老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

963 眠れる顔

2019-02-19 16:15:22 | 老いの光影 第4章
眠れる顔

縁があり
ひとりの老人とその家族に
出会い
そしてかかわり合っていく

最期 永眠されたとき
哀悼と感謝の気持ちで
老人の枕元を訪ね
ご焼香を行う
「安らかに」「お疲れ様」「ありがとう」と無言で話しかける

ご遺族(介護者)の許しを得
老人の眠れる顔を拝む
老人の顏や頭にそっと触れる
その行為を通し
その老人との関係は終わりになる

眠れる老人は
不安葛藤苦悩苦痛から解放され
穏やかな顔であの世へ旅立つ

老人の穏やかな死顔をみて
自分もこんなふうに
穏やかな顔で逝くのだろうか
口を開け間抜けな死顔にはなっているとしたら
訪れた人は苦笑するかもしれない

多くの眠れる老人のなかで
たった二人の老人だけが
恨み辛みがつのった死顔をしていた

安らかに眠ることができなかったことに
悔やまれ 辛く切ない

最期に「水が飲みたい」と訴えても
水を飲むことができなかったひとりの老人

死ぬ瞬間まで
水は生命そのもの

死は永遠の眠りにあり
もう夢を見ることはできない

ご焼香を通し
悔いのない介護を誓う