Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

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ダンジーブログ

一寸先は

2006-12-09 | 医療・病気・いのち
 手術という治療の危険性を考えるとき、手術によって引き起こされる合併症に注意がいきがちだ。しかし、必ずしも直接手術との関連がはっきりしないようなことも起こりうる。

 なかでも、心筋梗塞、脳梗塞、脳内出血などは、日常生活の中でも起こりうるもので、当然手術後にも起こりうる。実際に脳梗塞や脳出血を起こした方を、見たことが何回かある。

 胃癌手術を受けた70代の方。手術や麻酔は非常に順調で、問題なく終了。ICUに戻ったあとも、全身状態は安定していた。血圧、呼吸数、尿量、体温などに問題はなく、鎮痛は十分で、意識もしっかりしていた。

 たまたま当直をしていた私に、術後5時間くらいして急に意識レベルがおかしくなったとの連絡が入った。直ちに訪室。呼びかけに対する返事がない。手足に力が入っていない。呼吸状態が不安定。血圧は上昇傾向。

 すぐに頭部CTを撮ったところ、くも膜下出血。

 一旦意識が戻ってきたが、再度意識がなくなるとともに呼吸状態が悪化。気管内挿管を行った上で、脳外科専門医の元へ搬送した。その間約30分。しかし翌日のお昼頃亡くなったとのことであった。せっかく手術は無事すんだのに、誠に残念な結果だ。手術をしなければ…という思いも出てくるが、手術前にそれを予想することは不可能だ。もし脳動脈瘤の診断が付いていたとしても動脈瘤があれば必ず出血するというわけでもないし、動脈瘤の治療自体にも危険を伴うし、選択は難しい。

 くも膜下出血は致死率が高い。脳動脈瘤が破れて発症することが8~9割と言われており、ほとんど即死という亡くなり方をする場合もある。

 手術を受ける際に、なかなかこんなことまで考えるわけにはいかないが、手術後というのは本当に何が起こるかわからない。