核分裂、核融合などの核物理学に興味があったので
以前、山田克哉著『核兵器のしくみ』(講談社現代新書)という本を読みました。
タイトルは「核兵器の・・・」となってはいますが、
内容は、原子核の構造から始まり、陽子・中性子、アイソトープ・・・、
ウラン235の核分裂、臨界、アルファ線・ベータ線などの放射線、
そして核爆弾や原子炉の構造、核融合反応・・・と多岐に渡ります。
文系の素人にもわかるように順を追って要点を解説してあり、とてもよい本だと思います。
もちろん、一度読んだだけですべて理解できるわけではありませんので、
何度も読み返していますが。
今回の地震による福島原発の事故が起こった際、この本を手元において
ニュース解説を聞きながら、改めて内容を確認したりしていました。
3月16日付の新聞で「再臨界の可能性がゼロではない」
とのニュースが報じられています。
『核兵器のしくみ』に書かれている内容と、それに関する私の理解では、
どのようにして、この「再臨界」が起こるのかは理解できません。
(そもそも本当に「再臨界」などあり得るのかも)
本に書かれていることで、私なりに重要だと思う点を(私の理解のもと)いくつか上げます。
〇核分裂によって生じる熱を利用し、水を水蒸気にしてタービンを回し発電するのが原子力発電である
◇通常の原子力発電(原子炉)には「ウラン燃料」が使用されている
◇ウランとプルトニウムの混合「MOX燃料」を使用したのが「プルサーマル原子炉」である
◇ウラン核(ウラン235)を核分裂させるには[中性子]が必要である
◇核分裂を起こしたウラン核からは、熱と平均2.5個の[中性子]が新たに放出される
◇放出された[中性子]が、次々と別のウラン核の分裂を引き起こすのが核分裂連鎖反応である
◇核分裂連鎖反応を短時間に一気に起こす(暴走)のが核爆弾である
◇分裂から放出され、新たに分裂を引き起こす[中性子]数を(一定に)制御したのが原子炉である
◇ある世代の分裂を起こす[中性子]数が、その一つ前の世代の分裂を起こす[中性子]数と
同じになった状態の時、原子炉が「臨界」に達したという
◇ウラン燃料が「何事も起きていない状態」(=原子炉が完全に停止している状態)では
自然に(勝手に)核分裂連鎖反応は起きない
※[中性子]によって分裂したウラン核から、新たに[中性子]が出てくる点が重要だと
著者は何度も説明しています。
そしてその数が2個以上であることで、連鎖反応が続くと分裂する核の数が
「ネズミ算」式(2倍、2倍)に増大し、制御しないと「暴走」(爆発)が起きます。
核分裂連鎖反応をスタートさせるには、最初に必ず[中性子]が必要であり、
それがなければ、ウラン核(燃料棒)がいくら熱くなろうが再度連鎖反応は起こらない、
(ゆえに「再臨界」にもならない)というのが私の理解です。
ですから今、懸念されている最悪の事態も、
燃料棒が「余熱」で格納容器等を溶かし、それによって生じる水素などで大爆発が起きる、
そしてその爆発により核燃料などの放射性物質が大量にかつ広範囲に飛び散る・・・
というものだと理解しています。
放射性物質の飛散となれば、大変重大な事態です。
(放射性物質がなぜ危険か、ということも本の中に書かれています)
しかし爆発自体はあくまでも「化学反応」によるもので、
「核分裂連鎖反応」による爆発(≒核爆発)ではありません(と思います)。
『核兵器のしくみ』には、チェルノブイリやスリーマイルなど
過去に起きた事故についても説明されています。
そこで次のようなことも書いておられます。少し長くなりますが、引用致します。
事故が起きて原発側が隠蔽しようとするのは「世間が騒ぎ立てる」ということと
「誰が責任を取るか」という問題が絡んでくるためであろう。
しかしこれは必ずしも原発側だけを責めることはできない。
そこには「説明したところで話が専門的になり、世間は分かってくれないだろう」
という先入観もあるからだ。
世間一般の人達がもう少し原子力の知識を持たねばならない。
今、日本にある全原発の運転を停止したら、停電や節電だけでは済まなくなるだろう。
(山田克哉著『核兵器のしくみ』141ページより)
今の事態を予測していたような内容です。一読をお勧め致します。
(注)
核分裂、原子炉、臨界等に関する私の理解(記述)で重大な誤りや誤解を招く点、
または私の知らない知識や情報などがありましたら、是非、ご指摘下さい。
以前、山田克哉著『核兵器のしくみ』(講談社現代新書)という本を読みました。
タイトルは「核兵器の・・・」となってはいますが、
内容は、原子核の構造から始まり、陽子・中性子、アイソトープ・・・、
ウラン235の核分裂、臨界、アルファ線・ベータ線などの放射線、
そして核爆弾や原子炉の構造、核融合反応・・・と多岐に渡ります。
文系の素人にもわかるように順を追って要点を解説してあり、とてもよい本だと思います。
もちろん、一度読んだだけですべて理解できるわけではありませんので、
何度も読み返していますが。
今回の地震による福島原発の事故が起こった際、この本を手元において
ニュース解説を聞きながら、改めて内容を確認したりしていました。
3月16日付の新聞で「再臨界の可能性がゼロではない」
とのニュースが報じられています。
『核兵器のしくみ』に書かれている内容と、それに関する私の理解では、
どのようにして、この「再臨界」が起こるのかは理解できません。
(そもそも本当に「再臨界」などあり得るのかも)
本に書かれていることで、私なりに重要だと思う点を(私の理解のもと)いくつか上げます。
〇核分裂によって生じる熱を利用し、水を水蒸気にしてタービンを回し発電するのが原子力発電である
◇通常の原子力発電(原子炉)には「ウラン燃料」が使用されている
◇ウランとプルトニウムの混合「MOX燃料」を使用したのが「プルサーマル原子炉」である
◇ウラン核(ウラン235)を核分裂させるには[中性子]が必要である
◇核分裂を起こしたウラン核からは、熱と平均2.5個の[中性子]が新たに放出される
◇放出された[中性子]が、次々と別のウラン核の分裂を引き起こすのが核分裂連鎖反応である
◇核分裂連鎖反応を短時間に一気に起こす(暴走)のが核爆弾である
◇分裂から放出され、新たに分裂を引き起こす[中性子]数を(一定に)制御したのが原子炉である
◇ある世代の分裂を起こす[中性子]数が、その一つ前の世代の分裂を起こす[中性子]数と
同じになった状態の時、原子炉が「臨界」に達したという
◇ウラン燃料が「何事も起きていない状態」(=原子炉が完全に停止している状態)では
自然に(勝手に)核分裂連鎖反応は起きない
※[中性子]によって分裂したウラン核から、新たに[中性子]が出てくる点が重要だと
著者は何度も説明しています。
そしてその数が2個以上であることで、連鎖反応が続くと分裂する核の数が
「ネズミ算」式(2倍、2倍)に増大し、制御しないと「暴走」(爆発)が起きます。
核分裂連鎖反応をスタートさせるには、最初に必ず[中性子]が必要であり、
それがなければ、ウラン核(燃料棒)がいくら熱くなろうが再度連鎖反応は起こらない、
(ゆえに「再臨界」にもならない)というのが私の理解です。
ですから今、懸念されている最悪の事態も、
燃料棒が「余熱」で格納容器等を溶かし、それによって生じる水素などで大爆発が起きる、
そしてその爆発により核燃料などの放射性物質が大量にかつ広範囲に飛び散る・・・
というものだと理解しています。
放射性物質の飛散となれば、大変重大な事態です。
(放射性物質がなぜ危険か、ということも本の中に書かれています)
しかし爆発自体はあくまでも「化学反応」によるもので、
「核分裂連鎖反応」による爆発(≒核爆発)ではありません(と思います)。
『核兵器のしくみ』には、チェルノブイリやスリーマイルなど
過去に起きた事故についても説明されています。
そこで次のようなことも書いておられます。少し長くなりますが、引用致します。
事故が起きて原発側が隠蔽しようとするのは「世間が騒ぎ立てる」ということと
「誰が責任を取るか」という問題が絡んでくるためであろう。
しかしこれは必ずしも原発側だけを責めることはできない。
そこには「説明したところで話が専門的になり、世間は分かってくれないだろう」
という先入観もあるからだ。
世間一般の人達がもう少し原子力の知識を持たねばならない。
今、日本にある全原発の運転を停止したら、停電や節電だけでは済まなくなるだろう。
(山田克哉著『核兵器のしくみ』141ページより)
今の事態を予測していたような内容です。一読をお勧め致します。
(注)
核分裂、原子炉、臨界等に関する私の理解(記述)で重大な誤りや誤解を招く点、
または私の知らない知識や情報などがありましたら、是非、ご指摘下さい。