暑さお見舞い申し上げます、ぼくがへちま細太郎です。
お盆の前に、副住職さんから 、
「5分で本堂に来い」
と無茶苦茶な電話があった。
ふざけるな、と悪態をついたけど、あとが怖いのでチャリに乗り、のんびり出かけていった。
「相変わらず、嫌がらせが得意なクソガキだな」
こめかみに青スジを立てて副住職さんが、本堂の入口に立っていた。
「早く来てほしけりゃ迎えによこせよな、どうせ掃除だろ」
ぼくは、今にもキレそうな副住職さんのわきから本堂に入る。すると、
「やあ」
と、またも水嶋先輩とその先祖以来のライバル美都地区豪農No.1の小栗先輩が、すでに仏像のからだを拭っていた。
「おまえの分は、あの細かいホトケさまな」
ぼくが中学1年の時、副住職さんに拉致られて以来、すっかり本堂の掃除は僕たち中学高校生の役割になってしまった。
言っとくが、ぼくんちの寺は、山の中だと一度言い訳したら、
「山元定寺の息子は、一緒に修業した中だ」
と、返ってきた。
本堂の中に、業務用扇風機が何台か置かれていたものの、暑くてたまらない。
「ったく、寺なんだから霊くらい出ろよな、そしたらいっぺんで涼しくなるってもんだ」
と、水嶋先輩が余計なことを言ってしまった。
その瞬間、
「おのぞみ通り出てやったぞ」
と、鎧甲のおじさんが、首を横に抱えた武士を連れて現れた。
「げっ」
水嶋先輩と小栗先輩は、驚いてぞうきんを落としてしまったけど、
「何でえ、そこの首のないやつ、赤松にくっついてたやつじゃん」
と、爆笑され、
「おっさん、露出のしすぎも飽きられる元だよ」
と、ツッコミを入れられる始末。
「…」
二人?は、恨めしそうな表情で、本堂の天井にへばりついている田吾作を睨みつけていたが、はあ、とため息をついた。
「慣れちゃしょうがないやねえ」
ぼくは、ふがいないごせんぞさまに苦笑いして掃除を続けたのであった。
で、赤松は今ごろ、ど~してるだろ?
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