心房中隔欠損症は、心房中隔に穴が出生時に遺残してしまったために、左心房から右心房に血流の短絡があり、肺血流が増加し肺高血圧になると同時に、右心系が拡大し三尖弁逆流が発生する病態。左心系としては、大動脈へ拍出される血液が減少する、右室と左室のバランスが変化して僧帽弁逆流が起こるなどの変化があります。中隔欠損の大きさが大きければ、新生児期や幼少期に肺高血圧症が悪化して心不全になる可能性もありますが、多くは無症状のまま大人になり、老人になってから高血圧や動脈硬化などの加齢変化が加わって心不全になって救急搬送されてくる、というパターンを多く診ます。年齢としては80歳以上になってから心不全になるという印象です。
大人になるまで無症状だから心配ない、というのではなく、80歳以上になってから心不全になると重症化もしやすくなるので、やはり、心不全兆候があるようなら早めの手術をしておくという考え方を推奨します。その意味で、今症状がないから放置、という内科医が多いのが現実のなか、定期的にフォローアップするのも心臓外科医の仕事と思っています。無症状の心房中隔欠損症でも徐々に心不全兆候が出てきてタイミングを逸することなく治療することが肝要と考えます。
現在はカテーテル治療で閉鎖できたり、いわゆるMICS=小開胸で行う低侵襲手術も可能な時代ですので、ひとえに心臓の手術なんか、と思わず、気軽に相談してもらいたいものです。