hiroの花便り

我が家に咲く花や日々の暮らしを綴っていきたいと思います

井上靖『しろばんば』

2021-08-06 | 本・雑誌など

もう何か月も前に読んだ作品なので、忘れている部分もありますが、
印象に残った事柄だけでも、書き留めておこうと思います。



新潮文庫 昭和40年3月30日発刊(昭和60年7月30日44刷版)

『しろばんば』は、井上靖氏自身の少年時代を元にして書かれた
自伝的小説で、小学校2年生から3年生までが前編に、
5年生から6年生の様子が後編に書かれている。

題名の「しろばんば」とは雪虫のこと。
作者自身が幼少時代を過ごした静岡県の伊豆半島中央部の山村・湯ヶ島では、
秋の夕暮れ時になると、白い虫がふわふわと飛び回る光景が見られるという。

物語の時代は大正初期、5歳の洪作は父や母のもとを離れ、
亡くなった曽祖父の妾であったおぬい婆さんとふたり土蔵で暮らしている。
すぐ近くには母親の実家があり、曾祖母、祖父母、母親の妹弟たちが住んでいる。
曽祖父は、おぬい婆さんを、少年の母親である自分の孫娘の養母と
いうかたちにして、家屋敷を与え、自分に一生を捧げてくれた妾に
晩年の生活を保障してやったのだ。
洪作の父は軍医で、その頃、母と一緒に任地の豊橋に住んでいた。
村人たちから白眼視されているおぬい婆さんは、洪作だけには異常なまでの
愛情を注ぎ、洪作もおぬい婆さんを心から慕っている。

まず驚くのはこの時代の地域住民のつながりの深さ。
子供たちは同じ部落のもの同士、群れを作って遊んでいる。
これは以前に読んだ、霊長類学者の河合雅雄氏の少年時代(昭和10年代)が
綴られた、丹波篠山を舞台にした『少年動物誌』にも通づるものがある。
おぬい婆さんと一緒に豊橋にいる両親に会いに行くシーンでは
ほとんどの村人や子供が馬車の駐車場まで見送りに来てくれる。
今だったら、湯ヶ島から沼津までは、車で1時間余りで着くと思うのだが、
当時は相当時間がかかったようで、馬車や軽便鉄道に乗り継ぎ、
沼津で一泊して、豊橋まで行かなければならなかった。
また、旧制中学受験では小学校の先生から特別レッスンを受けなければ
入れないほど難しかったらしく、歴史の教科書では学べない、
大正時代の風俗や日常生活を知ることが出来て良かった。



ニオイバンマツリ(匂蕃茉莉)
返り咲き
(2021.08.02撮影)



ミソハギ
13年前頃、庭に植えましたが、ここ数年、株立ちが悪くなり
ぽつりぽつりと何本か咲いている程度です。
(2021.07.26撮影)



ルエリア・サザンスター(紫)
2010年9月から、紫、白、ピンクの3色をプランターで 育てていましたが、
昨年、根腐れで枯れ、コボレダネからの花だけとなりました。
(2021.08.02撮影)

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
しろばんば (ryo)
2021-08-06 16:08:23
井上靖さんですね。
私は読んでません。ご紹介いただき
ありがとうございました。
ニオイバンマツリは色がかわり
とてもかわいいですね。
ルエリアもミソハギの色もすてきです。
返信する
おはようございます (siawasekun)
2021-08-07 00:39:16
素敵なショットと解説から様子、雰囲気などが伝わってきました。
詳しい説明で、内容が伝わってきました。

ご紹介、ありがとうございました。

新型コロナウィルスの感染予防、日々、大切ですね。
密閉、密集、密接をしっかり避けて、予防しましょうね。

応援ポチ(全)。
返信する
Unknown (hiro)
2021-08-07 07:47:36
ryoさん、おはようございます♪
私も井上靖さんの著作は『氷壁』位しか知らなくて、
生い立ちもこの本を読んで初めて知りました。
とても綺麗で分かりやすい文章でした。
ニオイバンマツリは張るほどではありませんがたくさん
花を咲かせてくれました。
ルエリアやミソハギも、野の風情があって素敵です。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (hiro)
2021-08-07 08:18:12
siawasekunさん、おはようございます♪
台風が近づいているせいか、早朝から雨が降り、
少しだけ暑さから解放されています。

ワクチン接種・2回目が先週やっと終わったと思ったのに、
感染は爆発的に拡大しています。
しばらくどこにも行けそうもありませんが、
感染対策をしっかりとして身を守りたいと思います。
ありがとうございました。
返信する
好きな作家でした ()
2021-08-07 08:39:27
おはようございます、hiroさん。

もともと読書は敬遠していたわたしでしたが、
目を悪くしてからはずいぶん遠ざかっています。
井上靖好きな作家でしたので、HPを編集していました。
初版本のしろばんばです。
http://yutaka901i.tyanoyu.net/page6i01a.html
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Unknown (hiro)
2021-08-07 13:29:53
裕さん、こんにちは~♪
私も歳をとってからは視力が衰え、目が疲れるので
あまり読書はしなくなりました。
特に井上靖さんの作品は読んでいなかったのですが、
裕さんのHPを拝見して、あれほどたくさんの著作があったのかと驚きました。
これから少しずつでも読ん行けたらよいな~と思っています。
ありがとうございました。
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Unknown (えつまま)
2021-08-07 20:41:25
hiroさん   今晩は!
井上靖さんの小説は読みやすかったです
しろばんばも読みましたがほとんど忘れかけていました
hiroさんのとてもよくわかり思い出しました
ありがとうございました

ニオイバンマツリは良く咲きますね
返り咲きなんですね
2色が入り混じり綺麗です
ルエリア・サザンスターはこぼれ種から咲いて嬉しいですね
返信する
Unknown (ローリングウエスト)
2021-08-08 15:19:19
しろばんば、懐かしい~!小中学生の頃に読みましたね。猛暑続き、台風も襲来、コロナ拡大の夏休みとなりましたが、小生はずっと家に籠り切り・・、ついに東京五輪が終わっちゃうので今度は読書に励もうかな?
返信する
Unknown (hiro)
2021-08-08 15:57:39
えつままさん、こんにちは~♪
小説はよほど印象が深くないと、細かな内容までは
覚えていられませんよね。
私も読んだ本のタイトルと作家ぐらいなら覚えていますが、
結構忘れています。

ニオイバンマツリの這えり咲きは今年が一番多かったです。
花も香りも好きです。
ルエリア・サザンスターは3色あったものが枯れ
コボレダネからの花だけとなりましたが、花色は殆どブルーのようです。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (hiro)
2021-08-08 16:02:15
ローリングウエストさん、こんにちは~♪
「しろばんば」読まれたことがあるのですか。
私は初めてでしたが、井上靖の生い立ちなどを知ることが
出来て良かったです。
私はオリンピックをテレビで見たり本を読んだりして
籠り生活を楽しんでいます。
2回目のワクチン接種が終わったので、ほんとうは県マタギを
しなくて済む、神奈川の低山歩きをしたかったのですが、
ヒル攻めにあいそうで行かれないです。
ありがとうございました。
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