こんにちは,へちま細太郎です。
スイミングスクールの更衣室にいつものように入っていくと,髪の長い男の人がドライヤーで髪をかわかしていた。
「ずいぶんなげえ~な」
ぼくたちはそんな会話をしながら着替えをしていると,その人は今度は髪をひとつにまとめてかばんからポーチを取り出して,なんとお化粧を始めたではないか。
「」
ぼくらは動きを止め,あっけにとられて様子をみていると,そんなぼくらの視線も気にせずにわきめもふらず鏡の中の自分と格闘していた。
ただでさえ茶色な肌なのに,さらに茶色く塗りたくって,あげく唇を白くきらきらと輝くように塗っていた。最後に香水をしゅっ。
そして,鏡の中に固まったぼくらの姿をも無視して,パンツスーツに着替えた。
まったくの女
「」
そして,怖いものみたさにそいつから視線をはずせないでいるぼくら自身も無視して,香水のにおいを撒き散らしさっさと部屋を出ていってしまった。
「な,なんだ,あれっ」
「男だよなっ」
「最初は男だったよね」
「オカマ?」
「妖怪げげげのげええだ」
と騒いでいたら,キチローの馬鹿が入ってきて,
「間違いありません,さっき怪しい女の人が男子の更衣室から出てきたんです」
と,係りの人を連れてやってきたではないか。
「あいつ,絶対チクリ野郎だよな」
「確認もしないで,馬鹿だよな」
ぼくらがこそこそ話していると,
「何だキミたちいたのか。さっき,ここの怪しい女がいただろう?」
と,えらそうにきいたので,
「うん,いたよ,確かにあやしい人だったけど…」
「確かに怪しいよな,俺たちが入ってきたときは男だったから」
と,口にするなり,今まで驚いていておかしくも何とも感じなかったけど,笑い出してしまった。
「ああ,それじゃ,ここの会員の人だな」
と,係りの人は吹き出してしまい,キチローの肩をぽんとたたくと笑っているぼくらと,真っ赤になって悔しがっているキチローを残して出ていってしまった。
ほんと,みんなにみせたかったよ。