【ひるまのもめごと】
この話も、あと少しだぜ。
ようやくここまで、きたって感じだ。
疲れたよ、全く、あのばか野郎には。
「なんで、失踪したんだ」
不気味な蘭の鉢でもなければ、なまはげ娘(のぶちゃんに言わせると、牛のくしゃみ女)でもないというのならば、一体、何が原因なんだよ。
「俺、教員として、恥ずべき行為をしてしまった…」
「何」
のぶちゃんは、ますます頭を下げる。そして、手で顔を覆った。
ま、まさか・・・、
「盗撮」
「援交」
最近の教師の犯罪ベスト2だな。
「人を見て、ものを言え、バカ野郎」
さすがののぶちゃんも、これには顔を上げて反論した。
確かに、のぶちゃんがそんなバカなことをするはずがない。
「バスケ部員を殴ったのか?」
これを入れると、教師の犯罪ベスト3。
「まさか、いくらなんでも、それだけは気をつける」
「じゃあ、なんだよ」
全員が、のぶちゃんに詰め寄った。
「さあ」
「さあ」
「さあさあ」
「さあさあさあ~」
歌舞伎じゃねんだよお~。
それなら、はっきりかたをつけてよ・・・だな。
何やってんだ、俺。
「俺、教務手帳を失くしてしまったんだ」
「え?」
「何ですか?それは…」
間の抜けたように、庵住様が質問した。
「あ、あのですね、これは生徒の出欠席の記録だとか、成績だとか、その他こまごましたものをつける大切なものなんですよ」
さすがの藤川もヤバそうな顔をした。
やっぱりこいつも教師なんだな。
「あら、まあ」
庵住さまは、袖で口を覆い、のぶちゃんにあきれたような視線を向けた。
やっぱりね、という顔をしている。
「ど~こで失くしたかわからねえから、ここに来てんだっぺがよ。生徒に拾われたら、ことだっぺなあ」
紀藤造園の親方の一言で、視線がのぶちゃんに集中してしまった。
全員が、凍りついたように、押し黙っている。
そんな中でのぶちゃんはますます頭を垂れたが、タッパが180cmを超えるものだから、しょげているようには見えないところがかわいそうだな、と俺は変なことを考えていた。
のぶちゃん、あんた…。
で、つづく…
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