について意識が高まっていくことを望んでいます。
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下肢静脈瘤についての最新記事

2018-09-21 07:33:12 | 心臓病の治療
https://medicalnote.jp/contents/180904-005-BA

下肢静脈瘤の診断と治療などについての最新の取材記事です。





下肢静脈瘤はどのようにして起こる?

ふくらはぎ

下肢静脈瘤とは、下肢の静脈が瘤こぶ状に拡張して血管がボコボコと浮き出るなどの症状が現れる病気です。それでは、下肢静脈瘤はどのようなメカニズムで発症するのでしょうか。

下肢の皮膚表面近くには表在静脈という血管があり、表在静脈を流れる血液は重力に逆らうような形で足首から心臓に向かって流れています。このとき、血液の逆流を防ぐ役割を担っているものが「逆流防止弁」です。

下肢静脈瘤では、逆流防止弁が壊れることによって、あるいは静脈径が拡大して弁が緩むことによって、本来心臓に向かっていくはずの血液が足首に向かって逆流していきます。すると、行き場を失った血液によって血管が瘤こぶ状になり、ボコボコと浮き出るようになります。下肢静脈瘤の発症原因には、そのほかにもさまざまな説があります。

下肢静脈瘤を発症しやすい方の特徴

下肢静脈瘤の発症要因にはいくつかの特徴があり、主に以下のようなものが挙げられます。
・立ち仕事をしている
・血縁関係にある家族に下肢静脈瘤の方がいる
・妊娠・出産経験がある
・高度肥満
・加齢

下肢静脈瘤の症状

見た目の症状

下肢静脈瘤 1

下肢静脈瘤では、血管が皮膚表面にボコボコと浮き出るような症状がみられます。

また、赤や青、紫色の網目状やくもの巣状の血管が薄く浮き上がってくることも、下肢静脈瘤でみられる特徴的な症状です。

しかしながら、痩せている方や高齢の方の場合には、下肢静脈瘤ではなくても血管が浮き出て見えることは多々あります。

自覚できる主な症状

下肢静脈瘤の自覚症状としては、足のむくみやだるさ、起床時のこむら返り(足がつること)などが挙げられます。むくみやだるさは、朝よりも夕方に感じることが多いです。

また、先述した網目状やくもの巣状に血管が浮き出るタイプの下肢静脈瘤の方の場合、血管が浮き出ている部分がピリピリと痛むこともあります。

下肢静脈瘤が進行すると、皮膚症状が現れる

下肢静脈瘤が進行すると、皮膚の痒みやポツポツとした赤い皮疹がでることがあります。

さらに進行すると、主に足の内側のくるぶしの近くの皮膚に茶色いシミのようなものができる色素沈着が起こることがあります。

その後さらに重症化すると、強い痛みを伴う皮膚潰瘍ひふかいよう(皮膚が深くえぐれたような状態になること)が生じます。また、潰瘍部分から水のように無色透明な浸出液が漏れ出してくることもあります。

下肢静脈瘤の検査・診断

下肢静脈瘤は、先述したような見た目の症状や、患者さんが日頃感じている自覚症状を聞き取ることなどで診断に至ることがほとんどです。

診察の結果、下肢静脈瘤が積極的な治療の適応と判断された場合、あるいはそうでなくても精密検査が必要と考えられた場合に、下肢の超音波検査(エコー検査)を行います。

超音波検査は血液の流れをカラー画像によって確認できる検査で、外来で簡便に行うことができます。

下肢静脈瘤の治療

治療を行うタイミングは?

下肢静脈瘤の治療は、基本的に下肢静脈瘤による何らかの自覚症状(足のだるさやむくみ、瘤の痛み、下肢のけいれん、皮膚症状など)がある場合に行います。

血管がボコボコと浮き出ていても自覚症状がほとんどない場合には、すぐに治療を行う必要はなく、経過をみることがほとんどです。その場合には、弾性ストッキングや着圧ソックスの着用といった、足を外から圧迫して余計な血液が逆流してこないようにする対症療法を昼間の活動時間に行うことや、下肢挙上(椅子に座っているときに足を座面と同じくらいの高さにあげること)という生活習慣をおすすめしています。

治療の方法

下肢静脈瘤の治療法は、現在はレーザーや高周波を使って血管を閉塞させる「血管内治療」が第一選択となっています。そのほか、瘤の部分を小さな複数の傷で引き抜く瘤切除術や、瘤に硬化剤(血管を固める薬)を注入して血管を閉塞させる硬化療法、伏在静脈を引き抜くストリッピング術、伏在静脈の根元を縛って切離する高位結紮術こういけっさつじゅつなどがあります。

どの治療を選択するかは、瘤のタイプや治療を受ける病院によって異なります。当院では、レーザーを使った血管内治療である「血管内レーザー焼灼術しょうしゃくじゅつ」を主に行っています。

血管内レーザー焼灼術

血管内レーザー焼灼術とは、血管内にカテーテル(医療用の細い管)を挿入し、逆流が起きている血管をレーザーで焼灼・閉塞させる治療法です。血液が流れなくなった血管は、時間が経つにつれて徐々に小さくなっていきます。

使用されるレーザーにはいくつかの種類があり、保険適用で使用できるもののなかでもっとも波長の高いものが1,470nm(ナノメーター)のレーザーで、当院でもこれを使用しています。

治療は片足の場合、およそ20分で終了します。

瘤切除術

瘤の部分に局所麻酔をして2〜3mmの小さな複数の傷から瘤を引き出して切除します。血管内レーザー焼灼術などでおおもとの逆流が止まっても縮小が期待できない大きな瘤に対して行います。

硬化療法

血管内レーザー焼灼術では治療できないような小さな静脈瘤に対しては、硬化療法という治療を行うことがあります。

硬化療法とは、血管内に硬化剤を注入する治療で、麻酔を行う必要がなく、外来で行うことができます。

下肢静脈瘤は治る病気?

下肢静脈瘤では、治療した部分が再発することはほとんどありません。しかし、静脈は網の目のように広がっているため、治療していない部分の静脈が再び下肢静脈瘤を発症することはあります。

色素沈着や皮膚炎がみられる静脈瘤は病院へ

病院

下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんが、進行して皮膚潰瘍などが生じると、非常に強い痛みを伴いますし、毎日の傷の処置が必要となり、治療にも長い時間を要します。

そのため、何らかの皮膚症状が出てきた場合には、お近くの病院を受診していただきたいと思います。特に、足の内側のくるぶし付近が茶色く変色する色素沈着の症状は、皮膚潰瘍の前兆であるため注意が必要です。
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インスピリスRESILIA = 最新の大動脈弁用生体弁(30年耐用?)

2018-09-19 18:30:29 | 心臓病の治療
 待望の新しい生体弁=インスピリスRESILIA(エドワーズ社製)。

 一つの特徴は新しい牛心膜処理で、長期の使用に耐えられるような性質を保持していると言われています。今まで50年以上使用されてきたグルタールアルデヒド処理から一新し、アルデヒドが残らないグリセリン処理により、液体保存ではなく、ドライ環境での保存が可能となりました。グリセリンというと、今までは「浣腸」くらいにしか使用していませんでしたが、これが新しい人工弁の保存に使われているそうです。
 その処理方法の改良により、今まで以上の長期間使用に耐用といわれ、30年以上?持つとも言われています。主に羊の心臓に植えたデータでの予測ですが、羊の心臓内に移植した人工弁は通常、人間に植えたときよりもかなり早期に壊れるそうなのですが、このRESILIA生体弁は、今までの生体弁よりもかなり長期間使用可能で、これにより、30年以上耐用も可能ではないか、と予測されています。
 これにより、これまでのガイドラインで65歳以上は生体弁、という推奨を、50歳でも生体弁と推奨の年齢が変更になる可能性があります。

 また、もう一つの特徴は、ステント部分の一部がスライド可能であり、これによりステント部分がワンサイズ広がり、将来的に弁機能不全が発生したときにTAVI(カテーテル的大動脈弁用生体弁移植術)を生体弁の内側に移植する、Valve In Valve移植時により大きな弁を留置可能となる構造をしています。外見は今までのMAGNA Ease弁と全く同じですが、触った感じは、特にステント部分が柔らかくなった印象がありました。弁輪の形状によりマッチして、狭小弁輪など移植が困難な症例にも、より安全に移植可能です。

 昨年の胸部外科学会総会(札幌)で始めて国内に紹介され、その学会、日帰りで北海道に出張して参加した際にセミナーで聴講しましたが、今一年経過してようやく今月から使用可能となりました。60代など比較的若年の患者さんに移植する場合は選択していくことになりそうです。


 9月22日 エドワーズの弁膜症セミナーでは、インスピリスの紹介と、実際の症例検討など行われました。
 より若年の患者さんに対して、患者さんの希望によってはインスピリスを使用しての生体弁置換の機会が増えそうな内容でした。いずれの施設も大動脈弁置換のみの手術では、右小開胸の手術がスタンダードになりつつあり、多くのハイボリュームセンターで、うわまち病院でも行っている右小開胸のStonehengeをテクニックを採用しつつあるようでした。
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心膜開窓術=Fenestration

2018-09-18 20:40:49 | 心臓病の治療
心膜は非常に強い組織で心臓を覆っている袋です。この膜は丈夫なので、牛の心膜を人工弁の膜に使用したりしています。人間の心膜で大動脈弁の代わり(尾崎手術)にしたり、僧帽弁形成術に使用したりするのも丈夫さゆえです。

しかし、この非常に丈夫な膜は、もし心膜の内側に出血したり、心嚢液がたまったりすると、伸縮もしないので、心臓の拡張を邪魔して、いわゆる心タンポナーデによる心不全やショックの原因となります。このため、心膜に穴をあけて、貯留している液体が胸腔に逃がして、心タンポナーデを予防する処置を心膜開窓術といいます。胸腔に逃がす場合と、横隔膜を開けて腹腔に逃がす場合があります。心嚢液の貯留する心膜炎や癌性心膜炎の際に実施することがあります。同時に心膜の組織生検を行うことが多いです。だいたい500円玉サイズの穴をあけることが多く、小さすぎると閉塞の可能性があり、大きすぎると心臓脱の危険があります。

 心胸膜欠損という先天奇形がありますが、これを人為的に作成するのと同じです。

開窓術 = Fenestration と英語では表記しますが、Fenestraって昔勉強したイタリア語では「窓」の意味だったと記憶しています。

他に心臓血管外科領域でFenestrationっていうと、大動脈解離で偽腔と真腔の間にあるフラップに穴を開ける開窓術があります。こちらは真腔と偽腔の圧を同じくすることで主に腹部臓器・下肢血流障害を解除する技です。
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高血圧と塩分

2018-09-17 05:51:22 | 心臓病の治療
 塩はうまみ成分として美味しい食事にはかかせないものです。玄関先に置く「盛り塩」は、かつて平安時代、通い婚において、男性がより頻繁に妻の家を訪れるように、という願いを込めて置かれたのが始まりと聞いたことがあります。盛り塩に牛が引き寄せられる習性を利用して、その当時の交通機関である牛車に乗った男性を引き寄せる意味があるのだそうです。日本料理のお店の前に置いてある盛り塩も、客を引き寄せるおまじないとして置かれているということなのでしょうか。それだけ昔も今も、塩は人を引き寄せるものです。塩の専門店「マース―屋{〼屋}(マース―は沖縄の言葉で塩の意味・石垣島が本店でしょうか」に行くと様々な塩が売られていてたくさんの人を惹きつけています。秋田の「ノンベエ=飲兵衛=呑兵衛(酒好きな人)」は、升の角に塩をもって、塩をつまみに日本酒を飲む、という体にものすごく悪い習慣を実践し、かつての日本一の高血圧県が形成されました。
 味で人を惹きつけるだけでなく、重要な戦略物資でもあり、「敵に塩を送る」などのことわざにも用いられています。


 それだけ人を惹きつける塩(NaCl)は、体液(血液、組織液)に含まれる電解質の主要成分です。人の体は塩と水でできている、といっても過言ではないほど重要成分です。体液の塩分(電解質)濃度を一定に保つことは、細胞一つ一つが生きていくためにの絶対条件です。細胞の活動は、体液の塩分と、細胞内の塩分濃度との差に大きく影響されており、この塩分の調整を腎臓や消化管の吸収、排泄などで調節しています。塩を多く摂取すると、体液の塩分濃度が上昇するので、それを薄めて一定の濃度にするために、水で薄めることになり、その分、体内に水分貯留が起きることになります。これが、血液量が過剰になる理由で、血圧が上昇したり、浮腫みの原因となります。ラーメンを汁まで全部飲むと顔が浮腫むのはこの現象に由来します。同時に血圧も上昇します。ラーメンは、汁が塩分が多いので、お湯で薄めて汁を全部飲んだ、なんてことを笑い話として聞きますが、薄めた分、体積が増えた分を体に摂取するので、濃度は生理的でもこれでは体液=血液が増えて、血圧上昇の原因となります。逆に水だけを飲んでも、これだと体液の塩分濃度が薄まってしまうので、すぐに水分は排泄されてしまい、血圧上昇にはなりません。塩分をいかに多く取るかが最も血圧に影響します。

 腎臓が悪くなると、この塩分調節機能が低下するので、塩分が体内に貯留して血圧が上昇します。また、腎機能低下=腎血流低下と関係することが多く、腎血流が低下すると、血圧を上昇させて、より腎動脈にかかる圧を上げようとして、腎臓からレニンというホルモンを分泌してアンギオテンシンという血管収縮物質を活性化させることにより動脈壁の平滑筋を収縮させて血圧が上昇します。レニンは副腎から、アルドステロンというホルモンの分泌を促して、アルドステロンはナトリウムの腎臓での再吸収を刺激して、より血圧を上昇させることになります。

 入院中の食事は6~8g/日に塩分制限されていますので、その食事をするだけで塩分制限を厳しく行っていることになり、入院しているだけで血圧が低下してくる患者さんを多く目にします。逆に退院して、元の食事戻ると数週間で元の高血圧に戻る、という現象もよく目にします。入院して病院食を食べているだけで、一日中寝ているのにも関わらず、どんどんやせていく患者さんがたくさんいるのと同じような現象です。塩分制限することで腎臓を保護し、腎機能を良好に保つことが寿命を延長するといわれています。

 秋田では昔は血圧300/-の人がごろごろいましたが、最近は200を超える人を見ることはかなり稀になりました。塩分制限の教育が行き届いた効果で住民の血圧管理に貢献し脳卒中の発症を低下させた(その後は4位くらいの発症率)といわれています。これにより一家の大黒柱が50代で脳出血し、その後10年以上ねたきり、という悲惨な状況はかなり減少しました。秋田の高校を卒業し、そのまま、日本一の塩分摂取=高血圧・脳卒中県である栃木県の大学に入学して、驚くほど塩分の濃い食事を食べる地域だと驚いた記憶がありますが、お店で聞いたところ、薄味にすると客からクレームがくるので濃い味にしないとお店がやっていけないのだそうです。もちろんそれは30年近く前の話なので、今はだいぶ事情が変わっていると思いますが。

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ダイエット食事

2018-09-15 17:32:14 | 心臓病の治療
最近テレビで放送されていたダイエット方法

①もち麦ごはん
②マイタケを煮出した液体を毎日飲用する
③スイカにキナコをかけて食べる

こんなテレビ報道が、お昼の番組ではなく、平日夜のゴールデン番組として2~3時間も、しかも複数回最近報道されています。
そのあと、スーパーに行ってもマイタケは売り切れ、スイカは値上がり、などの社会現象も起きています。みなさん、健康問題にはことさら興味がありますから、影響力は非常に大きいですね。自分もそれぞれ試してみたりしていますが、テレビの出演者ほどではないにしても、それなりに効果があると実感しています。とはいっても、かえってたくさん食べてしまい逆効果な日々が続いている気がしますが。

こうした健康バラエティ番組って、ほかのお笑いだけでてくるような番組同様、おそらく制作コストが少なくて済むから最近流行っているのではないでしょうか。

もち麦は少し高額なので、ふるさと納税の返礼品でもいただきました。また、同様の効果が期待できるものとして、より安価な押し麦があります。こちらは安売りで、1kg100円だったのでお米よりも安価でした。さらにチアシード、キヌア、雑穀米などを混ぜたカフェランチごはんのような形に炊いて食べています。かなりおいしいと思いますが、年配の患者さんに話すと多くは、米が食べれなかった戦後の時代は毎日麦ごはんばっかりで二度と食べたくないって言われます。
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急性大動脈解離治療のこの20年間の進歩

2018-09-11 21:54:29 | 心臓病の治療
 大動脈解離の手術においてこの20年間の治療の進歩

①救急体制の社会基盤の整備・医師の救急医療の教育の充実・救急部が各教育施設に設置 ⇒CTへのアクセスが改善

②人工血管の改良 ⇒ 出血しない血管吻合 手術時間の短縮
  上行大動脈置換術の手術時間 改良前 平均350分 ⇒ 改良後 平均210分(筆者の平均手術時間)

③メカニズムの理解と手術中の対策 特にMalperfusionの対応の進歩

④発生件数、手術件数の増加に伴う、医師の経験の蓄積

 国内の手術死亡率 15⇒10%に低減  特に上行大動脈置換術は全国平均でも10%以下の死亡率になっている(2014年統計)

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劇的救命 ・JADECOM学術集会

2018-09-10 09:32:06 | 心臓病の治療
 JADECOM学術集会の特別講演で、八戸市立病院院長の今秀明先生のお話を聴講しました。自治医科大学の先輩でもある今先生は、自治医科大学の僻地勤務後、埼玉県でトレーニングを受け、今は地元の青森県で救急医として活躍されています。
 主に重症の多発外傷で救命率50%以下の症例を救命することを、「劇的救命」と定義しているようです。交通事故の多発外傷を、手術で救命する、まさに命を救う医師、というイメージで、非常にドラマティックな講演でした。外傷のトレーニングコースなどで何度か今先生に直接お教えをいただく機会が過去にありましたが、その当時からアグレッシブなドクターでした。

 劇的救命、これは心臓血管外科においては、大動脈解離や大動脈瘤破裂のショック状態の症例を救命することにも共通する部分があります。同じように救命に成功したときは、患者さん、家族と一緒に涙が出るくらいうれしい瞬間でもあります。この瞬間のために、日々医師は技術的なトレーニングを積んでいるものです。この瞬間のために自分の人生をかけて、時には私生活を犠牲にして臨床に従事しているものです。しかし、それ以上に得られる喜びがあり、医者になってよかったってしみじみ思う時が人生にとって貴重な時間でもあります。
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90歳以上の心臓胸部大血管手術

2018-09-09 08:47:18 | 心臓病の治療
【背景】日本は世界でも類を見ない高齢化社会であり、2017年時点の日本では65歳以上の高齢者が3514万人と総人口の約27.7%を占める比率となっており、80歳以上は1074万人(8.5%)、90歳以上は206万人(1.6%)と初めて200万人を突破することとなった。高齢化の進行に伴い、手術対象の患者年齢も上昇することが予想される。こうした中で80歳以上での手術成績の報告は散見されるが、90歳以上の手術成績について述べられた文献は少ない。今回、我々は自験例における90歳以上の高齢者の心臓胸部大血管手術の手術成績とその詳細について検討した。
【対象】2016年10月から現在までの約2年間における、当院での90歳以上の高齢者の開心術手術成績について考察した。80歳以上の手術が57件、その内の8件が90歳以上の手術症例であった。
【結果】平均年齢は92.8∓2.8歳、男女比は3:5であった。内訳は大動脈弁狭窄症の大動脈弁置換術が3例、僧帽弁閉鎖不全症の僧帽弁形成術が1例、弓部大動脈瘤の弓部大動脈置換術が1例、Stanford A型大動脈解離(DA)の上行大動脈置換術(AAR)が2例、右房内腫瘍の摘出術が1例であった。大動脈解離に対するAARのみが緊急手術症例であり、残りの6例は定時手術として行った。患者背景として、入院前の居住状況は自宅で家族と同居4例、独居3例、施設入所1例。心臓血管外科コンサルト前に既にDNAR(蘇生不要)の同意を取得済みの症例が2例あった。手術決定理由は、100歳まで生きたい:3例、NYHA Class IVの心不全解除:3例、救命を家族が希望:2例で、すべて治療に家族が積極的という周囲状況があった。平均ICU滞在日数は8.3∓6.7日で、平均術後在院日数は21.3∓6.3日。1例で脳梗塞を術後第7病日に発症し入院リハビリ中であるが、他の7例は合併症なく生存退院した。
【考察】高齢者の手術適応に関しては、ADL、frailty、合併症の有無、その予後や、自力での意思表明が可能かなどが挙げられ、それに合わせて、本人の体力と手術侵襲の程度を考えてどこまで行うかが一つのポイントとなる。今回の検討中7例は自力歩行可能なADLであり、侵襲低減のため必要最低限での手術治療を行うに留めた。心臓大血管手術に関しては、原疾患を治療することが病態の改善に直結するものであり、手術に対する拒否感があるか、侵襲に耐えられない状態でない限り、かつ手術が病態に対する唯一の治療選択である場合、現在ないし直近の状態悪化を防ぐために手術を行うことは妥当であると考える。
【結語】90歳以上でも、適応を選べば治療成績は悪くなく、家族の希望があり、自立した生活に復帰できる可能性がある症例は、若年者と同等の手術適応で対処することも検討に値する。
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横浜低侵襲手術研究会

2018-09-06 19:42:45 | 心臓病の治療
低侵襲手術の症例検討会、今回のテーマは低侵襲手術を諦めた瞬間、ということで、うまくいかないために従来の術式に途中で変更した経験を話し合う研究会です。

手術を極めるためには、うまくいかないケースに関しても熟知することも重要です。どこに原因があり、どうトラブルシューティングをしたか、すごく重要です。こうした経験を共有することで自分の経験値を上げていくことに役立ちます。

呼吸器外科の肺のエアリークに対する対処の報告では、非常にその手技について勉強になりました。左開胸で大動脈の手術をしている自分にとって役立ちました。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト手術後に再手術が必要になる症例は11%だとそうです。再手術の場合はステントグラフトの追加など、血管内治療で解決する場合もありますが、回復して瘤をあけて止血したり、人工血管置換を結局必要になる症例も少なくありません。最近の報告では、国内のステントグラフト手術をした症例で、術前よりも瘤が拡大する症例は23%もあるそうで、治療効果が得られていない確立が高いということになります。やはり6~7年で追加治療を必要とする可能性が高いとも言われています。今の時代、みなさん100歳近くまで生きるので、たとえば80歳と高齢だからと言ってステントグラフトを選択すると、八十代後半で再手術が必要になる可能性があるため、回復による人工血管置換術が可能な症例は、最初から人工血管置換術を選択する方が確実性が高いと思います。
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