老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

962  「余命」 「残命」 

2019-02-18 22:12:33 | 生老病死
「余命」「残命」

いま 末期癌から「余命」宣告を受けた
或るひとりの男性老人が生きている

ひとりは80歳を越えた男性
肺癌は
容赦なく腸骨と仙骨
そして頭部まで転移した

痛みがなく幸いであるが
いつ激痛が体を走るか

不安を抱え
退院し自宅での「余命」生活
入院のとき余命1ヶ月と言われ
1ヶ月が過ぎた
病院とは違い自宅での生活は
癒され静かに時を刻む

余命は
余った命ということではなく
余り少ない生命(いのち)という意味に捉えられる

余命よりは
残命のほうが意味ははっきりしてくる
残り少ない生命だけに
家族とどう過ごしていくのか

そのなかで
自分は何ができるのか
妻は不安を抱え
末期癌の夫をどう支えてゆくのか

最期はどこで死を迎えるのか
在宅か
それとも救急搬送により病院か
妻は揺れ動く

日中眠る時間が増えてきた
眠れず夜中に目が覚め
トイレに通うこともしばしば
心もとない夫の歩きを支える妻

不安だけでなく疲れも溜まりゆく
どうして夫が癌を患ってしまったのか
つい胸の内で愚痴がもたげてくる

あと一ヶ月と少しで
桜が咲く季節になるね
みんなで桜の花を観るのが楽しみだね、と
春よ来いの気持ちになる・・・

961 齢(とし)を取る

2019-02-18 07:59:20 | 老いびとの聲
齢(とし)を取る 

取りたくないのは齢(とし)
齢を取ると
目に「くま」ができたり
物忘れが増えたり
膝関節が痛くなったりして
気が滅入ってしまいがち

寝ている間に
誰か私の齢を「盗って」欲しい


960 襤褸雑巾

2019-02-18 04:40:40 | 空蝉
襤褸雑巾 

いまや100円ショップの商品のなかに
雑巾が売られている
始業式や終業式になると
母親たちが雑巾を買い求めて来る
雑巾の縫い目は頼りなく
一度掃除に使われると用済みとなり
襤褸雑巾の如く塵バケツのなかに捨てられ使命を終える

昔母が夜なべをして縫ってくれた雑巾は
布は重ね合わせ厚く糸もしっかり縫われ
簡単に綻びるようなことなく丈夫であった
雑巾は
汚れたところをきれいにしてくれる魔法の布
白色だった雑巾は
何度も拭かれ洗い流されるたび
くすんだ色となり縫い目は綻び破れ草臥れていく
最後はボロボロとなり惨めな姿にはなるけれど
襤褸雑巾は「これでいいのだ」と納得し
笑顔で役目を終える

お前は「人間失格」だ、と罵倒され唾を吐かれた
人生に躓き
惨めな姿は屈曲した影となり
生き恥を晒してきた
それでも
生命ある限り
空蝉のように
残された短い時間を
生きていく

※今年の1月早々に
 コメントを頂き 返信が「今頃になり」すいませんでした
 いつもありがとうございます