来月の心臓血管外科学会で発表する内容です。
【はじめに】冠動脈バイパス術(以下、CABG)後に弁膜症等のための再手術を要する場合、胸骨再正中切開は開存しているグラフト損傷リスクがある。
【目的】冠動脈バイパスグラフト損傷回避を目的に側方開胸アプローチを行った3症例について、その妥当性、注意点、術中の工夫につき報告する。
【症例1】○○歳女性。CABG(3枝)実施5年後に急性心不全で搬送。心不全の原因は重症の大動脈弁狭窄症で、グラフトは全て開存。人工呼吸管理から離脱後に左第5肋間開胸でApico-Aortic Conduitを実施。経過良好で退院。
【症例2】○○歳女性。CABG(3枝)実施5年後、僧帽弁逆流が徐々に悪化し心不全を呈するようになったため手術適応と判断され紹介。グラフトは全て開存。利尿剤内服で症状軽快後、右第4肋間アプローチで右側左房切開から僧帽弁置換術(機械弁)+三尖弁輪縫縮術(人工弁輪)を実施。経過良好で退院。
【症例3】○○歳女性。CABG(6枝)+左室形成術7年後に左室形成部位にMRSAによる感染性心内膜炎を発症して、心尖部に左室仮性瘤を形成、拡大傾向のため再手術の方針とした。グラフトは左内胸動脈―前下行枝、上行大動脈―大伏在静脈―右冠動脈#3が開存。抗菌薬治療で炎症所見軽快後に左第5肋間開胸で左室再形成術実施。感染組織を除去し再度パッチ形成した。心筋組織からMRSAが培養検出されたため抗菌薬を2週間継続し炎症所見軽快後に退院。
【考察】いずれの症例も側方開胸アプローチを採用することにより、開存しているグラフト損傷が回避できた。心臓操作は心室細動下に行うため大動脈弁逆流がない症例が適応条件となる。それでも左室内に肺静脈からの血液流入があるため左室内の視野確保に工夫が必要で、左室内血栓や粘液腫など落下の危険がある操作には注意を要する。人工心肺その装着は2例で大腿動脈送血、1例で腋窩動脈送血とし、脱血は2例で大腿静脈経由右房1本脱血、1例で上下大静脈脱血とした。昨今のカテーテル治療の進歩により開胸手術そのものを回避して治療可能な症例も多くなっているが、適応外の症例に遭遇した場合には必要なアプローチである。
【結語】冠動脈バイパス術後の再心臓手術にはグラフト損傷回避のため側方開胸アプローチは有用である。
【はじめに】冠動脈バイパス術(以下、CABG)後に弁膜症等のための再手術を要する場合、胸骨再正中切開は開存しているグラフト損傷リスクがある。
【目的】冠動脈バイパスグラフト損傷回避を目的に側方開胸アプローチを行った3症例について、その妥当性、注意点、術中の工夫につき報告する。
【症例1】○○歳女性。CABG(3枝)実施5年後に急性心不全で搬送。心不全の原因は重症の大動脈弁狭窄症で、グラフトは全て開存。人工呼吸管理から離脱後に左第5肋間開胸でApico-Aortic Conduitを実施。経過良好で退院。
【症例2】○○歳女性。CABG(3枝)実施5年後、僧帽弁逆流が徐々に悪化し心不全を呈するようになったため手術適応と判断され紹介。グラフトは全て開存。利尿剤内服で症状軽快後、右第4肋間アプローチで右側左房切開から僧帽弁置換術(機械弁)+三尖弁輪縫縮術(人工弁輪)を実施。経過良好で退院。
【症例3】○○歳女性。CABG(6枝)+左室形成術7年後に左室形成部位にMRSAによる感染性心内膜炎を発症して、心尖部に左室仮性瘤を形成、拡大傾向のため再手術の方針とした。グラフトは左内胸動脈―前下行枝、上行大動脈―大伏在静脈―右冠動脈#3が開存。抗菌薬治療で炎症所見軽快後に左第5肋間開胸で左室再形成術実施。感染組織を除去し再度パッチ形成した。心筋組織からMRSAが培養検出されたため抗菌薬を2週間継続し炎症所見軽快後に退院。
【考察】いずれの症例も側方開胸アプローチを採用することにより、開存しているグラフト損傷が回避できた。心臓操作は心室細動下に行うため大動脈弁逆流がない症例が適応条件となる。それでも左室内に肺静脈からの血液流入があるため左室内の視野確保に工夫が必要で、左室内血栓や粘液腫など落下の危険がある操作には注意を要する。人工心肺その装着は2例で大腿動脈送血、1例で腋窩動脈送血とし、脱血は2例で大腿静脈経由右房1本脱血、1例で上下大静脈脱血とした。昨今のカテーテル治療の進歩により開胸手術そのものを回避して治療可能な症例も多くなっているが、適応外の症例に遭遇した場合には必要なアプローチである。
【結語】冠動脈バイパス術後の再心臓手術にはグラフト損傷回避のため側方開胸アプローチは有用である。