HCMは拡張障害がメインの病態で余剰な心筋壁が拡張障害の原因となる。これによる心不全に対しては薬物療法は必ずしも有効なものは少なく、β遮断薬、シベンゾリンなどの抗不整脈薬で効果が不十分であれば外科的治療が必要になる。
特に中隔心筋の肥厚を抑制するためには、左冠動脈前下行枝の中隔枝をアルコールで塞栓させるPTSMAがあるが、外科的には一般にMorrow手術と言われる経大動脈アプローチによる中隔心筋切除が有名である。左室流出路の中部、心尖部の肥厚が顕著な場合は経大動脈アプローチの限界で、この場合は経心尖部アプローチが必要になり、Apical Myectomyと呼ばれる。これらMyectomyは心臓移植を待つ肥大型心筋症患者さんに有効で、心臓移植した患者さんよりも生存率が高いといわれ、アメリカのMayo Clinicで多くの症例蓄積がある。日本国内では限定した施設でしか現在まだ行われておらず今後の課題である。そうした状況下で、今回の心臓血管外科学会では招請講演、シンポジウムとして問いあげられ、注目を集めた。