横須賀うわまち病院心臓血管外科

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全身麻酔後、唾が飲めない = 術後の嚥下障害

2019-02-24 05:13:28 | その他
 全身麻酔後の嚥下障害、これは気管内挿管の刺激による喉頭部の浮腫などが原因している可能性があります。特に高齢者で起こりやすいのは、水分摂取の時に、喉頭がタイミングよく閉鎖しないために起こる気道内への誤嚥です。また、声帯の可動制限・閉鎖の異常による嗄声(かすれ声になること)などが起こることがあります。こうした状態は一時的なので、数日から数週間以内に自然に軽快することが多い状態です。

 稀に外側延髄の脳梗塞によって反回神経麻痺や咽頭喉頭の運動障害が発生して同様の症状が出現することがあり、症状が遷延した場合は、脳MRIなどで評価し脳外科医や神経内科医への相談が必要なことがあります。

 気管内挿管が長期間に及んだ場合は特にこうした嚥下障害などは発生しやすいので、人工呼吸器から離脱後の飲水、嚥下が正常に行われているかをチェックするために、横須賀市立うわまち病院ICUでは、耳鼻科およびST(Speech Therapist)に依頼して、嚥下機能評価を行い、それに合格してから飲水を開始しています。不安のある患者さんの場合は、STの監視下で水分、食物の摂取をしてもらいます。

 特に誤嚥の危険がある患者さんには、水分にとろみをつける成分を追加しています。とろみをつけることで、嚥下される瞬間に移動する水分の速度が低下し、喉頭の閉鎖が間に合わないために起こる誤嚥を予防します。

 全身麻酔の後には、気道の繊毛機能の低下、肺活量の低下などが起こるため、喀痰の喀出障害を起こしていることが多く、肺炎、痰詰まりによる窒息などが起きやすい状態でもあります。誤嚥、肺炎、痰詰まりを回避するために、危険性の高い患者さんには、気管支鏡による採痰、ミニトラック(喉頭から穿刺して気道に留置する細いカテーテル)、気管切開などを積極的に行っています。

 術後の早期回復には栄養の補給が非常に重要です。嚥下に問題があるために、経口摂取が問題がある場合は、胃管を通じた経管栄養を早期に開始します。最近の傾向では、特に早期から十分な経腸栄養を開始することが、術後の感染予防、創傷治癒に役立つといわれています。胃管そのものが、嚥下に悪影響を呈する場合は、稀ですが、一時的に胃瘻を内視鏡的に作成して栄養管理する場合もあります。
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