横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

左上大静脈遺残

2018-07-31 02:36:05 | 心臓病の治療
 血行動態的には正常ですが、胎生期の名残で左上大静脈遺残(Patent Left Superior Vena Cava = PLSVC)という奇形があります。頻度は0.4%とほどといわれていますが、日常臨床ではCTで時々見られます。他の奇形を合併していることもあります。
 これはもともと心臓に静脈血を返すルートの一つである上大静脈には、左右の二本あり、胎生期に心臓の頭側で、腕頭静脈(無名静脈)でつながって一つの上大静脈に通常なるのですが、このPLSVCがあると、通常上大静脈につながる左総頚静脈や左鎖骨下静脈がPLSVCを経由して多くは大動脈弓部の左側全面、心臓の左側を通って冠静脈洞に流入し、そこから右房内に開口します。
 単純CTでも水平断画像で大動脈弓部の左側に1cmほどの普段見られない脈管を認めるので、簡単に見つけられます。また超音波検査でも左心房の背側に異常に拡張した冠静脈洞があればこれを疑います。
 血行動態的には正常なので、特に治療は必要ありませんが、心臓手術やカテーテル治療などでは、重要な情報となります。そいうのも、左頸静脈や左鎖骨下静脈から、たとえばスワンガンツカテーテルやペースメーカーを留置しようとすると、通常通りのルートではないので、挿入が困難となります。また、開心術の時は、このPLSVCを閉鎖しないと、右房内の視野確保が悪くなったり、冠静脈洞からの逆行性冠灌流ができなくなります。その意味で、治療前にCTでこの存在を知っておくことは非常に重要となります。一度見たら忘れない特徴的なCT画像ですが、見逃さないように注意することが重要です。



 心臓手術の際に左上大静脈遺残があり、これを遮断して、冠静脈洞から逆行性心筋保護を行っても、通常の逆行性注入よりも心筋組織に十分心筋保護液がいきわたらない危険性があります。遮断している部分は通常、左心耳の外側の心嚢内であることが多い為、遮断部位までの遺残している上大静脈の方に心筋保護液が主に注入され、リザーバーのような形になってしまう可能性があるからです。このため、この奇形が合併する患者さんには必ず、逆行性心筋保護を併用する場合でも、順行性をメインに心筋保護する必要があります。逆行性をメインにして手術した場合、術中、術後のLOS(Low Output Syndrome 低拍出症候群)のリスクが高くなります。

また、三尖弁形成術など右房石灰を必要とする手術の場合は、通常の上下大静脈脱血だけで右房切開すると、このPLSVCからの逆流が多いので視野の確保に苦労する可能性があります。通常の胸骨正中切開の場合は左側の左心耳の奥に見えるPLSVCを遮断するか、ここにカニュレーションして脱血して冠静脈洞から還流する血流を減らして視野を確保するする可能性があります。しかし、最近症例が増えている、右小開胸の低侵襲心臓手術においては、心臓の左側は見えません。その場合は拡大した冠静脈洞の周りにタバコ縫合をかけて脱血管を追加して流入してくる血液を吸引して視野を確保する必要があります。
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コレステロールの薬で本当に筋肉痛になるのか?

2018-07-29 08:47:31 | 心臓病の治療
 心臓血管外科の診療を受ける患者さんの多くが動脈硬化をベースとする疾患であったり、高齢の方が多いので、高脂血症の治療薬を内服しているケースがほとんどです。いわゆる悪玉といわれるLDLコレステロール(低比重リポ蛋白:Low Density Lipoprotein)を下げる薬剤としてストロング・スタチン製剤を内服していることが多く、いろいろ食事療法を努力するよりも内服薬を一粒飲むだけで管理できてしまう事、お薬の効き目とはすばらしいと思います。
 このスタチン製剤の副作用として、クレアチンキナーゼ(CKあるいはCPK:Creatin Kinase, Creatin Phosphokinase)が上昇して、症例によっては横紋筋融解症のような状態になることがある、といわれています。CK上昇は筋肉が崩壊したり、組織壊死して細胞が破壊された時に血中に放出され異常値として検出されます。臨床的には、急性動脈閉塞によって下肢虚血になったり、腸管壊死になって組織が崩壊した場合や、急性心筋梗塞によって心筋壊死が起こった場合、マラソンなどで極度に筋肉を使用した場合、他には遭難して数日間飢餓に陥った場合などにも症状します。
 スタチンによるCK上昇は、25年医師としてたくさんの患者さんに処方してきましたが、一度しか見たことがありませんが、筋肉痛はなく、まったくの無症状でした。CK上昇という検査異常が筋肉痛を伴うのは、基本的に組織が虚血によって壊死したこと痛覚神経が反応した結果と思われますが、しかしながら、薬局で患者さんに行われる説明では、筋肉痛が起こることがある、と説明されてしまっているようで、CK上昇が筋肉痛を必ず伴うと誤解されてしまっているようです。医師の中にも、本当にスタチンで筋肉痛が起こると思っている人が少なくないようです。
 そのせいで、患者さんがよくある下肢痛、腰痛、肩こり、倦怠感などをスタチンのせいにして内服を中止してしまうケースが多く見受けられます。もちろん、スタチンの副作用でそうした症状が出る可能性は否定できませんが、意外と医師の説明は信用されていないことが多く、ネガティブな情報はより鵜呑みにされやすい傾向にあるため、一度思いこんでしまうとニンジンやピーマンが嫌いな子供のように拒絶反応を示してしまう患者さんが少なくないのは非常に残念なことです。
 その一方で処方している薬剤で副作用が起きていないか、また有効に効いているかをチェックする責任も、処方医にはあります。私は定期的に患者さんの採血や、画像検査を行っているのは通院管理している医師の責任として、LDLを低下させるだけでなく、診ているからには病気にさせない、病気を早期発見する責任が主治医としてあるからです。その意味で、LDL値、肝機能、CKなどの検査の他に、目的である動脈硬化が進行していないか、CTや頸動脈のエコーなども定期的に行っています。
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解離性大動脈瘤による消費性凝固障害

2018-07-27 06:26:28 | 大動脈疾患
 解離性大動脈瘤では種々の病態を呈しますが、消費性凝固障害もその一つです。偽腔が開存している症例で、拡大した偽腔の血流が遅い場合は、血流うっ滞から偽腔内に血栓系を起こし、そこで凝固・血栓溶解が繰り返され、まさに播種性血管内凝固のような状態を引き起こすことがあります。この血栓形成によって凝固因子が消費されてしまい、血小板や凝固因子が枯渇して出血傾向を呈します。皮下出血や粘膜出血などが発生します。DICスコアが満たされるので、慢性DICと呼ぶ人もいます。
 こうした症例を、他の手術をすると術中の止血が困難になる危険があります。

 この状態を回避する、もしくは治療をするには、血栓形成の現場となる拡大した偽腔をなくすこと、すなわち解離性大動脈瘤切除=人工血管置換術が必要です。エントリー閉鎖をステントグラフトで可能であれば、それにより偽腔が血栓閉塞して状態が回復する可能性がありますが、その結果は不確定です。出血傾向、凝固障害がある状態での手術になるため、手術リスクは高まると考えられます。そのため、置換範囲は最小限にする必要があります。多くは下行大動脈置換術を行います。
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横須賀軍港

2018-07-26 17:32:47 | その他


横須賀はアメリカ第7艦隊と海上自衛隊が共存する軍港になっているため、入れ替わり立ち替わり軍艦が出入りしています。一昨日の新聞に2ヶ月ぶりに原子力空母ロナルドレーガンが横須賀に帰港した記事が載っていました。ロナルドレーガンは乗員5000人で、一つの街のような存在が横須賀に来るとなると街の人口が一気に増加します。胸部外科学会の総会が約5000人の参加者といわれていますので、空母一隻が来ると、全国規模の学会が行われるのと同じくらいの人手が出ることになります。それと同等の経済効果があるかはわかりませんが、どぶ板通りを中心に街が賑わうことにはかわりありません。
ちょうど、昨日から、自衛隊最大の護衛艦いずもも帰港しているので、横須賀には大型の艦船が多く停泊しています。

横須賀市立うわまち病院の中にも、迷彩服を着た患者さんの家族や関係者も少なくありません。
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血液サラサラ

2018-07-23 18:30:25 | その他
テレビなどでもよく、血液サラサラの薬などと、抗血小板薬のことを呼んでいます。しかし、この表現、正しいのか疑問です。サラサラの反対はドロドロ、とすると、血液に関してはヘマトクリット、すなわち、赤血球数で反映される血液の粘性がもっとも関与していると思います。次には総蛋白濃度で、血小板数や血小板機能は関与してないです。おそらく、テレビが間違って表現したのを医療者がそのまま使ってしまっているのかもしれません。薬局での薬剤師の説明でも、サラサラという言葉を用いて説明しているそうです。
患者さんもテレビの影響か、サラサラの薬って覚えてしまってるので、その方が分かりやすいのかも知れませんが、専門職としての医療者としてはプロフェッショナルとして、謝った表現は極力慎むべきではないかと思います。

自分は、普通に血小板の凝集を抑制して血の塊が出来るのを抑制するお薬と説明しています。
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病病連携・病診連携

2018-07-20 05:59:07 | 心臓病の治療
 病院間の連携を病病連携、病院と診療所の連携を病診連携といいます。病院に専属の「連携室」というセクションがあり、病院や診療所との連絡窓口になっていて、横須賀市立うわまち病院でも連携室が他病院との患者さんのやりとりをしています。

 7月18日 横須賀市立うわまち病院と衣笠病院の診療情報連絡会があり、それぞれの病院の診療内容の紹介など行われました。

 衣笠病院としてはホスピスの診療内容の紹介があり、癌と診断された患者さんを1週間以内に受け入れ、病状や苦痛が安定した時点で自宅や他の施設・病院などに移動させることで、次に発生した患者さんをスムーズに受け入れる体制作りをしている報告がされました。

 うわまち病院からは、心臓血管外科が弁膜症手術や冠動脈バイパス術で受けた低侵襲心臓手術が患者さんの退院までの期間を短縮し、早期に社会復帰できている事例が増加していることの報告を致しました。
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心不全パンデミックに対応する最新の外科治療(講演要旨)

2018-07-19 07:05:43 | 心臓病の治療
今後高齢者が人類が未体験の領域にまで増加する日本社会において、心不全発症数が高齢者数に比例して爆発的に増加する社会現象、いわゆる心不全パンデミックに対してどのように心臓血管外科領域では対応していくか、大きな課題です。一例一例に大きな社会的リソースを投入する心臓血管外科手術は社会的な影響が大きく、患者数が増加することへの対応は、治療の低侵襲化による合併症数の減少、早期回復、入院期間の短縮による一例あたり医療費の減少が外科医として努力することです。
一般に心不全に対する心臓血管外科がかかわる外科治療として、虚血性心疾患、弁膜症、心筋疾患があります。虚血性心疾患に対する外科治療では、主に冠動脈バイパス術(CABG=Coronary Artery Bypass Grafting)による血行再建が中心になります。CABG関連では2000年ごろより、人工心肺を使用せず、心拍動下に末梢側吻合をするOff Pump CABG(OPCAB)が発達してきました。これは冠動脈吻合部の局所を固定する専用のスタビライザーや心尖吸引するデバイスで吻合部を露出できるように位置を調整することなど、器具の発達によって可能となってきたこと、そして何より、国民的な職人気質は外科医も同様で、手術スキルの追及にこだわる外科医の多い日本の心臓血管外科においては特に発達し、海外では約3割のCABGに対するOPCABの比率であるのに対し、日本では2倍以上の7割でOPCABが実施されています。CABGの質向上に積極的な施設ほどこの比率は高いといわれ、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも、CABGおける99%の症例でOPCABを実施しています。人工心肺によるコストが不要な他、人工心肺に起因する感染症や脳梗塞の増加を防ぐことができます。この方法が導入されるようになり、特に透析患者などの重症患者において、CABGの死亡率が低下してきました。最近ではより、低侵襲な方法として通常の胸骨正中切開を行わず、8cmほどの左小開胸や上腹部の開腹で行う、低侵襲のOff Pump冠動脈バイパス術(MIDCAB=Minimally Invasive Direct CABG)も施設によっては行われています。視野の確保や吻合部の選択など課題はありますが、カテーテル治療との組み合わせで完全血行再建できる症例も多く、うわまち病院でも積極的に適応にしています。これにより、早期の回復が期待でき、術後約1週間で退院が可能です。
弁膜症手術で多いのは大動脈弁や僧房弁の手術です。大動脈弁では加齢によって起こる動脈硬化によって大動脈弁狭窄症は増加しており、高齢者が増加することで僧帽弁閉鎖不全症も増加しています。うわまち病院では心臓手術を受ける患者さんの3分の1が80歳以上です。冠動脈疾患と同様に、弁膜症において手術を低侵襲化することで、手術死亡率の低下に寄与することだけでなく、合併症の予防、入院期間の短縮が可能になります。うわまち病院でも8cmほどの右小開胸で大動脈弁置換術や僧帽弁形成術を神奈川県内でも最も早期に導入してきました。これに通常の胸骨正中切開で行った患者さんが約2週間で退院するところを約1週間に短縮しています。また人工心肺を使用せず、また開胸も行わずに可能なのはカテーテル治療で今後ますます発展していくものと考えられます。経カテーテル的に大動脈弁位に人工弁を移植する治療(TAVI=Transcatheter Aortic Valve Implantation)や、僧帽弁逆流を減少させる経カテーテル的にクリップをかけるMitraclipなどが実際に始まっています。こちらはまだ長期的な成績はわかっていませんが、これまで治療できなかった重症や合併症の患者さんにも治療を可能とし、またこれから増加する超高齢者にも適応可能です。
心筋疾患は、冠動脈疾患や弁膜症と違い、外科医が機械的に治療できる領域の小さい疾患です。心筋そのものを外科手術では治せないからです。実際に行われている治療は急性期にはPCPS(Perfutaneous Cardiopulmonary Support)やIABP(Intra-Aortic Baloon Pump
)といった機械的補助装置を装着し、長期化した場合は左室補助装置(補助人工心臓ともいう、LVAD=Left Ventricular Assist Device)に入れ替えして、心臓移植待機することになります。最近の補助人工心臓は、小型化が可能になり本体を体内に植え込むことによって、持ち運びが簡便となり、電源供給の導線が対外とつながっていますが、退院して自宅での生活や職場、学校への復帰も制限付きで可能となっています。いずれは体外とつながる導線(ドライブライン)不要な完全植え込み型補助人工心臓も近い将来実用化されると思います。植え込み型補助人工心臓が普及してから、装着後の生存率が改善することとで装着される患者さんが爆発的に増加する一方、心臓移植のドナーが足りないため、また、移植の適応年齢を超えてしまうため、心臓移植を前提とせず、植え込み型補助人工心臓で今後の生命を全うする、Destination Therapyも海外では普及してきており、日本においては導入を検討中です。すでに海外では植え込み型補助人工心臓で10年以上生存している人が数十人います。また、骨格筋由来の細胞を培養してシート状に培養したものを心筋に貼付して心機能の回復を期待する心筋シート治療も始まっており、これからiPS細胞を使用した心筋細胞シートに治療もまさに始まろうとしています。いずれは研究の進展により心臓そのものを培養して作成するバイオ心臓も実現は遠くないのかもしれません。
 科学技術や医療技術の発達により、治療の幅も広くなり、より低侵襲化した治療が次々に実現されてきていますが、これらを駆使して今後の心不全パンデミックに一般医療のレベルでも対応していく必要があります。
(第一回 横須賀心不全パンデミック講演会)
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歯周病から全身病へ・口は災いの元

2018-07-17 14:35:34 | 心臓病の治療
 主に歯科医師会の先生たちを対象に行った、心臓血管外科手術と周術期口腔管理という演題の講演では、最新の心臓血管外科手術について、歯周病と外科手術・全身疾患の関係、そして感染性心内膜炎の外科治療についてお話しさせていただきました。

 歯周病から全身病に進展するには、歯周病で発生した炎症性サイトカインが血中に入り込んで全身に影響を及ぼす場合と、歯周病菌が主に血中に入り込んで菌血症から起こす全身病とがあります。
 炎症性物質はTNF-αやインターロイキン、エンドトキシンなどが関与し、これによってインスリン抵抗性が悪化したりして血糖管理が悪化させたり、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患に影響することもあります。また動脈硬化の促進により、虚血性心疾患や脳梗塞、認知症の悪化が起こるとも言われています。また、エンドトキシンの影響でウィルス感染が起きやすくなりインフルエンザにかかりやすくなったり、HIVを活性化してエイズ発症にも関与するといわれています。
 一方、菌血症から起こるものの代表は、心臓の弁膜などに感染を起こす感染性心内膜炎です。他に動脈硬化のプラークやバージャー病の血管病変から細菌が同定されており、動脈硬化性疾患の悪化に関与するといわれています。また口腔内環境が悪いと誤嚥性肺炎にもなりやすいといわれており、特に人工呼吸器装着中に起こす人工呼吸器関連肺炎(VAP: Ventilator Assissted Pneymonia)の頻度が増加するといわれています。

 口腔ケアはその意味で周術期は特に重要ですが、普段から口腔内の衛生環境を整えておくことは、病気の発生や進行予防には非常に重要です。
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横須賀市立うわまち病院の弁膜症手術(MICS)

2018-07-12 18:02:49 | 弁膜症


 この春から弁膜症手術のいわゆるMICS加算(小開胸内視鏡補助下弁膜症手術に対する点数加算)が認められるようになり、一斉に各施設がMICS手術を導入していく機運が高まっているものと思います。横須賀市立うわまち病院では、いち早くMICS手術を導入し、前々任部長の頃の2011年から数年の歴史があり、おそらく神奈川県では最も早く導入しています。現在のやり方までには変遷があります。今週も、とある大学病院の教授がMICSの僧帽弁形成術の見学に見えました。今後、そちらでもMICS手術を導入予定だそうで、導入に関して協力する予定です。
 神奈川県内でもこれからスタンダードな治療法として広まっていくものと考えられます。
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平成30年第1回病診連携登録医講習会

2018-07-12 09:13:45 | 心臓病の治療
横須賀市の歯科医師会と横須賀市立わまち病院の病診連携の講演会が開催されます。
歯周病が全身病へ大きく影響するということが話題になっている昨今、歯科診療と病院とが連携して診療することで全身疾患に対応していくということで、二年ほど前から連携が始まっております。
具体的には、歯科医師が病院内に定期の往診、診察をしていただきながら連携を深めるものです。心臓血管外科の患者さんは術前や術後に口腔内を診察していただけ、必要に応じて口腔ケアや抜歯などもしていただくことで、術後合併症の予防や、動脈硬化性疾患の悪化、再発の予防をしています。

今回は「心臓血管外科手術における周術期口腔管理」という演題名をいただいております。

日時 平成30年7月13日
場所 横須賀口腔衛生センター

講師 横須賀市立うわまち病院 心臓血管外科部長 安達晃一
   神奈川歯科大学 顎顔面病態診断治療学講座 准教授 岩渕博史 先生
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横須賀市立うわまち病院のドクターカー

2018-07-06 16:47:25 | 心臓病の治療
 横須賀市立うわまち病院ではドクターカー2台を運用しています。運用は、他の診療所や病院などの医療機関から高次医療機関への検査、治療依頼があったときに、その医療機関まで医師同乗したドクターカーが迎えに行くことで、その診療所医師や医療スタッフが転送中に施設を不在にすることを防ぐことができます。心筋梗塞や大動脈解離、脳卒中などの疑いのある患者様を診察した場合、気軽に相談し24時間体制で対応できるようにしています。横須賀市内、逗子、三浦市、葉山町、横浜市金沢区、鎌倉市など横須賀市以外の近隣の市町村にも対応しています。般家庭や医療機関からの施設への派遣はしておりませんが、大規模災害など消防署からの依頼がある場合は、現地へ救急部スタッフを同乗させて急行させます。東日本大震災では地震当日に宮城県の救助を求める病院まで、地震当日中に出動しました。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも腹部大動脈瘤破裂や急性大動脈解離の症例の病院間搬送に実績がありますが、実際は救急部スタッフがお迎えに行っている間に院内で緊急手術の準備をしている場合も少なからずあり、院内の連携をしながら運用しています。
 また他病院への緊急症例の転送にも使用される場合があります。
 同じ横須賀市の横須賀市立市民病院でも昨年よりドクターカー運用が開始されたことにより、横須賀市の救急医療の充実に貢献できることが期待されています。
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第8回さいたま-東京-神奈川 心臓血管外科症例検討会

2018-07-05 19:18:14 | 心臓病の治療
第8回さいたま-東京-神奈川 心臓血管外科症例検討会

【日時】2018年7月21日(土)15:00〜18:00
【場所】さいたま赤十字病院 7階  第3会議室

参加施設 
 自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科
 さいたま赤十字病院 心臓血管外科
 横須賀市立うわまち病院 心臓血管外科
 練馬光が丘病院 心臓血管外科
 横浜みなと赤十字病院 心臓血管外科
 春日部中央総合病院 心臓血管外科
 都立墨東病院 心臓血管外科

横須賀市立うわまち病院心臓血管外科からは「感染性胸部大動脈瘤の治療経験」についてプレゼンテーションする予定です。
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心臓血管外科手術後の疼痛とその対策

2018-07-05 06:16:30 | その他
患者さんが手術に関して不安に思う事の一つが術後の疼痛です。人間の体は部位によって同じ刺激に対しても痛みの感じ方が違うし、創の治り方も違います。術中は全身麻酔によって全く痛みを感じない状態での手術になりますが、術後は痛みゼロというわけにはどうしてもいきません。
心臓血管外科で扱う手術創は、大きく分けて①胸骨正中切開、②側方開胸、③腹部正中切開、④腹部斜切開、⑤下肢の手術創(静脈採取、下肢バイパス)があります。

この中で最も痛くない創があるとすると、胸骨正中切開の創部と下肢の手術創でしょう。胸骨正中切開では胸骨を縦断しますが、術後はステンレスのワイヤーやチタンやハイドロキシアパタイトのプレートを使って固定されるので安静にしているときは痛みを感じず、体動や咳のときに痛みや刺激を感じる程度だとおっしゃる患者さんが多いです。または、鎮痛薬を内服すれば全然我慢できる程度、とおっしゃる方がほとんどです。過去にの痛み自体を経験が少ない若い患者さんの場合は痛みの訴えが強いことがあります。もしくは若い人ほど痛みに関する神経が敏感なのだと思います。

腹部正中切開の傷も胸骨正中切開の創よりは笑ったりすると、腹筋が刺激されたりするため胸部よりも痛いとおっしゃる患者さんが多いです。冠動脈バイパス手術と腹部大動脈瘤など、胸部の手術と腹部の手術を二回受ける患者さんも少なくないので、どちらが痛いかと聞いてみると、ほとんどが腹部より胸部がいたくないとおっしゃいます。

意外に痛いとおっしゃるのが側方開胸の創です。やはりこれは痛みに敏感な肋間動脈の領域の創部になるので、どうしても神経繊維が極めて少ない正中部の創に比較して強く疼痛を自覚されてしまう傾向にあります。最近増加している小開胸の低侵襲手術(MICS=Minimally Invasive Cardiac Surgery)においても、創は小さくても疼痛がないわけではありません。皮膚切開は小さくても内部の肋間筋の剥離は比較的に広範囲になっていることが少なくありません。

腹部斜切開、下肢の創部について、今まで痛みについて患者さんの訴えをあまり聞いたことはありません。

ほとんどの手術創について、「痛いですか?」と質問すると、ほとんどの患者さんは、「痛み止めを飲めば我慢できる程度です」とおっしゃいます。

 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも、術後の疼痛対策として特に重視するのは、痛みを強く感じやすい若い患者さんと側方開胸の患者さんです。側方開胸には冷凍凝固装置を使用して肋間神経ブロックを行っています。神経ブロックがうまく効いていると、創部周辺の知覚鈍麻がのこりますが、全く痛くないとおっしゃる患者さんもすくなくありません。腹部正中切開には局所麻酔薬による局所神経ブロックや硬膜外麻酔による疼痛管理を行っています。術後は患者さんの痛みにあわせて鎮痛薬の内服をしてもらいますが、定時で内服する必要がある患者さんは多くありません。
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心臓大血管手術後のリハビリテーション

2018-07-04 16:47:09 | その他
 心臓大血管手術後はできるだけ早期にリハビリテーションを開始して早期離床、早期回復を目指す必要があります。術後にできるだけ早く人工呼吸器から離脱し、食事を開始し、座位から立位の保持、歩行練習など手術翌日から段階的に開始していきます。進み具合は個人差がありますが、通常の開心術の場合、3日目には立位もしくは歩行していることが多く、術後一週間では一般病棟で自由に歩行していることがほとんどです。術後一週間を目安に術後の検査(CTや心エコー、血管造影など)を行い、2週間以内に退院することを目標とするスケジュールにしています。最近症例数が増加傾向のMICS(小開胸の心臓手術)では早期に回復が期待できるため、術後一週間で退院する患者さんが増加しています。 術前からの合併症などに応じてアレンジする必要があり、写真の折り紙(チューリップ)は自主的なリハビリテーションを目的に患者さんが作っているものです。
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膝窩動脈瘤

2018-07-02 19:18:13 | 心臓病の治療
末梢動脈瘤の中でも、時々心臓血管外科医が遭遇するのが、膝窩動脈瘤です。膝の裏の動脈、膝窩動脈が瘤になってしまう病態です。

膝窩動脈瘤は動脈硬化と関連する場合が多く、虚血性心疾患や腹部大動脈瘤の合併が多いといわれています。なので、もし見つかった場合は全身の動脈に検索が必要になります。両側性の頻度も高いので、対側の膝窩動脈も検査する必要があります。高齢の男性にできやすい病態です。

膝窩動脈瘤は、それ自体が破裂することは少なく、それよりは瘤の中に血栓ができて、その血栓が末梢に流れ落ちて急性動脈閉塞を呈したり、また、動脈をふさぐことによる閉塞性動脈硬化症の症状で発症することが多いといわれています。通常の動脈造影だけですと、瘤は映らないことが多いので、同時にCTや超音波検査をして初めて診断されることもあります。

治療は、血流障害が主症状であれば、血行再建のための治療=バイパス手術、血栓溶解療法などが行われ、また新たな血栓形成を予防するために抗凝固療法の開始や、瘤の切除や閉鎖手術が必要になります。破裂の場合は瘤の閉鎖または切除手術が必要です。
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