Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

癌の爆発的増殖

2006-12-02 | 医療・病気・いのち
癌が再発してくるとき
驚くほどの病勢の進行を見せることがある

体の奥深くに潜み
誰にも気づかれないうちに
大きな力をため込み
ある時期 一気に爆発する
そんな 再発の仕方だ

 3年8ヶ月前、70代の男性に対し食道癌の手術を行った。ある程度進行していたが、術後経過は順調であった。季節の変わり目には検査を行い、3年を過ぎた時には、完治の可能性も少し考えた。少しというのは、食道癌の場合よほどの早期癌でなければ、なかなか完治が難しいからだ。

 しかし3年5ヶ月めの検査で首の深い位置にあるリンパ節に転移が見つかり、その後急速に大きくなったため気管を塞ぎかけた。窒息死の危険があったので、気管にチューブを挿入した上で、放射線治療を開始した。治療半ばを過ぎた頃から、首のリンパ節は小さくなり始め、気管のチューブを抜くことができた。そこでもう一度家に帰って頂くことができるかと思っていたのだが、全身状態がなかなか改善しない。逆に悪化してくる。

 血液検査をすると、一ヶ月の間に腫瘍マーカーが正常値から一気にそれまでの100倍くらいまで駆け上がり、CTを撮ると一ヶ月前には認めなかったのだが、肝臓全体に多数の転移巣を認めた。まさに爆発的増殖だ。

 癌治療の難しさの多くの部分は、癌は転移するということに集約される。ある程度の大きさの癌になっていても、そこから別の臓器に転移を起こしていなければ、大元を切除すれば直るのである。しかし体の他の部分に散らばっていると、いくら局所を治療しても、他の軍勢はどんどんその勢いを増していく。

 先ほどの食道癌の方は、その後急速に状態が悪くなり、尿が出なくなって2日後に永眠された。2ヶ月前に窒息死を起こすことを免れたことがせめてもの救いだが、この2ヶ月間、治療を継続したことが本人にとって良いことなのかどうか、難しい。ここ数ヶ月の変化が著しかったので、残される家族にとってはお別れの時間をもてたようだが。