横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

HCMに対するMyectomy

2024-02-23 00:39:59 | 心臓病の治療
 HCMは拡張障害がメインの病態で余剰な心筋壁が拡張障害の原因となる。これによる心不全に対しては薬物療法は必ずしも有効なものは少なく、β遮断薬、シベンゾリンなどの抗不整脈薬で効果が不十分であれば外科的治療が必要になる。
 特に中隔心筋の肥厚を抑制するためには、左冠動脈前下行枝の中隔枝をアルコールで塞栓させるPTSMAがあるが、外科的には一般にMorrow手術と言われる経大動脈アプローチによる中隔心筋切除が有名である。左室流出路の中部、心尖部の肥厚が顕著な場合は経大動脈アプローチの限界で、この場合は経心尖部アプローチが必要になり、Apical Myectomyと呼ばれる。これらMyectomyは心臓移植を待つ肥大型心筋症患者さんに有効で、心臓移植した患者さんよりも生存率が高いといわれ、アメリカのMayo Clinicで多くの症例蓄積がある。日本国内では限定した施設でしか現在まだ行われておらず今後の課題である。そうした状況下で、今回の心臓血管外科学会では招請講演、シンポジウムとして問いあげられ、注目を集めた。
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ニットパッチ

2024-02-21 17:31:40 | 心臓病の治療
 河野製作所が販売しているニットパッチは、PTFEの繊維をニット状に編み込んだシート状の製品です。従来のePTFEに比べて通気性が少ない分、針孔などの出血が実際の手術に比べて少なくなっています。また大動脈の断端形成に使用するPTFEフェルトは不織布の構造で、こちらも通気性が良好な分、針孔出血が多いのですが、このニットパッチを使用すると針孔出血がほとんどなく術中の止血操作が非常に楽になります。
 横須賀市立うわまち病院でもニットパッチを多くの症例に使わせてもらいました。急性大動脈解離における内外二重のニットパッチによる断端形成、胸部大動脈瘤に対する上行大動脈置換術の人工血管縫合部のNative血管側の補強、小開胸アプローチでの大動脈弁置換術(MICS-AVR)において大動脈壁が薄く脆弱な症例の大動脈縫合部の補強、左室形成術における左室縫合部の補強、大動脈弁狭窄症に対するApico-Aortic Conduit手術における心尖部導管縫着のためのプレジェットとして使用、左室壁肥厚・拡張障害による低心拍出症候群に対するApical Myectomyにおける左室切開部縫合閉鎖の補強、心房縫縮術における右房閉鎖時の補強などに使用しました。ほかに今後の可能性として、大動脈弁狭窄症の狭小弁輪症例に対する弁輪拡大に使用するパッチとしても有用ではないかと思われます。
 新しい素材として今後期待できる商品ですが、その使用経験について、今回の浜松での心臓血管外科学会でランチョンセミナーの講演を依頼されております。
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心臓血管外科学会総会2024

2024-02-21 17:23:39 | 心臓病の治療
 明日から3日間、心臓血管外科学会が浜松市で開催されます。今回は通常行われている演題登録の締め切り延長がなかったせいか、演題応募数が少なかったのかもしれません。筆者は2つの演題応募をして、同一日に二つ発表がありますが、うち一つのMICSのセッションでは、3演題しかない異例の少なさです。MICSは現在の心臓血管外科ではトピックの一つではありますが、これだけ演題応募が少ないって珍しいと思います。今回の演題応募の抄録はパワーポイントからPDFを作成しての応募であったため、発表用のスライド作成が非常に楽でした。また電子抄録もパワーポイントの形式にあわせてつくるだけで、非常に楽なうえに分かりやすいとおもいます。
 二つの発表に加えて最終日のランチョンセミナーの演者も頼まれており、スーチャレス弁「パーシバル」のイタリアから来られるプロクターの先生との座談会、インペラのカンファレンスなども出席を頼まれており、ゆっくりする時間なくしっかり勉強する3日間になりそうです。
 しかし、ひかり、こだましか止まらないのでアクセスが悪く、品川駅で30分も待たされました。
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