こんにちは、おばあちゃんですよ。
昨日のことだ。
近頃の寒さのおかげで、リカの散歩が暖かい昼間に変わってしまった。
うちのじいさんは、定年も間近かにせまったせいなのか、朝の寒さが体にこたえてきたみたいね。
まったく…。
今日も、元気な一人娘を連れて散歩に出る。
「さむいねえ」
と、声をかけても性悪な娘はぐいぐいと綱をひっぱって、振り返りもしない。
近くに川が流れているんだけど、そこの土手沿いに行き、おやつをひろげて食べている間、リカは長い綱を駆使してあっちふらふらこっちふらふらと歩きまわる。
と、リカがこっちに向かって吠えた。
「なんだ?」
私が動かないとみると走ってきて、おまんじゅうにくいつきひと飲みしてしまっても、吠える。
「もう1個か?」
と、しぶしぶおまんじゅうを出そうとすると、さっきの場所に戻ってまた吠えた。
うん?
立ち上がってみるまでもなく、何か吠えた先にいるようだ。
「あ」
リカはそいつのそばに座りこんでじっとみてるが、そいつは口をもぐもぐさせているだけで、いっこうに動かない。
リカは前足を出して、じりじりと後ずさりしながらも、また吠える。
「吠えたって、ウサギは返事しないよ」
うさぎのそばに座って背中をなぜてみれば、おとなしくされるがままになっている。
「こりゃ、捨てうさぎか?」
やっけえなもんみつけちまったなあ、とため息をつけば、おっかなびっくりだったリカはうさぎによりそうように座ってじっと見てるではないか。
「なんだ、拾えってか?」
と、声をかけると、べロを出してはあはあしながら知らんぷりをしている。
「くそ」
そんなわけで、私はうさぎを拾うハメになり、家に連れて帰ることになった。
リカはうさぎを抱き寄せたまんま動かない。
うさぎは、う~ともす~とも反応なしだ。
「まあ、リカの気持ちもわからないではないが…。うさぎはめんどうだぞお」
と、帰ってきたじいさんは、脱いだ靴下をうさぎの前に差し出した。リカはとっさに逃げたが、うさぎは無反応のままからだをのんびりと横に向けた。
「…」
うさぎも臭いってか。
というわけで、さっそくゲージを買いにいき、中に閉じ込めておくと帰ってきたバカ殿が一言。
「卵だ…」
おい、そのCMネタは終わりだ。
名前はミッフィーになった。
単純な家族だな。