元ラーメン屋店主のツイート集

ラーメン屋を10年経営し、今は閉店し、介護士をしています。

トンコツラーメンの誤解

2006年03月10日 | ラーメン総合研究所
●ラーメン豆知識
煮豚を醤油ダレで煮るチャーシューをジャンロウと言います。
ラーメン屋では主流のチャーシューです。

広東式の本格的なオーブン焼きチャーシューをチアシャオロウ
と言います。


ラーメンを無数に食べ歩いている方でも、
ラーメン製法に関しては知識が薄い方も沢山おられます。

そこで、多くの方が誤解しているトンコツラーメンに
ついて書きます。

トンコツを煮たら白濁スープになる。と誤解されている
方が多いです。間違いでは無いですが、トンコツだけで
スープをとって綺麗な透き通ったチンタンスープをとって
いる店もあります。

ラーメンスタジアムでも大人気だった、
喜多方ラーメンの坂内食堂は、トンコツのみのスープです。
それに塩味を付け、色つけに濃口醤油を入れているだけの
シンプルさで、澄み切った清涼感溢れるスープです。

だからトンコツを使えばコッテリスープになる。や、
トンコツを使えば白濁(スープが白く)になるのは間違いです。

トンコツの代表格は、ゲンコツ、頭なので、この2つの
部位について詳しくかきます。

●ゲンコツ
豚の大腿骨です。関節部にはコラーゲンが豊富で長く煮ると、
ゼラチンに変化します。動物材はイノシン酸と思われがちですが、
コラーゲン部はグルタミン酸を豊富に含んでいます。ゲンコツ
は割って使用するのが一般的です。骨髄をスープ内に溶けやすく
する為です。骨髄は細胞に血液を多く含んでいる為、風味が
強い野菜を使用しないと生臭くなります。
雑味の原因になる血、ドロ、ゴミは熱湯で10分以上煮て
タワシと流水で洗い流します(血抜きの方法は色々ありますが)

●豚頭
コラーゲンはゲンコツより少なめですが、たんぱく質が多く
味を丸くします。長時間出汁が出続けるので2番ダシ3番ダシ
と使用している店には最適なガラです。長時間煮る事で、
生臭さ獣臭は飛ぶので臭みの少ない上品なスープがとれる。


この2つの部位に共通しているのは、コラーゲンが豊富で
あることです。コラーゲンを煮込む事でゼラチン化したのが
乳化です。いわゆる白濁です。同じ材料で、白濁するのと
しないのがわかれるのは、煮込み時間と火力です。

清湯(チンタン)スープ、上湯(シャンタン)スープ、
毛湯(マオタン)スープにするには、弱火、中火で煮込みます。

白湯(パイタン)スープ(トンコツスープ)にするには、
強力な強火でガンガンと長時間煮込みます。

創業時の当店のスープは、清湯スープと、毛湯スープの中間
型でした。広東スープ、四川スープ、北京スープ、上海スープ
あたりの中国古来の製法をブレンドし、日本の醤油ラーメン
とは全く違うニュアンスの醤油ラーメンを作っていました。

今は白湯スープに変えましたが、従来のトンコツラーメンとは
全く違うニュアンスで作っています。

僕はへそ曲がりなのか、うちのラーメンを食べて「○○に似て
る。」とか、「ありがちな味」とか評されるのが嫌で、思いっ
きり独自性を出しています。今まで食べた事が無い新感覚を
体感してもらいたいです。

話が反れましたが、要するに弱火で短時間(最近は長時間煮込む
店が多いけど)煮込めば清湯スープになります。

それと材料の量です。トンコツを大量に使って、強火で10時間
~30時間煮込み続ければ(呼び戻しだと、15時間ぐらいで、
ガラを新ガラに入れ替えたりします)ダシが出なくなったガラを
煮込んでもエグみが出るだけですのでご注意ください。

当店の場合で言うと、白濁スープに切り替えた事で、材料費が2倍
になり、ガス代が3倍になりました。ガス代だけで、僕の
サラリーマン時代の給料額ぐらい行くから、不経済な製法です。