横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

COVID-19 Pandemic下での一般診療

2020-03-29 16:56:04 | 心臓病の治療
COVID-19が日本でも猛威を振るう今日、医療崩壊の危機が差し迫っています。
医療崩壊とはCOVID-19が蔓延して退去して患者さんが病院に押し寄せ、入院のベッドや医療機器が足りなくなる状況です。この状況では医療スタッフの人材不足が特に目立つようになり、ベッド、基材、人材のすべてが足りなくなる状況が予想されます。
 COVID-19の治療だけでなく、通常行われている一般診療もこうした状況では通常通りできなくなります。すでに医療スタッフにCOVID-19が発生した筆者が過去に働いていた病院ではすでに一般外来を休止して通常の診療が出来なくなっており、また、関連施設の中では心臓血管外科の手術を停止していたところもあります。
 横須賀市立うわまち病院は感染症の指定施設ではない為、新型コロナウィルス感染者を入院させることは現時点ではありませんが、今後指定施設がいっぱいになり、一般病院でも受け入れするようになった場合、当然、人工呼吸器を使用して、またはECMOを使用して治療することも想定しなければなりません。そうなると通常の心臓血管外科診療は出来なくなり、緊急手術のみ可能な状況を確認して行っていくという体制になる可能性があります。
 感染しない、ということも重要ですが、それ以上に、病気を抱える患者さんがその病気を悪くしない、ということも極めて重要です。連日心不全や狭心症、心筋梗塞の患者さんが救急搬送されてきておりますが、こうした急病はある程度予防可能なものが多く、また生活習慣の改善で症状悪化を防止できる場合も少なくありません。自宅でじっとしている、という患者さんも多いのも事実ですが、同時に疾病予防にも全力をあげて取り組んでほしいものです。
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左心時閉鎖術が保険適応に

2020-03-28 05:59:59 | 心臓病の治療
 心房細動に対する左心時閉鎖術は、抗凝固療法と同等の心房内血栓形成に関する予防効果があると言われています。
 心房細動は左房内に血栓ができて、それが剥がれ落ち、血流にのって脳梗塞などの塞栓症を起こす重大な問題となる病態です。この心房細動の社会に対する問題点とは、心房細動の患者さんがものすごく多いということです。心房細動そのものを治す治療としてメイズ手術やカテーテルアブレーションが広く行われていますが、長時間経過した心房細動は、もとの洞調律には治らないので、血栓形成を予防する必要があります。
 血栓形成予防に最も多く行われている方法は抗凝固療法です。従来の凝固の第II,VII,IX,X因子を活性化させて凝固を助けるビタミンKを阻害する作用のあるワーファリンに加えて、最近は第Xa因子(凝固因子)やトロンビンを直接阻害する経口抗凝固薬(NOAC=New Oral Anti Coagulant、DOAC=Direct Oral Anticoagulant, OAC=Oral Anticoagulantとも呼ばれています)が主流になりつつあります。
 しかし抗凝固薬は血栓形成に関する有効性が認められている一方、出血イベントが一定頻度で発生するというデメリットもあります。重大な出血イベント(脳出血、消化管出血など)を一度発生したあとは、そのあとの抗凝固療法が継続できなくなる患者さんも少なくありません。そうした患者さんは脳梗塞などの塞栓症を常に恐れながら生活していく必要があります。
 こうした中、左心耳閉鎖術がこの4月から保険適応になります。約9割の左房内血栓は左心耳内に発生すると言われている為、左心時を閉鎖することで9割の血栓形成が予防でき、これによって抗凝固療法と同等の効果があると言われています。左心耳を閉鎖することで心房細動の患者さんが一生抗凝固療法を継続することから解放されるのです。左心時の閉鎖は、経カテーテル的に左心耳内に傘のようなデバイスを留置する方法と、開胸して左心時の外から、もしくは左房内から左心時を閉鎖する方法があります。カテーテルで閉鎖する方法では抗凝固療法と同等の予防効果があるとの報告もあります。
 この春から左心時閉鎖術が保険適応になることにより、脳梗塞発症の予防が社会的に広まり、不幸な病気の発症が少しでも防ぐことができるようになることを期待します。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、二種類のデバイスを使用して左心耳閉鎖術を行っており、右小開胸アプローチで弁膜症手術と併施したり、左小開胸アプローチで冠動脈バイパス術と併施することも可能です。また、左小開胸アプローチで単独に人工心肺を使用せずに左心耳閉鎖のみを行うことも可能です。
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新型コロナウィルスパンデミックのための心臓血管外科関連イベント自粛

2020-03-28 04:54:18 | その他
 新型コロナウィルスのパンデミックにより、ほぼすべての国内イベントなどが自粛、延期などの措置が行われていますが、心臓血管外科に関連するものもほぼすべて延期などの措置がとられています。
 主なものとして、2月に福島市で開催予定だった心臓血管外科学会総会が8月に延期、5月に東京都で開催予定だった血管外科学会が10月に延期となり、いずれも会場が変更になりそのためのキャンセル料などの費用も甚大なものとなりそうです。
 当科に関係する内輪のイベントとして、4月の新任者研修会、7月のサマーセミナー、7月の症例検討会なども今年度中止となります。
 世界中のイベントや人の行き来も極度に制限され、この様相はおそらく第二次世界大戦以来ではないでしょうか。

 今後の日本国内、および世界経済の行く末が心配でもあり、また経済状況に伴って個人の貯蓄や資産運用がどうなってしまうのかが不安でもあります。イベント自粛により個人的な支出は減少しますが、住宅ローンなど必然的にかかる費用は減少しません。すでにこの一か月で株価の暴落は著しく、投資信託の基準価格も軒並み半減しており、おそらく配当も半減してしまうのではないでしょうか。収入が減少する人にとっては非常に手痛い打撃です。この経済的なショックも、パンデミックが治まるまでの短期的な辛抱かもしれませんが、それまでに耐えきれない人がたくさん出現してしまうことが不安です。これはまさに、人と人や国の国が戦う戦争とは違いますが、新たな形の戦争と同じです。
 しかし、このパンデミックは必ず終息することを信じて、耐えるのみです。
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新型コロナウィルスにかからないために

2020-03-27 16:35:53 | その他
 外来にいらっしゃる患者さんの多くは年配の方たちです。そうした人たちは口々に新型コロナウィルスが恐ろしい、高齢者には危険だ、という認識をもっています。その人たちが最も気をつけている予防法は、ずばり、「出歩かない」ことだそうです。みなさん、「ウィルスが怖くて外には出ないようにしている」とおっしゃいます。
 年配の方の知恵は概して正しいことが多く、まさに正解の行動パターンをとっているようです。特に東京都知事が訴えるように、今週末は外出を控える、若い人にも徹底してほしいものです。

 やはり飲食店や百貨店を閉鎖しないと、みんな出てきてしまう、ということでしょうか。そうであれば、やはり全飲食店を休業にする必要があると思います。
 牛丼の吉野やは、持ち帰りの牛丼を格安で提供するそうです。持ち帰って家で食べてください、ということでしょうか。残念ながら横須賀の吉野家は閉店してしまいましたが。いずれ不要不急の外出を控える、これにつきます。

 とはいえ、どうしても外出しなければならないひとも少なくありませんが、寄り道しないで用事が済んだらまっすぐ帰宅することです。
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横須賀は海と一緒に暮らす街

2020-03-25 10:43:36 | その他


 佐島マリーナです。横須賀・三浦地区は三方を海に囲まれた地域です。交通のアクセス的には閉鎖されている印象がありますが、その一方で海と常に隣り合わせということだけで心がうきうきしてしまうのは、海のないさいたま市の大学病院からの派遣チームで構成されている心臓血管外科メンバーのせいもあります。筆者は秋田で生まれ育ち、近くには海はありましたがここまで生活に密着している場所ではなかったですし、海を診ること自体が年に数回あるかどうかの生活でした。毎日海が見える生活が出来る豊かさを実感します。
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イタリアでの感染爆発:COVID-19

2020-03-24 18:39:56 | その他
 COVID-19発症地の中国以上に感染爆発が続くイタリアは、国民性と医療事情の関係で感染者数が著しく増加したものと考えられます。
 筆者が学生の頃は、イタリアとは最も医師が過剰な社会と言われていました。最も古い医学部があるのもイタリアで、古代から医学の発達した国ではありますが、当時は医師免許を取得しても就職先がなくタクシー運転手で生計を立てている医師もたくさんいる、と聞いていました。自分の友人の父上は呼吸器内科医として総合病院でポジションを得ていましたが、他の友人医師は、仕事がないので教会のボランティア的な仕事をしていました。
 今回のCOVID-19の感染爆発の一員が、医師の数が著しく足りないのが一員とも言われています。いつの間にかイタリアは緊縮医療政策のため医師過剰時代の先の医師不足社会になっているようです。それに伴い、人工呼吸器などの医療機器が足りないようです。看護師などの医療スタッフも足りないということです。
 また、昨日ミラノの友人からのメールによると、先月からイタリアでに感染増加が日本でもニュースになっており、いろいろな周の境界の移動制限などを聞いていたにもかかわらず、実際のミラノッ子たちは町を徘徊したりスポーツを普段通り、10日前までしていたそうです。そうした楽観的な国民性が感染爆発に関係している、と友人が言っていました。

 では日本はどうでしょうか。いろいろ注意している日本人も多いとはいえ、花見だ、K-1だ、とイベントを優先する国民性はイタリア人と似ているところ大と思います。小さい頃は日本人の勤勉性はドイツ人に似ている、と教えられ、ドイツ人と一緒にいると安心、と学生時代に思ったこともありますが、どちらかというとイタリア人やフランス人のラテン系の方が実際には現代の日本人に似ていると思います。そうした意味でこれから日本国内でのオーバーシュートは起こる可能性は否定できないと思います。
 イタリアの医師が少ないというのはどのくらい少ないのでしょうか?日本人も医師の数が増えたとはいえ、病院勤務医の比率は少なく、開業医の比率が多いので、感染者が病院に殺到するとすぐにイタリアのような状況に陥る危険性はあると思います。まだ心臓外科医が感染治療の前線に立つ必要性は免れていますが、あっという間にそのような状況がくる可能性は否定できないと思います。
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久里浜の景色

2020-03-24 18:36:14 | 心臓病の治療


比較的大きな町ではあります。人もそれなりにたくさん済んでいるので、総合病院があるほうが利便性は向上すると思います。周辺地域とのアクセスがどうかでしょうか。市の郊外に病院を作って、それで成功している事例はたくさんあるので、それを見習って新病院の運営についても十分検討してうまく運用していく必要があります。
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横須賀市立うわまち病院の桜

2020-03-23 18:50:27 | 心臓病の治療


 一部の桜はだいぶ咲いてきました。入院患者さんもこれをみて癒やされている人がたくさんいます。

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横須賀市立うわまち病院の移転先はゴジラの足下

2020-03-23 09:45:06 | 心臓病の治療


5年後に控える横須賀市立うわまち病院の移転先の隣にはゴジラが待っております。
このゴジラ、もともとゴジラの日本上陸の場所が横須賀だったこともあり、そのゴジラの滑り台がかつてあった観音崎から、久里浜花のくにに新築移設作業中です。股の間から子供が出入りする光景はなんともいえませんが、一つのシンボルにはなると思います。それでも新病院の病名、決して「ゴジラ病院」というのだけは勘弁してもらいたいです。
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横須賀市立うわまち病院心臓血管外科ホームページ

2020-03-16 16:12:44 | 心臓病の治療
https://www.jadecomhp-uwamachi.jp/patient/shinryolist/cardiova/

 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科ホームページのリニューアルを行いました。2019年の実績に更新した内容となっております。
 1月中に原稿を作成し、院内の手続きなどを行っておりましたので、この時期の更新となりましたが、こうしたホームページのリアルタイムの更新はそうの診療科の活動を判断するのに非常に重要な基準となると思います。心臓血管外科ホームページは他診療科に先駆けての更新としました。
 残念ながら他の診療科は最も新しい年度データでも平成29年度、多くの診療科は28年後と4年も前の診療データをホームページに掲載されているのが現状で、うわまち病院のアクティビティに関しては今後も先進的な治療を目指す心臓血管外科が牽引していく所存です。
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心臓手術後の患者さんは新型コロナウィルス感染時の重症化リスクが上昇するのか?

2020-03-15 11:01:10 | 心臓病の治療
 心疾患や基礎疾患を持つ患者さん、高齢者は新型コロナウィルス感染症(COVIC-19)感染時に重症化しやすい、と報道されています。
 特に心不全の患者さんは免疫力が低下している、肺鬱血など肺炎発症時に重症化しやすい病態があることから重症化しやすいと考えられますが、では、弁置換術などを行って心機能が正常化しているひとはどうかというと、基本的に心疾患のない状態と同じではないかと思われます。弁置換術後の患者さん数人に質問されましたが、その患者さんが手術によって心機能が正常化している場合は、心臓は治っているので他の一般の普通の心機能の人と同じリスクです、と説明しています。これに関しては確たるエビデンスはありませんが、不要に過敏になることはないと思います。
 しかしながら誰がどこで感染するかもわからない現状では、うがい、手洗いの励行など基本的な予防措置をしっかりやっていく、これにつきると思います。

 昨日の3月14日、ホワイトデーのためか横浜駅周辺はものすごい人出でした。こうしたご時世でも贈り物をする心を忘れない日本人の姿勢は素晴らしい、と、買い物したお店の店員さんが言っていたのが印象的でした。
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手術時の手洗いの変遷 ブラッシング法からラビング法へ

2020-03-15 10:48:09 | その他
 手術の際に手指を滅菌する作業を「手洗い」と呼んでいますが、この数分間の滅菌作業、時代の変遷もあります。
 筆者が研修医時代から行っていたのは、習ったとおりではありますが、ブラシでイソジンスクラブを使用して3分×3回手洗いを行うというものでした。その当時からブラシが皮膚を損傷してそこが皮膚のバリアが壊れて細菌を持ち込む温床となるという意見もありましたが、昔ながらのやり方が継続されていたと記憶されています。
 その後、アメリカのCDCの感染予防ガイドラインが作られるようになり、日本でもこうした手術関連の感染予防の一般化が図られるようになってきました。
 その中での大きな変化は、それまで滅菌水で手洗いしていたのが、通常の水道水でも感染リスクが変わらないということが言われるようになり、水道水での手洗いが一般化したこと、そしてブラッシング法からアルコールを手指に擦り込むラビング法へと変わったことです。それまでのブラッシングによる皮脂や皮膚の汚れを落とす作業は最低限として、アルコールの擦り込みによる滅菌が中心となり、おそらく現在の医療施設の殆どでこの方法がこの10年ほど前から行われるようになりました。清潔に敏感な心臓外科医や整形外科医の一部に反発の動きも一時はありましたが、現在はそれが当たり前となって毎日実施されています。

 さて、昨今の新型コロナウィルスパンデミックによる混乱で消毒薬が不足して病院手術室にも手指擦り込み用のアルコールの入手が困難となってきました。消毒剤が無くなれば手術は出来なくなります。しかしながらこの混乱は、手指擦り込み用のアルコールのみの一時的な需給バランスの異常が引き起こすものであり、直ぐに解消されると思いますが、この手指擦り込み用アルコールが不足することで現在行われているラビング法が出来なくなりつつあります。それに打って変わって、昔行われていたブラッシング法をするように、と言われても現在の若手の看護師さんは、ラビング法しか知らない、という現実があると聞き、筆者も年齢を実感しました。今の若者はラビング法しかしらず、ブラッシング法をやれと言われても出来ない、痛い痛いと文句ばかりいう、のだそうです。
 最近感じたのは、13という数字を聞いて縁起が悪い、といっても若者には通じない、ということ。
 老年にさしかかった筆者にはこれからますますこうした世代間ギャップを日々感じることになりそうです。
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血圧の薬って一度始めたら一生飲み続けなければならないのですか?

2020-03-15 01:47:39 | 心臓病の治療
血圧の薬って一度始めたら一生飲み続けなければならないのですか?

 こんな質問をよく患者さんからされます。一生続けなければならなくなるから血圧の薬は飲みたくない、とも言われます。

 基本的に加齢によって動脈が硬くなり(動脈硬化)、血圧の弾力がなくなったことも関係して血圧が上昇します。血圧が上昇すると血管壁や左室心筋への負荷がさらに強くなり、またダメージが進むという悪循環が生まれます。この悪循環を断ち切るために降圧薬を開始、継続するのであり、これを止めると当然加齢によってますます動脈が硬くなって血圧が上昇していきます。
 血圧が上昇すると脳出血や脳梗塞、大動脈解離、大動脈瘤形成、閉塞性動脈硬化症、腎不全、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、弁膜症など生命にかかわる病気へ向かって進行していきます。これを防ぐのが降圧薬と考えると、血管の老化を防ぐ作用があるために降圧薬を継続すると考えると理解が得られやすいようです。
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新型コロナウィルス重症症例の救命にはECMOが活躍

2020-03-13 19:36:26 | その他
 新型コロナウィルスの重症患者さんは呼吸不全から多臓器不全に至る過程で、この時に発生するサイトカインストームが多臓器不全を助長して死亡に至らしめると考えられます。こうした状況を乗り切るには、その嵐の時期を乗り切る装備が必要で、その一つの究極形態がECMO(PCPS)です。呼吸循環不全に陥った状態で、人工心肺装置によって循環と呼吸を維持しながら嵐の過ぎ去るのをじっと待つ治療と言えます。心筋炎になっているのでなければ、呼吸の補助だけをするV-V ECMOで乗り切れる可能性が十分あり、他の重症呼吸不全の症例で横須賀市立うわまち病院集中治療部でも何例か救命した経験があります。おそらく新型コロナウィルス感染症COVID -19においても重症の呼吸不全の状態では、V-V ECMOで救命できる可能性が十分にあります。報道では、V-V ECMOでの救命率は50%と言われており、世界的に最も設備の整った日本だからこそ救える命があるということになります。ECMO装置は基本的に心臓血管外科のある施設では経験の蓄積があり、パンデミックの状況において貢献できる可能性があります。

 現時点では指定感染症の指定施設での入院管理が基本ですが、万が一今後一般病床でも治療管理が必要になった場合は、指定施設ではない横須賀市立うわまち病院でもそうした治療を行う必要が出てくる可能性があります。

 その場合は通常の診療はかなり抑制されることになります。それまでは、横須賀市立うわまち病院の使命としては、通常診療を維持するという役目があります。
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心房内シャント作成術の重症心不全に対する有効性:新しい心不全治療

2020-03-10 17:09:06 | 心臓病の治療
Circulation. 2018;137:364–375. DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.03209

Circulationに報告された論文によると、NYHA Class III-IVの重症の心不全で、左室駆出率40%の症例において、経カテーテル的に心房内シャントを作成すると、肺静脈楔入圧が平均5mmHg低下し、臨床的な運動耐用能が改善するという報告があります。
 重症心不全では、なかなか根治的な治療が難しい患者さんがいますが、左房内の圧を下げて肺静脈の鬱血を軽減させることで姑息的ではありますが、心不全を改善し、寿命を延長し、症状が改善するのであれば、十分やってみる価値のある治療と思われます。日本国内で行われているのかはまだ知りませんが、こうした新しい治療が増えて治療の選択肢を広めることにより少しでも心不全パンデミックに対応していくことが必要と思います。

 この心房内シャントを作成する専用のデバイスも開発研究が進んでいるようです。
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