MICS-CABGにおいて、上行大動脈への中枢側吻合、下壁領域への吻合操作の難しさが技術的障壁として、普及を妨げており、LITA-LADの1枝バイパスにとどまっている施設が多い理由の一つと考えられます。
これに対して1か所の左側方開胸から複数肋間を介して心臓操作を行うことがMICS-CABGの技術的課題を解決する一手になりうるかを考察します。
8~10cmの皮膚切開で左第5肋間アプローチをメインの操作肋間として、心膜切開、内胸動脈採取等を行った後、上行大動脈の部分遮断、中枢吻合が視野操作性不良の場合に同じ皮膚切開から第4肋間開胸に切り替えて中枢側吻合を行い、末梢吻合の際には再び第5肋間開胸に移行します。もしくは、4PDなど下壁領域の吻合視野、操作性が不良の場合に、同様に同じ皮膚切開から第6肋間開胸からのアプローチに変更して末梢吻合を行います。場合によって肋骨弓を離断して視野の改善を図ります。
複数肋間開胸アプローチによって良好な視野、操作性を確保したMICS-CABGはより吻合の質を確保する有用なオプションであり、今後の多枝MICS-CABG普及の一助になると考えらます。