早春に花が咲くという事実は,なんらかの訪花昆虫がいるということを示しています。セツブンソウのような,いってみればひどく地味でか弱に見える花でさえ,昆虫の訪れを期待して咲くのです。
人は,セツブンソウが咲いたという報道を目にしたり耳にしたりして,もの珍しく群生地を訪れます。中には,「なんだこんなに小さな花なのか」とがっかりして感想を漏らす人がいます。そういう人は昆虫との関係に思いが及んでいないでしょう。
春先に訪れる昆虫は数が知れています。しかし,いるにはいるのです。それほど少ない昆虫にできるだけ来てほしいと願うセツブンソウが,派手な装いをするとは到底思えません。この時期にできるだけ高い確率で訪問してほしいと願いつつ,地味ながら群生することによって受粉の確率を高めようとしているのですから。
そのとおり,ニホンミツバチが花を巡っていました。目の前の花に来てほしいと思っていると,運よく来てくれました。そのときの写真が下のものです。
動きを見ていると,次々と隣りの花に移って行くという感じです。
こちらはそっとそれを追いながら撮影します。
「しめた!」。そう思った瞬間,シャッターを切りました。吻が写っていました。その先は蕊の根元に向かっています。吸蜜行動であることがよくわかります。
これで受粉成功!
私の関心はあくまで昆虫を主役とした自然界の様相をとらえる点にあります。