ほんと、腹立つわ、この娘。
私これでも、世が世ならお姫様、藤川家の京よ、独身。
尼さんだけど。
「あんたね、どう育ったらこんな娘になるのよ」
「育ったようにしか子どもは育たないんですけど?自慢じゃないけど、うちの親、バカですから」
いうに事欠いてこれか、ほんと親の顔がみたいわ。
「あ~、いいですけどね、クレーマーだから、知らないわよ」
しれしれっとして憎たらしさ倍増。
「むかーし、おたふくクラス中に蔓延させて、サラダ先生を困らせたことがったわあ。まさか細太郎君の親戚だって知らなかったから、知ってたらやらなかったと思う。いまだに、恨み節言ってくんのよね、あの恐妻家」
腹が立ちすぎて、二の句が継げないわ、だから、
「それで、吉良家の自然薯は~」
「あら、吉良家っていえば、西条と東条の二家があったんでしょう?どっちの吉良家?」
うっ、こ、この娘、できる!何気に複雑怪奇な三河事情をつかんでいる。
「それに尾張の藤川家が、なぜに三河まで出向いていったんです?ほかにも、何か盗みにいったんじゃありません?」
「ぬすみ~?何言ってんのよ!藤川家が盗みを働くわけないでしょうがあ」
「自然薯、盗みにいったんでしょ?」
うっ、このくそ娘、余計ムカつくわ~。
「他人様に言えない後ろ暗いところがあるから、ほんとは違うのを盗みにいったんだっけど、ばれたくないから吉良家の自然薯にして、吉良家にけんか売っているとしか思えないんだけど?」
と、さらにしれっとしてお茶を飲むとにやりと笑った。
「あたしねえ、山岡荘八の徳川家康、親が好きで大河のDVD持ってんのよ~、吉良御前ってさあ、曳馬城の女城主だったんだよねえ」
うっ、あたしの知らない歴史をなぜこの性悪女が知っている。
「美人だったのかな?それとも、あれか?」
ゲス娘~と怒鳴りそうになった時、
「それはなあ~」
と、やかんのように口を出してきた住職だった。
つづいちゃお
京です。
お題に歴史上の人物の「逸話を教えてください」なんていうのがあったから、うちの藤川家の逸話でも少々。
「もったいぶらないで早く言って」
くそ娘が、ずうずうしくも上がり込んで、百合絵にお茶を淹れさせて飲んでいる。
「ああ、まったりい」
なんなの、このバカ。
ま、いーか。
「年末に討ち入り研究会とやらにも、実孝のバカが話したと思うけど」
「聞いてない!!、何それ」
「だからね、細太郎の大学に討ち入り研究会っていうサークルがあって、ずうずうしくも本家に話を聞きたいってねじこんできたわけ」
「へー」
「で、そこでみんなでそいつらをおちょくったわけ」
「へー」
へーへーって、なんなのよ、へぼ娘。こんなのが管理栄養士になろうなんて、爆発的な高カロリーの料理ばっかり食わされて、成人病一直線だわ。
「そこで、した話はほんとでね」
「は?もしかして、食い物と女の逸話?」
「女は11代将軍の娘が嫁に来てからよ。それまでは、女より食い気」
「へー」
って、何疑わしい視線を向けてんのよ、ゲス娘。
「まあ、吉良の領地の自然薯を取ってけんかになり」
「取って?盗っての間違いでしょ」
「うるさいわねっ!」
あ~、いちいちカンに触るわ、このボケ娘!
「自然薯くらい、あんたんちの領地になかったわけ?あ~、そうか、大名とかそんなんじゃなかったわけだから、領地なんて呼べる代物じゃないわけか」
と、すました顔で暴言を吐きながら茶をすする。
あ~、なんなんだ、このガキ~!
きいいいいいいいいいいいいいいいいいい!